ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:食卓の英雄
そう、拙作はお正月の恒例番組である『ウルトラマンDASH』から発想を得て書き始めた作品なのです。ちょっと字面が似ているでしょう?
怪獣やドラゴンは立ち去ったものの、森林火災は止むことはなく、夜半から降り始めた雨のお陰で、ようやく翌朝には森に入ることが出来るようになった。
森は一部分が大幅に抉れるような形で見通しがよくなり、怪獣とドラゴンの流れ弾がちらほらと歪な形を作っていた。
木の葉は焼け落ち、立木は黒い炭と成り果てた。焼け焦げた地面は、ぷすぷすと煙が上がり、未だ熱を保っていた。
「本当に生存者がいるんですかね?」
倉田の思わずといった言葉に頷きかけるほどには、その勢いは凄まじいものだった、ということだろう。
「でも、あのタイミングでウルトラマンが戦ったってことは、人を守るためかもしれないでしょ?」
そう言って、集落のあると思われる場所までは行ってみようと考えながら、進むこと二時間弱。
森が焼かれていなければ、半日は費やしたであろう距離を歩いただけに、その被害規模がどれだけ凄まじかったかが分かる。
すると、立木のない開豁地へと出た伊丹たちは、集落の残骸と思われる場所を発見する。
周囲を見れば、建物の焼け跡であったり、完全に崩壊して跡形もなくなった家であったりと、まともな家屋の形を保っているのは集落の中央に一つ二つあるくらいのものだ。
「こりゃ酷いねぇ…」
「どうしますか?」
「いや、そりゃあ生存者を探すけどさ。こんな被害の後なら警戒心もあるだろうし、火事場泥棒と間違われないように慎重に行こうかねえ」
栗林二等陸曹の言葉に肯定しつつ、そう方針を定めた。
中へ少しばかり入ると、建物の影になって分からなかったのだが、硬い地面をアイスクリームを削ったかのように深々と砕いている跡が見つかった。
縁に黒く固まった溶岩のようなものが張り付いており、昨日の内に桑原から聞いた『マグマ光線』と呼ばれるそれが本当ならば、あの怪獣は本当にアーストロンである可能性が高まってくる。
その勢いに戦々恐々としながらも、第3偵察隊は襲撃を警戒して、そして刺激を与えないようにとゆっくりじっくりと探索を続けていく。
「そういえば、これだけ燃えてるのに死体がないですね。もしかして、全員逃げたんでしょうか?」
「んー。まあ、家屋の下敷きになってるってこともあるだろうけど、一番は生き残りが埋葬したんじゃないかな?あのウルトラマンが現れる前から森は燃やされてたし、ウルトラマンも怪獣の相手した後は疲れたのか、森の火を消したりはしなかった。となると、あの燃える森の中で移動するような真似はしたくないでしょ。第一、見えてる範囲全部燃えてたから普通にムリムリ」
「それに見てよ」と近くの倒壊した黒焦げの建物へと指をさす。
「これ、斧か何かで切った後がある。江戸時代みたいに破壊消火をしたんじゃないかな」
「なるほど、意外と見てるんですね。てっきりふらふらと見るふりしてさぼってるのかと」
「あのねぇ」と何だか自分に当たりの強いような部下にため息をつきながらも、まあそう見られても仕方ない態度とかはとっているだけに強くも言えないのである。
そのまま軽く声かけをしながら集落の立地や被害情報などをまとめつつ歩いていると、人の生活音が聞こえてきた。
「二尉、向こうに人影が」
「第一村人発見ってところね。さぁて、鬼が出るか蛇が出るか」
栗林の言葉に目を向け、出来るだけ友好的な接触をと試みて、胸ポケットから手帳を取り出して、笑顔を作って近づいた。
『っ誰!?』
「っあ〜…。『こんにちは、何か、ありましたか。話、聞かせて下さい』」
「うわぁ…。何で昨日の内に練習しなかったんすか」
「いやいや、これでも昨日より上達したのよ?」
音に反応して、警戒するその人物を宥めるべく、手を挙げながら、それでいて一定の距離で停止して言葉を連ねる伊丹。辿々しいその語彙に倉田が呆れるも、暫く膠着状態を維持していると、向こうも敵意がないことが分かったのか、恐る恐るという形ではあるものの姿勢を楽にしていった。
