けど……なんだろう。
なんか、嫌な予感がするんだよな……。
「――おいフウロ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ……多分」
「多分って……不安になる事言うなよな」
こんにちは、只今俺達はフウロのヘリによってフキヨセシティを目指し空を飛んでます。
ですが……いつの間にこうなったのか、雷がゴロゴロ発生している雷雲の中を飛行中です。
今日も快晴、絶好の飛行日和だったのだが……事の始まりは数分前。
フウロが、もうすぐフキヨセに到着するよー、と言った矢先に……周りで雷雲が形成されていき、現在に至る。
「気圧の変化はなかったのに……どうしていきなりこんな雲が。明らかに普通じゃないよ、この気候……」
「…………」
ぼやくようなフウロの言葉通り、この雷雲は普通じゃない。
なにせいきなり現れたのだ、ものの数十秒で。
だというのに、そんなものが自然で作られたなど考え……。
「きゃっ!?」
「うぁっ!?」
視界が塗り潰されそうな強い光。
近くで雷が通ったのか、眩しくて目を開けていられない……。
「……早く抜けないと、みんな、念の為しっかり掴まってて」
「ああ」
「わかった」
言われた通り、椅子に手を置き身体を縮こまらせる。
……それにしても、この天気は何だ?
明らかに異常だし、それに……。
なんだかよくわからないけど、胸の中がザワザワする。
早く、この場から離れなければと、内なる自分が訴えているのだ。
(何か……居る?)
形容できない何かが、この雷雲の中に居るような気がしてならない。
その証拠に、先程からツタージャが俺にしがみついて震えている。
最初はヘリに乗るのが恐いのか、そう思っていたのだが……もしかしたら、人間には感じ取れない何かをあの時から感じていたから、震えているのではないかと思うようになった。
「…………」
シートベルトを外し、窓際まで移動して外を見る。
……やっぱり、何か居るのか?
いいようのない恐怖が、俺の中で芽生え始め。
――“その瞬間”は、唐突に訪れた
「きゃぁぁぁっ!?」
「うぉぉぉっ!?」
「うわぁぁぁっ!?」
突然ヘリを襲う凄まじい衝撃。
機内は揺れ、座っていなかった俺はツタージャを抱えたまま扉に叩きつけられ……。
「えっ―――」
ふっと、背中に感じていた扉の固い感触が消えた。
「―――――」
視界が、落ちていく。
自分の真上には、さっきまで乗っていたヘリの姿が見えている。
……今、俺、落ちて。
ヘリから、落ちて……。
「タジャァァァッ!?」
「うぁぁぁぁぁっ!?」
なんで、どうして俺達はヘリから落ちてるんだ!?
突然の事態に、思考が完全に白く染まる。
―――死ぬ
このまま地面に叩きつけられて、間違いなく俺の命は終わる。
パラシュートはもちろん装備してはいない、つまり俺はここで――
「じ、冗談じゃねえぞぉぉぉぉっ!!?」
未だに思考は混乱の極みだが、腰にあるボールを手に取りすぐさま投げる。
「――ムクホォォッ!!」
出したのは当然ムクホーク、あいつには悪いけど助けてもらうしかない!
「ムクホーク、こっちに来てくれ!!」
「クホォッ!!」
落ちていく俺達に向かってくるムクホーク、俺はその脚に掴まろうとするが……上手くいかない。
拙い拙い拙い拙い!!
死にたくないのに、このまま死ぬなんて御免だ!
手を伸ばす。
手を伸ばす。
手を伸ばす―――!
けど届かない、死にたくないと必死に願っているのに届かないなんてどうかしてる、死にたくない死にたくない死にたくない、もう少しなのにどうして届かない、あと少しが何故何故何故―――!
