グリードくんのイルミナ学園奮闘日誌【完結】   作:マイマイ

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一歩進んだ関係になったグリード達。

アケミヤシティでの日常は過ぎていき、しかし……。


第84話 〜謎の影、迫る闇〜

「――シェイミを発見致しました」

 

アケミヤシティの近くにある、森林の中。

人はおろかポケモンすらいないこの場所で、女性の声が響く。

全身に密着するタイプの黒いスーツに身を包み、瞳を黒のバイザーで隠している。

肩で切り揃えた紫の髪を風に揺らしながら、女性は目の前に居る男性に言葉を続けた。

 

「ただ、シェイミを保護したであろう街の住民が始終近くに居るようで……力ずくで奪取致しますか?」

「………そうだな」

男が短く口を開く、その声は低く重みが溢れていた。

女性と同じく黒のスーツにバイザーを装着した男は、アケミヤシティに視線を向けながら、ゆっくりと立ち上がり。

 

「シェイミの近くにいるという住民は、トレーナーか?」

「おそらくは。しかしまだ少年少女といった子供達ですが」

「…………」

男は黙り、女性はそれ以上は何も言わず彼の言葉を待つ。

 

「……シェイミだけになるのを待て、行動に移るのはそれからだ」

「畏まりました。……それと、これは余計な事なのかもしれませんが」

「何だ」

「………シェイミの傍に、グリード様がいらっしゃいます」

「…………」

女性の言葉に、男は小さくけれど確実な反応を見せる。

 

「実力行使に出るのは構いませんが、万が一グリード様が被害に遭えば……」

「構わん。……あの子の親はこの事に気づいておらんし……たとえ何かあったとしても、気にも留めんくだらぬ輩達だ」

「…………」

「だが、可能な限り傷つけるな。無茶な事を言っているかもしれんが……頼むぞ?」

「いえ、私としてもグリード様を傷つけるのは不本意ですから、努力はしておきます」

それでは、そう言って女性の気配がこの場から消える。

1人残る男、その表情はバイザーがあり見えないが……。

 

「……グリード、こんな事をしている俺を……お前は軽蔑するか?」

短く呟き、暫しアケミヤの街を意味もなく眺めていたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ほらグリード、口を開けてくれ」

「お、おい……」

所謂「あーん」をしようとするサクラに、グリードはたじろぐ。

アプローチをする、その言葉通りサクラからの好意はストレートにグリードへと届いていた。

しかし、それを邪魔しない他のメンバーではない。

 

「サクラちゃん、何してるのかなぁ?」

「邪魔をしないでくれるかなソラネ、今忙しいんだ」

「ほらグリード、口開けなさい」

「えっ、あー……」

カレンに言われ、無意識のうちに口を開けるグリード。

 

「おいカレン、どさくさに紛れて何をしているんだ!!」

しかし、カレンの行動はアオイによって止められてしまう。

「ちっ……」

「今舌打ちしただろ?」

「気のせいよ」

「気のせいじゃないだろ!!」

 

「グリード、大人なわたしが口移しで……」

「こらフウロ、抜け駆けするな!!」

「…………」

自分を囲みながらわーわーと騒ぐ彼女達に、グリードは引きつった笑みを浮かべる事しかできなかった。

彼女達が自分達の想いがグリードに気づかれたとわかった今、彼女達のスキンシップは激しさを増していた。

その気持ちは嬉しい、しかし行動的な彼女達の勢いに、グリードはすっかり圧されている。

 

〈うるさいでしゅね、なんとかするでしゅグリード〉

「……無茶言うなよ」

自分が原因なのは明白だが、これを止められるほど彼は器用な性格ではない。

 

「はいはい、食事中は静かにしましょうね」

そんな中、パンパンと手を叩きながらミヤコが全員を黙らせる。

さすがに騒ぎすぎたと思ったのか、少女達は静かになり各々自分の食事へと戻った。

それを見て、素直に感心するグリードに対し、ミヤコは口を開く。

 

「グリード君、今日はお手伝いは大丈夫だからね」

「えっ?」

「ちゃんと人員は確保したから、祭りも最終日だし楽しんできなさい。

 ――それに、この子達も君と一緒に祭りに行きたいみたいだし」

そう言って、ニコニコと微笑むミヤコ。その視線の先には……期待に満ちた少女達の姿が。

 

