グリードくんのイルミナ学園奮闘日誌【完結】   作:マイマイ

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騒がしい毎日が続いていく。

さて、今日はどんな1日になるのかね。


第95話 〜親愛と愛情、成長する心〜

「タジャ、タジャーッ!!!」

「…………」

「あらあら、相変わらずあの子は元気ね」

自分のリザードンに明らかに喧嘩を売っているツタージャを見ながら、キキョウはのほほんと言いながら紅茶を口に運ぶ。

 

「……なんというか、すみません」

キキョウの向かい側に座っているグリードが頭を下げるが、気にした様子もなく口を開く。

「いいのよ。あの子もたまにはバトルしないと身体が鈍ってしまうから、こちらも助かってるわ」

「はあ……」

 

キキョウと同じく、グリードもツタージャ達へと視線を向ける。

ギャーギャーと威嚇しながらリザードンに襲いかかるツタージャだが、当のリザードンはのらりくらりと回避するばかり。

……完全に遊ばれている事に、ツタージャは気づいていないのだろうか。

いくら勝ちたいと願っているとはいえ、こう毎日のように喧嘩を売るのは如何なものか。

しかも、毎回ボロ負けしてグリードに泣きつくのだから、意外と学習能力がないツタージャであった。

そんな彼女を眺めつつ、グリードはキキョウが用意してくれた紅茶を口に運ぶ。

 

――ここは、裏庭にあるちょっとした広場

 

さすがに花達がある場所で暴れまわるわけにもいかないので、こうして移動してきたわけだが……なんというか、もう何回も同じ事を繰り返すので、グリードとしては居たたまれない。

当たり前だ、相手はサクラの母親でありこの学園の理事長だ。そんな彼女に毎回お茶をご馳走になっていれば、居たたまれなくなるのも無理からぬ事だった。

「ところで……サクラとはどうなったのかしら?」

「うっ……」

そして、グリードが居たたまれなくなる理由のもう一つは……毎回訊かれるこの質問。

母親なのだから、やはり娘の恋愛話には無関心ではいられない。その気持ちはわかるが……グリードとしては、なかなかに堪える問いかけだ。

 

「……すみません、俺がまだ答えを出してなくて」

なんとも情けなく、申し訳なくなるような答えしか返せない自分が、本当に嫌になる。

「いいのよ、しょうがないわ。あんなに魅力的な女の子から1人だけ選べなんて、難しいもの」

「…………」

自分の答えも毎回変わらないが、キキョウのこの言葉も毎回変わらない。

本心で言っているのだから、グリードとしてはますます申し訳なくなる。

 

「………キキョウさん」

「なぁに?」

「変な質問をして本当に申し訳ないんですが……親愛と異性に対する愛情って、なにがどう違うんですか?」

情けないついでだ、そう思ってグリードはキキョウにそんな問いかけを口にした。

それに対し、キキョウは僅かに驚いたような表情を見せた後……また、いつも通りの笑みに戻り答えを告げる。

 

「……なかなか難しい質問ねそれ。親愛と愛情……確かに、それに対する境界線は一体何なのか、わからなくなるのも無理ないわ。

 それは正直、わたしにもわからないわね」

「えっ……?」

「なにをもって親愛で、どの程度踏み込めば異性に対する愛情なのか、それは人それぞれだから正しい答えなんてどこにもないわね」

「…………」

それを聞いて、グリードは顔を曇らせる。

そんな彼の頭を優しく撫でながら、キキョウは言葉を続けた。

 

「だからね。それを決めるのはグリード君、貴方しかできないの。

 貴方が望むままに考えて、その果てに掴んだ答えを正しいと信じればいいの。

 それが正しかったのか間違っていたのかは、未来が来ないとわからないのだから」

「自分で考え、自分で決める……」

「貴方にとってサクラ達は同じくらい大切で、誰一人として“特別”じゃない。

 今はそれでいいの、後は……貴方の頭と心で決めなさい」

「…………」

正直、キキョウの言った言葉の意味を全て理解したわけではない。

けれど、ここでこのまま悩み彼女に答えを求めるのは間違いだという事は理解できた。

 