若い少女の様な外見で、伊丹達が来た理由が先日の炎龍襲撃、及びに巨大怪獣の出現を見かけたからだと分かると、納得したように頷いた。
そこで、話を伺いたいことと、何か手伝えることがないかと聞けば、どうも案内してくれるのだとか。
そこまで範囲が広いわけではないので、距離的には大丈夫なのだろうが、顔見知りがいたほうが手早く話が進む。断る理由などなかった。
「エルフっすよ、二尉」
「エルフですねぇ」
少女の後をついていく合間に、倉田が我慢できないといった風にこそこそと耳打ちをしてくる。
その内容は、金髪のエルフがいることで、他の彼好みの種族がいる可能性が上がったという話であり、はっきり言って伊丹的には空想の中だからこそ楽しく見れていた節があるので、何となく言葉を濁しておく。
エルフの少女に案内されてたどり着いた先では、やはり同じく見目麗しいエルフ達が集まっており、どうやら移動の準備を進めていたらしい。
それも当然だろう。家々は軒並み焼け落ち、周囲の森も火事により殆ど消え失せ、その上で村の中には怪獣の放った光線による抉り痕や、逃げた際の穴がそのまま残されており、この世界の技術力を考えれば放棄以外の選択肢はほぼない。
幸いにも行き違いにはならずにすんだらしい。
『お〜い!みんな〜!』
『おや、テュカか?そろそろ出発の支度を始めなさい。………その後ろの人達は?』
こうして、第一村人の協力もあって、集落のエルフ達とは友好的な接触を迎えられた。
収集した情報によると、大きな建物が三軒と、中小の建物が二十九軒ほど。
この集落の人口は百人近くが住んでいたが、炎龍や謎の怪物のせいで30人程が死亡しており、今生き残っている68名の内、重軽傷者合わせて24名と、中々に酷い有様であった。
伊丹の読み通りに、炎に囲まれた夜中の森では踏み出すことも出来ず、あえて外周側を打ち壊すことで、中央部へ火の手が迫ることを防いでいたのだ。
その間に、死者の亡骸は動けるもので埋葬し、負傷者の応急処置をしていたのだとか。現に、案内してくれたエルフの少女(テュカというらしい)の父親も、足と肩の骨が砕けており、杖をついていた。
他にも、家屋の破片が突き刺さり目を失った者や、吹き飛ばされた結果尖った木材に当たり、腕が千切れた者もいた。
その凄惨な様子に苦々しく思いながらも、第3偵察隊は出来る限りの支援や救護活動に当たった。
この時は、黒川二等陸曹(看護師資格有り)による適切な救護が役立った。
その活動は彼らから、少なくとも悪い人物ではないと認識させるのには十分だったらしく、その後の情報収集もスムーズにいった。
特に、彼らを襲ったドラゴンが古代龍という存在の炎龍であることや、その存在の強力さ、希少さが知れたのはある意味では安心に繋がった。
ただ、肝心の怪獣に関してはエルフ達も何も知らないとのことで、その後に現れたウルトラマンのことも、ただ助けられただけであり、存在を知ってはいないようだった。
どうやら、集落に落ちたかのように見えた光は遠目に見たからか座標がズレていたらしい。
ただし、炎龍が現れる少し前に、奇妙な格好の男が3人ほど立ち寄ったということが判明し、伊丹達はその中のいずれかがウルトラマン、ないしはそれをよく知る人物だろうとアタリをつけた。
しかも、言葉が通じず、ましてや服装も特地で見られるようなものよりも、伊丹達が下に着るシャツの様だったと言われてしまえば、尚更その疑惑は強まった。
会話だけだが、思っていたよりはスムーズにいきそうだと安心する一行。更に、怪獣関連に対しても、これまで見たことも聞いたこともないならば、あれは特地で一般的に目にする光景という訳ではないということだ。
もしあれが日常茶飯事であるのなら、至急本部へ伝えて逃げ帰らなければならないところだった。
結局、最後には殆どのエルフは新たな住処を求めて立ち去り、逆に十二名程のエルフは伊丹達に興味があるのか同伴することになった。
