グリードくんのイルミナ学園奮闘日誌【完結】   作:マイマイ

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カレンとアオイの間に何があったのか。

それを聞くために、俺達はポケモンセンターにへと足を運んだ……。


第72話 〜カレンとアオイの分岐点〜3

「――カレン、話してくれるか?」

 

イルミナ学園にあるポケモンセンター内。

テーブルを囲むように俺達は座り、全員の視線がカレンに向けられる。

 

「ええ、でも……どこから話したらいいのかしら」

一生懸命言葉を選ぼうとするカレンに、俺達は黙って彼女を待つ。

暫くして……彼女はゆっくりと話し始めた。

 

「まずあたしとアオイの関係だけど……あたし達は幼なじみなの」

「ええっ!?」

驚愕の声を上げたのはモモカ、しかし俺達も口には出さないものの驚いていた。

 

「小さい頃から一緒に居て、この学園にも一緒に入ったのよ」

「………一緒に?」

彼女の言葉に、俺達は違和感を感じた。

カレンとアオイは一緒に入学した、その点に関して違和感を感じたわけではなく……。

 

「ちょっと待ってよカレン、一緒に入学したのにどうしてあなたは一年のままなの?」

ルーテシアが、俺が感じた疑問を代弁してくれた。

そう、カレンの言葉が正しければ、2人は二年生になっているはずだ。

それなのに、二年はアオイだけでカレンは一年のまま。

「そんなの、留年したからに決まってるでしょ?」

「留年!?」

再び驚く俺達。

だってそうだろう、カレンみたいな優秀なトレーナーが留年するなんて、思えないからだ。

 

「進級試験に合格できなかったのよ、ただそれだけの話」

そう告げる彼女の口調は、世間話をするかのように軽く。

だから、余計にわからなくなった。

 

「あたしはね、今ではそれなりの実力があるって自負してるけど、入学した時はたいした事はなかったのよ。

 そうね……入学したてのグリードと大差なかったかな?」

「俺と……?」

「そうよ。尤もあたしはアンタ程の成長スピードは備わってなかったから、一年を通してそれなりの実力でしかなかった。

 けどアオイは違ったわ、この子は入学して数ヶ月で一年の中じゃトップクラス、上級生にだって負けないくらい強くなってた」

「へぇ……」

視線を、アオイに向ける。

先程から沈黙を貫き、その瞳は不機嫌さを剥き出しにしていた。

 

「信じられないかもしれないけど、あの時のあたし達は本当に仲良しだったのよ?

 それに、アオイはグリードみたいにポケモン達の事を第一に考えるポケモンバカだった」

「……この人がですか?」

おもいっきり信じられないといった視線をアオイに向けるモモカ。

気持ちはわかるけど、そういう挑発めいた視線はやめてくれ。

 

「……とりあえず、お前達の関係はわかった。

 ではそろそろ本題に入ってくれカレン、お前が留年した理由……コイツが変わった理由。

 ――それがあるから、今のお前達のような状況を生み出してしまったのだろう?」

「…………」

アヤトの言葉に、カレンは黙って頷きを返す。

 

「――この話をするのは、初めてね」

昔を思い出すように、カレンは目を細めた。

でも……その表情は、思い出したくないと訴えているように見えて。

「……大丈夫か?」

気が付いたら、俺はカレンの手に自分の手を添えていた。

 

「………うん、ありがとう」

俺の手を握るカレン、その手が震えている事に気づきながらも……俺は何も言わずに彼女の言葉を待つ。

そして―――

 

 

「あたし、ね……嵌められたの。上級生に」

そんな、俺にとって意味のわからない言葉を、口にした。

 

 

「嵌められた……?」

「――――」

ちょっと、待て。

それは、どういう……。

「みんなは、一年の終わりに進級試験があるのを知ってるわよね?」

「ああ、それに合格できなければ留年……そう聞いている」

「さっきも話したけど、あたしは前に進級試験で落ちてしまった。

 その時の内容はポケモンバトル、あの時のあたしでも充分合格できるようなものだった」

 

