次はいよいよ、俺とカレンの番だ!!
『――さあ、未だ盛り上がりを見せるタッグバトル大会。続いて第4試合を開始致します!!』
「いよいよ、グリードの出番だね」
四天王、およびチャンピオン専用の観客席で座る少女――サクラが、待ちくたびれたと言わんばかりに呟く。
「さーて、この夏休みの間にグリードは成長してるのかなぁ?」
そう告げたのは、同じく四天王の一人であるアリア、通称ちび先輩。
「……アヤトは大分成長していたけど、彼はどうかしら……」
「なんだよマイ、随分と嬉しそうだな」
茶化すようにそう言ったのは、今にも眠ってしまいそうな顔をした少年、ハク。
そんな彼に、マイは皮肉めいた口調で言葉を返した。
「そういうハクこそ、彼のバトルになりそうになったら目を開けるなんて、随分執着してるじゃない?」
「うわー……もしかしてハク、そっちの人?」
「やかましいぞちび助、そんなわけないだろうがこのミニマム娘」
「ちびって言うな!!」
「いや、ちびだろどう見たって、しかもその歳でその身長だと……成長は絶望的だな」
「ぐはぁっ!?」
ハクの容赦ない一言で、一番気にしていた事に対するダメージにより、アリア撃沈。
そんな彼等の漫才には目もくれず、サクラの視線に移るのはグリードのみ。
「……惚れた弱み?」
「………マイは、意外と意地悪だ」
頬を僅かに赤く染めながらも、グリードに視線を向け続けるサクラに、マイは優しげな視線を送っていた。
サクラはしっかり者ではあるが、意外と寂しがりやだから……こういった変化は嬉しく思う。
「カレンさーん、頑張ってくださいねー!!
グリードさーん、足を引っ張らないようにお願いしまーす!!」
「何その温度差ありすぎる応援は!?」
モモカのあまりに贔屓な応援に、おもわずツッコミを入れるグリード。
「カレン、頑張ってねー!! グリードはついでに頑張ってー!!」
「ルーテシアも酷くない!? 俺なにかした!?」
「グリードくん、頑張ってー!!」
「サーナ!!」
「……ありがとうソラネ、サーナイト。まともに応援してくれるのはお前達だけだ」
2人の暖かい応援に、本気で泣きそうになるグリード。
隣では、カレンが呆れたようにため息をついていた。
「………さて、と」
さめざめとした表情を瞬時に消し、グリードはトレーナーの顔へと変化させる。
「……あら、なんだかいつもより真剣ね」
その変化に多少驚きながらも、バトルに出すポケモンが入ったモンスターボールを手に取るカレン。
グリードも同じようにボールを手にして、ぽつりと呟きを漏らす。
「——勝ちたいからな、まだ頂点を目指せる器じゃないけど……負けたくない」
小さく、けれど力強くグリードは答える。
そんな彼に、カレンは優しく笑みを浮かべ。
「大丈夫よ。あたしがついてる……だから、アンタはアンタらしいバトルをやりなさい」
「わかってるよ。クチート、君に決めた!!」
「クチクチッ♪」
「ピカチュウ、出てきなさい!!」
「――ピカッ!!」
元気よく飛び出してくるクチートとピカチュウ、どちらも愛くるしい容姿のせいか、観客席からは僅かにほぅ…と感嘆の声が耳に入ってきた。
対する相手は……ナッシーにゴーリキーと、対照的な容姿のポケモンを繰り出してきた。
同じ一年とはいえ、かなりの実力者らしい。
「クチートは、たしか初陣ですよね?」
「ああ、公式なバトルではな」
ポケモンハンターとの戦いにも参加したが、あれは正確にはバトルではない。
そうこう話す内に……バトルの幕はすぐさま開いた。
「ナッシー、リーフストーム!!」
「ナッ、シー!!」
「ゴーリキー、かわらわりだ!!」
「リキッ!!」
先制は相手側、ナッシーはリーフストームを放ち、ゴーリキーはまっすぐクチートに向かっていく。
「ピカチュウ、10まんボルト!!」
「てっぺきだ!!」
「ピーカチュゥゥッ!!」
迫るリーフストームに10まんボルトを叩き込み、相殺させるピカチュウ。
「リ、キーッ!!」
「クチッ!」
ぐっと我慢するように身体を少し丸めたクチートに、ゴーリキーのかわらわりが脳天から直撃する。
効果は抜群、だが――
「アイアンヘッド!!」
「クチーッ!!」
直撃したと思った次の瞬間には、クチートの鋼鉄化した頭がゴーリキーを吹き飛ばしていた。
『な、なんと効果抜群のかくとう技をまともに受けたというのに、クチートにはダメージらしいものがありません!!』
「……いくらてっぺきを使ったとはいえ、あの防御力は凄いものだな」
今の光景は、アヤトも驚きを隠せない。
それにあのアイアンヘッドのパワー、小さな身体のどこにそんなパワーがあるのか、不思議に思える。
「ナッシー、さいみんじゅつ!!」
「ナッ、シー……」
ナッシーの目が怪しく光る。
「クチ……」
それを見たクチートが、そのままフィールドに倒れ込んでしまった。