「おわっ!?」
「タジャ!?」
「クホッ!?」
突然、何か柔らかい感触に包まれた。
慌てて起き上がり、一番初めに見えたのは……美しき“白”
高級羽毛布団すら霞んでしまうほど、美しく柔らかな毛並みは、まさしく神の所業か。
何より――その美しき白の正体、は。
「―――レシ、ラム」
かつて、イッシュ地方に君臨した白き英雄。
レシラムが、俺の目の前に現れていた……。
「レシラ――」
〈黙っていろ、それとしっかり掴まっておけ〉
「っ」
頭の中に響く、澄んだ女性の声。
「レシラム、お前がテレパシーで俺に話しかけてるのか……?」
〈そうだ。だが先程も言ったように少し黙っていろ〉
「何を―――っ!?」
ぞくりと、全身が震え上がった。
たまらず、俺は上を見上げる。
「ガギャァァァッ!!」
「なっ!?」
未だに今の状況に追いついていないというのに、またも思考が白く染まってしまった。
――レシラムの遙か上空
雷雲の中でも確かに輝く“黒”が、雄叫びを上げて君臨していた。
……かつて、イッシュには白と黒の英雄が居た。
白き英雄レシラム、そして黒き英雄ゼクロム。
その二体の英雄が――今この瞬間、俺の目の前に降臨した。
「な、何で……どうしてレシラムとゼクロムがここに……」
〈私達はいつでも人間界に存在している、それより……しっかりと掴まっていろ〉
レシラムがそう言った瞬間、ゼクロムに変化が訪れる。
圧倒的なパワーが込められたプラズマ弾。
それが、ゼクロムの口から放たれようとしている………!
〈ちぃ――ゼクロム、関係のない人間まで巻き込むのか!!〉
ゼクロムに顔を向けるレシラム、口を開くとプラズマ弾と同等のパワーが込められた火球が込められていった。
そして、同時に英雄達の一撃が放たれる!!
「ぐぁ!?」
「タジャ!?」
「クホォッ!?」
必死にレシラムの身体にしがみつく俺達。だが………。
「タジャ―――」
「―――――」
思考が、一瞬で白熱する。
今の衝撃に、ツタージャが耐えきれずにレシラムから落ちて……。
「ツタージャ!!」
何も構わず、迷いなくレシラムの身体から飛び降りる。
手を伸ばす。
手を伸ばす。
手を伸ばす―――!
「つ、捕まえ……た!!」
「タジャ!?」
抱きかかえ、守るように胸の中へ。
「タジャーッ!!」
「だ、大丈夫だツタージャ……お前だけは、俺が守るから!!」
〈馬鹿者が!!〉
「うっ……!?」
再び、柔らかい衝撃が俺を受け止める。
「レシラム!!」
〈人間よ、空も飛べぬお前が無茶をするな!!〉
「けど………っ!?」
また、さっきの寒気が襲いかかる。
まさか、二撃目!?
〈ゼクロムめ……どうあっても私を倒したいというのか!!〉
再び、ゼクロムの攻撃を相殺しようと火球を生み出すレシラム。
「……けんな」
「タジャ……?」
「ふざけんなぁぁっ!!」
何があったかは知らないし、知りたくもない。
だが、こっちはいきなり巻き込まれて理不尽に殺されようとしてる、そんな事が認められるはずがない!!
「ガギャァァァッ!!」
放たれるプラズマ弾。
それを、精一杯睨みつけながら。
俺は、当たり前のように内側から溢れ出そうになる“力”を、外側へと持っていく―――!
「――がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
瞬間、プラズマ弾と火球はぶつかり合い。
目の前の空間全てが、真っ白に染め上がって……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「………うっ………」
生きて、る……?
身体中に走る痛みを我慢しながら、起き上がる。
「タジャ……」
「クホゥ……」
「……ツタージャ、ムクホーク……」
涙目で俺を見つめているツタージャとムクホークの姿が、視界に入った。
「……よかった。みんな無事か……」
心配かけたな、そう言いながらツタージャ達の頭を撫でる。
それにしても、ここは何処なんだ……?
