グリードくんのイルミナ学園奮闘日誌【完結】   作:マイマイ

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今日も一人前のポケモントレーナーになるために、バトルだけじゃなくて勉強も大事だよな!

けど……勉強よりバトルがしたいな〜。


第6話 〜人見知りコーディネーター、ソラネ〜

―――休み時間

 

「…………」

 

授業で聞いた内容を確認するため、ノートに目を走らせる。

ちなみに今日聞いた内容は、ポケモンのタイプの有効性と欠点。

バトルをする上なら必要な項目なので、しっかり勉強を……。

 

「アヤト〜、逃げないでくださいよー」

「逃げるに決まっているだろ、その手に持ったクッキーは何だ!」

「何って、アヤトの為に私が丹誠込めて念を入れた愛のクッキーに決まってるじゃないですか」

「……そういうのは、呪いというんだ」

「大丈夫ですよ。食べても死ぬ訳じゃありませんから、ちょっと眠くなるだけです」

「……頼むから、犯罪者の仲間入りになる前にやめてくれ」

「…………」

 

勉強を、しようと思っているのに……さっきから俺の周りをグルグル回るアヤト達のせいで、全然集中できない。

というかお前等、わざわざ俺の机の周りを回るのはわざとか?

いい加減にしろー、と叫んでやろうと席を立つ。

だが――それは教室に入ってきた1人の少女によって阻まれてしまう。

 

「グリード、居るかな?」

「………サクラ」

 

俺と視線が合うと、サクラは少し安心したような表情を浮かべ、こちらへとやってくる。

……周りの連中は、見事に固まっている。

まあ当然か、サクラは四天王なんて呼ばれてる学園の有名人だからな。

モモカもアヤトを追いかけ回さずに、こちらを見て固まっていた。

ただ、アヤトだけは驚きつつも……面白いと言わんばかりの笑みをこちらに向けていたので、ちょっと首を傾げる。

 

「グリード、ちょっと僕に付き合ってくれないかな?」

「あー……いいぞ」

 

次の授業が何だったのか思い出し、サクラの問いに頷きを返す。

 

「それじゃあ、ちょっと2人になれる場所に移動しよう。ここじゃ話せる内容じゃないから」

「わかった。アヤト、モモカ。わりぃけど今日は帰るわ」

 

鞄に荷物を詰め込み、サクラと一緒に教室を後にする。

――瞬間、阿鼻叫喚の叫び声が教室の中から聞こえてきた気がした

 

「……どうかしたのかな?」

「………さあな。それよかサクラ、2人で話したいなら俺の部屋でも大丈夫か?」

「構わないよ。だけど……君も意外と大胆だね」

「? 何が?」

 

聞き返すと、なんでもないとイタズラっぽい笑みを返すだけで、詳しくは言ってこなかった。

よくわからん……。

 

 

………。

 

 

「――僕、男の人の部屋に入るのは初めてだけど、意外と綺麗にしてるんだね」

「意外とは余計だ。それよか紅茶でいいか?」

「いいよ、そこまでしなくても……」

「お前はお客様だからな、できる限りはもてなししないと」

 

言いながら、カップに紅茶を注いでいく。

もちろん安物ではなく、ちゃんとした茶葉から採った紅茶。

 

「……意外な特技だね」

「お前もおとなしそうな顔して結構言うよな、まあ自分でも意外なものだって自覚はあるけど」

「ごめんね。……うん、いい匂いだ」

 

香りを楽しみ、紅茶を口に含むサクラ。

その一手一手が優雅だから、コイツもしかしてお嬢様なのかな?

あっ、でもサクラの親はこの学園の理事長で街長でもあるから、お嬢様って言っても不思議じゃないか。

 

「それでサクラ、話ってなんだよ?」

「うん、その……実は君にお願いがあるんだ」

「お願い?」

「……僕の友達に、ポケモンコーディネーターのソラネって女の子が居るんだけど……その子に会ってほしいんだ」

「ポケモンコーディネーター……」

 

確か、ポケモンコンテストに出場する人の総称だったよな。

俺がツタージャ達に食べさせてるポフィンというお菓子も、コーディネーターにとって必需品だ。

 

「別に会うのは構わないけど、どうしてそのソラネって女の子に俺を会わせたいんだ?」

「…………」

 

そう訊くと、サクラは顔を俯かせ黙ってしまう。

……少しだけ、場の空気が重くなった気がした。

 