――自分の鼓動が煩い

 

まさか、という疑問が浮かんでは消え……身体が震えそうになる。

そんなはずはない、そんな事をするような人間がこの学園に居るなんてありえない。

そう思えば思う程、俺の疑問は確信へと変わっていき遂には。

 

「でも、進級試験の直前に、上級生に無理矢理ポケモンバトルを挑まれて……本番ではみんなまともに戦えないくらい、痛めつけられたわ」

俺の予想が、嫌な形で、当たってしまった……。

 

『なっ!?』

「なんだと!?」

驚くみんな、その中にはアオイの声も混じっていた。

それに対しての疑問はあったけど、今は……。

 

「それは、先生に言わなかったんですか?」

「言わなかったわ。あたしって変な所で負けず嫌いだったし……公にしたくなかったのよ」

「………カレン、どういう事だ?」

今まで沈黙してきたアオイが、少し震えた声でカレンに問うた。

 

「どういう事も何も、言葉通りの意味よ」

「そういう事を訊いてるんじゃない!! 何故、それをわたしに黙っていたのかと、訊いているんだ!!」

バンッとテーブルを叩きながら、アオイはカレンに詰め寄る。

しかし、カレンの口調はあくまで冷静で……優しく、こう告げた。

 

 

「当たり前じゃない。だって……言ったらアンタ、その上級生達を完膚無きまでに叩きのめすでしょ? そんな事になったら、せっかく今までアオイが頑張ってきた努力が、無駄になっちゃうじゃない」

 

 

「…………えっ?」

初めて、アオイの表情が間の抜けたようなものに変わる。

 

そして、俺達はその言葉で理解した。

何故カレンがその問題を公にしなかったのか、どうして親友であり幼なじみであるアオイに話さなかったのか。

それは、アオイの本当の優しさを知っていたから。

そして、アオイを守る為だった。

アオイがカレンから話を聞き、その上級生達に報復をすれば間違いなく問題になる。

そうなれば、最悪アオイはこの学園から居なくなってしまうかもしれない。

だから、カレンは誰にも言わずに真実を内側に閉じ込めた。

彼女の事だ、事情を知っているかもしれない人間全てに、口外しないように口止めをしたのだろう。

彼女らしく……けれど、それはあまりにも悲しい選択だ。

 

「……でも、結果的にそれがアオイを変える原因になっちゃったわね。

 あたしが何も言わずに留年しちゃったから、アンタ……裏切られたように思ってしまったんじゃない?

 バカよね……アンタを守りたかったのに、アンタを変えてしまう結果を生み出すなんて……」

自嘲めいた笑みは、己を責め立てるものか。

 

……それが、カレンとアオイの間にある真実。

何も言わずに留年したカレン、アオイは当然問い詰めたがカレンは彼女を守る為に頑なに真実を話さなかった。

その結果、アオイは一番の親友だと思っていたカレンに裏切られたという誤解を生み、強さだけを求めるようになってしまった。

親友を守る為の嘘が親友を変える、皮肉すぎて笑えない。

 

「………わたしは、何も言わないカレンが憎かった。友情だ絆だと言っていた自分が、恥ずかしくなった。

 でも……信じてあげられなかったわたし自身が、一番恥ずべき存在だ」

「違うわアオイ、あたしが……何も言わなかったから」

「…………」

周りに居るみんなは、何も言えず何を言えばいいのかもわからなくなっている。

もう戻れない所まで来てしまった?

