だから、早く一人前になれるように頑張らないとな!!
「ムク〜……」
たいして広くもない部屋を、飛び回るムックル。
ツタージャはそんなムックルをちょっと鬱陶しそうにしながら、ベッドに眠っている。
――今日は休日
休日とはいえ、半人前の俺は遊び呆けている場合ではなく、今日も一人前になるために勉強中。
本当は勉強なんかしたくないけど、ツタージャ達の立派な主人になるためには避けては通れない道だ。
「ムク〜?」
俺のやってる事が気になるのか、ムックルが机に降りてきた。
「今ポケモンフーズとポフィンの調合を勉強してるんだよ」
こういうのはブリーダーやコーディネーターには必須だけど、トレーナーには正直必要ない内容のものだ。
しかし、やっぱり市販のものより自分で作って食べてもらいたい。
説明はするがやはりわからないらしく、首を傾げるムックルが可愛くて、つい抱きしめてしまった。
けれどムックルは嫌がるどころか喜びの声を上げ擦りよってきたから、またも嬉しくなって抱きしめる力を強めた。
「いでっ!?」
頭に鈍い痛みが走る。
一体何なんだ、後ろに振り向いてみると。
「…………」
ツタージャが、ジト目で俺を睨んでいた。
いや、ツタージャは元からジト目だが……あからさまに怒ってますと意思表示してるのがよくわかる。
「ツタージャ、何怒ってるんだ?」
「…………」
ぷいとそっぽを向かれてしまった。
……何なんだ、本当に。
「………?」
ツタージャの不機嫌さに首を傾げていると、インターホンが鳴り響いた。
そう思っていると、何度も何度も鳴り響いたので急いで出る。
「おわっ!?」
瞬間、部屋の中に誰かが凄い勢いで入り、扉を閉めてしまった。
「………アヤト?」
すぐさま確認すると、入ってきたのはアヤトだった。
しかし、いつもクールな雰囲気などなく、なにやら慌てているというか……焦ってる?
「おい、アヤ——」
「静かにしてろ!」
鬼気迫る表情で言われ、おもわず口ごもってしまう。
と、外から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「アヤトってばどこにいっちゃったんでしょう……」
(………モモカ?)
言葉の内容からして、アヤトを捜しているようだけど……。
「せっかく『媚薬入りのお菓子を作ってアヤトに食べさせ、既成事実を作ろう作戦』を決行したのに……肝心のアヤトが見つからなければ意味ないです……」
「…………」
媚薬って、何だろうな。
だけど何故だろう、それを絶対にアヤトに食べさせてはならないと本能で理解できた。
……やがて、モモカの気配が無くなってから鍵を閉める。
「………すまない」
「いや、いいよ。なんとなくだけど今のモモカにお前を会わせちゃいけないような気がしたから」
助かる、そう呟いたアヤトの表情は、なんだか哀愁を誘った。
「でもアヤト、お前ってモモカの事が嫌いなのか?」
可愛いし言葉遣いも綺麗だし、欠点があまり見えない気がするが……。
「嫌いというわけじゃないが……今のオレは恋愛などする気はない。
それより、一流のトレーナーになる事しか頭にないさ」
「ふーん……」
「そういうお前はどうなんだ? 誰か好きな子は居ないのか?」
「いるわけねえだろ、第一そういうのよくわかんねえし。
それよかアヤト、どうせ暫く外には出れないみたいだし、せっかくだからお前のポケモンを見せてくれないか?」
実は、まだアヤトの手持ちを見た事がなかったりする。
今度カレンとモモカとサクラの手持ちも見せてもらおう。
「いいぞ。よしみんな、出てこい」
4つのモンスターボールを上に投げる。
ボールが開き、中から見慣れないポケモン達が。
「左からガバイト、モウカザル、キルリア、エレキッドだ」
「ガバッ!」
「ウキャッ!」
「キル〜」
「エレ、エレキッ!」
「わぁ……かっこいいポケモンもいればかわいいポケモンも居るな」
特にこのキルリアというポケモンは女の子みたいで可愛らしい、エレキッドもなんだかやんちゃ坊主って感じが可愛らしく思えた。
「なあアヤト、撫でてもいいか?」
「ああ、もちろん」
許可を貰ったので、まずはガバイトから。
「………ガバッ」
ちょっと恐い瞳で見つめられるが、頭を撫でると一声鳴いて笑ってくれた。
肌の感触はちょっとザラザラしてて、とても硬そうだ。
続いてモウカザルを撫でると、手に暖かな熱が帯びる。
「ウキッ」
ニコニコと無邪気な笑みを浮かべるモウカザル、嫌われていないようで安心した。
続いてはエレキッド、たしかコイツはでんきタイプのポケモンだったはずだ。
「なあアヤト、エレキッドってでんきタイプだよな?」
「そうだが、それがどうかしたか?」
「触っても感電したりしないよな?」
そんなの当たり前だ、少し呆れたような声で言われ、一安心しながらエレキッドを撫でる。