「うっ……」

いくら鈍感なグリードでもわかる、彼女達は自分が一緒に祭りへ行こうと誘ってくれるのを待っている、と。

だがしかし、誰か1人を選べば……他の4人が納得しないだろう。

「あ、あのさ……みんなで行くのは」

『ダメ!!』

0コンマ1秒で却下されました、しかもシンクロで。

これは、何が何でも誰か1人を選ぶしかないようだ。

 

(でも……選ばなかったら、悲しむよな)

彼女達を傷つけたくないグリードは、何よりそれが心配だから選ぶ事ができなかった。

しかし、だからといってこのままでは状況が変わるわけでもなく……。

 

「………恨みっこなしな?」

意を決して、選ぶ選択を取った。

グリードの言葉に、もちろんと頷きを返す少女達。

そして………。

 

 

「じゃあ――アオイ、一緒に行こう」

 

 

「えっ……わ、わたしでいいのか?」

「あ、ああ……」

アオイならば、他のメンバーと違って過剰なスキンシップをしてくる事はないだろう。

選ばれたアオイは、初めは驚き……やがて本当に嬉しそうに微笑んで。

「嬉しいぞ……ありがとう、グリード」

感謝の言葉を、口にした。

 

「ぁ、う、ん……」

その姿は本当に綺麗で、おもわずグリードは赤くなった顔を隠すために視線を逸らした。

一方、選ばれなかった4人はあからさまに落胆するものの……グリードが選んだのだからと渋々納得する。

「ふふっ、じゃあ楽しんできなさい」

「あ、はい。それじゃあ、アオイ……」

「う、うん……」

2人で家を出ていく、彼等に自然な動きでついていこうとする4人だったが……。

 

「こーら、グリード君が決めたんだからついていくなんて事はしないの」

『うぅ……』

あっさりとミヤコによって止められ、悔しそうに表情を歪めるのだった。

〈ところで、ツタージャはグリードと一緒に行かないんでしゅか?〉

おとなしく主人を見送ったツタージャに、シェイミは不思議そうに尋ねる。

 

〈行きたいけど……邪魔するのも悪いじゃない、あたしは物分かりのいい♀なんだから〉

とは言うものの、その顔には不満がありありと滲み出ている。

〈……大変でしゅね〉

同情するシェイミに、まあねと軽く返すツタージャ。

しかし、その口調は無理しているものではなく、自然体なものだった。

 

…………。

 

今日も、アケミヤシティは活気に満ち溢れていた。

仲のいい家族連れの楽しそうな声、客の呼び込みをする声。

楽しそうで、幸せな光景が確かに存在していた。

 

「みんな、楽しそうだよな」

「ああ。……だが、不思議なものだ」

「何が?」

「つい最近まで、わたしは周りを拒絶しただ力だけを求めていた。

 そんなわたしが、今では祭りを楽しむとは……わからないものだな」

 

周りを眺めながら、アオイは穏やかな笑みを浮かべながらそう呟く。

ああなる前の昔の自分も、こうやって普通の少女と同じような事をしていた。

そんな自分に、隣を歩く彼が戻してくれた、それが……アオイにとって確かな幸せへと繋がっている。

 

「改めて礼を言わせてくれグリード、お前が居たから……わたしは道を踏み外さなかった。

 もう一度、カレンと昔のような関係に戻れたんだ」

「そうかな? でも……そう思ってくれてるなら、俺としても嬉しいよ。ありがとう」

お互いに笑みを浮かべ、歩を進める。

「……お前は、自然と人を惹きつける力があるみたいだ」

「そうか?」

「ああ。その力があるからこそわたし達は出会い……そして、その……す、す、好きになったんだ」

「…………」

顔を真っ赤にして俯くアオイに、グリードも顔を赤くさせた。

 

「あー、えっと……アオイ、喉渇かないか?」

「え、あ、その……そうだな」

「じゃあ、ちょっと買ってくるよ!」

言うやいなや、ダッシュで飲み物を買いに行こうとするグリード。

そんな彼の姿に、アオイはたまらず苦笑を浮かべるのだった。

と。

 

「ねえねえ彼女、今1人?」

アオイの前に、1人の軽薄そうな男が現れた。

 

「わたしに言ってるのか?」

「そうそう。それで1人ならさ、一緒に行かない?」

「…………」

ああなる程、自分は今ナンパされているのか。

状況を把握し……ため息が出た。

ナンパ自体が悪いとは言わない、別に犯罪ではないし実際ナンパされて喜ぶ女性は居る。

しかし――下心丸出しの視線を向けられては、気分が悪い。

 