『ナッシーのさいみんじゅつにより、クチートねむり状態になってしまったー!!』
「今だゴーリキー、かわらわり!!」
「リッキー!!」
クチートに迫るゴーリキー、しかしそんな事はカレン達が許さない。
「アイアンテール!!」
「チュゥゥゥ……ピッカァッ!!」
跳躍し、ゴーリキーの脳天に鋼鉄化した尻尾を叩き込むピカチュウ。
「リ、キ……」
まともに受けたからか、それとも先程のアイアンヘッドのダメージが蓄積していたからか、ヨロヨロと後ろに下がるゴーリキー。
「今よピカチュウ、ボルテッカー!!」
「ピカッ! ピカピカピカピカピカピカ……!」
走りながら、凄まじい電気エネルギーをその身に纏っていくピカチュウ。
「ナッシー、リーフストーム!!」
「ナッ、シー!!」
しかし相手とて負けてない、迫るピカチュウにリーフストームを叩き込もうとするが。
「クチート、ねごとだ!!」
「クチ……」
グリードがそう指示を出した瞬間、クチートは眠ったまま起き上がり……角が変化した大口からなんとかえんほうしゃを吐き出した。
「なっ!?」
かえんほうしゃはリーフストームとぶつかり合い、さすがに相殺はできなかったがかなり威力を削ぐ事ができ、ボルテッカー状態のピカチュウにはたいしたダメージにはならず。
「ピカピカピカピカピカピカ……ピッカッ!!」
ズドンッ、というまるで大砲じみた鈍い音を響かせながら、ふらついているゴーリキーを一番後ろの壁に容赦なく叩きつける!!!
悲鳴を上げる間もなく、ゴーリキーは壁の中に沈んでいった……。
「ゴーリキー戦闘不能、クチート・ピカチュウの勝ち!!」
『ピカチュウのボルテッカー炸裂ー!! しかしクチートの見事なフォローも、素晴らしいものでした!!』
「……ねごとを覚えさせてたのか」
まだクチートは寝ているが、これで戦力外という事にはなり得ない。
(やはり強いな……まだ手持ちに加えて日が浅いというのに、まったくたいした奴だ)
少し羨ましそうに、けれどライバルをしっかりと賞賛するアヤト。
四天王席でも、アリア達が少し驚いたような声を出していた。
「ふぇ〜、グリードってば強いね」
「それに、あのカレンというパートナーもなかなかね。これはいいコンビよ」
「…………」
グリードが褒められるのは嬉しい、しかし……カレンといいコンビなどと言われると、サクラとしては微妙な所だ。
なので、サクラは嬉しさと不機嫌さを混ぜたような複雑すぎる表情を浮かべていたのだった。
「………クチ?」
クチートが目を覚まし、ふぁぁ、と呑気に欠伸を見せる。
「クチート、まだバトルは終わってないぞー」
「クチ……」
グリードに言われ、慌てて表情を引き締めるクチート、しかし……残念だがもう勝負は決まったようなものだ。
相手は相方をやられ戦意喪失、対するこちらのダメージはピカチュウがボルテッカーを放った時に受けた反動ダメージのみ。
だが、だからといって最後までバトルを続けるのがトレーナーだ、故にグリード達は次なる指示を出し……。
「クチート、ラスターカノン!!」
「クチク、チーッ!!」
「ピカチュウ、かみなりよ!!」
「ピィィカチュゥゥゥッ!!!」
この勝負の幕を、呆気なく降ろしたのだった。
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「――あたし達は上級生が相手じゃなかったから、楽だったわね」
「かもな。けど油断はできなかったさ」
試合を終え、グリード達は選手控え室からみんなが居る観客席へと歩を進めていた。
「これで全員が二回戦に出場か……次の相手は誰だろうな?」
「タージャ?」
さあ、とばかりに肩を竦めながら、ツタージャはグリードの足元でちょこちょこと歩いている。
そんな彼の後ろ姿を見ながら、カレンは目を細めていた。
(まだトレーナーになって半年も経ってない、それなのにこの実力……本当に、凄い才能を持っていたのね……)
何よりも、彼が凄まじい努力を重ねたからというのもあるが、やはり才能の大きさというのを思い知らされる。
それこそ……嫉妬してしまうくらいに。
もし、自分が彼のような才能と努力する根性、そして……強い心があれば、変われたのだろうか。
あの時、もし彼が居てくれたら……。
(………馬鹿じゃない、本当に馬鹿よ)
自分の愚かさ加減に腹が立つ。
あり得もしない「もし」に縋るなど、無意味で無駄な行為だ。
過去は変わらない、起きた事は覆せないのだから……。
「あっ、アオイ!」
「っ」
無意識に、カレンの身体が強張る。
そんな彼女の態度に気づかぬまま、グリードはアオイの姿を見かけ声を掛けた。
「…………」
こちらに振り向き、グリードの姿を確認した後、忌々しげに眉を潜めるアオイ。
そんな事には一切構わずに、グリードは尚もアオイに話しかけた。
「お前も、一回戦突破したのか?」
「……お前に言う意味はない」
