さて、今日はどんな1日になるのかね。
「…………」
グリードの部屋の前で佇む少女が1人。
少女の名はアオイ、カレンの幼なじみである。
彼女がここに来た理由、それは……。
「あら、アオイどうしたの?」
「っ!? カ、カレン、どうした!?」
「どうした、はこっちの台詞よ。グリードの部屋の前で何してんの?」
「うっ……」
口ごもるアオイ、別にやましい気持ちはないのだが……なんとなく、カレンの前では答えづらい。
……ただ話がしたいから彼の部屋に来た、そう言ったら間違いなくカレンは怒るからだ。
「……まさか、グリードに会いたくなったとかじゃないわよね?」
「っ!!?」
鋭い、幼なじみであるが故かまるで心を覗いたかのような彼女の言葉に、アオイはあからさまにわかりやすい反応を返してしまった。
そんな彼女に、カレンは暫しジト目で睨みながら……やがてため息をつき口を開いた。
「まあいいわ、こんな所で突っ立ってるのもあれだし」
グリードの部屋のインターホンを鳴らす。
「グリード、いる?」
「カレンかー? 開いてるから入ってもいいぞ」
なら、とばかりにカレンはさっさと部屋の中に入っていく。
アオイも慌てて後に続き彼の部屋へ。
「よぉカレン……って、アオイも一緒だったのか」
「あ、ああ……迷惑なら今すぐ出て行くが」
「気にすんなよ、それよかお茶用意するから適当に座ってくれ」
立ち上がり、台所に向かうグリード。
「……タージャ」
その間に、ツタージャがつるのムチで座布団を用意してくれた。
……不機嫌そうな顔をしてるのは、きっと気のせいだろう。
程なくして、三人分の紅茶を乗せたトレーを持って、グリードが戻ってくる。
「それで、今日はどうしたんだ?」
「別に特別な用はなかったけど……そうね、暇ならポケモンバトルをしてみない?」
「おっ、いいな。バトルを申し込まれたら受けるのがトレーナーだ!!」
立ち上がり、ぐっと拳を作るグリード。
と。
「ま、待て!!」
何となく、置いてけぼりにされてしまったアオイは、慌てて2人の間に割って入った。
「ん?」
「アオイ?」
「あ、いや…その……」
どうしよう、別に何か話す事もなかったというのに呼んでしまった。
どうしよう、とアオイはぐるぐると頭の中で必死に言葉を探し。
「そ、その前にわたしとバトルしろ!!」
気が付いたら、そんな言葉を口走っていた。
「えっ?」
「あ、その……ほ、ほら、前のフルバトルは途中で終わってしまったし、あれがわたしの実力だと思われるのは……その、不本意だからな!!」
何を言ってるんだわたしは、どんどん変な状況になっている事は自覚しているが、今のアオイにそれを修正する力はない。
しかし。
「いいよ。じゃあアオイ、バトルしようぜ!! カレン、別にいいよな?」
「ええ、アオイがそう言うならあたしは一向に構わないわよ」
(うっ……)
アオイは見逃さない、カレンの口元が少し意地悪そうになっているのを。
カレンには全てわかっている、アオイが蚊帳の外で寂しくなったが故に突拍子のない行動に出たのも。
そして、すっかり混乱してこの事態を収拾できない事も。
全部わかっていて、あえて何も言わないのだ。
「……こういう意地悪な所は、変わってないんだな……」
「あらアオイ、何か言ったかしら?」
「何でもない! ほらグリード、さっさとバトルフィールドに行くぞ!」
「お、おぅ……」
顔を赤くして怒鳴るアオイに、グリードはおとなしくついていく。
そんな彼女の反応に、カレンは面白そうに……けれど、嬉しそうに優しげな視線を送っていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「使用ポケモンは3体、交代は自由、先に二勝した方が勝ち。ルールはそれでいいか?」
「ああ、構わない」
バトルフィールドで互いに対峙するグリードとアオイ。
アオイとしてはこの状況になってしまった事は本意ではないのだが……バトルができるとわかってワクワクした表情を浮かべているグリードを見ると、何も言えなくなる。
(まったく……どれだけポケモンバトルが好きなんだかな……)
あの時の真剣な表情とはまるで別人だ。
コロコロと子供みたいに表情を変えるグリードに呆れを抱くが、同時にそれが微笑ましいとも思ってしまう。
見ていて飽きないし、むしろ色々な彼の顔を見てみたいとさえ……。
(っ、な、何を考えているんだわたしは!!
