よし、ようやく俺の出番が来たぞー!!
イルミナよ、私は帰ってきた!!
「――おっ、イルミナシティが見えてきた」
船の甲板で立ちながら、俺は誰に言うまでもなくそう呟く。
連休も終わり、俺達はミヤコさんに別れを告げイルミナシティへと帰ってきた。
「なんだか、凄く久しぶりな気がするね」
「確かにね、この連休の内容が凄く濃いものだったから」
「…………」
自然と、叔父さん達の事を考えてしまう。
あれから、あの人達からの襲撃はなく、無事にイルミナシティへと帰ってこれた。
それに対しての安堵感はある、けど同時に……もう一度会ってちゃんと話をしたかったという気持ちもあるから、正直俺の心中は微妙なものだ。
「ほら、またそんな顔してる」
「んぁ?」
いきなりカレンにほっぺを摘まれた、痛くないけど……何だ?
「気持ちはわかるけど、色々と考えてるとどんどん深みにはまっていっちゃうわよ?
だから、これ以上考えるのはやめなさい」
「……………うん」
おとなしく頷きを返すと、よろしいと言って……カレンは自分の額を俺の額にくっつけてきた。
互いの吐息が触れてしまう距離で、眼前にはカレンの唇が……って、何を考えてんだ俺は。
「アンタには、あたしが居るんだから。なんでもかんでも1人で抱え込まないでよ?
――あたしは、アンタの笑った顔が好きなんだから」
「カレン……」
『こらーっ!!』
「わっ」
「ちっ……」
互いに、サクラ達によって引きはがされる。
ってかカレン、今舌打ちした?
「何すんのよ、今いい所だったのに」
「何をいけしゃあしゃあと言ってるんだお前は! 抜け駆けは禁止と条例を結んだだろうが!!」
「…………?」
「なんで不思議そうな顔を返すんだ!?」
「……あのさ、条例って?」
「僕達の間で結ばれた約束事さ」
「抜け駆けしない、出し抜かない、それが条例内容だよ」
「…………2人とも、なんで抱きつくの?」
柔らかい感触と、甘い匂いが否が応でも緊張を運んでくる。
くっ、悪いか? 俺だって男なんだよ!!
「僕の控え目な胸でも反応してくれるのか、嬉しいね」
「ち、ちょっと恥ずかしいけど……もっとぎゅっとしていいかな?」
ソラネさん、恥ずかしいなら離れてください。
そしてサクラさん、なんだか口調の中に自虐的な色を感じ取れるんですが?
「アンタらも全然条例を守ってないじゃない!!」
「離れんかコラーッ!!」
「…………」
わーわーぎゃーぎゃーと、俺を中心に騒ぎ立てる少女達。
こんなに可愛い女の子達が俺を慕ってくれる、その事実はやはり男として嬉しいものだ。
しかし……皆さん、ここは一般のお客様もいる場所ですよ?
さっきから視線が突き刺さってるんです、おまけに男性陣からは睨まれてるんです。
嫉妬ですねわかります、でもしょうがないじゃないですかマジで勘弁してくださいお願いします。
とはいえ、俺の心の声が聞こえるわけもなく。
暫し針のむしろ状態になりながら、この騒ぎは船が港に着くまで続いたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「………♪」
さて、イルミナシティに着き学園に戻る最中なのですが……。
サクラはやたらご機嫌で鼻歌を唄う反面、それ以外の女の子達の表情がすこぶる悪いです。
何故か? それは別に自慢とか自惚れでもないんだけど……。
――サクラが、俺の腕を組んでいるからです
港に着くやいなや、ジャンケンで俺と腕を組んで歩くのは誰か決め――現在に至る
……痛いです、周りの視線と後ろを歩くカレン達の視線が。
しかも周りの一部からは微笑ましそうに見られているのが、何ともいえないむずがゆさを感じる。
「くっ……どうしてあたしはあの時チョキを出したの……?」
「不覚だ……一生の不覚だ……」
「………憎しみで人が殺せたら」
ソラネさん、明らかにおかしな事を言っていませんかね?
しかし、勝者となったサクラはそんな事まったく気にせずに、ますます俺に抱きつく力を強くしていく。
「ふふっ……こうしてると、恋人同士みたいだと思わないかい?」
……背後の殺気が増した。
「あ、いや、えっと……」
拙い、早く話題を変えなくてはさっきより酷くなる!!
「あー、えっと、そういえば、フウロはそろそろフキヨセに着いた頃かなぁ?」
声が裏返ったが、この際気にしない。
「……僕と歩いてるのに他の女の子の話をするなんて、なかなかいい度胸してるね君は」
地雷だった!?
