さて、どんな1日になるのかしらね。
「――みんな、今日はゆっくりしような?」
『はーい!!』
グリードの言葉に、全員が元気よく返事を返す。
まだタッグバトル大会は終わってないけど、今日はお休みだ。
「二回戦も全員突破できたし……この調子で頑張ろうな!!」
〈大丈夫だよグリード、僕達が居るんだから〉
〈そうだよ、クチートに任せておけば大丈夫大丈夫!〉
ぽんと胸を叩くクチート、ムクホークも心配させないようにそう言ってるけど……あたし達の言葉は、グリードには届かない。
あーあ、フィルみたいにグリードがあたし達の言葉が理解できれば、嬉しいのに……。
と、ドアをノックする音が部屋に響いた。
「はーい」
「入るぞ、グリード」
そう言いながら部屋に入ってきたのは、グリードのライバルのアヤト。
って、どうしてサーナイトまで居るのよ!!
「むっ……」
あたしの姿を見て、サーナイトは目を細めた。
睨み合うあたし達、きっと火花が散ってると思う。
〈ああ、また始まったよ……〉とか言ってる声が聞こえたけど、今は無視だ。
〈……何でボールの中に居ないのかしら?〉
〈アヤトがグリードに会うから、頼んでボールから出してもらったの〉
〈ふぅん……というか、あんたアヤトのポケモンなのにグリードが好きとか、おかしくない?〉
〈確かにアヤトは私の主人よ、でも私だって女の子なんだから〉
〈なーにが女の子よ。言っておくけど、グリードはあたしのなんだから、手を出さないでよ〉
〈ツタージャ、わたしもグリード好きなのに……〉
〈ミロカロス、あんたは黙ってなさい〉
一喝すると、ミロカロスは小さくなった。
ムクホーク達からも〈独り占めはズルいー〉なんて声が聞こえるが、全部無視よ無視。
……睨み合いが、さっきより重くなった。
このままバトルになる、あたしもサーナイトもそう思っていたのだが。
〈えーい♪〉
「わっ……」
《あーっ!!?》
クチートが、グリードの膝の上に……。
って、お腹に頬をすり寄せるなぁぁぁっ!!
「おいおいクチート、甘えん坊だな」
とは言いつつも、グリードは優しくクチートの頭を撫でている。
あぁぁ、な、なんて羨ましい……じゃない!!
〈ちょっとクチート、あんたどさくさ紛れに何をして――〉
〈クチートズルいよー、わたしもー〉
ってミロカロス、あんたまで何してんの!!
まるで巻き付くようにグリードにすり寄るミロカロス、くぅ……ず、ズルい。
挙げ句の果てには、他のメンバーまでグリードにすり寄ってるし……。
「あはは、ミロカロスまで急にどうしたんだよ?」
〈うぅぅ………!〉
何よ何よグリードってば、あたしがサーナイトの毒牙から守ってあげようと頑張ってるのに!!
〈ちょっと、毒牙って失礼なんじゃない?〉
やかまひい、心を読まないでよ。
……ふつふつと、あたしの中で怒りが沸き上がってくる。
くぅぅぅ……もう、我慢の限界よ!!
堪忍袋の尾が切れたわ、覚悟しなさい!!
〈ちょ、ちょっとツタージャ何を――〉
またあたしの心を読んだのか、サーナイトが止めようとするけど、もう遅い。
〈グリードの……〉
「えっ……?」
〈バカーーーッ!!!〉
たいして広くもない部屋で、あたしはリーフストームを発動させる。
心を読んだサーナイト以外、反応できるはずもなく。
次の瞬間、グリードの部屋で爆発が起こったのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
〈――もう、ひどいと思わない!?〉
一騒動の後、あたしはそのまま部屋を飛び出し、ティアの所に逃げてきた。
初めはあたしの剣幕に驚いてたティアだけど、今はいつものぽやんとした笑みを見せながら、黙ってあたしの話を聞いていた。
〈そりゃあ、グリードはポケモンみんなを大事にしてるのはわかるけど、だからってライバルのサーナイトにまでデレデレするなんて……〉
〈妬きもち?〉
穏やかな声色ではっきりと一言で結論づけるティア。
いや、まあ……そうだけど、あっさり認めるのは悔しいというか……。
だ、だって、あたしばっかりこんな風に振り回されるなんて、納得できないじゃない!!
