モモカはルーテシアという女の子に負け、次は俺とバトルだ。
負けるもんか、絶対に勝ってそのまま優勝してやるぜ!!
「アゲハント、シグナルビーム!!」
「フゥォォォッ!!」
高度を上げながら、アゲハントは光り輝く光線を発射する。
「みきりだ!!」
「コジョ」
グリードの指示に短く頷き、迫るシグナルビームを見据えるコジョンド。
眼前にまで迫った瞬間、無駄がなく素早い動きでシグナルビームを瞬時に回避、その動作のまま跳躍した。
「ドレインパンチ!!」
「コジョォォッ!!」
右腕が光に包まれ、跳び上がった勢いを利用してアゲハントを殴り飛ばす。
「フォォッ!?」
壁に叩きつけられるアゲハント、攻撃を命中させたコジョンドはくるくると回転しながら華麗に着地を決めた。
『なんという美しい動きなのでしょうか、グリードさんのコジョンド、完全にルーテシアさんのアゲハントを圧倒しております!!』
観客からも、コジョンドの美しい動きに喝采を送る。
その中に居るアヤト達も、グリードの演技を見て驚いていた。
「……凄い。グリードさんってあんなに強かったんですか?」
あれでは、自分とて勝てるかわからない、モモカは本気でそう思えた。
「あいつはどんな些細な事でも努力を惜しまないからな、その想いがポケモン達にも伝わるからこそ、凄まじいまでのスピードで成長しているんだ」
彼はまだトレーナーになって3ヶ月程度の月日しか経っていない、だが……彼の何倍もトレーナー歴が長いアヤトすら、今の彼には簡単には勝てないと思える程、グリードの成長は著しい。
彼自身の才能、そしてポケモン達の絆、その2つがここまでの成長を見せている。
――本気でバトルがしていたい、今すぐに
心踊るのが抑えられないアヤトは、ウズウズとした感情を内側に潜めながら試合を観戦していた。
『さあ、制限時間は残り一分です!!』
(このままじゃ負けるわね………!)
ビビアンの声を聞き、ルーテシアの中に確かな焦りが現れ始める。
負けたくない、その感情を胸に彼女は勝負を仕掛ける。
「エアカッター!!」
「フォゥッ!!」
翼を勢いよく羽ばたかせるアゲハント、するとその羽根から歯車状の衝撃波が現れ、次々とコジョンドに向かっていく。
バラバラな軌道故に、とてもじゃないが避けられるものではない。
――しかし、グリードも最後の勝負に打って出た
「コジョンド、努力の成果を見せる時だ!!」
「コジョ!!」
頷き、脚に力を込めるコジョンド。
迫るエアカッター、だがそれが到達する前に―――
「ギガインパクト!!」
グリードは、このバトル最後の指示をコジョンドへと告げた。
「えっ……!?」
「ギガインパクト!?」
ルーテシアとモモカが、同時に驚きに満ちた声を上げる。
「コジョォォォッ!!」
激昂し、凄まじいエネルギーを全身に纏いながら、一直線に突撃していくコジョンド。
その威力はただ凄まじく、迫るエアカッターの悉くを霧散させ。
「コジョォォォッ!!」
「フゥォォォッ!?」
そのエネルギーを、全てアゲハントに叩き込んだ。
爆発を起こし、ステージが煙に包まれる中。
『タイムアーップ!!』
ビビアンの口から、試合終了の合図が放たれた。
次第に煙は晴れていき、アゲハントとコジョンド両者が未だ健在なのは確認できた。
ではポイントは? 誰もがモニターに目を移すと。
「決まったー!! セミファイナル第一試合を征したのは――グリードさんだ!!」
「やったぜ!!」
「コジョコジョ!!」
グリードはその場で跳び上がり、コジョンドは嬉しそうに笑みを浮かべ小さくガッツポーズを見せた。
「……フォゥッ」
「アゲハント、よく頑張ったわね」
しょんぼりとするアゲハントを、ルーテシアは優しく撫でて労いの言葉を送る。
そしてグリードへと近づき、右手を差し出した。
「おめでとう、凄くいいバトルだったわ」
「サンキュー、またバトルしようぜ!!」
満面の笑みで、グリードはルーテシアと握手を交わす。
すると観客席からは、惜しみない拍手が。
「……コジョンド、ギガインパクトを覚えたんですね」
あの技はとても強力な技だ、その反面習得は大変である。
きっと、弛まない努力を続けたからこその結果なのだろう。
暫し握手する2人を眺めているモモカ達をよそに、サクラは1人思考を巡らせていた。
(……グリードは強くなったよソラネ、はたして今の君が勝てるかな?)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『――激闘が続くミクリカップも、いよいよファイナルを残すのみとなりました!!』