とりつく島もなく、アオイはそう吐き捨てその場から去ろうとするが。
「アオイ、もし当たったら正々堂々バトルしようぜ!!」
グリードは、相も変わらず明るい口調でアオイにそう言った。
その屈託のない言葉が、アオイの神経を逆撫でしている事も知らずに……。
「…………」
立ち止まるアオイ、そしてもう一度グリードを見るが。
「っ、アオイ……?」
おもわず、少し恐がってしまうくらい、彼女の表情は冷たくグリードは首を傾げる。
「……お前は、そうやってわたしを苛立たせる」
「えっ……?」
「正々堂々、ポケモンとの絆……くだらない、何の価値もないものを振りかざしてトレーナー気取りで居る貴様は、本当に腹が立つ………!」
静かに、けれど聞こえるようにはっきりとアオイはグリードの顔を見てそう言った。
「っ、アオイ、そんな言い方………!」
さすがに、今のは言葉が過ぎると反論しようとするカレンだか。
「でも、これが俺なりに見つけたトレーナーとしての答えだから、変えられないんだ」
グリードの、少し申し訳なさそうな声により、反論は中断させられた。
……どうして、彼は怒らないのだろう。
自分が歩んできた道を、ポケモン達の絆を馬鹿にされれば、彼はいつだって本気で怒っていた。
けれど、彼がアオイに向けている表情は――少しの憐れみと、悲しみ。
「はっ、トレーナーとしての答えだと? 馬鹿な事を言う、ポケモンには二通りの存在しかいない、使えるポケモンと使えないポケモンだ。
使えないポケモンなど、必要ない」
「…………」
挑発するアオイ、しかしグリードは怒りもせずに先程と同じ表情を彼女に向ける。
「………貴様、その目はなんだ?」
何故か、その瞳で見つめられると、アオイは言いようのない不快感に襲われてしまう。
何故、彼は自分に対して憐れみの視線を向けているのか。
その原因がわからず、アオイの苛立ちは更に増していく。
「……アオイにはアオイの育て方がある、だからいちいち文句は言えないけど……そんな考え方、悲しいだけだぜ?」
「っ、貴様に……貴様に何がわかる!!」
激昂するアオイ、それはまるで感情を爆発させた子供のように……。
「弱いトレーナーは生き残れない!! 強いトレーナーだけが生き残れるんだ!! 貴様のような……貴様のような奴に、わたしの………!」
そこまで言いかけ、アオイはハッとしたような表情を見せ、こちらを睨んでから逃げるようにその場を去っていった。
「……タジャ」
不機嫌全開の表情を見せるツタージャ、そんな彼女にグリードは頭を撫でて落ち着かせてやる。
……カレンとアオイの間には、何かあった。
けど、グリードはそんな事を訊くほど無神経な男ではない。
とりあえず、今はみんなの所に戻るとしようと歩を再び進める。
「カレン、行くぞー」
「………うん」
俯きがち、目に見えて元気がないカレンは、アオイに会ったせいでこんな事になってしまったのだろう。
訊きたい衝動に駆られたが、ここは我慢だとグリードは自分に言い聞かせたのだった……。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクホーク】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・リーンフォースブレード ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし ・じこさいせい
・リーフストーム ・ブレイブバード ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト ・アクアリング
・エナジーボール ・かげぶんしん ・アクアテール
・はかいこうせん ・みずのはどう
【オノンド】♂ 【コジョンド】♀ 【グライオン】♂
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり ・シザークロス
・シャドークロー ・はっけい ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり ・とびひざげり ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー ・はどうだん ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん ・ギガインパクト
・あなをほる ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう ・ストーンエッジ
・きあいパンチ
【クチート】♀ 【ゴチム】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・てっぺき ・なし
・アイアンヘッド
・かえんほうしゃ
・ねごと
・ラスターカノン