本来の予定であれば、あと二〜三カ所の集落を巡る予定であったが、流石に怪我人や保護を申し出る人々を連れ回すわけにもいかない。
連絡用にアンテナを立てて本部にお伺いすると、微妙な反応ながらも帰ってこいという旨の返事が来た。
着いてきた中には、案内してくれた少女やその父親も一緒になっており、流石に怪我人は歩かせられないと一部を高機動車に乗せて、まずはコダ村を目指して来た道を遡るのであった。
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結局の所、コダ村まで戻った伊丹たちに村長が言ったのは、村を捨てて皆で逃げることだった。
エルフの集落が襲われ、犠牲者が出たことには痛ましそうに嘆いていたが、彼らにも彼らの生活がある。
古代龍たる炎龍が現れたとなれば、のんびりしてもいられない。村長はもしも知らせてもらえなければ逃げることも出来ないからと伊丹達に感謝の言葉を述べ、村人たちに呼びかけていった。
因みに、現れた怪獣のことを被害にあったエルフも交えて尋ねてみたが、結果は変わらず。めぼしい情報は何一つとして得られなかった。
いつのまにか、住処をなくしたエルフたちだけでなく、コダ村の住人たちをも巻き込んだ大所帯となった伊丹達一行。
出来上がった避難民の列は長く、そして自動車などという便利なものなどないので、老若男女すべからく徒歩だ。馬もいるにはいるが、避難民の数に比べれば圧倒的に少なく、その殆どが家財や荷物を運ぶための馬車を牽いているとなると、とてつもない時間がかかる。
人が多ければそれだけ時間はかかり、問題も起こる。さらに言えば、傷病者や落伍者も増えていく。
言葉の通じないなりに自衛隊として出来る限りの支援を続けていく内に、途中で長物を持ったゴスロリ少女や薄青色の髪の少女達に興味を持たれつつも、既にこの一行の旅路は三日を共にしていた。
そして、事件は起こった。
「畜生っ!追っ払われたんならそのまま逃げおおせればいいものを!」
何と怪獣に追い払われ、真逆の方向へ逃げ去っていった筈の炎龍が唐突に現れ、獲物を見つけたとばかりに避難民達に襲いかかってきたのである。
避難民達は恐慌状態に陥り、どれだけ声高に叫んでも統制は取れそうにもない。そんな慌てふためく人々は炎龍の吐く火炎に包まれ焼き焦げ、運悪く進路上にいた人は大きな口に噛み砕かれる。
桑原曹長が運転席の倉田に怒鳴りながら指示を飛ばす。高揚しているのか、その声には喜色すら混ざっているようにも聞こえる。
「牽制しろ!ライトアーマー!キャリバーを叩き込め!」
伊丹が叫び、村人を狙う炎龍にそうはさせまいと笹川陸士長が軽装甲機動車上で50口径の引き金を引く。撃ち出される12.7mmの銃弾は条件にもよるが22mmの鉄板すら貫通する威力の兵器であるにも関わらず、炎龍の背に当たったそれは火花を散らして弾かれる。
「全然効いてないっすよっ!!」
「かまうな!!当て続けろ!!撃て撃て撃て!」
遊戯用のBB弾を当たったとしても、死ぬ訳では無いが、それでも弾を浴びせられるのは嫌な筈である。
流石に怪獣ほど出鱈目な生物であるならまだしも、この炎龍は特地で見られた飛龍に類似した生物である。その身体構造などは既に研究されており、近い生物であるならば、これも嫌がらせ程度にはなる筈だ、と伊丹は部下たちに絶え間ない射撃を命じた。
その甲斐あってか、その衝撃を嫌がった炎龍は村人を取り逃がす。忌々しそうに首をふる炎龍だったが、放たれる火炎放射は周囲を走り回る車両を捕らえることは出来なかった。
エルフ達の何名かは弓を取って戦おうとするも、慣れない車両の揺れに翻弄され、また機関銃を連射している今上がるのは危険だと引き止められている。
背後からは、エルフの少女が声を上げ、伝わらない言葉ながらに瞳を指さして訴えかける。
「目を狙え!」
隊員達は龍の頭部を狙い始め、流石の堅牢な鱗を持つ炎龍も目は硬くないらしく、明らかに嫌がって顔を背けて動きが止まる。