〈気がついたか?〉
「っ、レシラム……!?」
俺達を守るように佇むレシラム、やっぱりあれは夢じゃなかったんだ……。
伝説のポケモン、かつて英雄と呼ばれたレシラムが、俺の目の前にいる。
「って、レシラムお前……!!」
〈? 何だ?〉
「お前、怪我してるじゃないか!!」
白い身体の点々に見える痛々しい血の痕。
酷い怪我ではないけれど、このまま放っておくわけにはいかない。
確か、バッグはヘリから落ちる時に……。
キョロキョロと辺りを探す、だが……どこか別の所に吹き飛んでしまったのか、この辺りにはないようだ。
「くそっ……バッグの中にならきずぐすりがあるのに……」
「タジャタジャ!」
「んっ……?」
何か俺に見せてくるツタージャ。
「これはオレンのみ……でかしたツタージャ!
ムクホーク、あの太めの枝をはがねのつばさで折ってくれ!!」
「ムクホォッ!!」
頷き、近くにある木の枝を折るムクホーク。
あとは、この葉っぱの上にオレンのみを置いて、ムクホークに折ってもらった木の枝ですり潰して……と。
簡易なものだけど、これを食わせれば直に傷が直るだろ。
「レシラム、これを食べてくれ」
〈……食べれるのか?〉
「当たり前だ。俺が食えないものを食えだなんて言うかよ」
〈むぅ……〉
渋々といった感じにすり潰したオレンのみを口に含むレシラム。
よし、これで大丈夫だろう。
〈何故わざわざすり潰す必要がある?〉
「すり潰して食った方が消化が速くなる、そうすればオレンのみの効果が早く出るんだよ」
〈ほぅ……見かけによらず博識だな〉
「一言余計だ。……それより、一体何がどうなってるんだ? どうしてゼクロムはレシラムを襲ったんだ?」
〈……判らぬ。元々私とゼクロムは互いに干渉せずに生きてきた。しかし……ある日突然ゼクロムが私の所にやってきて戦いを挑んできたのだ〉
「ふーん……」
どうやら本当にわからないらしい、レシラムの顔を見ればそれがすぐに理解できた。
……どうやら、こんな所でそれについて考えても無駄なようだ、俺はすぐさま立ち上がりポケナビを起動する。
「現在位置は……フキヨセに近い森の中に落ちたみたいだな」
これなら歩いてフキヨセシティまで行けそうだ、遠くに飛ばされてないようでホッとする。
……けど、レシラムをこのままにはしておけないな。
「レシラム、動けるか?」
〈大丈夫だ。それよりお前を仲間の元に連れて行ってやらねばな……〉
「えっ……まさか、俺を仲間の所まで送ってくれるのか?」
〈当たり前だ。お前には迷惑を掛けた、それに……命も救われた以上、恩は返さねば〉
「えっ……?」
命を、救われた?
ちょっと待て、それはどういう意味だ?
「レシラム、どちらかというと俺達がお前に命を救われたんだけど……」
〈何を言ってる。お前があの時――いや、なる程な〉
「?」
何やら勝手に何かを納得しているレシラム。
すると、レシラムは驚くべき真実を口にした。
〈人間よ。お前は自らの“波導”の力で私達を助けてくれたのだ〉
「えっ……」
波導って……まさか、あの波導か?
〈ゼクロムのクロスサンダーを相殺したまではよかったのだが、衝撃が凄まじく私も自分のコントロールを失い、危うく地面に叩きつけられる所だった。
しかし、その瞬間お前の身体から波導の力が現れ、それがバリアのように私達を包み込み、優しく地面に降ろしてくれたのだ〉
「…………」
レシラムの説明に、ポカンとしてしまった。
ちょっと待て、俺はそんな事した覚えは……というか、俺にそんな力なんて……。
そこまで考えて、かつて友人となったフィルの言葉を思い出す。
そういえば、俺には波導遣いとしての素質があるって言ってたな……。
じゃああの時、俺の中で波導の力が発動して……レシラム達を助けたのか?