「……すみませんキキョウさん、ありがとうございます」

「あら、もういいのかしら?」

キキョウとしては、もう少し甘えてくれてもよかったのだが。

「いえ、ちょっと考えたいんで……ツタージャ、いくぞー!!」

「タ、タジャ……」

今日も今日とて、リザードンにボコボコにされたツタージャが、よれよれとグリードの元にやってくる。

そんな彼女に引きつった笑みを浮かべつつ、色々考える前にまずはポケモンセンターに行かないとな、そう思いグリードはツタージャを抱きかかえその場を後にした。

 

「…………」

グリードとツタージャがこの場から去った後。

キキョウは、僅かに眉を潜めため息をつく。

「本当にしっかりした良い子ね……よくもまあ、あの両親からあんなに良い子が生まれたものね」

全力の皮肉を込め、キキョウは呟く。

 

――イルミナ家は、ホウエンでは一、二を争う名家だ

 

だから、エグフィード家の人間——とりわけ彼の両親の事はよく知っているし、前には援助してもらった事だってある。

ただ……彼の両親は、病的なまでにポケモンを嫌っている。

何がそうさせたのか、理由はわからないが……とにかく、彼の両親はポケモンに対して凄まじいと言えるほど嫌っており、前には自分の会社にあるポケモン関係の課を潰そうとした程だ。

まあ、それを行えば如何にエグフィードカンパニーといえど大打撃は防げないので、そんな事にはなっていないが。

それに――彼に対し微塵も愛情を注いでいない事も、キキョウは見抜いていた。

だがそれは当たり前だ、母親ならば……それくらいわかる。

つまり彼の両親は経営者としては超一流だと認めざるおえないが、親としてはあまりにも欠如した存在という事だ。

だからこそ、キキョウはこう願う。

 

幸せに、なってほしい、と。

 

幸いにも、学園に居る彼はとても幸せそうで、安心できる。

……かつて、幼少期の彼を見た時は、おもわず息を呑んでしまうほど、暗い顔だったから尚更だ。

 

(……そういえば彼、覚えているのかしら?)

たった一度だけ、けれどおそらくその一度が今の彼をここに来させた理由となった出来事。

覚えているなら嬉しいし、覚えていないなら思い出してほしいものだが……。

(やめましょう。おばさんの出る幕じゃないわね)

これからは彼等の時代だ、裏方は裏方らしい動きをしていればそれでいい。

そう自分に言い聞かせ、キキョウはリザードンに紅茶のお代わりを持ってくるように告げたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「………うーむ」

「タジャ……?」

ポケモンセンターで治療してもらったツタージャだったが、主人が先程から様子がおかしく首を傾げる。

腕を組み、なにやら必死に考え事をしているようだが……何か悩みがあるのだろうか?

 

「……なあ、ツタージャ」

そう思っていたら、他ならぬグリードの方から訊いてきた。

何だろう、と思いつつツタージャは彼の次の言葉を黙って待つ事に。

すると。

「ツタージャはさ、異性に対する愛情を抱いてる奴とか、居る?」

予想の斜め上をこうそくいどうで突き進むような質問を、ぶつけられた。

 

「…………」

つい、グリードを見上げたまま固まってしまう。

……よもや、想い人からこんな質問をされるとは思わなかった。

ある意味で大ショックなツタージャだったが、質問に答えようとして……気づく。

 

〈グリード……質問する相手、完全に間違えてるわよ……〉

喋れない自分に、何故そんな質問をするのか意味不明だ。もしかしたら彼は混乱してるのかもしれない。

彼もそれに気が付いたのか、「ごめん、今のは忘れて」と言って再び考え込んでしまった。

……これは重症だ。こういう変な所で彼はありえないくらい真面目になるから困る。

 