「残念だが他を当たってくれ、わたしは今男と一緒なんだ」

内側の苛立ちを表に出さないようにしながら、アオイとしてはやんわりと男の申し出を断る。

だが……男は退こうとせず、更にアオイの腕を強引に掴んだ。

 

「お、おい何を」

「いいからいいから、絶対楽しめるって」

アオイの話を聞こうともせず、男はぐいぐいと引っ張っていく。

抵抗するが、女性の力では適うはずもなく。

 

「やっ……!!」

「いででででっ!!?」

アオイの嫌がる声と、男の悲鳴が同時に響き渡った。

 

「あ……」

顔を上げると、そこには男の腕を捻り締めているグリードの姿が。

「女の子の嫌がる事すんなよ」

言いながら、空いている左手で男を突き飛ばす。

派手に転ぶ男には目もくれず、視線をアオイへ。

 

「ごめんなアオイ、大丈夫か?」

「あ、ああ……大丈夫だ。それにお前が謝る必要なんかない。それより、助けてくれてありがとう」

少し痛かったが、別段跡になったわけではないので、問題はない。

 

「何しやがる!!」

と、既にアオイの頭から完全に抜け落ちていた男の怒声が響き渡る。

「お前が嫌がってるのに無理に連れて行こうとするからだろ、ちゃんとアオイに謝れよ」

「もういいグリード、相手にするだけ無駄だ」

せっかくの祭りなのだ、こんな人間に邪魔されては困る。

そう思い、アオイはグリードの手を握りその場を離れようとするが……その行動が男の逆鱗に触れてしまったらしい。

 

「ナメやがって……出てこい、ピジョット!!」

「ピジョォォッ!!」

「げっ……!? 何考えてんだ、こんな場所でポケモンを――」

周りには祭りを楽しんでいる一般人が居る、だというのに何を考えているのか。

 

「ピジョット、つばさでうつ!!」

「ピジョッ、ピジョォォォォッ!!」

「やべっ………!」

「チッ―――!」

攻撃を仕掛けるピジョット、グリード達は咄嗟の事で反応が遅れてしまう。

しかし、グリードのモンスターボールが勝手に開き。

 

「クォォォゥッ!!」

「ピジョッ!?」

ティアが、真っ向からピジョットの攻撃を防いでいた。

 

「なっ!?」

「クゥゥ……クォゥッ!!」

「ピジョォォッ!?」

はがねのつばさを発動させ、その場で回転しピジョットを地面に叩きつけるティア。

 

「クゥゥゥゥ………!」

そして、至近距離ではかいこうせんを撃ち出そうと口を開き。

「ティア、やめろ!!」

「ッ、クォゥ……」

グリードの声が聞こえ、すぐさま攻撃を中断させた。

 

「ラ、ラティアス……」

ティアの圧倒的な力に、男はすっかり怯えを見せその場で座り込んでしまった。

「ティア、助けてくれてありがとな。でも、俺の指示なしにあんな事しちゃダメだぞ?」

「クゥゥ……」

短く返事を返すティアに、グリードは彼女の頭を撫でてからボールに戻す。

視線を戻すと男の姿はなく、周りからは拍手が巻き起こった。

 

「ねえお兄ちゃん、今のラティアスだよね? もう一回見せてよ!!」

「えっ……?」

近くに居た子供を皮切りに、次々とグリード達を囲むように近づいてくる子供達。

まあ仕方ない、ラティアスというポケモンは子供はおろか大人でもなかなか出会えない珍しい存在だ、興奮してもなんら不思議ではなかった。

グリードとしても、期待に満ちた子供達の願いを叶えてやりたいが……。

 

「――わたしの事なら気にするな」

「アオイ……」

「わたしの事を考えてくれたのは嬉しいが、それでお前の足枷になるのは御免だ。自然なお前が、わたしは好きなのだから」

「………サンキュー」

穏やかな笑みを見せるアオイに感謝し、グリードは再びティアをボールから出す。

 

「わーっ、すげー!!」

「本物のラティアスだー!!」

「クォゥ……?」

ぺたぺたと自分に触れてくる子供達に困惑しながらも、グリードの「ちょっとじっとしててくれ」といった視線を受け、言う通りにおとなしくするティア。

こうして、グリード達は暫し子供達に囲まれ身動きがとれなくなった。

しかし、その光景はあくまでも穏やかで……幸せに満ちていたのは言うまでもない。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

一方、場所は変わりソラネの家では——ツタージャとシェイミがベッドの中ですやすやと眠りについていた。

ミヤコは祭りの仕事、サクラ達はせっかくだからと仲良く外出してしまい……家の中には彼女達しか居ない。

 

〈――――〉

目を開け、起き上がるツタージャ。

〈んっ……どうしたんでしゅかツタージャ……〉

むにゃむにゃとまだ半分寝ているような声で、シェイミも起き上がる。

〈静かにしてて〉

ぴしゃりと言い放ち、ツタージャは視線を鋭くさせながら意識を辺りに集中させた。

 

 

――何か、居る

 

 

この家の周囲に、自分達にとって不利益になる存在が、ゆっくりと……けれど確実に近づいてきているのを、ツタージャは感じ取っていた。

(どうする……?)

