さーて、今日はどんな1日になるのかしら。
――あたしはツタージャ、ポケモンだ
今あたしは、イルミナ学園の中を散歩中。
あたしの主人、グリードは定期的にあたし達ポケモンに自由時間をくれる。
彼曰わく「ずっとボールの中に居たら窮屈じゃないか」とのこと。
この学園に居るトレーナーとしてはありえないような考え方のおかげで、あたし達はのびのびと暮らしていける。
だからだろうか、彼がどんなポケモンにも好かれるのは。
もちろん初めからすぐに好かれるわけじゃない、けど最終的にはどんなポケモンも彼には懐く。
ポケモンを心から大事にしているからこそ、彼はポケモン達に愛されるのだ。
でも勘違いしないでよ、あ、あたしは別に愛してるとか…そ、そんなんじゃないんだから!!
……あたしとした事が、取り乱しちゃった。
ともかくあたしは、グリードから貰ったおやつ用のポフィンを持って散歩している。
「ちょっとルーちゃん、いい加減アヤトから離れてくださいよ!!」
「いいじゃない、私も妻の1人なんだから」
「そんな事認めるわけないじゃないですか!!」
「あ、あの……2人とも、落ち着いて……」
煩いわね……また喧嘩してるみたい。
呆れながら、あたしはアヤトを囲んで言い合いをしているモモカとルーテシアに視線を向けた。
ルーテシアはどうやらアヤトの事が気に入ったらしく、本気で狙う事にしたらしい。
しかし、そんな事を認めるモモカとフェイトではなく……ああいう光景が半ば日常茶飯事化してる。
……アヤトも大変よね、同情するわ。
あーあ、間に挟まれて必死に怒鳴るのを我慢してる、可哀想に。
頑張りなさいアヤト、助けてはあげないけど。
あっそうそう、あたしにはどうでもいい事だけど、ルーテシアもグリード達と同じクラスに転入してきたの。
補足説明終わり、もう見飽きた光景だからあたしはすぐさまその場を後にする。
「は、セイ―――!」
あら、この声は……カレンのエルレイドね。
こんにちはエルレイド、また修業?
「……ツタージャか、当たり前だろう。俺は今よりもっと強くならないといけないんでな」
相変わらず修業バカというか……まあいいけど。
それより、グレイシアとはどうなの? 少しは進展した?
「何の話だ?」
素の声で聞き返してくるエルレイド、この様子じゃわかってないわね……グレイシアも可哀想に。
どうして男とか♂って鈍感な奴が多いのかしら、いつも泣きを見るのは女や♀なのよね。
そんなエルレイドの態度に呆れていると……後ろから視線を感じた。
「……ツタージャ、エルレイドと何してるの?」
振り向くと、そこには拗ねたように頬を膨らましてあたしを睨むグレイシアの姿が。
別に何もしてないわよ、少なくともグレイシアが考えてる事はね。
「……なら、いいけど」
その言葉で少しほっとしたような表情を見せるグレイシア、ったく……何を想像してたのやら。
そんなあたしをよそに、グレイシアは頬を赤くしながらエルレイドに声を掛ける。
「あ、あの……い、いい天気ねエルレイド」
……もどかしいわね、あんたそんなに引っ込み思案だったかしら?
そうだな、なんてエルレイドは素っ気なく返すだけ。
「え、えっと…その…」
あうあうと口を開いては閉じ開いては閉じの繰り返しで、グレイシアは一向に話を先に持っていこうとしない。
ああもう、はっきり言いなさいよねっ!
「……悪いが、特に用がないなら1人にしてくれないか? 正直邪魔なんだ」
「っ!!?」
ああっ、馬鹿。なんでそんな事言うのよ。
エルレイドに言われ当然ながらショックを受けるグレイシア、プルプルと怒りにより身体を震わせてる……。
ヤバい、離れないと―――
あたしの中の本能がそう告げており、急いでその場を離れると。
「エルレイドの……バカァァァッ!!」
グレイシアは周りの迷惑とか手加減とか一切考えずに、至近距離で特大のふぶきを吐き出した。
「なっ―――」
標的となったエルレイドは、当然ながら避ける事はできずに……氷漬けにされた。
「うわぁぁぁん!!」
泣きながら去っていくグレイシア、っていうかこの状況ほったらかし!?