「でも、まあいいや。確かにちょっと心配だからね」
「あはは……」
確かに、と俺はあの時の事を思い出し苦笑い。
……アケミヤシティからさて帰ろう、という流れになった瞬間。
「やだぁっ!! もっと一緒に居ようよ!!」
と、フウロが歳も考えずに駄々をこね暴れまわったのだ。
いや、暴れまわったというのは語弊があるけど、似たような状況だったのは間違いない。
まあ、どうにかこうにか説得はできたものの。
「……こうなったら、あの手でいくしかない」
去り際にそんな謎の言葉を残していったのが、かなり気になった。
そんな事を考えていたら、学園の正門に辿り着いていた。
とりあえず休もう、なんだか帰りで精神的に疲れた。
「タジャ……?」
「? ツタージャ、どうかしたのか?」
おとなしく肩に乗っていたツタージャが、何かに気づいたように顔を上げる。
はて、一体どうしたのだろうと思いながら、とりあえず彼女の視線を追ってみると……。
「ん………?」
何やら、ドドドド……という音が、だんだんとこちらに近づいている。
それに、複数の男子がこっちに向かって走ってきてるような……。
「…………」
あれ、なんだろう、この嫌な予感しかしない展開は。
そして、こちらに走ってきたのは、学園の男子生徒――その数およそ30人くらい。
その誰もが、ちょっと普通じゃないというか……殺気立ってるのは何故?
「あ、あの〜……なにか御用ですか?」
なるべく刺激しないように、慎重に話しかける。が……。
「き、貴様〜。やはり噂は本当だったのか……」
「噂?」
「くそぅ……我等がサクラ様が、こんな一年に誑かされていたとは……なんと嘆かわしい」
今度はいきなりすすり泣き始めた、えっ、なんですかこの状況?
「………許さん」
「えっ?」
「同士よ。今こそサクラ様を誑かした悪魔に、正義の鉄槌を下す時が来たぞ!!」
今度はいきなりそんな事を言って、周りが同調するように「おーっ!!」とか「サクラ様、今助けます!!」とか、口々に言い出した。
あのさ、こっちはさっきから意味不明なんだけど、説明してくれないかなぁ?
とは思いつつ……なんだか男達が殺気立ってきたので、身の危険をひしひしと感じ始めた。
「……ねぇサクラ、こいつら……何?」
心底気味悪がりながら、カレンはサクラにおそらく俺達全員が抱いているであろう疑問を、訊いてくれた。
「彼等は僕のファンクラブらしいよ、でも驚いたなぁ。こんなに人数が居たんだ」
「驚く所そこっ!?」
ありがとうソラネ、ナイスツッコミだ。
って、そんな事言ってる場合じゃないよ、なんか相手の目がみんな血走ってるし!!
「ツタージャ、目くらましのリーフストーム!!」
咄嗟にそんな指示を告げ、ツタージャは俺の肩からジャンプすると同時に、弱めのリーフストームを展開。
奇襲はどうやら成功したらしく、男子達は揃ってその場から動けなくなり、その隙に俺達は全員で学園内へと走る。
「いやぁ、多分僕が友達に君と交際してるって言ったから、ファンクラブのみんなは怒り狂ってるんだろうなぁ」
『なに大ボラふいてんだコラーッ!!』
あっけらかんと言い放つサクラに、俺達は走りながら同時にツッコミ。
ひぃぃっ、後ろから追いかけてくるよぉ!!
「サクラ、アンタのファンクラブなんだからアンタがなんとかしなさいよ!!」
「そうはいっても、あれを説得するには相当骨が折れるよ?
それに、本当はグリードと交際してないんだなんて嘘はつきたくないし」
「本当も何も、付き合ってないでしょうが!!」
「いやいや、いずれはそうなるんだから、嘘を言ってるわけじゃないよ」
「……サクラちゃん、あの中に放り投げちゃおうか?」
「奇遇だなソラネ、わたしも今同じ事を考えていた所だ」
2人とも、恐い事を平然と話し合わないで!!
とは言うものの、学園内を逃げながら……なんだかさっきよりも増えてるような気がするんだけど。
「おや、カレンとアオイとソラネのファンクラブも結合したみたいだね」
「お前達にもファンクラブあったの!?」
おもわず、ツッコミを入れてしまった。
「し、知らないわよ。あ、あたしは……アンタ以外の男に興味ないし」
「わたしだって知らないぞ、お、お前以外に興味なんかないからな!!」
「わ、私も知らなかったよ。だって……グリードくん一筋だもん」
「…………」
すみません皆さん、それは反則だと思います。
走りながら顔を赤くしてしまうのは、しょうがないと思いました。
そうこうしている間も、俺達を(正確には俺だけだけど)追いかけてくる生徒は多くなっていくばかり。
ひぃぃぃっ、ファンクラブって恐いよぉ!!
「っていうか、ポケモンまで出してきてるけど!?」
「あー……これは些かやりすぎだね、もう少しこの状況を楽しんでいたかったけど、そろそろ止めようか」
「楽しんでたの!?」
サクラ……恐ろしい子。
述べ五十人近くになった生徒の群れは、皆血走った目で俺を睨み、捕まれば間違いなくただでは済まないのは明白だ。
サクラもそれがわかっているのか、「グリード、貸し一つだよ」という視線を俺に向けてから、彼等に向かって立ち止まった瞬間。
「わっ!?」
俺が持っているモンスターボールの一つが、勝手に開いた。
「………ティア」
中から出てきたのはティア、おいおい……お前は珍しいポケモンなんだからそう簡単に出てきたらダメだろう?