「………ふぅ」

親愛と異性に対する愛情、果たしてどう違うのか。

キキョウは自分で決めねばならないと言っていた、しかし……いくら頭を捻ってもグリードにはわからなかった。

そもそも、彼にはそのような感情が普通の人より欠如している面がある。彼が「親友」「家族」を不自然なまでに重視するのはその為だ。

故に、その境界線がわからないのも無理からぬ事であり……。

また、たとえわかったとしても――ちゃんと選べる自信がなかった。

1人を選べば、残りは悲しむ。自惚れているわけではないが、自分の選択によって大切な存在が傷つくような未来は作りたくない。

 

(俺は……どうすればいいんだろう)

誰も選ばない未来は許されず、誰かを選ぶ未来も選べない。

八方塞がりな未来に、ため息が出てしまう。

心優しい彼女達は、彼の選択がどんなものでも笑って「気にするな」と言ってくれるだろう。

だが、たとえそう言ってくれたとしても、グリードは自分を許せなくなる。

 

「はぁ……」

「おい、どうした?」

ため息と同時に、掛けられる声。顔を上げるとそこには……。

「アヤト……」

「辛気くさい顔だな、何を悩んでいるんだ?」

グリードの隣に座り、心配そうに声を掛けてきたアヤト。

それが嬉しくて、けど言えなくて……グリードは視線を逸らす。

 

「……カレン達の事で、悩んでるんじゃないか?」

「えっ………?」

何故わかったのだろう、そう言いたげな視線をアヤトに向けるグリード。

そんな彼に、分かり易い奴と心の中で思いながら苦笑するアヤト。

 

「お前は他人との絆を誰よりも大事にする奴だからな。大方誰を選んでも他の誰かが悲しむからどうしよう……と言った所か」

「うっ……」

まったくもってその通りな言葉に、グリードは言葉を詰まらせた。

「……オレも、いつかは決めなくてはならないからな」

「………アヤトがモモカ達に抱いているのは、単なる親愛? それとも……異性としての愛情?」

「………………愛情、だな」

暫しの間の後、アヤトははっきりと答えを口にする。

 

「モモカは小さな時からずっと一緒に居るし、フェイトは魅力的な女性だと思う。

 ルーテシアはまだ会って間もないが、彼女の裏表のない部分や垣間見得る優しさが魅力的だ。

 ――随分と気が多い男だと、軽蔑したか?」

首を横に振るグリード、それを見てアヤトは少し安心したように表情を緩ませた。

「グリード、こう言っては語弊があるかもしれないが、あまり難しく考えすぎるな。

 お前の想いはお前だけのものなのだから、周りに振り回される必要なんかない」

「……………うん」

「……ちょっとお節介が過ぎたな」

苦笑しつつ、立ち上がるアヤト。

 

「お互い、苦労するな」

「かもね。でも……幸せだよ、俺は」

「………ああ、それはオレも同じ気持ちさ。じゃあな、オレはポケモン達のトレーニングがあるから」

 

そう言い残し、アヤトはポケモンセンターを後にする。

そして、グリードも立ち上がった。

その表情は……少しだけ、ほんの少しだけ……晴れたように見えた。

 

「グリード!!」

「………?」

ポケモンセンターを出た瞬間、後ろから誰かに大声で名を呼ばれた。

なんだろうと思い振り向いた瞬間――誰かが飛び込んできた。

 

「フウロ……」

「えへへー♪」

ニコニコと微笑むフウロ、自然とグリードの口元にも笑みが浮かぶ。

「………フウロは、そういう天真爛漫な所が、魅力的だな」

「えっ………」

キョトンとするフウロ、その後……かぁっと顔を赤くさせた。

 

「ふ、不意打ちだよグリード……いきなりそんな事言われたら、恥ずかしいよ」

「………ふふっ」

わたわたと慌てるフウロが可愛らしくて、グリードはついつい笑ってしまう。

「? グリード……何かあったの? なんだか……ちょっとすっきりした顔になってるよ?」

「…………かもね」

 