くすぐったそうに身をよじるが、嫌がってはいないようだ。
よし、最後はキルリアだけ……。
「あれ?」
撫でようとしたのだが、キルリアの姿が見当たらない。
どこに行ったのか、辺りを見回すと……何故か、ベッドの影に隠れてこちらの様子をチラチラと見つめていた。
「あのキルリア、照れ屋なのか?」
「いや、別にそういうわけじゃないが……」
はて、照れ屋ではないなら何をそんなに恥ずかしがっているのだろうか。
不思議に思いながら、キルリアに近づく。
「キ、キル〜……」
すると、キルリアは両手で隠すように自分の顔を覆ってしまった。
「キルリア、どうしたんだよ?」
話しかけるが、キルリアは一生懸命こちらを見ようとしてこない。
……もしかして、嫌われたのだろうか。
まだ何もしてないのに、そう思いつつもキルリアから離れる。
どう考えても俺のせいだからな、キルリアの嫌がる事はしたくない。
「………?」
そう思っていたら、ズボンの裾を引っ張られる感覚が。
何かと思い視線を下に向けると……キルリアが俺のズボンの裾を遠慮がちに掴んでいた。
「キルリア、どうしたんだ?」
しゃがみ込み、再びキルリアに視線を向ける。
……なんだか、顔が赤いような。
もしかして風邪なんじゃないか、そう思ってアヤトに知らせようとしたら。
「キ、キル〜!」
「えっ……」
今度は俺の手を掴み、何かをお願いするような視線を向けてきた。
「キルリアはお前に頭を撫でてほしいんだよ、他のみんなと同じようにな」
「そうなのか?」
「キル!」
ぶんぶんと首を縦に振るキルリア、ならば早速と頭を撫でてあげた。
「〜〜〜〜♪」
めちゃくちゃ嬉しそうにしてくれたので、なんだかこちらまで嬉しく――
「タジャ!!」
「おぶちっ!!?」
いきなりツタージャに殴られ、見事にすっ転んだ。
リ、リーフブレードで殴るなよな……。
ていうか、どうしてツタージャは俺に攻撃をしてくるんだ?
「キルッ!!」
「タジャ、タージャ!」
頬を押さえながら起き上がると、ツタージャとキルリアが互いを睨み威嚇しあっていた。
おいおい、仲良くしてくれよツタージャ。
「タージャ、タジャタジャ!!」
「キルル、キルッ!!」
一体何を言い争っているかはわからないが、とにかく止めなくては。
「ツタージャ、やめろよ」
「キルリアもよせ」
互いに互いのポケモンを抱き上げ、喧嘩を止める。
しかし、両者は尚も睨み合いを続けて……って、そうだ。
「アヤト、ならツタージャとキルリアでバトルしないか?
なんで喧嘩してるのか知らないけど、バトルをすればお互いスッキリするだろうし」
どうだツタージャ、と訊いてみると、やる気満々の声で返事を返された。
アヤトも同じようにキルリアへ訊いてみると、向こうもやる気満々のようだ。
「よし、じゃあ早速行くか」
「そうだな」
……だけど、ツタージャとキルリアは何で喧嘩してたんだろ?
………。
「——アヤト、本気で来いよ」
「当然だ。手加減する理由がない」
『それではこれより、アヤトとグリードによるポケモンバトルを始める。
使用ポケモンは互いに一体ずつ、どちらかのポケモンが戦闘不能になった時点で終了とする』
「よーし……ツタージャ、君に決めた!!」
「――タジャ」
「キルリア、バトルスタンバイ!」
「――キルッ!」
互いにフィールドに立ち、また睨み出した。
(おかしいな……キルリアの奴、あそこまでバトルに積極的な奴じゃなかったんだが……)
「ツタージャ、やる気は充分みたいだな」
「――タジャ!」
うんうん、なんかよくわからないけどツタージャがやる気になってくれるのは嬉しいもんだ。
『先攻はハヤトから。それでは、試合開始!!』
「キルリア、ねんりき!」
「キルッ!!」
ツタージャに向けて、両手を突き出すキルリア。
すると、ツタージャが青い光に包まれ宙に浮き始めた。
「タジャ!?」
「ツタージャ、なんとか脱出するんだ!!」
身体を動かし、どうにかねんりきから逃れようとするツタージャだが、ビクともしない。
そうしている間に、キルリアは突き出した手を勢いよく下へと振り下ろす。
それと続くように、ツタージャの身体が地面に叩きつけられた。
「タジャ……」
「ツタージャ、頑張るんだ!!」
「キルリア決めろ、れいとうパンチ!」
「キル!」
キルリアの姿が消え、ツタージャの背後に。
そして、氷に包まれた拳がツタージャへと叩き込まれる瞬間。
「かげぶんしんだ!!」
「タ、タジャ!!」
ツタージャのかげぶんしんが決まり、キルリアの攻撃は影を貫いただけに終わる。
更に勢い余って前のめりに倒れてしまうキルリア、すかさず俺はツタージャに追撃の指示を出した。
「ツタージャ、リーフブレード!!」
「ター…ジャッ!!」
「キルーッ!?」
リーフブレードがキルリアの背中にヒットし、宙に吹き飛ばす。
だが、まだ俺達の攻撃は終わってない!!