ほら、向こうの人達の一部が驚いてるじゃないか。
「ひっ!?」
「…………?」
しょうがないなぁと思いつつティアをボールに戻そうとして、俺達の前――すなわちティアの顔が見える位置に居たサクラから、悲鳴が上がった。
はて、一体どうしたのだろうか。
「グ、グリード、早くティアをボールに戻すんだ!!」
「は………?」
いや、戻すけどさ……何でそんなに慌ててるの?
サクラのおかしな様子に、俺はティアをボールに戻す事も忘れ首を傾げる。
……今思えば、それがいけなかったのかもしれない。
「――クォゥ」
可愛らしい、少し高めなティアの声。
しかし、今回はなんだか違う。
その声を聞いた瞬間、何故か全身に悪寒が走る。
「……ティア、さん?」
恐る恐る、ティアに近づいてみる。
そして……その時は訪れた。
「クォゥ……クォォォォゥッ!!」
「えっ………」
突然激昂し、空に向かって口を開けるティア。
瞬間、空高く舞い上がる高エネルギー体が、ティアの口から放たれ――
「……って、もしかしてあれ」
あのエネルギー体には、見覚えがある。
そう、確かあれは……。
「――りゅうせいぐんだぁぁぁぁっ!!?」
俺の叫びがその場に響き渡った瞬間――りゅうせいぐんが空中分解し無差別に降り注いでいく。
「うそーーーーーっ!!?」
まさしくそう叫ばずにはいられない状況に早変わり。
伝説のポケモンであるラティアスが放ったりゅうせいぐん、それはもちろん凄まじい破壊力を秘めている攻撃だ。
想像してみてほしい、ここは学園の中庭、木々や芝生がある緑溢れる場所だ。
……だというのに、そんな静かな場所から聞こえるのは、爆発音と……人々の悲鳴。
えっ、あれ、なんですかこの光景は?
俺を含め、被害に遭ってないサクラ達は、我も忘れてポカンとするばかり。
そんな中でも、ティアは普段では想像できないくらい冷めた瞳で、その光景を見つめていた。
そして、りゅうせいぐんが止んだ時には……辺りには沢山の小さなクレーターが生まれ、ファンクラブは全滅。
「うわー……」
もはやどん引きするしかない、それくらいティアは容赦がなかった。
「……もしかして、ティアはグリードを守ろうとしたんじゃないかな?」
「クォゥ♪」
その通りと言わんばかりに鳴き、俺の身体にすり寄ってくるティア。
……もしかしてこの子、今巷で話題のヤンデレ?
…………。
結局、俺達はその後めっちゃ怒られた上に中庭の修復をさせられた。
まあ、ティアの主人は俺だから監督不行き届きなんだろうけど……なんとなく納得できないのは、俺が子供だからだろうか。
ちなみに、ちゃんと手加減してくれたから重傷人は居なかった。
しかし、今回の事でわかった事が1つ。
ティアは俺の事が大好きで、更に俺に対する沸点が凄まじいまでに低いということ。
これはまったくの余談ではあるのだが、今回の「ラティアスりゅうせいぐん事件」の後、イルミナ学園ではこんな暗黙のルールができあがった。
それは――『ラティアスを怒らせてはならない』というルールだ。
こうして、連休が終わり再び学園生活が始まったのだが……。
「…………」
次の日、俺は自分の席で固まってしまった。
近くに座るカレンやアヤト達も、似たような反応している。
何故なら……。
「今日から暫くの間イルミナ学園で特別講師をやらさせてもらいます、フウロです。
皆さん、宜しくお願いしますね」
教壇には、何が楽しいのかニコニコと笑みを浮かべるフウロが、立っているからだ。
ってか、特別講師って何さ!?
「………ふふっ♪」
俺の視線に気づいたフウロが、意味ありげな笑みを返す。
……もしかして、この間言ってた「あの手」ってこういう意味?
どうやら、俺の学園生活はますます賑やかになるみたいです。
「タージャ………」
ははは……ありがとうツタージャ、慰めてくれて。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクホーク】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・リーンフォースブレード ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし ・じこさいせい
・リーフストーム ・ブレイブバード ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト ・アクアリング
・エナジーボール ・かげぶんしん ・アクアテール
・はかいこうせん ・みずのはどう
【オノノクス】♂ 【コジョンド】♀ 【グライオン】♂
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり ・シザークロス
・シャドークロー ・はっけい ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり ・とびひざげり ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー ・はどうだん ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん ・ギガインパクト ・はがねのつばさ
・あなをほる ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう ・ストーンエッジ
・はかいこうせん ・きあいパンチ
・かみなりパンチ
【クチート】♀ 【ラティアス(ティア)】♀ 【ゴチミル】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・てっぺき ・ラスターカノン ・ねんりき
・アイアンヘッド ・じこさいせい ・ひかりのかべ
・かえんほうしゃ ・はかいこうせん ・サイケこうせん
・ねごと ・りゅうのはどう
・ラスターカノン ・りゅうせいぐん
・かみくだく ・れいとうビーム
・ドラゴンクロー
・はがねのつばさ