グリード達はいない、相手の数も出方も目的もわからない今、無闇に動くわけにはいかない。

――気配が、家の中に入ってくる

 

〈……シェイミ、家から出るわよ〉

〈何言ってるでしゅか、シェイミはもう一眠りするんでしゅ〉

〈バカ、今はそんな事言ってる場合じゃないのよ。いいから早く立ちなさい!!〉

なるべく声を押し殺しながら喋り、無理矢理シェイミを立たせる。

状況を理解していないシェイミは文句を言うが、今のツタージャにそれに反応する余裕はない。

何故なら、既にその気配はこの部屋の前にまで近づいて――

 

〈ミヤコ、ごめん!!〉

謝罪の言葉を口にしながら、ツタージャは入口のドアに向かって全力のリーフストームを放った。

「うぁ………!?」

扉を吹き飛ばし、その向こうから聞こえた女性の声を背中越しから聞きながら、ツタージャはすぐさま次の行動へ。

 

〈な、何してるんで――って、放すでしゅ!!〉

立たせたシェイミをつるのムチで持ち上げながら、窓をリーフブレードで破壊。

割れたガラスと一緒に外へ出て、ツタージャは一気に家から脱出した。

 

「くっ………!」

それから十秒ほど遅れ、1人の女性が部屋に侵入する。

黒のスーツにバイザー、先程シェイミを監視していた女性である。

悔しげに唇を噛み締め、バイザーに装備された通信機を起動させる。

すぐさま出てきたのは、仲間であろう男性。

 

「申し訳ありません、取り逃がしました」

『シェイミが抵抗したのか?』

「いえ、グリード様の傍に居るツタージャに気づかれまして……」

『ほぅ……主人も居ない状況で気づき、更に逃げるとは……なかなかやるじゃないか』

感心したような男の声が響く。

 

「すぐに追い掛けます」

『頼む。……しかし予想外だな、仕方ない……俺も出る』

「申し訳ありません……」

構わん、そう言葉を返し男は通信を切る。

そして、女性もすぐさま割れた窓から外へと飛び出し、ツタージャ達の後を追った。

 

 

 

 

――シェイミ達に危機が迫る

 

グリード達はまだ気づかずしかし。

 

死闘の幕開けは、すぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

To.Be.continued...




【ツタージャ】♀        【ムクホーク】♂      【ミロカロス】♀
【使えるわざ】         【使えるわざ】        【使えるわざ】
・つるのムチ         ・はがねのつばさ     ・たつまき
・リーフブレード       ・かぜおこし         ・アイアンテール
・リーンフォースブレード  ・でんこうせっか      ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん        ・つばさでうつ        ・れいとうビーム
・へびにらみ         ・つばめがえし       ・じこさいせい
・リーフストーム        ・ブレイブバード      ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト        ・アクアリング
・エナジーボール      ・かげぶんしん       ・アクアテール
                ・はかいこうせん      ・みずのはどう


【オノノクス】♂     【コジョンド】♀    【グライオン】♂
【使えるわざ】     【使えるわざ】     【使えるわざ】
・ダブルチョップ   ・みきり         ・シザークロス
・シャドークロー   ・はっけい       ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり   ・とびひざげり     ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー   ・はどうだん      ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき   ・おうふくビンタ    ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん   ・ギガインパクト    ・はがねのつばさ
・あなをほる     ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう   ・ストーンエッジ 
・はかいこうせん   ・きあいパンチ

【クチート】♀    【ラティアス(ティア)】♀    【ゴチム】♀
【使えるわざ】    【使えるわざ】         【使えるわざ】
・てっぺき      ・ラスターカノン          ・なし
・アイアンヘッド   ・じこさいせい
・かえんほうしゃ  ・はかいこうせん
・ねごと       ・りゅうのはどう
・ラスターカノン   ・りゅうせいぐん
・かみくだく     ・れいとうビーム
            ・ドラゴンクロー
            ・はがねのつばさ
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