……まあいいか、幸い周りには人もポケモンも居ないし、氷漬けになってるのはエルレイドだけだし。
そう自己完結させ、あたしは違う場所に行くために歩き出した。
エルレイド、言っておくけど自業自得よ。女の子に対してあんな態度をとったんだから。
さて、次はどこに行こうかしら。
学園内は広いから、どこに行こうかなかなか迷ってしまう。
と、思考を巡らせながら歩いていると……あまり会いたくない類のポケモンに出会ってしまった。
そのポケモンとは——アオイのジャノビー、なんでこんな所に居るのよ、と言ってやりたい。
「……お前、あの男のツタージャだな?」
だったら何なのよ、あいにくとあたしはあんたみたいのを相手にしたくないの。
「……嫌われたものだな」
あんたの主人が気に入らないからね、そう言ってやるとジャノビーは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
なによ、何か言いたげね。
「………アオイは、前からああいった奴じゃなかったんだ」
?
前からあんな奴じゃないって……どういう意味よ?
「昔はアイツも、お前の主人のようなトレーナーだった、という意味だ」
……ジャノビーの言葉に、あたしは眉を潜めた。
あのアオイが? コジョンドにあんな事をしたあの人間が、前はグリードと同じようなトレーナーだった?
信じられないわね、はっきり言って。
「だろうな。だが事実だ、アイツは……優しいトレーナーだった」
ジャノビーの表情が曇る、その表情は痛々しくてあたしはさっきまで胸の内にあった嫌な感情が消えていくのを感じていた。
……ジャノビーは嘘を言っていない、その表情と声色であたしにだって理解できる。
でも、だったらどうしてアオイは変わってしまったのだろう。
何かしらの原因がなければ人は変わらない、ではその理由は……。
そこまで考えて……あたしは面倒になった。
やめよう、あたしが考えたってわかりはしないし、それに人間同士の問題にポケモンがいちいち口を出す権利なんかない。
大体……なんだかんだ言って、グリードがなんとかしてしまうような気がしたから、あたしは考えるのを止めた。
そんな事よりジャノビー、あなた暇よね?
「……暇だが、どうかしたのか?」
ならあたしに付き合いなさい、ちょうどおやつを食べようと思っていた所だから。
そう言いながら、あたしは通路の隅に座り込んでグリードが作ってくれたポケモン用のポシェットからポケモンの入った袋を取り出す。
「…………」
なによ、あんたは食べないの?
「い、いや……いいのか?」
別にいいわよ、あんたの主人は気に入らないしあんたも気に入らないけど、嫌いってわけじゃないから。
ほら、とジャノビーにポフィンを差し出す。
それを怪訝な表情を浮かべながらも、ジャノビーはしっかりと受け取り口に運んだ。
「………美味いな」
当たり前よ、不味いなんて言ったらリーフブレードとリーフストームでぶっ飛ばしてやるんだから。
それは恐いな、と笑いながらあっという間にポフィンを食べてしまうジャノビー、もう一個食べる?
「ああ。……だが、懐かしいな」
懐かしいって、何が?
「アオイも昔、俺達にポフィンを作ろうとしてくれた事を思い出してな。
まあ、アイツは不器用だから、よく真っ黒なポフィンを作っていたが」
そう呟くように話すジャノビーの顔は、昔を懐かしむような優しい表情。
……可哀想ね、彼。
なんだか、余計にアオイが気に入らなくなった。
理由は知らないし知りたくもない、だけど……どんな理由があろうとも、自分のポケモンを悲しませるトレーナーを、あたしは認めない。
って、いけないいけない。せっかくのおやつタイムなのに気分が悪くなるような事を考えたらダメじゃない。
そう思い、あたしは気持ちを改めてポフィンを食べようとしたら。
「ぽっ」
「んっ? ――ーぶっ!?」
突然、ジャノビーの顔面にシャドーボールがめり込んだ。
な、何なの!?
軽く混乱していると、衝撃が走りポフィンの入った袋が……。
「きゃはははは!」
空中で静止する袋。
ではなく、ムウマが袋を自分の頭に乗せてしてやったりといった顔で大笑いをしていた。
ちょっとムウマ、何するのよ!!
「だって美味しそうなポフィン持ってるんだもーん!!」
答えになってないわよ、攻撃した意味は!?
「驚くと思ったから♪」
驚きのレベルを超えてるわよ!!
いいから、さっさと返しなさい!!
がーっ、と怒るものの。
「べーっだ、返してほしかった実力で取り戻してみせてよーだ!」
きゃははは、と笑いながら、ふわふわと飛んでいくムウマ。
……腹立つ、どうやら痛い目に遭わないとわからないらしい。
ジャノビー、行くわよ。あのアホにキツいお灸を据えてやらないと!!