〈グリードは、誰にだって愛情を注いでるよ〉
〈それって、単に手が早いってことじゃない〉
〈違うよ。グリードの愛情は“親愛”だもん、私達の愛とは違う〉
〈………わかってるわよ、それくらい〉
グリードは、たとえ相手が誰だって平等に接してる、向ける好意の深さも一緒だ。
それがグリードの魅力だし、あいつがそういう人間じゃなかったらとっくの昔にあたしはあいつを捨ててた。
でも……だからって、感情が納得しないのは……あたしが子供だから?
〈……こんにちは、サクラ、ソラネ、カレン〉
〈っ〉
思考を巡らせていたら、いつの間にか後ろにはカレン達の姿が。
「おや、ツタージャだけで居るなんて珍しい事もあるもんだね。グリードはどうしたんだい?」
〈…………別に〉
なんとなく気まずくなって、あたしはそっぽを向いた。
すると、ティアは人間形態に変わりどこから出したのかスケッチブックを手に取りなにやら文字を書き始めた。
「おや……グリードと喧嘩したのか」
ちょ、何普通にバラしてるのよティア!!
キッと睨むが、ティアは素知らぬ顔でまた何か文字を書きサクラ達に見せた。
「妬きもち……なる程、グリードとツタージャが喧嘩をする理由はこれしかないからね」
こらーっ!!!
くぅ、なんて羞恥プレイを……。
顔が熱くなっているのを必死に我慢しながら、あたしはみんなから視線を逸らす。
「恥ずかしがる必要はないよツタージャ、むしろ僕としてはやはり嬉しいと思う。
人間を信じていなかった君が、心の底から人間を信用してくれたのは、やはり嬉しいからね」
あたしを優しく抱きかかえ、笑顔を浮かべてサクラは言う。
……あたしは人間が嫌いだ、別にあたし自身が何かをされたわけじゃないんだけど、平気で誰かを陥れたり傷つけたりする低俗な所が、本当に大嫌い。
でも……グリードは違うってわかったから、今は昔ほど人間を嫌いとは思ってはいない。
と、ティアはスケッチブックにある言葉を書きあたし達に見せる。
『グリードは、他人を変える力がある』
その言葉に、あたしだけでなくその場に居た全員が納得したような頷きを返した。
「……私は、グリードくんのおかげで強くなれた、コンテストに出られるようにもなった」
「僕は……そうだね、やはり彼から学んだ事は多かったよ。
人とポケモンの在り方を、再認識する事ができた」
あたしも、グリードのおかげで人間をある程度信じれるようになった。
「…………」
しかし、カレンの表情はあまり良いとは言えず、あたし達は揃って首を傾げた。
「カレン、君はグリードと出会って何か変わった事はなかったのかい?」
「………正直、なかったとは言えないけど……」
言葉を選ぶように、たどたどしく答えを返すカレン。
きっと、まだソラネ達と違って自分が変われた所を理解していないのだろう。いや……理解してるけど、目を逸らしているだけかもしれない。
「でも、うん……アイツのおかげで、変われたというか……変われると思う。
もう一度、あの子に真っ向から向かい合える力を貰ったから」
「………あの子?」
はて、と首を傾げるソラネ。でもあたしもカレンが言う「あの子」とは誰なのかわからず、同じ反応を彼女に向けた。
そんな中、サクラは理解したかのように口を開く。
「……アオイ、という少女と、かな?」
「………………うん」
長い間、迷うような視線を見せていたけど、カレンは頷きを返す。
……やっぱり、カレンとアオイとは何かあったようだ。おそらく……あたし達が彼女に出会う前の時に。
「アイツと一緒なら、きっと……あの子とちゃんと向き合えると思う。
なんていうのかな……普段は全然頼りないんだけど、いざという時は役に立つというか……」
赤い顔してぶっきらぼうに言い訳じみた事を言うカレンに、全員が苦笑する。
頼りない、なんて思ってないくせに。
「…………」
また文字をスケッチブックに書き、あたし達に見せてくるティア。
『みんな、グリードが大好きなんだね』
『…………』
その言葉に、ソラネは赤い顔を隠すように俯き、サクラはわざとらしく咳払いをし、カレンは腕を組んで目を閉じる。
……その反応で、互いにバレている事がわからないのだろうか。
精一杯の照れ隠しなのだろう、3人の反応を見たティアは、優しく微笑んでいた。
「……でも、あのバカはちっとも気づかないのよね。
あたし、時々アイツがわざと気づいてないじゃないか、そう思ったりするの」
「あっ、私もそう思った事あるよ。グリードくんって鈍感を通り越して病気なんじゃないかな?」
「ソラネも結構言うね、でも……確かにその意見には賛成だ。
いくら彼が今まで女性との交際もなく、色恋沙汰に詳しくないとしてもあれは酷い。
僕や他の子達の気持ちなど、微塵も読み取っていないというのにも、また腹が立つね」
何やら、今度はカレン達による愚痴大会が始まってしまった。
よほど鬱憤が溜まっていたというか、まあどんなにアプローチを試みても効果がないんじゃ、3人の反応というか愚痴もレベルアップしてやかましさ倍増だ。
まっ、カレン達の言ってる事に否定はできないから、あたしもティアも止めに入らない。
「しかも、これはあたしの勘なんだけど……イッシュでもフラグを立てた可能性があるのよ」
「ええっ!?」
「これはこれは……腹立たしさ倍増だね」
穏やかに笑っているけど、全員目が笑っていないのは断じて気のせいなんかじゃない。
ああ……なんか負のオーラが見え隠れしてきた。
モテるのも大変よね、あの人にはこれっぽっちも自覚はないけど。
「…………」
『ツタージャは、グリードと結婚したい?』
いきなり何!!?
