まだ完全解決じゃないけど、とりあえずはいつもの日常に戻っていった。
さーて、今日はどんな一日になるのかね。
「タージャ……?」
俺を見て、ツタージャが首を傾げる。
いや、正確には俺が持ってるタマゴを見て、なのだが。
「見ろよツタージャ、もうすぐ孵りそうなんだ」
「タージャ……!」
それを聞いて、ツタージャは嬉しそうに笑みを浮かべる。
そうだよな、もうすぐ俺達の新しい家族ができるんだから、嬉しいに決まってる。
「どんなポケモンが生まれるのかな……まあ、俺はどんなポケモンでも嬉しいけど!」
にしても……アヤトとサーナイト、遅いな。
おとなしくなったサーナイトの検査をする為に、今はプレシア博士の所に行ってるから、俺も研究所の休憩室で待っているのだが……ちょっと遅いな。
「――待たせたな」
本当に遅いなぁ、そう思っていた矢先、アヤトがサーナイトを連れて戻ってきた。
プレシア博士も一緒だ、どうしたのかな。
「プレシア博士。サーナイトはどうでした?」
「大丈夫よ。もう二、三日はかかるけど、バトルもできるようになるわ」
「そっか……よかったなサーナイト」
「サナサナ♪」
「でも、あのサイコパワーはまだ使えないわ」
「えっ?」
「サーナイトの身体がまだサイコパワーに合わないから、今よりもっと身体を強くしないと」
「なる程なぁ……じゃあサイコセイバーはまだ使えないか」
「サナ……?」
首を傾げるサーナイト、ああそういえばこの名称は俺だけのやつだった。
「あの時お前が見せた剣の事だよ、サイコパワーで作ったからサイコセイバー、結構いい名前だろ?」
「なる程……ネーミングセンスはともかく、サイコセイバーか……技のバリエーションの1つとして組み込めそうだな」
「おいコラ、ネーミングセンスはともかくってなんだよ」
失礼な奴だな、まあ…否定できないけど。
けど、そうなるとまだサーナイトとはバトルできないわけか……。
「そういえば、フウロはどうした?」
「朝からフライトだと、もうすぐ帰ってくるんじゃねえの?」
パイロットは大変だ、それにしても今日は何して過ごそうかね……。
そう考えていると、プレシアさんがある提案をしてくれた。
「なら、タワーオブヘブンに行ってきたらどうかしら?」
「タワーオブヘブン、ですか?」
――タワーオブヘブン
それは、この世を去ったポケモン達のお墓がある塔の名前。
毎日のように人が訪れており、正直そこは悲しみに包まれた場所でもある。
……だけど、行ってみる価値は俺にとって充分ある場所だ。
「そうですね、それじゃあちょっと行ってきます。アヤト、お前も一緒に行くか?」
「いや……せっかくだが遠慮しておく、サーナイトのバトルの勘を取り戻してやらねばいけないからな」
「ん……わかった、じゃあツタージャ、行こうぜ?」
「タージャタジャ」
ツタージャを肩に乗せ、研究所を後にする。
……タワーオブヘブン、か。
まさか、1人だけで行けるようになるとは、思わなかったな。
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「――広いな、タワーオブヘブンって」
フキヨセシティを出て僅か数十分、タワーオブヘブンの塔はすぐに見つかった。
五階建ての、レンガで造られた少し古めの塔。
その中には、沢山のポケモン達が眠るお墓と……そのお墓参りに来ている人達が、居た。
「…………」
中にはお墓の前で啜り泣く人も居る、多分……最近亡くした子なんだ。
……いつか、俺もツタージャ達と別れなくちゃいけない時が来る。
そんな未来の事なんて考える必要なんかない、でもこういう所に来ると……否が応でも考えなくてはならない。
いや……違うな。
こういう所に来なくても、別れが来るという事を常日頃から考えなくちゃならないのかもしれない。
だって、自分の身近な人やポケモン達がいつ居なくなるのかわからないのだから。
悲しい考え方かもしれない、でもそれが現実であり頑なにそう思っている人は、ただ綺麗事を言ってるだけ。
仲良くなればなるほど、その心に踏み込めば踏み込むほど……失った時の悲しみは大きく、そして深くなる。
だから、常に覚悟を決めていかなければならない、それが他者に踏み入れようとする者の責務だ。
失う痛みが恐いなら、人に関わらなければいい。
それも正しい、だから中には進んで他者との絆を繋ごうとしない人だって居る。
でも俺にはそんな事はできない、俺には大切な者が出来すぎた。
掛け替えのない友達と、家族が。
だから、俺は自分に言い聞かせる。