「――サクラ、そのソラネって子……なんか訳ありなのか?」

「………どうして、そう思うんだい?」

「お前の顔に、少し影がよぎったから」

 

そう告げると、サクラはなんともいえない表情を浮かべた。

すなわち、図星という事か。

 

「……グリードは、オッドアイというのを知っているかい?」

「オッドアイ?」

「虹彩異色症という名称で、簡単に言えば左右の瞳の色が違うんだ」

「へぇ……そんなのがあるんだ」

 

けど、そのオッドアイとやらが一体……。

 

「――もしかして」

「そうだよ。ソラネもオッドアイなんだ」

「…………」

 

どうやら、本当に訳ありだったようだ。

 

「彼女はオッドアイのせいで周りから中傷されてきた、僕が彼女と出会った時は……本当に心を閉ざしていたんだ……」

 

辛そうな表情で、サクラはソラネという少女の過去を話す。

……対する俺は、開いた口が塞がらなくなった。

 

「なあサクラ、何でオッドアイだからって虐められるんだ?」

「……そうだね。グリードみたいな人には信じられないだろうけど、人間は自分に無いものに対して恐怖したり妬んだりするものなんだ。

 ―――ソラネも、その被害者の1人なんだよ」

「…………」

 

またも、サクラの言葉であんぐりと口を開けてしまった。

 

「……意味が分からん」

 

左右の瞳の色が違うからって、どうして虐められる原因になるのか理解できない。

そんな俺に、サクラは何故か嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

「……サクラ、どうかしたか?」

「うぅん。ただ……やっぱり君をソラネに会わせたいと思っただけだよ」

「そういえば、何でそんなに俺をその子に会わせたいんだ?」

「ふふっ、それは秘密だよ」

 

含みのある物言い、けれど不思議とこれ以上訊く事ができない。

……まあ、会う事に不満はないから別にいいんだけど。

 

「それじゃあ、早速行くとしようか。実はもうすぐ待ち合わせの時間になりそうなんだ」

「おいおい、もし俺が居なかったり会う事を拒んだりしたらどうしてたんだよ?」

「君が教室に居なければ捜せばいいし、君はお人好しだから断るとは思わなかったよ」

「…………」

 

屈託のない笑みで、そう言われてしまった。

……やっぱり、サクラは結構したたかな気がする。

 

「何か言った?」

「いや、別に……」

 

 

………。

 

 

ガラス張りの窓の向こうには、花や緑が広がっており景色としては最高だ。

その周りにはテーブルとイス、生徒達は各々席に座りお茶を楽しんでいた。

ここは学園の中にあるカフェテリア、生徒達の憩いの場である。

 

「ていうか、学園の中にこんな所があるなんて驚いたぜ」

「グリード、学園の中を廻った事ないの?」

「ああ、別に興味なかったからな。それよかそのソラネって子は……」

「――居たよ」

 

サクラの視線の先を見ると、1人の少女が少しだけソワソワした様子で座っていた。

 

「ソラネ」

 

後ろからサクラが声を掛ける。

すると、少女がこちらへと視線を向け。

 

「ひゃあ!?」

いきなり俺を見て、悲鳴を上げてきた。

えー……何かショックだ。

 

「ソラネ、彼はグリード。僕の…………友達、になるのかな?」

「溜めた上に何故疑問系になる?」

 

さぁ、と軽く返されてしまったので、ジト目で睨むがサクラは気にした様子もなくニコニコと笑みを浮かべるのみ。

 

「グリード、この子はカザミヤソラネ。僕の友達でポケモンコーディネーターだよ」

「よろしくな」

「あ、ぅ、えっと……その……」

 

おもいっきり視線を逸らされてしまう。

うーむ、ここに来る途中でソラネは対人恐怖症だと聞いたけど……予想以上だ。

 

「あ、あぅ……」

「ソラネ、彼は大丈夫だよ」

「う、うん……」

「……あまり無理させない方がいいんじゃないか?」

「確かに無理させるのはよくないよ、でも……このままじゃいけない。

 ちゃんと他人と触れ合えるようにならないと、困るのはソラネなんだから」

「そ、そうだよねサクラちゃん……」

(うーん……)

 

頑張ろうとしてるのはわかるけど、どうにも固いよな……。

 

「なぁ」

「ひぅ!?」

 

ひぅって……。

 

