ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:食卓の英雄
―――私は、気がつけば光になっていた。
訳が分からないとは思うが、実際にそれ以外の表現が思いつかないのだから仕方がないだろう。
極々平凡な人生を送ってきたただの日本人であるはずの私が、次に目を覚ました時には既にこの身体は光の超人であったのだ。
すわネット小説で嫌と言うほど見かける転生か、あるいは転移がこの身に起こったのかと驚愕と混乱に苛まれたのも束の間、次に映る光景にただでさえ非日常の連続に回らなかった頭が完全に停止したのを覚えている。
「おお、目を開けたぞ…!」
「私たちの子よ…。ふふ、顔つきは貴方そっくりね」
両親らしき2つの人影が、私を覗き込みとても嬉しそうに頷き合っている。これだけならば、家族愛溢れるよき両親に恵まれた人間なのだと理解することが出来た。
だがしかし、両親の容姿はそれはもう特徴的だった。
大きく、優しい光のようなものを宿す目。のっぺりとした印象を感じさせる青地に銀色のラインが輝く身体。頭髪らしきものはなく、代わりに頭部は角か何かのように尖っている。口元は優しく微笑みの形を取り、鼻などの器官は外見上は見当たらない。
その外見は、顔つきの差などはあれど、日本人ならば誰もが知るキャラクターの特徴にそっくりだった。
つまるところ、私はM78星雲、ウルトラの星生まれのウルトラマンへと生まれ変わったのであった。
困惑もあったが、ウルトラ一族にとってほんの僅かな時間である数年もすれば、十分に受け入れることが出来た。時間だけはかなりあるのでね。
そして私は決起した。子供の頃に憧れ、応援したヒーローと同じ世界、同じ種族に生まれたのだから、彼らと共に戦い、人々や平和を守れる存在になりたいと。
実際私も元は健全な日本男児。子供心そのままにヒーローへの憧れももっているし、ウルトラマンシリーズは好きだった。
私の両親はどちらともブルー族であり、その血を引く私も混じりっけなしのブルー族だ。ブルー族はシルバー族(ウルトラマンやゾフィー、ジャック、エースやメビウスなど)やレッド族(セブンやタロウ、マックスなどがこちらに当たる)に比べて戦闘面において不得手なタイプというのが作品内での常識として語られ、実際に今の光の国でもそう扱われている。
だからといって、ウルトラマンならではの善性によって差別などはないものの、それでもやはり研究者や学者といった印象が強いのか、力仕事などは自然とレッド族やシルバー族が多くなっていた。
しかし、その程度ではめげないさ。元の私とは比べ物にならないほどの能力を持っていて、様々な特殊能力や技を扱うことが出来るのだから。
願わくば、テレビで活躍したウルトラマンや怪獣と出会ったり、共に戦ってみたいのだが、何にしてもやはり宇宙警備隊に入るのが一番だろう。
どのみちこの世界には多くの怪獣や宇宙人がいるのだし、本編であるようにさまざまな事件が起こることもほぼ確実。ならば実力はつけて損はない。よって、そのためにも全力で鍛え、自分の時間でも色々とテレビシリーズなどを参考にしながら鍛えていたのだが、やはり練習環境というのも大事である。
まだ地球人換算で小学生にすらなっていないが、あの戦いについていくなら生半可な気持ちじゃだめだ。
そう気を引き締めて鍛錬に励む私に、両親は「どうしてそこまで鍛えるのか」と問う。
「宇宙警備隊に入りたいからね」
「宇宙警備隊…?何かのお話かしら?」
「いや、きっと友達とのお話だろう」
微笑ましげに呟かれたその言葉に、私は硬直してしまった。
「ね、ねえ。ウルトラの父……いや、ウルトラマンキングさんって、今何歳なの?」
「うーんと、確かあの方は今26万歳…くらいだったかな。どうして?」
「う、ううん。ありがとう」