「…………」
会場の盛り上がりは最高潮、ステージに立つグリードもさすがに緊張の色を隠せない。
『それでは選手の紹介をしたいと思います。かたやグリードさん、こなた――ソラネさん!』
――グリードがルーテシアに勝利した後
予想通り、ソラネがセミファイナルを勝ち抜き、今はグリードと対峙するような形でステージに立っている。
その顔には、若干の緊張の色と……楽しそうな笑みが浮かんでいた。
そう、ソラネは今心から楽しんでいる。
ファイナルという大舞台で、グリードとバトルできる——それが嬉しくて堪らないから。
だが、それはグリードとて同じ気持ちだ。
「ソラネ、今回は俺が勝つからな!!」
「……勝つのは私だよ、グリードくん」
はっきりと言い返すソラネ、初めて会った時とはまるで別人のような態度に、グリードは苦笑する。
しかし、そう言い返してくれた方が燃えるというものだ。
「コジョンド、君に決めた!!」
「コジョコジョ」
「チルタリス、出てきて!!」
「――チルーッ!!」
互いのポケモンを出し、バトルの準備は整った。
そして。
『制限時間は五分、ファイナルバトル——試合開始!!』
遂に、ミクリカップ最後のバトルが、幕を開いた。
「先手いかせてもらうぜ。コジョンド、おうふくビンタ!!」
「コジョ!!」
鞭のようになった腕を用いて、チルタリスに攻撃を仕掛けるコジョンド。
「チルタリス、かわして!!」
「チルッ!!」
「コジョ、コジョ!」
「チル、チルル!」
連続で攻撃するコジョンドだが、その悉くをチルタリスは無駄のない動きで回避していく。
それによりグリードのポイントが減り、更には。
「つつく攻撃!!」
「チルチルチルーッ!!」
コジョンドの隙を突き、くちばしを連続で相手の身体につついていった。
「はがねのつばさ!!」
「チルーッ!!」
つつく攻撃によって怯んだコジョンドを、鋼色に染め上げた翼で追撃を仕掛けるチルタリス。
空中に吹き飛ばされるコジョンド、しかしグリードとてやられっぱなしでは黙っているはずがなかった。
「ストーンエッジ!!」
「コージョ!!」
両腕をチルタリスに向けて突き出す、するとコジョンドの周りにやや大きめの石が回転しながら現れ、まるで弾丸のようなスピードでチルタリスに襲いかかった。
「チルーッ!?」
その攻撃をまともに受け、地面に墜落するチルタリス。それにより、ソラネのポイントが大きく下がってしまう。
『一進一退の攻防が続いております、まさしくファイナルに相応しいバトルになってきました!!』
ポイントは今の所は互角だ、ここで一気に引き離す為にグリードはすぐさま指示を出す。
「はどうだんだ!!」
「コジョォォォッ!!」
未だ地面に倒れたままのチルタリスに、はどうだんを叩き込むコジョンド。
「りゅうのいぶき!!」
「チルーッ!!」
それをすかさず攻撃技で相殺すると、互いの技がぶつかり合った影響でステージで爆発が起き、コジョンド達は煙に包まれてしまった。
「コジョンド、大丈夫か!?」
グリード側からもコジョンドの姿が見えなくなり、彼はすかさず名を呼ぶ。
するとすぐに返事が返ってきたので、ついほっと胸を撫で下ろしていると。
「はかいこうせん!!」
「なに!?」
煙の先から、ソラネのそんな指示が聞こえてきた。
「チ、ルーッ!!」
「コジョーッ!?」
煙から悲鳴を上げ勢いよく出てきたのは、はかいこうせんをまともに受けたコジョンド。
ステージを滑り、グリードのすぐ前でようやく止まってくれた。
「コジョンド!!」
「コ、ジョ……」
立ち上がるコジョンド、しかしまともに受けたダメージは大きく、肩で大きく息をしている。
やがて煙が晴れ、そこにはしてやったりといった表情を浮かべたソラネの姿が。
「煙が舞う前にコジョンドの位置を特定してたってわけか………!」
迂闊だった、ソラネがわざわざ攻撃技で相殺させたのも、煙を発生させて視界を塞ぐ為。
それに気づかず、一撃を許してしまうとは……悔しそうに唇を噛み締めるグリード。
『残り時間は二分を切りました! ポイントではソラネさんの有利だが、このまま逃げ切る事はできるのかー!?』
「くっ………!」
ビビアンの声に焦りを覚えるグリードだが、すぐさま冷静になれと自分に言い聞かせる。
残り時間は少ない、自分のポイントは相手に負けている、だからといって焦ってしまえばそこで終わりだ。
