それではご覧ください。
勇仁たちは教会を出るために聖教教会の正面門へと向かっていた。
あの後、雫の説得を試みる光輝の姿を見守る中、先に広間から出て行ったイシュタルが戻って来た。どうやら、彼を待たせ過ぎてしまったようだ。
話を明日に持ち込もうという愛子の提案に勇仁たちは賛成して、皆、イシュタルの後を付いていった。光輝は雫を説得しようと話を続けようとするが、これ以上イシュタルを待たせる気か、と逆に雫に説得されてしまい、しぶしぶ従うこととなった。
正面門にたどり着いた勇仁たちが見たのは、太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色だった。そのあまりにも美しい光景に誰もが呆然と見蕩れていた。
どこか自慢気なイシュタルに促されて先へ進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が置かれており、勇仁たちはイシュタルに促されるままその台座へと乗った。
その時、勇仁は台座の上に巨大な陣のようなものが刻まれているのを見つけた。それが魔方陣だと、瞬時に見破った勇仁は好奇心から、台座に膝を着いてじっくりと観察する。
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん──"天道"」
勇仁が魔方陣を調べている間にイシュタルが何やら唱えだした。その途端、魔法陣が燦然と輝き出した。そして、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出し、地上へ向けて斜めに下っていく。
どうやら、先ほどの〝詠唱〟で台座に刻まれた魔法陣を起動したようだ。
魔法を始めてみた生徒たちは騒ぎ出し、雲海に突入する頃には大騒ぎになっていた。一方で勇仁は向こうの世界にはない高度な魔法文明に深い関心を持っていた。
やがて雲海を抜けて地上が見えて来た。眼下には山肌からせりだすように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。台座のロープウェイは、王宮と空中回廊でつながっている高い塔の屋上に続いているようだ。
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雲海を抜けて天上より降りてくるその姿はまさに“神の使徒”。なんとも皮肉めいた演出に勇仁は誰にもばれないよう苦笑いを浮かべるのだった。
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王宮にたどり着くと、勇仁たちは真っ先に玉座の間へと案内された。
美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。
イシュタルは悠々と扉を通り、それに続いて光輝といった一部の者を除いて生徒たちは恐る恐るといった感じで扉を潜った。
扉を潜った先には、まっすぐ伸びたレッドカーペットとその奥の中央には玉座があった。
しかし、玉座の前には覇気と威厳を纏ったおそらく国王だと思われる初老の男が
その隣には王妃であろう女性、さらにその隣には十歳前後の金髪碧眼の少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。
レッドカーペットの左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者たちが、右側には文官らしき者たちがざっと三十人以上が並んで佇んでいた。
イシュタルは玉座の前で生徒たちをそこに留まらせると、国王の隣へと進む。
そこで徐に手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。
その光景を見た勇仁は一つの確信を得た。
(この国は王ではなく、神が動かしているということか……)