「……とりあえず、深呼吸してみろよ」

「ふぇ……?」

「深呼吸だよ。馬鹿みたいかもしんないけど緊張してるなら、深呼吸してみるといいぞ」

「は、はい…すー…はー……すー…はー……」

 

言われた通り、深呼吸を繰り返すソラネ。

すると、まだおどおどしてるけど少しは落ち着いてくれたみたいだ。

 

「どうだ?」

「は、はい……少しは落ち着きました」

「そりゃあよかった、深呼吸っていうのも結構馬鹿にできないだろ?」

「は、はい……」

 

……うーむ、視線は逸らされたままか。

けど仕方ないよな、対人恐怖症なんだから。

 

「………あれ?」

「グリード、どうかしたの?」

「ああ、いや……オッドアイって聞いてたけど、瞳の色が同じだなって」

「………っ」

 

オッドアイ、その単語が出た瞬間ソラネの身体がびくりと震えた。

やべっ……軽率な発言だったか。

 

「ソラネは今カラーコンタクトをしてるんだよ。

 ソラネ、コンタクトを外してくれないかい?」

「ええっ!?」

「おいおいサクラ、お前何を……」

 

オッドアイのせいで虐められていた、つまりそれを見せるというのは彼女にとってトラウマに等しい行為だ。

それなのにサクラは俺に見せろなんて……何考えてんだ?

 

「大丈夫。僕と彼を信じてほしい」

「だ、だけど……」

「彼は絶対に君を傷つけたりしない、僕が保証するよ」

 

必死に説得するサクラだが、当然の如くソラネは拒否する。

 

「なあサクラ……」

「グリードはちょっと黙ってて」

 

……怒られた。

何なんだよー、と言ってやりたかったが、また怒られるのは嫌なので黙っていよう……。

―――そして、暫しの説得後

 

「う、うん……わかったよサクラちゃん」

ソラネ、見事に懐柔されました。

 

この子が単純なのか、それともサクラが口達者なのか……。

……後者だな、絶対。

 

「じ、じゃあ……失礼します」

 

おずおずと、右の瞳からカラーコンタクトを外すソラネ。

そして顔を上げ――それを見て、俺はおもわず感嘆のため息を漏らした。

 

「………綺麗だな」

「ふえっ!?」

 

そう、綺麗なのだ。

左は黒、そして右は翡翠色。

ふわふわした水色の髪ともよく合っており、俺は正直な感想を口にする。

 

「何でカラーコンタクトなんかで隠すんだよ、凄く勿体ないと思うぜ?」

「…………」

「……えっと、俺の顔に何か付いてるのか?」

 

ポカンとした表情を向けられ、苦笑を浮かべてしまう。

しかし我に返ったのか、はっとした表情に変わるソラネは、顔を真っ赤にして否定の言葉を口にした。

 

「ち、違います! ごめんなさい!!」

「いや、別に謝る必要なんかねえけど……」

「ほら、だから言ったじゃないか。彼なら大丈夫だって」

 

勝ち誇った顔をしているサクラ、その通りではあるんだけどちょっと腹立つ。

 

「で、でも……気持ち悪いとか思わないんですか?」

「? 何が?」

「そ、その……この瞳、がです……」

「………………」

「………あ、あの。どうして黙ってるんですか?」

「いや……だって、意味がわかんねえし」

「えっ?」

「何でその瞳が気持ち悪いと思うんだ? こんなに綺麗なのに、だから俺にはその質問を理解する事はできねえよ」

 

だって、そんなもの明確な理由にならないではないか。

左右の瞳の色が違うから、だから何だって話である。

むしろ、こんなに綺麗なんだから絶対得だよ、俺からしたら。

 

「…………」

 

またも、ポカンとした表情を向けられてしまった。

……俺、さっきから変な事言ってるのかな?

 

「ソラネ、彼はこういう人なんだよ。自分の心のまま動き、余計な概念は抱かずに他者に対して好意的に接する。

 ―――今時珍しいと思わないかい?」

「サクラ、それは褒めてるのか? それとも貶してんのか?」

「どっちも、と言ったら君はどうする?」

 

むむっ、意外な切り返しが。

やめよう、このまま続けても俺が不利になるだけだ。

 

「なぁソラネ、お前のポケモンを見せてくれないか?」

逃げたね、というサクラの呟きは無視しつつ、ソラネに視線を向ける。

 