「ち、ちょっと待て……ダメージが」
ちぃっ、意外と使えないわね!!
身体をプルプルと震わせ呻いているジャノビーはほったらかしにして、あたしは立ち上がりムウマの後を追った。
「〜〜〜♪」
鼻歌なんぞ歌いながら、呑気に飛んでいるムウマに狙いを定める。
ふっふっふ、リーフブレードをお見舞いしてやるわ!
跳び上がり、渾身のリーフブレードを背後から叩き込もうとするが……。
「ひょい」
あっ!?
軽々と避けられ、そのまま地面に落ちていく。
って、ちょっとどいてどいてー!!
「えっ――ぐはっ!?」
あたしが落ちた先には、昼寝をしていたレントラーが。
リーフブレードをまともに受け、のたうち回るレントラー。
ご、ごめん……わざとじゃないのよ?
「ツ、ツタージャ……てめぇ、いきなり何しやがる……」
いや、その……これには深い理由が。
「深い理由だぁ? 俺の身体を痛めつけるのにどんな理由が――」
「ぽっ」
あっ、ヤバいシャドーボールが来る!!
こうなったら……すかさずレントラーの後ろに回り込んだ。
「何を――ごはっ!?」
秘技、レントラーバリア!!
ただの身代わりとか言わない、あくまでこれはバリアなんです。
「うぉぉ……」
「きゃははは!」
ごめんレントラー、あなたの犠牲は無駄にしないわ。
というわけでムウマ、覚悟しなさい!!
「べーっだ!」
〜〜〜っ、やっぱり腹立つわね!!
尻尾を回転させて、葉っぱを含んだ突風――リーフストームをムウマに叩きつける。
「いたたぁ……」
今だ! あたしは走りリーフブレードの準備に入る。
ダメージを受けたムウマは避けられない、もらった!!
「ツタージャ、ムウマは……」
攻撃を当てようとしていたら、ムウマの後ろから誰かが歩いてきた。
瞬間、ムウマはニヤリと嫌な笑みを浮かべ。
「秘技、ジャノビーガード!!」
「えっ?」
って、ジャノビーどきなさいよ!!
「ぐはっ!?」
素早く今更ながらにやってきたジャノビーの後ろに隠れるムウマ。
突然の状況に、ジャノビーは反応できずに、あたしの一撃をまともに受けて吹き飛んでいった。
…………ごめん、ジャノビー。
「お、俺が何をしたっていうんだ……」
だからごめんってば、あまり気持ちは込めてないけど謝ってるじゃない。
「きゃははは!!」
倒れてるジャノビーに大笑いしてるムウマ、あんたって子は………!
もう許さん、絶対にボコボコにしてやる!!
ジャノビー、倒れてないで追いかけるわよ!!
「む、無茶言うな……」
あーもう、本当に使えないわねあんたは!!
「お、お前……結構酷い奴だな……」
やかまひい、無駄口叩いてないで立ちなさいっての。
いまだにもがいているジャノビーに言い放ち、ムウマを追いかける。
――アイツ、庭園に逃げるつもりね
あそこに逃げられたら面倒ね、なんとかしないと。
でも間に合わない、そう思っていたら。
「わーいわー――あぶしっ!?」
横から現れたエナジボールが、ムウマをぶちかまし地面に叩きつけた。
そちらへと視線を向けると……。
「まったくもぅ……何してるのよ」
呆れたような表情で、キルリアが立っていた。
じゃあ、あれはキルリアのエナジボールだったのね……。
「いた〜い……」
……ムウマ、追い詰めたわよ。
「あ、あはは……ツタージャ、怒ってる?」
へぇ、あんたにはあたしが怒ってないように見えないの?
調子に乗りすぎたわね、ム〜ウ〜マ〜?
「あぅ……」
許して? とばかりに瞳をウルウルさせるムウマ。
け・ど、こんなに調子に乗った子を笑って許すわけにはいかないわけで。
覚悟、し・て・よ・ね?
「い―――いにゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」
……。
…………。
「……ツタージャ、おかえりー」
「タージャ、タジャ」
「? どうしたんだよツタージャ、なんかやけにスッキリしてるな」
「………タージャ♪」
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード(ほぼ完成)
・リーフブレード二段斬り
・エナジーボール
・???
【キバゴ】♂ 【コジョンド】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり
・シャドークロー ・はっけい
・りゅうのいかり ・とびひざげり
・ドラゴンクロー ・はどうだん
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ
・ギガインパクト
・ドレインパンチ
・ストーンエッジ