教会の力を目の当たりにして、勇仁の顔が険しくなる。
そして、そこからはただの自己紹介が始まった。
国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒ。王妃の名をルルアリア、隣にいる少年少女はランデル王子とリリアーナ王女という。後に、騎士団長や宰相など、高い地位にある者たちの紹介が順になされていった。
その後、勇者一行を歓迎するということで晩餐会が開かれ異世界料理を堪能することになった。
クラスメイトたちは、王国出身の貴族令息、令嬢たちに言い寄られていた。特にランデル王子にいたっては、しきりに香織に話しかけていた。
勇仁も貴族の令嬢たちに囲まれていたが、その場から離れてベランダの方へと向かう。ベランダの縁に手をかけて、下に広がる城下町を眺めていた。
日本では決して見られない中世のヨーロッパを連想させるような古くて美しい町。
その光景に自分たちが本当に異世界に来たのだとより実感させるのだった。
「ゆ~うじ君♪」
景色を眺めている勇仁の背中に誰かがぶつかる。非常に甘ったるいその声に彼は心当たりがあった。
「恵理……、何の用だ」
「何の用だ、じゃないよ。僕のことほったらかして。探したんだからね!」
「そいつは悪かったな。後、素が出てるぞ」
「おっと、いけない、いけない」
気づいていなかったのか、恵理は周りを見渡す。
普段、クラスの前で見せるお淑やかな物腰はどこにもなく、小悪魔みたいな意地悪な笑みを浮かべていた。
誰もいないことを確認して、彼女は静かに安堵の息を漏らす。
「あなた、隠すくらいなら、もう少し自分を出してもいいんじゃない?」
「雫」
いや、一人だけいた。トレードマークの黒のポニーテールを揺らして、雫が勇仁たちに近づいて来た。
「別にいいじゃん。どっちを出すのかは僕の自由だし」
「性格が違い過ぎるのよ。初めて見た時は本当に驚いたわよ」
「そのわりには、すぐに順応したね」
「どちらかというと、そっちの性格の方が話しやすいからよ。……それで、こんなところで二人っきりで何してるの?」
「見てわからない? 逢引きだよ♪」
「違う。外の空気を吸いたくて出ただけで、こいつは後から来たんだよ」
「そんなことだろうと思ったわ」
逢引きという言葉に雫は一瞬、しわを寄せたが、勇仁の即答ですぐに戻った。
「そういう雫ちゃんはどうしたの? 香織ちゃんと一緒じゃなくていいの?」
「香織は今、王子様とお話し中よ。皆、遠慮しているみたいだから、しばらくは大丈夫よ」
「お前も外の空気を吸いにきたのか?」
「えぇ。周りからの視線がちょっと嫌になってね」
「それは僕も同じかな。すごく好意的だけど、ちょっと気持ち悪い」
雫たちは貴族たちの接待に嫌気がさして抜け出したようだ。
「ま、あいつらにとっては嬉しいことなんだろう。……自分たちの代わりに戦ってくれる奴が現れたんだからな」
「勇仁?」
「自分たちの代わりに戦争に出向いてくれる人たち。しかも、それは自分たちが崇拝する神の使徒様と来た。今のあいつらは自分たちの勝利に疑ってもいないだろうよ。……その過程で俺たちがどれだけ傷つくのかも理解しようともせずにな」
勇仁の貴族に対する酷評に驚く二人。彼がここまで悪意を持って評価するとは思ってもみなかったようだ。
「時間は多くないが、すぐに戦争に参加することはない。その間に何か対策を考えないとな」
「勇仁君、あのイシュタルっていう教皇から交渉でもぎ取ったもんね」
恵理は教会でのやり取りを思い出しながら、感心するような目で勇仁を見つめる。
「結構、様になっていたけど、ボランティア活動でそんなこともやっていたの?」
「いや、交渉なんて、あれが初めてだよ。ただ、ちょっと昔に教えられたことがあってな」
『良いか、ユウジ。交渉を有利に進めるためにはな、自分の弱みを見せないで、相手の弱みに見つけることが大事なんじゃぞ』