不思議そうに尋ねる両親に言葉を濁しながら、考えにふける。ウルトラマンキングが26万歳。テレビシリーズにおいて、2003年で30万歳を迎えた筈なので、世界線が同一のものとして単純に計算すると4万年前。
宇宙警備隊が発足したのは約3万年前なので、時期的にはまだ宇宙警備隊は影も形もないということになる。
いや、それだけではない。そもそも宇宙警備隊はエンペラ星人が引き起こし、光の国に攻め入ったウルトラ大戦争が原因だ。
エンペラ星人の力は圧倒的で、当時のウルトラの父とベリアルの二人ですら歯が立たず、ウルトラの父が託されたウルティメイトブレードとそれによる覚醒がなければ撃退すら出来なかった程のもの。大量に引き連れた怪獣とて、ウルトラ戦士による討伐でなく、急遽開発されたウルトラベルの効力によるもの。
つまるところ、割りと本気で壊滅寸前だった事件である。
ベリアルが力を求めた遠因になったり、そもそもウルトラマンシリーズにおいての物語の始まりはこの出来事なくしてあり得なかったりと、後世においての影響力はとても強い。
そして何よりも、その襲来は凡そ1万年後。いや、長命なだけあって時間間隔の誤差がでかい。ウルトラマンキングほどの年なら、1000年程度は小数点として切り捨てられる。
1万年もしないうちに、この星はエンペラ星人達によって半壊させられる。まして、この出来事は本編中のウルトラマンたちが生まれるより遥か昔の話。当然ニュージェネレーションで見たような専用アイテムなどもなく、ウルトラ兄弟が誰一人としていない状態でそんな軍勢に襲いかかられる運命にあるのだ。
私は絶望した。ウルトラの父が辛うじて撃退することは知っているが、それまでの戦いがどれだけ長引き、具体的にどれほどの被害が出たのか分からないのだ。
いくら非戦闘員も多いとは言え、仮にも超人たるウルトラマンたちの本拠地に攻め入って半壊させる程の敵。私が、いや、私だけではない。まだ幼い(といっても既に50歳程度はある)子供や私の両親、見かける人々の何人が生き残っていられるのだろうか。
「……強く、強くならなくては」
だが、そう悲観してもいられない。時期が分かっているのならば、その間逃げ隠れていればいいと思うだろう。だが、それでは駄目なのだ。
それでは私の周囲にいる人達は残されたまま。仮に理由をつけて離すとしても、数百年が切り捨てられるような曖昧な時間では不確かに過ぎる。
そして、何よりも憧れのヒーローたるウルトラマンとなり、宇宙警備隊に入ろうとする私自身が、彼らの勇姿を見続けた私はその選択に胸を張れなくなってしまう。よって、私は決意したのだ。必ずこの猶予期間を使って、あの大抗争を生き残り、救えるだけの人々を助けるのだと。
そうとなれば、悠長なことは言ってられない。長期的に見ての改善、ではなくたった今から肉体改造と技術の上昇は必須課題となった。
人間の尺度からすると1万年というのは計り知れないほどの月日なのだが、私からするとたった1万年しかないというのが本音だ。
生半可な鍛錬ではだめだ。そもそもがブルー族。出力面ではディスアドバンテージを抱えている身。当然最低限は補えるようにしなければいけないが、才能も未来に生まれる主役格に匹敵するなどとはとても思えない。…元人間の身でどこまでやれるものか。
ウルトラマン、いや長命宇宙人にとっては瞬きのような1日1時間ですら無駄にしない。人間であった頃の名残からか、その感性は混ざり合っていて、時間は長くも短くも感じられる。
これを意識して鍛錬に打ち込み、実戦を積んでいくことが必要なのだ。
「必ずやみんなで大抗争を生き残り、ウルトラ兄弟たちと会うのだ…!」
志を新たにし、明確な期限のついた私は、より一層の鍛錬に励み、貪欲に何事も吸収するようになったのである。
――――…
それというのも今は昔。そう決意して、既に5万年近くが経過した。
え?ウルトラ大戦争?とっくに終わったよ。それどころかもうメビウスがエンペラ星人を倒してから1万年近く経ってるよ?