そんな事をスケッチブックに書くな!!
『でも、私はグリードとなら結婚というのをしてみたいなー』
〈なっ!?〉
この子、意味がわかって言ってるのかしら……。
「ち、ちょっとティア、結婚って……」
ティアの言葉に、サクラ達の顔に赤みが走る。
『だって、大好きな人とずっと一緒に居るには、結婚をするのが一番なんでしょ?』
やっぱりわかってないわこの子、というか誰が吹き込んだのよ!!
みんなしてティアに説明しようか迷ってる、こういう時の子供は恐いわよね。
「あー……ティア、その……結婚というのはね、そう簡単にできるものじゃないんだよ」
いつも通りの口調で説明しようとするサクラ、けどやはり顔は真っ赤だ。
まあ、いくら食えない性格のサクラでも、これを説明するというのはなかなかキツい。
『じゃあ、結婚ってどうすればできるの?』
「うっ……」
サクラの心中を理解する事などできないティアは、容赦なくスケッチブックに答えにくい質問を書いて見せてくる。
あーあ、サクラってばすっかり狼狽しちゃって。
カレンとソラネも助けようとするのだが、矛先が自分に向けられるのが困るのか、積極的に動こうとはしない。
薄情と言うなかれ、あたしだってさすがに説明はキツい、詳しく話せと言われてもできない。
あーうー、とサクラが珍しく狼狽を続けていると。
「ツタージャ、ここに居たのか」
背後から、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「………♪」
その姿を確認した瞬間、ティアは立ち上がりすぐさま彼――グリードに抱きついた。
「カレン達もここに来てたのか」
『…………』
「? どうした? 顔が赤いけど……」
「………いや、助かったよグリード。本当に助かった」
「………おぅ?」
いきなりの感謝に、グリードは首を傾げる。
でも、彼の登場でティアは質問の事を忘れてくれたみたいだし、本当に助かったのは事実だ。
……顔、あたしも熱いなぁ。
「さーてツタージャ、ちゃんと帰ってアヤト達に謝らないとな」
うっ……やっぱり?
「まっ、全然怒ってはいないんだけど、こういう事はキチンとしないと」
あたしを抱きかかえるグリード。
……あなたは、怒ってないの?
そう訪ねるように視線を向けると、彼はいつもの穏やかな笑みを見せて口を開く。
「俺は怒ってないぞ、もちろんムクホーク達もな。部屋も片づいたから帰ろう?」
〈……………〉
ぎゅっと、グリードに抱きついた。
嬉しくて、ありがとうの気持ちを伝えたくて。
そんなあたしを、グリードは優しく抱きしめ返してくれた。
……ああ、やっぱりあたしはこの人間が好きなのだ。
大事にされてるのがわかるから……だから、あたしは全力でそれに応えよう。
心の中で新たな決意を抱きつつ、あたしは暫し彼の胸の中に顔を埋めていた。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクホーク】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・リーンフォースブレード ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし ・じこさいせい
・リーフストーム ・ブレイブバード ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト ・アクアリング
・エナジーボール ・かげぶんしん ・アクアテール
・はかいこうせん ・みずのはどう
【オノンド】♂ 【コジョンド】♀ 【グライオン】♂
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり ・シザークロス
・シャドークロー ・はっけい ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり ・とびひざげり ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー ・はどうだん ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん ・ギガインパクト
・あなをほる ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう ・ストーンエッジ
・きあいパンチ
【クチート】♀ 【ゴチム】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・てっぺき ・なし
・アイアンヘッド
・かえんほうしゃ
・ねごと
・ラスターカノン