あれはまだ、アークたちと共に五大精霊の石を集めていた頃。次の目的地に着くまで、勇仁は彼の先生から預かっていた本を読んでいた時、濃い髭と謎の壺を持った自称冒険家兼商人──チョンガラがあくどい笑みを浮かべながら話しかけてきた。
『弱みを見せれば、そこを突かれてこっちの状況を不利にさせてしまう。じゃが、それは相手の方も同じじゃ。自分の弱みを隠しながら、相手を探る。そして、弱みを見つけたら、そこを遠慮なく突くのじゃ』
真剣な顔で話すチョンガラに対して、当時七歳だった勇仁は首を傾げるだけだった。
『相手は色々と身を削って、何とか最悪の展開にならないように話を持ち込むはずじゃ。そして、こっちはそれを機にあの手この手を使って、相手のお宝や財宝を少しずつもらって……』
『ちょっと、チョンガラ! あなた、ユウジに何、教えてるのよ?!』
『ぬおっ! ククル! いや、これはユウジが将来、困らないように交渉の秘訣をな……』
『子供にそんな汚いことを教えてんじゃないわよ!』
『ぬぅおおおおおおおおおおお!!』
「勇仁?」
「あ、あぁ。とにかく、俺はあの時、教皇がトータスの事情を話している間に、自分たちの状況を整理してたんだよ」
最後に見た光景を頭から振り払い、勇仁は雫たちに教会でのやり取りを説明する。
「まず、大前提として、俺たちの生活はイシュタル教皇たち教会陣営の手に委ねられていた。だけど、教皇との対話で彼が俺たちを見捨てることができないってわかった」
「どうしてそう思ったのよ」
「教皇が俺たちを召喚する前に、この国に俺たちの存在をすでに伝えていた。ならば、先程、謁見した王族たちは、城下町に住む人たちに俺たちのことを知らせた可能性がある。晩餐会が開かれるくらいだ。かなり大々的に発表したんだろう。町の人たちは俺たちに大きな期待を寄せているはずだ。だけど、そんな俺たちが、教会が呼んだ神の使徒が魔人族を殺せなかった。そのせいで自分たちが危機に瀕したと知られれば、教会の威厳が損なわれちまう」
「だったら普通、できない人たちを追い出すのが得策じゃない? 戦える人たちだけを残して、その人たちを前に出せれば、教会の威厳は保たれると思うけど……」
「いや、追い出したら追い出したで、教会陣営にとっては都合が悪い」
恵理の疑問に対して、勇仁は話を続ける。
「教皇が俺たちを迎え入れた時、あの人が俺たちに何て言ってたか覚えてるか?」
「えっと……たしか……」
『ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ』
「あの時、教皇は俺たち
「それがどうしたのよ」
「つまり、教皇は俺たちの誰が勇者なのかわからなかったんだ。わかってたら、たぶん、全員じゃなくて、勇者一人にに注目していたはずだ。もしも、恵理の言う通りに役に立たない人間を追い出して、その中に勇者がいたらどうなる?」
「なるほどね。勇者を追い出したなんて知られたら、教会はバッシングを受けかねないわね」
「もっと言えば、教会が神様の名前を使って、偽りの使徒を用意したって疑われるかもしれないね」
「そういうことだ。追い出すことができない以上、教会が取れる手段は、俺たちの生活を保障して、魔人族と戦えるように準備をするしかないってことだ」
雫と恵理は勇仁の言っていることを理解する。その時、二人と向かい合っていた勇仁は歓迎会が続いている城内の方へと視線を向ける。
「……それで、あんたらはどう考えているんだ?」
「「え?」」
「お前らじゃない。そこに隠れて、盗み聞ぎしている奴に聞いているんだ」
雫たちは後ろに振り向いてベランダのカーテンに目を向ける。すると、そこから一人の女性が侍女を一人引き連れて出てきた。
「えっと、あなたはたしか……」
「ハイリヒ王国の王女、リリアーナ姫だな」
玉座の間で勇仁たちを迎え入れた金髪碧眼の美少女──リリアーナ・S・B・ハイリヒだった。
「はい、使徒様。国王エリヒドの娘、リリアーナ・S・B・ハイリヒと申します。そして、こちらは私の従者の……」