今はバトルに集中するんだ。グ、グリードの顔くらいいつでも……)
いつでも見れるではないか、そう思った瞬間……アオイの顔が更に赤く染まる。
端から見てると、百面相を見ている気分だ。
そんな彼女の心中などわかるはずのないグリードは首を傾げ。
(……はぁ、これは間違いないわね。まだ自覚してないだけこっちが有利だけど……)
カレンは、フィールドの外で2人を見ながらため息をついた。
「アオイー、ポケモン出すぞー?」
「わ、わかってる!!」
「何も怒鳴らなくたっていいのに……。クチート、君に決めた!!」
「クチクチー♪」
ボールから踊るように飛び出すクチート。
「…………」
二、三度深呼吸を繰り返し……アオイの方も、ようやくいつも調子を取り戻した。
これは真剣勝負、本気で戦わなければ意味はないし……なにより、相手に失礼だ。
(……久しぶりだな、わたしがそんな事を考えるのは)
少し前の自分なら、こんな事を考えたりしなかった。
ただ相手を倒す、それだけを考えて……。
(……悪くない、本当に悪くない気分だ)
むしろ清々しさすら感じる、それはアオイが昔に戻れたなによりの証拠。
……それを思い出させてくれたのは、目の前の少年。
ならば、礼として全力で相手をさせてもらう、それがせめてもの恩返しというものだ。
だから――アオイは今までまともに出してこなかった“切り札”を、場に出した。
「――ウルガモス、バトルオン!!」
「なっ……」
「ギュァァァッ!!」
雄叫びを上げ、現れたポケモンは――ウルガモス。
身体から漏れる炎は、まるでウルガモス自身の強大なパワーを物語っているようだ。
「これがわたしの切り札だ、お前とは……全力で戦いたいからな」
「…………」
ウルガモスの登場に、グリードもカレンもおもわず言葉を失った。
まさかこんな強力なポケモンが出てくるとは思わなかった。
だが……グリードは変わらず笑みを見せている。
「クチート、戻れ」
ボールを翳し、クチートを戻す。
「ミロカロス、君に決めた!!」
「――ミロォ!!」
「……やはり変えるか、だがわたしのウルガモスに相性だけで勝てると思うなよ!!」
「勝ってみせるさ!! ミロカロス、ハイドロポンプだ!!」
「ミロォォッ!!」
先制はグリード達から、ウルガモスの弱点であるみずタイプの技を繰り出すミロカロス。
「かえんほうしゃ!!」
「ギュァッ!!」
ウルガモスから放たれる凄まじい炎。
それはハイドロポンプとぶつかり合い、水蒸気を発生させた。
「ミロカロス、上だ!!」
「ミッ!?」
グリードの声を聞き、慌てて上を見上げるミロカロス。
しかし時既に遅く、ウルガモスの巨体がミロカロスへとのしかかってしまう。
「くっ………!」
あの時、わざと水蒸気を発生させウルガモスの姿を消した。
それがわかっていながら対処できなかったのは、やはり悔しい。
「ミロカロス、アクアテールでぶっ飛ばすんだ!!」
「ミ、ミロォ……」
幸いにも尻尾は自由に動かせる、だからアクアテールで脱出を図ろうとするが……。
「飛べ!!」
「ギュァッ!!」
――アクアテールが空を切る
既にウルガモスの身体は空中へと浮かび上がっており。
「オーバーヒート!!」
「ギュァァァッ!!」
隙を見せたミロカロスへと、煉獄の炎を叩き込んだ―――!
「ミ、ミィ……」
「くっ……戻れ、ミロカロス!!」
炎に焼かれるミロカロスをボールに戻す。
(あれがウルガモス……やっぱり強い)
アオイが自らの口で切り札と言うだけはある、相性で有利なミロカロスを一方的に叩き伏せるとは思わなかった。
「グリード、もちろんまだ終わりというわけではないだろう?」
「当たり前だ!! オノンド、君に決めた!!」
「オ、ノォ……」
「……やはりオノンドか、わたしの予想通りだな」
「えっ……?」
その言葉に、グリードは驚愕する。
読まれていた?
自分の戦うポケモンを、完全に?
だとすると、このバトルは完全にアオイが掴んでいるという事になる。
(……アオイ、昔よりずっと強い………!)