〈やはり無意識下での行動だったか……しかし、お前にはかなりの素質が秘められているようだ。今回は、人間であるお前に救われたな〉
「……俺が、波導の力を」
レシラムはそう言ってくれたが、正直やはり実感はなかった。
〈人間、お前は私の背中に乗っていた時、何を考えていた?〉
「何をって……ツタージャ達を絶対に守るって」
〈おそらくその守りたいという想いが、波導の力を発した要因だろう。
波導とは己の心とも言う、穢れなき波導だからこそ……あのような事ができたのだ〉
「……うーむ」
やはりわからん、やっぱり俺は波導遣いとしてはまだまだ半人前以下らしい。
けど……ツタージャ達が守れたのは、本当に嬉しかった。
俺なんかでも、ポケモン達を守れたという事実が……本当に嬉しい。
〈誰かを想うというものは、時折信じられない力を引き起こす。
――かつて私を使役していた人間の言葉だ〉
「レシラム……」
優しい眼差し。
見た目は巨大でその蒼い瞳は恐ろしく映ってしまうけど、俺には慈愛に満ちた瞳に見える。
〈……人間、名は?〉
「グリードだ」
〈グリード……その名、覚えておこう。
さあ、お前の仲間も心配しているだろう、早く戻るぞ〉
「けど、お前怪我がまだ」
〈お前が与えてくれたきのみのおかげでだいぶ楽になった、この程度の怪我ならば問題はない〉
言いながら立ち上がり、乗れと合図を送るレシラム。
だから、俺はムクホークをボールに戻し、ツタージャを肩に乗せてからレシラムの背中に。
〈掴まったか?〉
「うん。……だけど」
〈どうした?〉
「レシラムの背中……凄く暖かくて、気持ちいいんだなって……」
あの時は状況が状況だったから、でも今は……その温もりをよく感じ取れる。
〈……私も、お前の暖かな鼓動を感じるよ〉
呟くようにそう告げ、レシラムは瞬時に空へと飛び立った。
〈グリード、お前の仲間が居るのはどこだ?〉
「フキヨセシティっていって……ここからだと、南西の方角だな」
わかった、短く返し南西に進路を変えるレシラム。
暫く無言で飛んでいたのだが、思い出したかのようにレシラムが俺に話しかけてきた。
〈グリード〉
「何?」
〈……お前は、この世界をどう思う?〉
「えっ……」
なんとも象徴的な問いかけ、どう思うと言われても……解答に困った。
しかし黙っているわけにもいかず、暫し考えてから……俺なりの答えを口にした。
「……どちらとも言えない、かな」
〈それは、一体どういう意味だ?〉
「この世界は綺麗なものと汚いものが一緒くたに存在してる。
だから醜いとは言えないし、かといって綺麗とも言えないよ」
俺の周りには綺麗なものが沢山ある。
だけどちょっと視線を変えれば……否が応でも汚いものを目にしてしまう。
だから、俺の答えはそんな曖昧なものになってしまった。
〈……お前は、まだ子供なのに世界を知っているのだな〉
「いや、これはあくまで俺個人の意見で……」
〈フフッ……〉
「むっ、何がおかしいんだよレシラム!!」
問いただそうとするが、別にと言ってレシラムははぐらかしてしまう。
何なんだよ……そう思いながら、空を見上げた。
既に夜は更け、月が世界を照らしてる。
そういえば、月にもポケモンが居るとか聞いた事があるけど……本当なのかな?
そんな事を考えつつ、俺はレシラムに身体を預けた。
さーて、アヤト達の所に戻ったらまずはちゃんと謝らないとな。
けど……レシラムの事、なんて説明すればいいんだろう……。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクホーク】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード
・リーフブレード二段斬り ・インファイト
・エナジーボール ・かげぶんしん
・???
【キバゴ】♂ 【コジョンド】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり
・シャドークロー ・はっけい
・りゅうのいかり ・とびひざげり
・ドラゴンクロー ・はどうだん
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ
・ギガインパクト
・ドレインパンチ
・ストーンエッジ