たとえ大切な存在が失われる時が来ても、悲しむだけでなく受け入れる覚悟を決めろ、と。
「タジャ……?」
「? ツタージャ、どうした?」
ツタージャの声で我に返る。
するといつの間にか、頂上へと辿り着こうとしていた。
けど、ツタージャは他の事に気を取られてるみたいだけど……不思議に思いながらも、頂上――つまり五階に辿り着く。
「あ………!」
そこにはお墓はなく、あるのは通路の一番奥が設置された大きくも美しい銀色の鐘。
しかし、そんな鐘など今の俺にとってはどうでもいい。
通路のちょうど真ん中に、一体のポケモンが倒れているからだ。
あれは……たしかグライオン。
「ツタージャ悪い、降りてくれ」
「タジャ」
俺が言う前に地面へ降り立つツタージャ。
すかさず俺は腰に掛けていたバッグからきずぐすりを取り出す。
「……グラィ……」
顔を上げるグライオン、人間である俺を見て驚くものの、抵抗はしなかった。
その隙に、素早くグライオンにきずぐすりを振り掛け、傷ついている尻尾に包帯を巻いていく。
「……よし、これで少し休めば治るよ」
幸いたいした怪我じゃなかった、グライオンの回復力ならすぐ治るだろう。
「グラィ、グライオン♪」
「おわぁっ!!?」
満面の笑みを浮かべたグライオンが覆い被さろうとするが、すんでのところで回避する。
当たり前だ、グライオンに乗られたら重くて堪らない。
「グラィ……♪」
ニコニコと笑っているグライオン、どうやら懐かれた……というか、野生なのに人懐っこいポケモンだな。
苦笑しつつ、バッグからポフィンを取り出してみた。
「食べてみるか?」
「グラィ……?」
首を傾げつつも、俺からポフィンを受け取り、口に含むグライオン。
暫く咀嚼していると……美味しかったのか、もっとくれとばかりにせがんでくるグライオン。
「待て待て、ちゃんとやるから!」
ったく、食い意地の張った奴。
と。
「あっ、グリード」
後ろから、聞き慣れた女の子の声が聞こえてきた。
「フウロ」
やってきたのは、ちょっと驚いた表情を浮かべているフウロが。
「どうしたんだ?」
「それはこっちの台詞……というか、グライオン助けてくれたんだ」
「へ?」
「あのね、フキヨセに戻る途中で空から倒れてるグライオンを見かけたからさ、急いでこっちに来たの」
「空からって……飛行機の中からか!?」
うん、なんてあっけらかんと俺の問いかけに答えるフウロ。
ちょっと待て、どんだけ目が良いんだよ。
「パイロットは視力が命だからね♪」
えへん、と得意げに胸を張るフウロ。
……そういうレベルじゃないような気がするけど、飛行機のパイロットってみんなこんな感じなのかな?
「グラィ、グラァイ」
「なんだよグライオン……って、お前もう食べたのか?」
「グラァイ♪」
しょうがねえな……とは思いつつ、面倒になったので袋ごとポフィンを広げてあげた。
すると、グライオンは早速とばかりにポフィンを食いまくり始める。
……本当に食い意地が張ってるな。
「ふふっ……グリードは本当にポケモンから好かれやすいね」
「そうかぁ?」
「そうだよ。普通野生のポケモンはこんな風にすぐ懐いたりしないもん」
「けど、それはこいつが元々人懐っこいのと、ポフィンを食べてるからじゃないかな?」
「それもあるけど、グリードが内側から優しいオーラを発してるからじゃないかな?
そうじゃなかったら、もっと警戒心を持たれるはずだし」
「むぅ……」
そう言われると、少しむず痒くなる。
どうも、こういうストレートな褒め方は苦手だ、リアクションに困るから。
「……そうだ。ねえグリード、あの鐘を鳴らしてみない?」
言いながら、フウロは一番奥にある銀色の鐘を指差した。
「あれはね、鳴らすとタワーオブヘブンのポケモン達の魂を、嬉しくさせる事ができるんだって。
それにね、心が清らかな人が鳴らせば、その鐘は素晴らしい音を奏でるんだって」
「ふーん……」
それはまた、大層な伝説をお持ちで。
鳴らしてみなよ、そう言って俺を立ち上がらせ鐘へと押していくフウロ。
強引な奴だな……それに裏を返せば、心が汚い奴は鐘を鳴らせないって事なんじゃないか?
もし綺麗な音が鳴らなかったらどうしよう、そう思いながら俺はその鐘を鳴らした。
「グライ……!?」
「っ」
「タジャ……」
瞬間、鐘は無事に鳴ってくれた。
よかった……それなりに綺麗な音色だ。
「どうだフウロ? 結構綺麗な音じゃね?」
「…………」
「……フウロ?」
ポカンとした表情を浮かべるフウロ、ツタージャとグライオンはなんだか安らいだ顔になってる。
もしもーし?