相手は自分より格上の相手、十二分に力を引き出さなければならないのに、焦ってしまえば絶対に勝つ事など不可能なのだから。
「はどうだん!!」
「コジョォォォッ!!」
両手を腰に持っていき、はどうだんの構えに入るコジョンド。
だが、このままおとなしく撃たせるソラネとチルタリスではない。
「りゅうのいぶき!!」
「チルーッ!!」
妨害の為に、エメラルド色の息吹を吐き出すチルタリス。
それがコジョンドの眼前にまで迫った瞬間。
「コジョ!!」
その場で跳び上がり、チルタリスの攻撃を回避した。
そして、コジョンドは両手の中にあるはどうだんを、まるでキャッチボールをするかのように、無造作に放り投げる。
「えっ……?」
ソラネが、その行動におもわず動きを止めた直後に、コジョンドは放り投げたはどうだんに右手を添え。
「はっけいだ!!」
ズドンッと、鈍く重い音を響かせてはどうだんを発射した。
まるで砲台から発射された砲弾のように、はどうだんは瞬時にトップスピードにまで加速して。
「チルーッ!?」
回避する事も受け流す事もできないチルタリスの身体に命中し、壁に叩きつけた。
「チルタリス!!」
「やったぜ!!」
はどうだんを、はっけいのパワーで押し出し威力の底上げとスピードの強化をする。
それは、かつてこの街にやってきた優しきポケモンブリーダー、フィルのポケモンであるツタージャのハルが使った『2つの技を使う』というものの応用だ。
しかし、それでもまだソラネには僅かにポイント差をつけられている。
『残り三十秒!!』
もう時間はない、おそらく次の攻撃が最後のものになるだろう。
ソラネもそう思っているのか、その瞳には決意の色が。
「ソラネ、真っ向勝負でいかせてもらう!!」
「うん……私も、正々堂々真っ正面からグリードくんに勝つよ!!」
上等だ、そう言い返してグリードは最後の指示をコジョンドに出す。
それと同時に、ソラネもチルタリスに最後にして最大級の技を繰り出す指示を告げた。
「コジョンド!!」
「チルタリス!!」
『最大パワーで――』
互いに負けられない意地のぶつかり合い。
その火蓋が、今……幕を開く。
「ギガインパクト!!」
「ゴッドバード!!」
「コジョォォォッ!!」
「チルゥゥゥゥッ!!」
互いの最大パワーを身体に乗せ、相手を倒すために突撃するコジョンドとチルタリス。
ぶつかり合い、高エネルギーの余波がステージを包み、やがては観客席にまで及んでいく。
「くっ………!」
「きゃっ……!」
顔を腕で防御し、その場で足に力を込め踏みとどまるグリードとソラネ。
瞬間――耳をつんざくような大爆発が巻き起こった。
「うぉっ!?」
その衝撃により、後ろに倒れ込んでしまう。
慌てて起き上がると……地面に倒れているコジョンドとチルタリスの姿が視界に入った。
両者戦闘不能か? そう思ったが、互いに起き上がりまだバトルは終わっていない。
と。
『タイムアーップ!!』
ビビアンが、試合終了の合図を告げた。
『さあ、果たして勝者はどちらの手に!?』
全員の視線が、煙に包まれたモニターへと向けられる。
――煙が晴れていく
そして、モニターに映し出されたのは……。
『決まったー! 激闘のファイナルを制したのはソラネさんだー!!』
「あ………」
「コジョ……」
負けた、それがわかってグリードとコジョンドは揃って肩を落とす。
「……チルタリス、やったね?」
「チルチルーッ!」
ソラネらしく小さく喜び、チルタリスはふかふかの翼をおもいっきり広げ嬉しそうに鳴いた。
この瞬間、2日間に及ぶミクリカップは、幕を閉じたのだった―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「――えへへ」
リボンケースの中を覗きながら、ニコニコと笑みを浮かべるソラネ。
……ミクリカップは終わりを告げ、今はみんなで学園に帰る途中だ。
「イルミナリボンにアクアリボン……もう2つも集めたんだな」
「ソラネさん、この際グランドフェスティバルを目指すのはどうですか?」
「いい考えだなモモカ」
「……うぅん、せっかくだけど遠慮しとく」
少し控え目に拒否の言葉を口にするソラネ、でもなんだか勿体ないな。
けど、他ならぬソラネが決めたなら別にいいか。
「みんなー!」
「姉さん?」
会場から急いで俺達に向かって走ってくるアリシアさん、その両手には……。
「アリシアさん、それ……ポケモンのタマゴですよね?」
モモカが訪ねる通り、アリシアさんが両手に持っているのは、ポケモンのタマゴだった。