 

――否、そんな事は絶対にありえない

 

2人の友情が、絆がこんな事で全てなかった事になるなんて、絶対に認めない。

だから……俺はお節介だと自分で理解しながらも、2人の間に入っていった。

 

「最初から、やり直せばいいだろ?」

「えっ……?」

「誤解だったんだ、なら……最初からやり直せばいい。

 仲良しだった2人に、戻ればいい。

 もう終わりなんかじゃない、ここから……始めればいいだけだ」

「グリード……」

「……わたしには、その資格はないさ。

 カレンを信じず、今までの自分を否定してきたわたしに……」

「そう思ってるのは、お前だけだ」

「えっ?」

「カレンは……またお前と歩み寄りたいと思ってる。

 あの時みたいに、親友に戻りたいと思っているんだ。なら……後はお前がカレンとどういう関係に戻りたいか、それだけを考えればいい」

 

理屈っぽく考えるからダメなのだ。

仲直りしたいならすればいい、難しく考えず……元の関係に戻りたいと願うだけでいいのだから。

 

「カレン、アオイ。お前達はどういう関係に戻りたい?」

「……元に、戻りたい」

「昔と同じように、仲良くしたいわ」

「だったら、仲直りすればいいさ。

 アオイは誤解してしまった事に対して、カレンは真実を話さなかった事に対して。

 迎えあって、ごめんなさいをすればいいだけさ」

「…………」

 

互いに顔を見合わせてから、ゆっくりと向かい合うカレンとアオイ。

そして、小さな声で。

 

 

―――ごめんなさい、と。

元の親友同士に戻りたいという願いを込めて、同時に頭を下げた。

 

 

……それでいい、たったそれだけでいいんだ。

喧嘩をするのは辛いし痛いけど……仲直りをすれば、そんなものは全て吹き飛ぶ。

「はい、じゃあ次は仲直りの握手だ」

「う、うん……」

「あ、ああ……」

おずおずと、2人は握手を交わす。

 

「よし! これにて一件落着!!」

「って、こんな簡単でいいんですかね?」

「いいんだよ。俺達は子供なんだ、すぐ難しく考えるような大人とは違うんだから!」

「ふっ、そうだな。グリードの言う通りだ」

「だろ? さすがアヤト、わかってるな!」

さて、これでカレンとアオイも仲直りしたし……。

 

「アオイ、これから宜しくな?」

「えっ?」

「俺だって、お前と友達になりたいんだ。だから宜しくの握手!!」

右手を差し出す、するとアオイは少しポカンとした表情を浮かべてから。

「…………う、うん」

何故か頬を赤く染め、少しおっかなびっくりしながら、俺と握手を交わしてくれた。

 

「へへっ、嬉しいな。また友達が増えて」

「……お前は、あんなに酷い事を言ったわたしを怒ってないのか?」

「喉元過ぎればなんとやら、俺は全然気にしてないし仲良くなりたいって気持ちは本物なんだから、気にするなって!」

「あっ……うん、ありがとう」

初めて、俺の前でアオイが笑顔を見せてくれた。

 

「へぇ……何だ、やっぱり笑った方が可愛いし綺麗だよ、アオイ」

「はっ!? あ、う……」

「………?」

どうしたんだろう、顔を真っ赤にして……。

もしかして、褒められる事に耐性が無いとか?

 

「グリード!!」

「ごはっ!?」

脇腹に鈍痛、どうやらカレンに見事なボディーブローを決められてしまったらしい。

な、何で殴られなきゃいけないんだ……。

 

「……グリードさん、ある意味でアヤトより罪作りですよね」

「確かに……っていうか最低ね」

「あ、あはは……」

アヤトラバーズが何か言っているようだが、激痛と戦っている俺には何を言ってるか聞こえない。

 

「…………」

そして、俺と握った右手を大事そうに左手で添え、頬を赤くしたままのアオイにも、気づく事はなかった。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




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【使えるわざ】         【使えるわざ】        【使えるわざ】
・つるのムチ         ・はがねのつばさ     ・たつまき
・リーフブレード       ・かぜおこし         ・アイアンテール
・リーンフォースブレード  ・でんこうせっか      ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん        ・つばさでうつ        ・れいとうビーム
・へびにらみ         ・つばめがえし       ・じこさいせい
・リーフストーム        ・ブレイブバード      ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト        ・アクアリング
・エナジーボール      ・かげぶんしん       ・アクアテール
                ・はかいこうせん      ・みずのはどう


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