暫く待つと、はっと我に返るフウロ。
「あっ……ごめん、聴き惚れてた……」
「聴き惚れてた?」
「だ、だって……こんなに澄んだ綺麗な音色、初めて聴いたから……びっくりしたんだもん」
「…………」
そんなに綺麗な音だったかな……。
けど、フウロの表情を見る限り嘘を言ってるようには見えない。
それに、ツタージャもグライオンもなんだかうっとりしてる。
「……本当に、グリードの心は澄んだ水のように綺麗なんだね。
羨ましいな……君みたいな人と一緒に居られる人達が」
「……あんまり褒めないでくれ、リアクションに困る」
なんだか、顔が熱くなってきた……。
それを見て、フウロは何が可笑しいのかクスクスと笑っている。
「……ねえ、グリード」
「ん……?」
「グリードは、将来の夢とか……ある?」
「唐突だな」
「い、いいじゃない……気になったんだから」
「そうだなぁ……」
将来の夢、かぁ……。
夢はあるけど、将来こうなりたいという意味合いの夢は、考えた事がなかったかも。
……でも、やっぱり将来は。
「――世界中のポケモンと、友達になりたい、かな?」
「えっ……?」
「別にチャンピオンになりたいとか、そういう明確な夢はないんだ。
ただ世界中のポケモンをこの目で見て、話し合って、友達になったら楽しそうだろ?」
自分でもちっぽけで、なんだそりゃーな感じな夢だけど。
この気持ちに偽りは無いし、そんな事ができたら絶対に幸せになれると思ったから。
案の定、フウロは俺の言葉にポカンとした表情を浮かべてしまった。
当たり前だ、世界中のポケモンと友達になりたいなんて、自分でもポカンとするような夢なんだから。
けど……この後のフウロの反応は、俺の想像とは違っていた
「……グリードらしい夢だね、凄く素敵だと思うよ」
「えっ……」
てっきり笑うと思っていたのに、フウロは笑うどころかその夢を素敵と言ってくれた。
「グリードなら、きっと叶えられるよその夢」
「フウロ……」
「ふふっ……」
笑顔でそう言ってくれるフウロに、俺も笑顔を返す。
「グライ……」
「グライオン……?」
「グラァイ、グライオォン!!」
ジェスチャーをしながら何かを訴えてくるグライオン、しかし当然ながら俺にはグライオンの言葉わからない。
でも……もしかしたら。
「グライオンは、グリードと一緒に行きたいんじゃないかな?」
「…………」
俺が思っていた事を、フウロが代わりに言ってくれた。
でも、やっぱりそうなのか……?
「……グライオン、俺達と一緒に来るか?」
「っ、グライオォン!!」
俺の言葉を聞いて、嬉しそうに尻尾でピョンピョンと飛び跳ねるグライオン。
そんな姿に苦笑をしながら、グライオンに向かってボールを翳す。
すると、グライオンは自らボールの中へと入っていった。
モンスターボールが少し揺れ、すぐさまおとなしくなった。
「――よーし。グライオン、ゲットだぜ!!」
「タジャタージャ!」
「……きっとその子、グリードが今語ってくれた夢を聞いて、仲間になりたいと思ったんじゃないかな?
友達になりたいと思ったから、自分からボールに入っていったんだと思うよ」
「ああ、そうだな」
また友達が……家族ができた。
この瞬間は、やっぱり何度体験しても嬉しい。
「……ねえ、グリード」
「ん?」
「あのさ、フキヨセに戻ったらお願いしたい事があるんだけど」
「なんだよ?」
訪ねると、フウロは先程までの笑顔を消し、ジムリーダーとしての顔になり。
「あなたに、ポケモンバトルを申し込みます」
はっきりと、俺に勝負を挑んできた。
「フウロ……」
「カミツレさんの時からあなたとバトルがしたいと思っていたの、それで……どうかしら?」
「もちろん、いいに決まってるだろ!!」
むしろこっちからお願いしたいくらいだ。
というわけで、早速フキヨセに戻るとしよう。
そう思い、俺は一気に駆け出していく。
「あっ、グリード!!」
後ろから追いかけてくるフウロ。
よっしゃ、カミツレさんに続いてフウロともバトルできるぜ。
絶対に負けない、勝ってみせるぞ!!
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクホーク】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード
・リーフブレード二段斬り ・インファイト
・エナジーボール ・かげぶんしん
・???
【キバゴ】♂ 【コジョンド】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり
・シャドークロー ・はっけい
・りゅうのいかり ・とびひざげり
・ドラゴンクロー ・はどうだん
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ
・ギガインパクト
・ドレインパンチ
・ストーンエッジ