……分かった。簡単に話そう。
私は学校に通いながら様々な方法で体術や光線、特殊能力の鍛錬を絶やさず、ブルー族としても光の国の技術力を身に着けていった。
時には友人を誘って、時には大人や下級生を巻き込んで。心血を注いで鍛錬し、外付けでもいいからとエネルギー補給用の装着や、テクターギアを参考に拘束具を開発して自ら身に着け鍛え続けた。
学校卒業後は光の国の警備隊の前身ともいえる治安維持機関に進む……ことはなく、共に鍛えた友人たちに鍛錬用拘束衣を託して宇宙へと旅立った。
理由としては様々な宇宙人や怪獣との実戦経験を積むことと、同じく吸収できる知識や技術を学ぶためでもあった。
一応、宇宙警備隊すらない世界で光の国の住民がいるのは注目されやすいので、鎧のように拘束具を纏って戦うことにしたのだ。
勿論、流石に最初から実戦で拘束具をつけるのは自殺行為だったが、戦いに慣れるごとに、1000トン、また1000トンと負荷に慣れるごとに重量を増やしていき、最終的には7000トンを超えるまでになった。
テクターギアに比べると軽いのだが、それは光の国から遠く離れた宇宙空間での整備と、単純に技術力の問題でそれ以上機能を維持したまま重くできなかっただけである。流石は4万年後に使われている技術、届かないものだ。
宇宙中を回ったことで、知っている怪獣や宇宙人、知らない星の住民達も見かけることが出来、荒くれ者から武人、科学者などといった人物と積極的に関わり様々な技術をものにした。そして数千年後、約束の日が近づいたと思われる頃にウルトラの星へと帰還したのだ。
やはり当てもなく旅に出た私を心配する声が友人や家族から上がったが、うかうかしてられない。
長旅の疲れをゆっくり癒すと、少しでも勝ち残る確率を上げるために避難経路や周囲への意識、そして鍛錬を続ける。
ここで嬉しい誤算だったのだが、学生時代に共に鍛えた友人や後輩、近所の子供までもが今日に至るまで身体を鍛えていたのだ。
流石に私ほど生き急いでいたわけではなかったが、それでものびのびと暮らす一般人とは比べものにならない程に戦闘用に仕上がっているだろう。
どうやら残された拘束衣を改修しながら使っていたらしく、更には複製までして鍛錬に有効活用していたのだとか。
それからも平和ボケしないよう模擬戦などで肉体を維持し続け、とうとうその日はやってきた。
突如としてウルトラの星に押し寄せる怪獣、宇宙人の群れ。現れるエンペラ星人に暗黒四天王(何か一人足りなかったが)。
私はその日のために力を蓄え続けてきたのだ。故に周囲に呼びかけ、戦えないものを守り、力を合わせて戦うことを選んだ。
一体一体は修行の旅で死合った者たちに比べれば弱くとも、数が多い。とはいってもそれも織り込み済みの作戦や戦い方も全て想定していたので、怪我人こそいれど、死者は出さずに対応できた。
まあ、初期避難は良かったのだが、それからが地獄だった。
途切れることなく押し寄せる敵の群れ。被害を気にせず戦えるようになったとはいっても数が多い上にその分多岐にわたる攻撃。
特に、途中で出てきたデスレム。怪獣の群れを相手取りながら火球の対処をするのは骨が折れた。まあ、それでもウルトラマンの弱点である冷気を放つことができ、怪獣たちの群れごと凍らせることが可能なグローザムがこちらにいないことは僥倖だったが。
四天王同士の仲の悪さを知っていたので「あっちの氷の奴じゃなくてよかったよ。お前のほうがずっと弱そうだ」と比べてやれば、一気に注意は俺に向いたし、何よりプライドがグローザムだけは絶対に近寄らせないようにすると思っての事だったが、これが中々上手くいった。
むしろ数的有利と実力への自信、そして私に対する怒りでお得意の卑劣な作戦も幾分ショボくなっていたし。
まあ、そんなこんなでウルトラベルの完成まで怪獣たちの群れと戦いながら、どうにかこうにか生き残ったわけだ。
私が守りたいと言った近所の子や非戦闘員に犠牲者はいない。…ただ、共に戦ってくれた同輩の数人が死亡。最後の最後で死力を尽くし、もう戦いが出来ないほどに傷ついた後輩の姿も見た。
それに、全域のカバーは不可能で、大勢の光の国の住民が亡くなってしまっている。
非常に心苦しいが、少なくとも、当時の私にとっては全力を尽くした最善の結果だった。
その後は、私の知る歴史の通り、宇宙警備隊が発足され、ウルトラマンケンことウルトラの父が初代隊長に就任。
何故か、本当に何故か私がM25星雲支部の支部長に収まってしまったが、結構前に代替わりしたので特に掘り下げることはないだろう。
代替わりしてからは、元々色々とやっていたから技術開発局に顔を出しては作ったものだ。