「ヘリーナと申します」
リリアーナの後ろで待機していた侍女──ヘリーナは軽く会釈する。
「あ、えっと、八重樫雫と申します」
「な、中村恵理です」
王女との対面に少し緊張気味に挨拶する雫たち。
「勇仁だ。こっち風でいうとユウジ・コウゲツという。特に"様"とかは付けなくていい」
「ゆ、勇仁!」
「さすがにため口はまずいんじゃ……」
「いえ、よろしいのです。では勇仁さんと。私の方はリリィと呼んでください」
「あぁ、わかった」
王女相手に態度を崩さない勇仁にハラハラする雫たち。一方で、リリアーナは不思議そうな顔で勇仁の顔をずっと見つめていた。
「さっきから俺の顔を見続けているが、聞きたいことがあるなら言ってみろ」
さすがに見続けられると気恥ずかしいと思ったのか、勇仁はリリアーナに問いかける。
「えっ……、あっ! も、申し訳ありません」
ずっと見続けていたことにようやく気づき、頬を少し赤く染めながら謝罪する。その時、雫たちの目がうっすらと細くなった。
「えっと、勇仁さんは皆さんと少し違うなぁと思いまして」
「違う?」
「はい。皆さん、私と顔を合わせると、そちらのお二人のように緊張したりしていましたので。勇仁さんと光輝さんという方にはそういうのが見られなかったものなので」
「あぁ、そういうこと」
リリアーナの話に勇仁は納得する。確かに王族との対話なんて日本じゃ人生に一度も体験することはないだろう。雫や恵理のように緊張したって無理もない。
「まぁ、本来はこいつらのような反応が普通だ。俺とあいつはちょっと例外ってだけだ」
光輝の場合は、自分は世界を救う勇者だから姫であるリリィと親密な関係になるのは当然だという、相変わらずのご都合主義が発揮したのだろう。そして、勇仁の場合は、向こうの世界での出会いと経験からとしか言いようがない。
勇仁と共に戦ってきた仲間たちの中には、凄まじい経歴と実績を持っている人が何人もいた。
グレイシーヌの王から高い信頼を得ているラマダ師範代のイーガ。
古の時代に世界を支配しようとした魔王を封じた伝説の七勇者の一人であるゴーゲン。
バルバラード東方にあるダダ国の王族であるチョンガラ。
植民地となっていた故郷を解放しようと戦い、勝利して英雄となったグルガ。
両親を殺されて、国に追いやられてしまった元王女のサニア。
そして、勇仁たちのリーダーであるアークは、亡きスメリア王の甥にあたる人物だった。
そんな大物人物とずっと旅をしたせいで耐性ができたのか、それとも感覚が麻痺しているのか、少なくとも年齢や身分の違いで、勇仁が態度を変えるようなことなかった。
「はぁ、そうなのですか」
意味深な物言いにリリアーナは声を漏らして、雫たちにいたっては何の話かと首を傾げる。
「それでさっきの話の続きなんだが、あんたらはどう考えているんだ?」
「それはどういう……」
「あんたたちは国の、もとい自分たちの命運を何の関係もない俺たちに委ねて、何もしないつもりなのか?」
「そ、そんなことはありません! 私たちも共に戦います! 今、この国も総力を上げて、魔人族と戦っています。ですから、どうか私たちに力を……」
「総力を上げているわりには、ここには若い男連中が多いな。あいつらは出兵もせずに何してるんだ?」
「っ……」
「この国の事情については詳しく知らねえが、少なくとも戦力になり得る者が戦場に出ずに、こんなところで無駄な金を使っているところを見ると、とても総力を上げているとは思えねぇな」
「ちょ、ちょっと勇仁。そのへんに……」
勇仁の厳しい追及に少し涙目なるリリアーナ。それを見た雫は彼を止めようとするが、本人は止める様子はなかった。
「さらに言えば、俺たちは戦争を体験したことがねぇ。殺人にも戸惑うほどの素人集団だ。とてもじゃねぇが、戦争の役に立つとは思えねぇ。むしろ、邪魔になる可能性が高い」
「で、ですが、イシュタル教皇は、あなたたちは私たちよりも優れた力を持っていると」