「勝元!パンツァーファウスト!!」
その隙を逃さず、今ここにある最大火力をぶつけようと指示を出した。取り出されたのは110mm個人携帯対戦車弾。厚さ700mmの鉄板をもぶち抜く、個人携行火器としては凶悪な破壊力を有する武器である。
尚、当然だが怪獣に通じた試しはない。というよりこれよりもよほど強力なミサイルや砲撃で成果を得られていないというのに、わざわざ歩兵が近づいてこれを放つ理由がない。
そんな訳で、怪獣対策に湯水のように使われる兵器群や異世界の軍隊に放たれた銃弾の類に比べれば比較的使われていない武器でもある。
だがしかし、接敵してみた具合では、伊丹はこれが通用するのではないかと睨む。そもそも、巨大怪獣での成果をみるに、対戦車地雷や対艦砲、ましてやバンカーバスターすらも侵攻を食い止められない存在に比べれば、たかだか50口径の銃弾程度で嫌がらせが出来ている。
分厚く強固な背中ならばともかく、それこそ頭部や首などの急所に当てれば、その装甲を貫いて絶命させうると予測していた。
よって、重機関銃を撃っていた笹川陸士長に替わり、勝元三曹が上部ハッチから身を乗り出す。
先端部が重く取り回しの効きにくいそれを構えて、「後方の安全確認」と訓練内容に従って照準をつける。
そのワンテンポ挟んだ展開に馬鹿、とっとと撃てと誰もが呟いたが、自衛隊としては流石にそれを責められる謂れはないであろう。
だがここで、炎龍も自衛隊も、コダ村の避難民やゴスロリの亜神ですら予期せぬ事態が起こる。
「うわっ!!?」
「ぎゃっ!?」
『きゃあっ!??』
『っ!??』
『っ、これは!!?』
「何だ何だ!?地震か!?」
突如地面が大きく音を立てて揺れる。激しい揺れは車両の中にも伝わっており、体をぶつけながら何とか揺れに抗おうとする。
だがしかし、不幸なことに勝元の乗る高機動車の真下の地面が隆起する。
「のわあぁっっ!!?」
高機動車はその隆起によって車体を大きく跳ね上げられ、あわやあと少しで横転となる寸前だった。
幸いにして何とか態勢を立て直すも、その衝撃で勝元はパンツァーファウストⅢを落としてしまっていた。
「何やってるんですか!?」
「あの揺れでハッチから耐えろは無理だろ!!」
パンツァーファウストという切り札を地面に落としてしまった勝元へと非難が集中するが、逆に発射直前の姿勢のままあれほど車体が暴れてしまえば、振り回されるのも無理はない。
一体何が起こったんだと背後の地面を振り返る一行だったが、確認する前にその存在が雄叫びを上げた。
「ギィアァゴォオオオオ――――ッッ!!!」
その雄叫びに、覚えのあるエルフ達は顔を蒼白にして竦み、自衛隊員達は驚愕と焦りを覚える。
その他の者たちも三者三様であった。
コダ村の避難民達は炎龍すらも子供に見えるほどの巨体を持ちながら地面を割って出てきた存在へと困惑と畏怖、そして計り知れない脅威に絶望を。
若き賢者の卵は異様な存在にまず驚き、身を竦ませながらも考えを止めることはなく。
そして、亜神の少女は圧倒的な威圧感のそれに、長きに渡る生において感じたことがない程の緊張と警戒。そしてあれに己の力が通用するのかという、彼女にしては弱気な態度が首をもたげさせた。
―――『凶暴怪獣 アーストロン』出現。
ウルトラマンノヴァ裏話
一話で語ったように、宇宙警備隊発足前から開発などをしていたので、支部長時代も開発に関わっており、人間態から巨大化するベータカプセル、ウルトラアイ、カプセル怪獣のカプセルやセブンガーなどはノヴァ主導により創られたもの。
本人は自分がいなくとも当時の技術者ならば作れたと知っているが、作れると決まっているが故にコンセプトや役割を明確に決めて作り始めたため、かなりスムーズに開発が進んだ。
また、恒点観測員にカプセル怪獣を配備する案もノヴァが提案している。
このため、宇宙警備隊の支部長を辞めた後に直ぐ技術開発局に転向することもすんなりと受け入れられたという理由がある。