「え、えっと……でも、あの……」

「あっ、もしかして嫌か? なら別に」

「そ、そういうわけじゃないです。だけど……私のポケモンは、見ても面白くないというか……」

「そんな事ないさ、それに俺はソラネのポケモンを見てみたい。

 もしお前がいいなら、見せてくれないか?」

「あ、えっと……その、なら……みんな、出てきて!」

 

おずおずとモンスターボールを3つ取り出し、上に投げる。

そして、出てきたポケモン達を見て俺は瞳を輝かせてしまった。

 

「わぁ……可愛いな、ソラネのポケモン達」

「え、えっと……ブラッキーにワシボシに、ゾロアです……」

 

「ブラッキー!!」

「グオワァッ!!」

「がう!」

 

「へぇ……撫でてもいいか?」

「ど、どうぞ……」

 

では早速とばかりに、ブラッキーの身体を撫でる。

見た目はツルツルしてそうだったけど、意外とフワフワしてるんだな。

ワシボシは……頭固っ、俺のムックルと違って凄く固かった。

そんでもって、ゾロアはどうかな……。

 

「がぶっ!」

「いででででっ!!?」

 

撫でようとしたら、手を噛まれてしまった。

 

「ひゃあ!? ゾロア、ダメだよ!!」

「がうぅ〜……」

「い、いいから……大丈夫だから」

 

左手で駆け寄ろうとしたソラネを制し、そのままゾロアの頭を優しく撫でる。

 

「お前……ご主人を守ろうとしてるんだよな?」

 

まあ、まだまだ弱いのかそれとも手加減してくれているのか、痛いけど我慢できないまでの痛みではないが。

 

「でも大丈夫だ。俺は誓ってお前のご主人を傷つけたりしない。約束するよ、だから……仲良くなろうぜ?」

「うぅ〜……」

 

しかし、ゾロアは厳しい瞳をこちらに向けるのみで、なかなか信じてはくれない。

うーむ、さすがにすぐ心を開いたりは……。

 

「………?」

 

痛みが、消えた?

見ると、ゾロアが俺の手から口を放してくれていた。

そればかりか、自分が噛みついた所をペロペロと舐めている。

 

「くぅー……」

「ゾロア……」

 

さっきまで睨んでいたのに、今は泣きそうな顔で俺を見上げている。

俺の気持ちが通じてくれたのだろうか、もしそうなら嬉しいな。

 

「ゾロア、気にしなくてもいいよ。これくらい何ともないからな」

抱きかかえ、頭を撫で続ける。

 

「きゅ〜……」

気持ちよさそうに喉を鳴らし、すっかりふにゃふにゃになってしまったゾロア。

……いいなぁ、可愛いなぁゾロア。

 

「……あ、あの。グリードさんは…ブリーダーさんなんですか?」

「いや、違うけど……なんでだ?」

「いえ、ゾロアがこんなに早く懐いてからびっくりして……だから、グリードさんはブリーダーさんなのかなって」

「違うよ。それに別に俺は特別な事なんて何一つしてない。

 ただ仲良くなりたいって気持ちをポケモンに向けてるだけさ」

「わう〜♪」

「わっ、こら、くすぐったいからペロペロはやめろゾロア!」

「………ふふっ」

「おっ、ようやく笑ってくれたな」

「えっ?」

「さっきからずっと俯きがちだったからさ、やっぱり笑った方がいいぞ。綺麗だしな」

「ふぇっ!? き、綺麗って……私なんかが?」

「そうだよ。ってかソラネ以外に誰がいるんだ?」

 

そう告げると、ソラネは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

うーん、まだまだ対人恐怖症は抜けないか。

 

「…………」

「? サクラ、どうかしたか?」

「………いや、なんでもないよ」

 

そう言うサクラだが、なんだか表情がぎこちないというか……怒ってる?

 

――その後、ソラネ達と楽しく会話をした

 

まだぎこちなさは残っているものの、少なくとも俺には心を開いてくれたようだ。

せっかくだからバトルをしたかったんだけど……向こうの都合でそれは叶わなかった。

だから今度バトルをしようという約束をして、とりあえず一件落着したとは思うが……。

暫くの間、サクラの奴が少し不機嫌になっていたのは、何故だろう……。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




【ツタージャ】♀   【ムックル】♂
【使えるわざ】   【使えるわざ】
・つるのムチ    ・たいあたり
・リーフブレード  ・かぜおこし
・たいあたり    ・でんこうせっか
・かげぶんしん
・へびにらみ
・グラスミキサー
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