「ツタージャ、つるのムチで捕まえろ!!」
「タジャ!!」
吹き飛んでいくキルリアを、つるのムチで拘束するキルリア。
「くっ……!?」
「グラスミキサー!!」
「タジャーッ!!」
拘束したキルリアに、グラスミキサーが向かっていく。
これなら避けられないはずだ―――!
「キルリア、まもる!」
「え――」
「キル!」
両腕に自分の前で交差するキルリア、すると薄い膜のようなものが彼女の目の前に現れ、グラスミキサーを全て弾いてしまった。
まもる……確か全ての攻撃を無効化する技。
けど、動けないならまだこちらが有利―――
「拘束してるのが仇になったな、グリード」
「何!?」
「キルリア、10まんボルト!!」
「キー…ルーッ!!!」
キルリアの身体から凄まじい電撃が発生し、それはもちろん自身の身体を拘束しているつるのムチにも……。
「っ、ツタージャ、キルリアを放せ!!」
そう叫んだが、遅すぎた。
「タジャーッ!!?」
10まんボルトはつるのムチを伝い、ツタージャに流れ込む。
いくら効果が今一つとはいえ効かない訳じゃない、苦しそうな声を上げおもわずキルリアの拘束を解いてしまった。
「キルリアトドメだ、れいとうパンチ!」
「キルッ!!」
着地と同時に、ツタージャへと向かって走っていくキルリア。
「ツタージャ、キルリアが来るぞ!!」
ツタージャに向かって叫ぶが、10まんボルトのダメージが大きかったのか、立ち上がれない。
いや、あれはまさか……まひしてるのか?
「ツタージャ!!」
「タ、ジャ……」
身体の痺れと戦いながら、立ち上がろうとするツタージャ。
だがその時には、既にキルリアはツタージャの眼前まで迫っており。
「キー…ルッ!!」
「タジャーッ!!」
れいとうパンチをまともに受けゴロゴロと地面を転がっていき――止まったと思った時には、そのまま動かなくなった。
『ツタージャ戦闘不能、キルリアの勝ち。よって勝者、アヤト』
「キルリア、よくやった」
「キル〜♪」
「……ごめんなツタージャ、大丈夫か?」
「………タジャ」
ぷいとそっぽを向かれたが、ちゃんと俺の問いに答えるように手を握ってくれた。
その姿に少し苦笑を浮かべながら、きずぐすりを振りかけてあげた。
しかし……これで3連敗か、俺がバトルで勝てる日は来るんだろうか?
「キル〜」
「おっ?」
ニコニコと笑みを浮かべながら俺の足元にやってきたキルリア、一体どうしたんだ?
しゃがみ込み、キルリアと目線を合わせると。
「タジャ!!」
「おぉっ!?」
いきなり腕の中でおとなしくしていたツタージャが暴れ出した、それにキルリアに向かって何か叫んでいるようだが……。
「キル〜」
キルリアはまったく気にした様子もなく、むしろツタージャを馬鹿にするかのような視線を――
「〜〜〜〜っ、タジャーッ!!」
「わぁっ!? 戻れ、ツタージャ!!」
キルリアに襲いかかろうとしたツタージャを、慌ててボールの中に。
するとアヤトの方も、キルリアをボールの中に戻していた。
「ふぅ……なあアヤト、ツタージャとキルリアって仲悪い種族なのかな?」
「そんな話は聞いた事ないが……どうしてツタージャ達の仲が悪いのかとは関係ないぞ」
「? じゃあどうして仲が悪いんだ?」
「………さてな。自分で考えろ」
「???」
さてな、とは言いつつもどうやらアヤトは仲が悪い理由がわかっているらしい。
その後も何度かアヤトに訊いてみたのだが、曖昧にはぐらかされてしまうだけ。
結局、俺にはどうしてツタージャとキルリアの仲が悪いのかは、わからなかった。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムックル】♂
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・たいあたり
・リーフブレード ・かぜおこし
・たいあたり ・でんこうせっか
・かげぶんしん
・へびにらみ
・グラスミキサー