1つは明るい茶色のタマゴで、もう一つは白と黒と紫の三色の線が入ったタマゴ。
しかし、わざわざポケモンのタマゴを見せに来たのだろうか。そう思っていたら、アリシアさんは俺とソラネに向かってタマゴを突き出しこう言った。
「優勝したソラネと準優勝したグリード君に、このタマゴをプレゼントするわ」
「へ?」
「ええっ!?」
「遠慮なんかしなくてもいいわよ、あなた達なら大事に育ててくれるでしょうし。
けど、何のポケモンかは孵化してからのお楽しみよ」
「で、でも……本当にいいんですか?」
「勿論。頑張ったご褒美だから気にしないで♪」
さあさあさあ、とタマゴを突き出してくるアリシアさん、わかりましたからちょっと待って……。
しかし、後ろではモモカが「ずるいですー」と文句を言っている。
それを予期していたのか、アリシアさんは懐から何かを取り出した。
それは、不思議な感じがする紫色の石。
「これはやみのいし、確かモモカの手持ちにムウマが居たわよね?
よかったら、ムウマージに進化させるといいわ」
やったー、と喜ぶモモカ、現金な奴だな。
そんな事を思いつつ、視線を再びタマゴへと向ける。
「ソラネ、先に選んでいいぞ」
「えっ、でも……」
「優勝したのはお前だ、だからお前から先に選ぶ権利がある」
それに、ぶっちゃけ俺はどっちのタマゴでも一向に構わないし。
そう言うと、ソラネは少し考えてから……茶色のタマゴをアリシアさんから受け取った。
というわけで、俺はもう1つのカラフルなタマゴを受け取る。
……どんなポケモンが生まれてくるのかな、今から楽しみだぜ。
「そういえば、あなたミクリカップに出てた子よね? セミファイナルにまで勝ち進んでた……」
あっ、そういえば今更だけどルーテシアはなんで一緒に居るんだ?
不思議に思っていると、彼女の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。
「はい、ルーテシアといいます。今日からアヤトの妻その3です」
「えっ?」
「なっ!?」
『はぁっ!?』
一同驚愕、特にモモカとフェイトなんか物凄い顔してる。
「ちょっと待―――」
「ちょっと待ってください!! なんですか妻その3って!!」
「そうだよ。いつのまにそんな……」
がーっ、とルーテシアに食いつくモモカとフェイト。
……なんだかよくわからないが、ルーテシアはアヤトの事が好きになってしまったらしい。
やれやれ、また賑やかになるのか……。
「タージャ」
肩に乗るツタージャが、モモカ達のやりとりを見て呆れたようにため息をついている。
ポケモンから見ても、あの光景はアホらしいもののようだ。
「あらら、アヤトってば本当にモテるのね。どうしてかしら?」
「まあ、顔がいいしなんだかんだで優しいし、トレーナーとして優秀だしクールだからじゃないですか?」
学園内でもアヤトの人気は高いらしい、モモカとフェイトの牽制があるから深く踏み込めないみたいだけど。
っていうか、いつまで続くんだよこれ。
「……みんな、ほっといて帰るか?」
「そうだね、僕としても時間の無駄でしかないし」
「えっと……帰ってもいいよね?」
「帰りましょ、こんなの時間の浪費でしかないわ」
ですよねー、とカレン達の言葉に頷き、俺達はその場を後にする。
その途中、アヤトが助けてくれーという感じの視線を送ってきたが、無視した。
だってしょうがねえじゃねえか、あの中に入ったら色々ととばっちりを受けるんだから。
悪いなアヤト、モテちまうお前も原因の一部なんだから、潔く諦めろ。
「ツタージャ、腹減ったな」
「タジャタジャ」
「……モテるって、大変なんだな」
「………タージャ」
「? なんでそんな微妙な顔するんだ?」
俺、なんか変な問いかけでもしたかな……?
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード(ほぼ完成)
・リーフブレード二段斬り
・エナジーボール
・???
【キバゴ】♂ 【コジョンド】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり
・シャドークロー ・はっけい
・りゅうのいかり ・とびひざげり
・ドラゴンクロー ・はどうだん
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ
・ギガインパクト
・ドレインパンチ
・ストーンエッジ