「力が優れているからって、それを十全に使いこなせるかどうかは話が別だ。それに俺たちはまだ精神が未熟な子供だ。強い力を手に入れて調子に乗る奴だって現れるかもしれない。最悪、俺たちの間で仲間割れする可能性だってある」
「そ、そんな……」
「期待して悪いと思うが、それが現実なんだ。俺たちは神の使徒でも何でもない。お前らと同じ、どこにでもいるただの人間だ。別世界の、っていうのが頭に付くが」
完全に沈黙してしまった。
俯いたまま、リリアーナはその場から動かなくなってしまった。その様子を見て、どうしたものかと雫と恵理は彼女と勇仁を交互に見やる。
ヘリーナはリリアーナの近くに寄り添って、彼女を追い詰めた勇仁を強く睨みつける。だが、彼はそれに気を留めずにリリアーナを見続ける。
「……あなた方の事情はよくわかりました。こちらの身勝手な事情で故郷から連れ去ってしまい
申し訳ありません」
やがて、リリアーナは勇仁たちに向かって深く頭を下げる。
「あなた方が故郷に戻れるように全力を尽くします。無論、戦争への参加も強制はしません。ですから、ここにいる間だけでも構いません! どうか、私たちに力を貸してください!」
「リリアーナ様……」
必死に嘆願するリリアーナを見つめるヘリーナ。雫たちは勇仁の方に視線を向けて、彼の返答を待つ。
「……この世界はあんたたち王族よりも神の方が上だ。謁見の間でのやり取りを見てわかった。正直、あんたの発言で俺たちの戦争参加がどうにかなるとは思えねぇ」
「っ!」
辛辣な発言にリリアーナは下を向く。
「……だが、あんたの誠意は十分に伝わった。それにあんたたちは、俺たちを保護してくれるんだ。その恩返しはするつもりだ」
「え……」
「戦争の参加はともかく、少なくともこの国に貢献できるように勤めるよ。俺から言えるのはそれだけだ」
勇仁は外の方に視線を向けて、それ以降一言も発することはなかった。背中を向ける彼の真意を理解したのか、リリアーナは再度、頭を深く下げてその場から立ち去った。ヘリーナも勇仁たちに軽く頭を下げて彼女の後を付いていった。
「勇仁。どうして、あんなことを?」
「天之河にも言ったが、この世界の問題は本来、この世界の人たちが解決するべきことなんだ。それを余所者の俺たちに全部、押し付けようとするあいつらの態度が気に入らなかったんだよ」
「でも、あのお姫様は違うって思ったんだね」
「彼女の言葉には誠意が籠っていた。少なくとも、あそこで媚びを売っている貴族連中よりかはマシだと思った。それにだけだ」
「ふーん、そうなんだ。てっきり、あのお姫様のことを……」
「ちげーよ。勘違いしてんな、バカ」
「あいた!」
恵理の頭を軽く叩いて、勇仁たちはそのまま、外の景色を眺めながら談笑するのだった。
晩餐会が終わり、用意された部屋に案内された勇仁はすぐにベッドには向かわずに、机の方へと向かう。
「さてと……」
勇仁はある物を取り出して机に置く。それは彼の先生から預かった本と同じデザインをした本、いや、日記だった。
「先生をまねて書き始めたけど、一日を振り返るにはちょうどいいな」
勇仁はペンを手に取って日記をつける。今日、起きたことを振り返りながら。
――――
異世界。それは文字通り、自分たちが住む世界とは全く異なる世界。
元の世界には存在しない魔獣、神、そして、魔法。
少年心を燻ぶらせるものが多く溢れたファンタジーな世界。
だが、現実はそんなに甘くなく、戦争に参加させられるという、大変な事態に巻き込まれてしまった。
そんな事態の渦中にいる一人の少年。黒い髪と黒と白のオッドアイが特徴の十七歳の高校生。
師から預かった黒の三角帽子と日記を手に持ち、二度目の異世界に期待を膨らませる偉大な魔女の弟子とはどこの誰でしょう?
そう、俺なのです。
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出てくる人物は、私のお気に入りのキャラクターたちです。
どんなキャラが出るのか楽しみにしてください。