私の話はそんなものでいいだろう。それよりも、何やら興味深い話があったようだ。私はそちらに顔を出すことにするよ。
●●●
「我々の監視下における次元に、奇妙な反応が現れたらしい」
ここは宇宙警備隊本部局。煌めくクリスタルの様な建材によって作られたそれは、光の国らしく神秘的な光景を映し出しているが、流石に警備隊の会議ともなれば雰囲気に軽い様子は見当たらない。
現宇宙警備隊隊長ゾフィーによって、簡潔に語られたそれは、最近の宇宙警備隊が注目している話題に近しいそれだった。
「マルチバースとしてのレベルは2、我々の観測した世界の地球と、ほぼそっくりな文化、技術形態が成されている。……尤も、現在の問題の時点では外星人との公的な接触はされておらず、それに伴って複数の次元における防衛組織とその技術がないことが特徴と言えば特徴か」
「防衛組織がないってことは、宇宙人や怪獣が襲ってきたら大変じゃないですか!?」
ゾフィーの言葉に、若き戦士メビウスが驚く。
「だがそれは必要性がなかったからに過ぎない。何れは同じ宇宙に生きる生命体を認識し、発展していくのだろうと考えていたのだが…」
「そこで、例の奇妙な反応ですね?」
「ああどうにも空間転移に近い事象が過去複数回確認されているとのことだ。そこまで頻発するようなものでもなかった為あまり注視されてはいなかったが、最近の事件から見方が変わってな。……どうやら過去の事例では異なる星や星系などにも何度か繋がり、行き来してしまっているらしい。……これが単なる観光や、互いの同意をとった交通設備であるならいいのだが、侵略の可能性や、長時間これが続けば、対抗する術のない世界では重大なことになりかねない。いや、それだけではない。我々が察知したように、その技術体系を狙う外星人、未知のエネルギーにおびき寄せられてしまう怪獣なども、いないとは言い切れない」
つまりは、その次元に起こった事象の詳しい調査と、それらによる影響が何をもたらすのか、ということを目的に派遣するらしい。
「ならば、私が立候補させてもらおう」
「あなたが?」
偉大なウルトラ戦士であるゾフィーに敬語を使われるのは慣れないが、彼らはウルトラマンらしく誠実で、倍近く歳の離れている私を呼び捨てにしないのだろう。
「ああ、こういった案件に詳しいゼロ君やニュージェネレーションヒーローズは別件で任務についているだろう?それに、元は技術開発局にもいたんだ。何らかの技術であった場合も事態の把握がしやすい。そして、現在任務がなく、暇を持て余しているのはこの場では私くらいだろう?ブルー族だが、これでも鍛えているからね。仮に侵略目的の宇宙人や怪獣であってもそう容易く負けるつもりはないさ」
「…確かに。そういうことならば、任せましょう」
周囲を見渡しても、反論はない。まあ所詮は「かもしれない」案件。緊急性の高い侵略宇宙人や、マルチバースを超えて暗躍する敵に比べれば、次元を隔てている世界とはいえど、普段の任務と然程変わりないからだ。
「次にこの事象が発生する予兆が感知された。場所は太陽系第三惑星……つまり、その次元での地球。実のところ、この任務が浮上した理由の一つにこれが上がっている。…今までもウルトラ戦士が派遣された地球はごく短期間で様々な災難に見舞われたからです。迷信と言われればそれまででも、地球という存在に、次元すら隔てた何かの力があるように思うのです。…何かあれば、こちらに知らせてくれれば新たな戦士を手伝いに向かわせましょう」
「ゾフィー隊長もありがとう。それで、一重に地球といっても、あそこには多くの国がある。もっと詳しくどの地域か、までは分からないのかな?」
そう尋ねると、うっかり忘れていたとばかりに手元の資料を見てゾフィー隊長は言ったのであった。
「地球の尺度で緯度35度、経度139度。――――名称は、日本の
そうそう、私はノヴァ。ウルトラマンノヴァ。
約5万年ぶりに故郷の星に向かうこととなったウルトラマンの名前だ。
ウルトラマンノヴァ
身長53m
体重4万1000トン
原作中年齢 4万9700歳
飛行速度 マッハ27
ブルー族のウルトラマン。外見はオルタナティブティガ(丸山浩のウルトラデザイン画集参照)の模様の赤部分を青に変えたような外見。
目はトリガーっぽい形と色。胸元にはアグルみたいな装飾(縁が銀色で中身が金色)の、カラータイマーがN型。
本人の比較対象がノアとかキング、父やベリアルにその他チートラマンなので、時間密度を人間のままで延々と鍛えたり、ブルー族由来の地頭と未来知識、或いはメタ視点から見た開発を度々行っているので、ブルー族の中でもかなり名を知られている。