――答えは、まだ出ない

 

今だって、親愛と愛情の境界線を理解したわけではなかった。

けれど、自分は彼女達を心から大切に想っている。

今の自分が抱ける最大級の想いを、向ける事ができている。

それを自覚できたからか、先程のモヤモヤとした消化不良な感情は消えてくれた。

 

『あーっ!!』

『………?』

なにやら悲鳴めいた声が、何事かとグリードとフウロの視線はそちらに向けられる。

「フウロちゃん、グリードくんと何してるの!?」

「狡いねフウロ、ちょっと胸が大きいからってそれを利用してグリードに迫るなんていただけないな」

フウロにくってかかるソラネと、静かに怒気を含んだ口調のサクラ。

 

(別に“まだ”そんな事してないけど……)

そう思ったフウロだったが、言っても無駄だと悟り……更にグリードの身体に抱きついた。

『こらーーっ!!』

と、今の声はサクラでもソラネでもない。

「ふ、不純だ。破廉恥だ!!」

「フウロ、アンタ……あれだけ抜け駆けするなって言ったでしょうが!!」

「カレン、アオイ……」

「離れてよーっ!!」

「離れなさいっての!!」

あっという間にグリードを中心に、わーわーぎゃーぎゃーと騒ぎ始めるカレン達。

 

「みんな、もう少し静かに……」

グリードの声も、今のカレン達に届かずおもわずため息が出た。

(…………でも)

こんな自分を想ってくれている、それがこんなにも幸せで……嬉しいと思えた。

だから、グリードは精一杯の感謝を込めて言葉を紡ぐ。

 

 

「――みんな、大好きだ」

ぽつりと、若干の恥ずかしさから頬を赤く染めるグリード。

しかし幸か不幸か(彼女達にとっては間違いなく不幸だが)その言葉が届く事はなく。

騒がしくも、どこか微笑ましい時間が……ゆったりと過ぎていった。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




【ツタージャ】♀        【ムクホーク】♂      【ミロカロス】♀
【使えるわざ】         【使えるわざ】        【使えるわざ】
・つるのムチ         ・はがねのつばさ     ・たつまき
・リーフブレード       ・かぜおこし         ・アイアンテール
・リーンフォースブレード  ・でんこうせっか      ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん        ・つばさでうつ        ・れいとうビーム
・へびにらみ         ・つばめがえし       ・じこさいせい
・リーフストーム        ・ブレイブバード      ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト        ・アクアリング
・エナジーボール      ・かげぶんしん       ・アクアテール
                ・はかいこうせん      ・みずのはどう


【オノノクス】♂     【コジョンド】♀    【グライオン】♂
【使えるわざ】     【使えるわざ】     【使えるわざ】
・ダブルチョップ   ・みきり         ・シザークロス
・シャドークロー   ・はっけい       ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり   ・とびひざげり     ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー   ・はどうだん      ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき   ・おうふくビンタ    ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん   ・ギガインパクト    ・はがねのつばさ
・あなをほる     ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう   ・ストーンエッジ 
・はかいこうせん   ・きあいパンチ
・かみなりパンチ

【クチート】♀    【ラティアス(ティア)】♀    【ゴチミル】♀
【使えるわざ】    【使えるわざ】         【使えるわざ】
・てっぺき      ・ラスターカノン          ・ねんりき
・アイアンヘッド   ・じこさいせい          ・ひかりのかべ
・かえんほうしゃ  ・はかいこうせん         ・サイケこうせん
・ねごと       ・りゅうのはどう
・ラスターカノン   ・りゅうせいぐん
・かみくだく     ・れいとうビーム
            ・ドラゴンクロー
            ・はがねのつばさ

【ピカチュウ】♂
・10まんボルト
・アイアンテール
・ボルテッカー
・でんこうせっか
・かみなり
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