昔の彼女に戻った影響なのか、この間グリードとバトルした時とはまるで違う。
そして――これが本来の彼女でもあるのだ。
一年の時から素晴らしい才能に恵まれ、上級生でも彼女に勝てる人間の方が少なかった。
そんな彼女に戻って……ますます実力が上がっている。
(グリード、完全にアオイのペースに呑まれてるわよ……このままじゃ、勝てない……)
「オノンド、りゅうのはどうだ!!」
「オ、ノォッ!!」
胸の前で両手を合わせ、エメラルド色の波導を撃ち出すオノンド。
「かわしてフレアドライブ!!」
「ギュォォォッ!!」
巨体に似つかわしくないスピードで、迫るりゅうのはどうを避け、身体を蒼い炎に包みながらオノンドに突撃するウルガモス。
オノンドは動けない、だが……それはグリードが望んだ状況だ。
「オノンド、ウルガモスを受け止めるんだ!!」
「なに―――っ!?」
「オノォッ!!」
突撃するウルガモスを、両手を前に突き出し迎え撃つオノンド。
そして、両者はぶつかり合い……オノンドは地面を削りながらウルガモスを止めようと、耐えていた。
「いくらオノンドでも、ウルガモスのパワーを受け止められるものか!!」
「俺のオノンドは普通のオノンドよりずっとパワーがあるんだ!!
頑張れオノンド、お前のパワーをウルガモスに見せてやれ!!」
「オ、ノォォォ……!」
――だんだんと、ウルガモスの勢いが弱くなっていく
「なんだと!?」
そして、自分の身体から煙を発しながら、オノンドは完全にウルガモスを自分の両手で止めてしまう。
「今だオノンド、最大パワーでりゅうせいぐん!!」
「オノォォォォッ!!」
大口を開けるオノンド。
瞬間、彗星のようなものが放たれ――ウルガモスの身体を空中に吹き飛ばした。
更に、それは空中で爆発を引き起こし、りゅうせいぐんとなってウルガモスを連べ打ちにする。
「ウルガモス!!」
「……ギュ、ァ……」
煙の中から立ち上がるウルガモス、しかしダメージは深刻で立っているのがやっとだろう。
「畳み掛けるぞオノンド、ドラゴンクロー!!」
「オノ……!」
地を蹴り、踏み込むオノンド。
そして、動けないウルガモスにその爪を叩き込んだ――!
「ウルガモス!!」
ウルガモスは動けない、しかし……。
「……オ、ノ……」
オノンドもまた、地面に倒れ込んでしまった。
『ウルガモス・オノンド、共に戦闘不能』
「……戻れオノンド、よく頑張ったな」
自分の思っていた以上にウルガモスのパワーは高く、計り間違えたのが原因の引き分けだ。
そう思うと、グリードは悔しくて唇を噛み締める。
「……ウルガモス、よくやったぞ。
やはりお前とのバトルは予想がつかないな、まさか……あんなやり方で止められるとは」
「アヤトのエレキブルの真似をしただけだよ、けど……オノンドにはまだちょっと無理だったみたいだな」
(真似、か……末恐ろしい事を平然と言ってのけるんだな)
あれは、パワーがあるエレキブルだからこそできる芸当だ。
しかし……実際エレキブルより体格もパワーも劣るオノンドで、ウルガモスの攻撃を完全に受け止め反撃までしてみせた。
……それがどれだけ凄い事か、まるでわかっていないようだ。
「互いにあと一勝した方が勝ちだ、絶対に負けないからな!!」
「それはわたしも同じ気持ちだ、このバトル……わたしが勝つ!!」
「クチート、君に決めた!!」
「クチクチー♪」
「ヌマクロー、バトルオン!!」
「ヌマクロッ!!」
互いにポケモンを出す2人。
そして、同時に指示を出した瞬間。
『ストーーーップ!!』
いきなり登場したモモカとルーテシアの馬鹿でかい声によって、文字通りバトルが中断させられてしまった―――
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクホーク】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・リーンフォースブレード ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし ・じこさいせい
・リーフストーム ・ブレイブバード ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト ・アクアリング
・エナジーボール ・かげぶんしん ・アクアテール
・はかいこうせん ・みずのはどう
【オノンド】♂ 【コジョンド】♀ 【グライオン】♂
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり ・シザークロス
・シャドークロー ・はっけい ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり ・とびひざげり ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー ・はどうだん ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん ・ギガインパクト
・あなをほる ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう ・ストーンエッジ
・きあいパンチ
【クチート】♀ 【ゴチム】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・てっぺき ・なし
・アイアンヘッド
・かえんほうしゃ
・ねごと
・ラスターカノン