ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり   作:食卓の英雄

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彼の名は

 

「ディアッ!」

「キィアアアッッ!??」

 

 現れたウルトラマンノヴァが無防備なアントラーの横顔を殴りつける。急な衝撃に驚いたアントラーは悲鳴をあげ地を転がり、アーストロン、謎のウルトラマンも同様に乱入者を呆然と眺めている。

 

「ジュアッ」

 

 青い巨人、ウルトラマンノヴァはその隙を見逃さず、アーストロンの腹を蹴り、解放されたウルトラマンへと手を差し伸べる。

 

 その光景を見て、人々の心中は驚愕に見舞われる。

 

「あれは、俺たちの世界のウルトラマンだ!」

「特地にも来てるんですか!?」

「どうやって来たとか、なんとなく想像はつきますけど、とにかくこれで数では同じですよ」

 

 データを取っていた特災課はもとより、その光景はこの開けた草原ではどこからでも目にすることが出来た。

 

「伊丹二尉、アントラーが出てきたと思ったらウルトラマンも増えましたよ!?」

「普通に門突破されてるじゃないの…。いや、まあウルトラマンクラスなら何でも有りなんだろうけどさぁ」

 

 倉田が叫び、伊丹は「地球なめんなファンタジーしてたらファンタジーなめんな地球された…」と微妙に反応に困る発言をしていた。

 

『巨人が、もう一人…』

『あのクワガタムシは、ここにずっと潜んでいた…?炎龍すらも容易く殺せる存在がこうも頻出していいものなの…?いや、それよりあの二体の巨人も虚空から突然現れたように見えた。その理は一体どのような…』

『…なんて眩しい光の魂。すごいけれどぉ、ちょぉっと、眩しすぎるわねぇ…』

 

 高機動車の三人娘はこう言葉を残し、恐慌していた特地の人々は、距離を取って俯瞰したことで、むしろ恐ろしい巨大怪獣を相手取って戦っていることに気付き、ほっと息をついた。

 

 意思疎通も出来ないし、何を考えているかも分からないが、少なくともあの脅威から助けてくれたのだとだけ理解する。そして、光とともに虚空から現れた人知を超える力を持った巨人へ信仰の芽が出るのは自然とも言えた。

 

『緑の人達の様子を見るに、人間の味方らしいぞ』

『確かに、人を守るように動いてるのを見たよ!』

『姿を持つ光の巨神…』

 

 こうして、一度複数回に渡る命の危機から抜け出した安心感から、興奮したように語られたそれは人々に伝播する。

 

 一部はこの世界の神とはあまりに違うことから、胡乱げな視線を寄越すものもいたが、救われたことは事実なので、ありがたく拝んでいく。

 

 視点は戻って、へたり込むような姿勢の謎のウルトラマンへと、ノヴァが手を伸ばす。

 

 伸ばされた腕に、謎のウルトラマンは僅かに躊躇いがちに視線を彷徨わせるが、遠慮がちに伸ばされた手をノヴァは掴み取った。

 

『安心してほしい。君がウルトラマンオーブ本人でないのは分かっている』

『なっ、何でそれを…!?……って、あ!』

 

 掴まれたまま狼狽える様子を見せると、失言したとばかりに口を押さえた。

 

 ウルトラマン、いや、にせウルトラマンオーブは立ち上がった後も警戒するようにノヴァのことを見るが、軽く手で制して話す。

 

 話す、というよりは実際にはテレパスを使って他者には聞こえない会話をしているのだが、概ね話すで問題はないだろう。

 

『その変身の精度とコミュニケーションの容易さ。恐らく君はババルウ星人だろう?』

『そ、そんなことまで分かるのか…?』

『推測でしかなかったが、あっていたようで良かった』

『あっ、またやっちまった…』

『そう気を落とさないでくれ。……君が人々を守るために巨大化し、怪獣に立ち向かうのは私も目にしていた。君がいなければ、被害は甚大だったことだろう。礼を言わせてくれ』

 

 その言葉に恥ずかしげに頭を掻きながら、顎をクイッと動かす。

 

『いや、そんな…。で、でもよ。そうやって信頼を得るためにやってるかもしれないだろ?』

『それはない。見たところ、君の戦闘能力は……言っては悪いがあまり高いとは言えない。君達ババルウ星人は一定のダメージを食らえば変身が解けてしまうだろう?…その危険を冒してまで、何度も怪獣に挑むことをやめなかった。そこで信頼出来る相手だと思っただけだ』

『そ、そう…か。本物は言うことが違うな』

『誰かを守りたいという思いに、偽物も本物もないとは思うが』

 

 そう言うと、掌から輝く光球をにせオーブへと差し出すと、体に吸い込まれたそれはこれまで蓄積された痛みや疲労を打ち消していく。

 

『お、おお…。ウルトラマンってこんなことも出来たのか…』

『直接的に怪獣と戦う戦士には覚えている人が少ないから、知らなくてもおかしくはないさ。さて、あちらも立ち直ったようだし、戦うとしよう。アントラーは私がやろう。少しの間アーストロンは任せた』

 

 手を合わせ、奮起するにせオーブと、構えるウルトラマンノヴァ。

 二体の怪獣はひとまずこちらを脅威と見たのか、争うことなく先に排除することを決めたらしい。

 

「おおおお!!」

「デヤッ!」

 

 二体の怪獣と二人の巨人がぶつかり合う。

 

「ディッ!」

「キィアッ!?」

「グルラアァァ!!!」

「どわあぁっ!!?」

 

 その衝突の結果は真反対。アントラーは腹に飛び蹴りを受け怯み、逆にアーストロンの突進ににせオーブが押し負けて尻もちをつく。

 純粋な肉体スペックならアーストロンの方が上らしく、そのままのしかかられるそれを何とか下顎を掴んで踏ん張るにせオーブ。

 

 いきなりの劣勢に慌てるが、反してノヴァは冷静にアントラーの行動を封殺していく。

 

 アントラーの十八番は地中を潜航しての撹乱と噴砂攻撃。

 

 それをさせないために確実に隙を潰し、アクションの大きい大顎による攻撃は片側へ衝撃を与えることで平衡感覚を狂わせた内に懐に潜り込み投げ飛ばす。

 

 磁力光線を撃とうとすれば即座に姿勢を低くして腹部へと飛び込み、足元を掬い上げるようにして投げる。投げる。投げる。

 

 スペシウム光線すら弾いた自慢の外殻も、投げ技には無力。何度も転ばされ、計4度目、何とか受け身を取り、そのまま地底へと潜り込んでいく。

 

 砂煙を立てて、高速で地底へと逃げ込むアントラーを見届けたノヴァは、アーストロンに頭突きをされているにせオーブへと目を向ける。

 

『あだっ、あだだっ、ちょ、ちょっと助けてくれねえか!?』

 

 ノヴァは胸の前で手を水平に持ち上げ、顔の横で構えると刃状のエネルギーが円を描き光輪となる。

 

「ジャッ…!」

 

 放たれた光輪は綺麗に直進した後、二つの光輪に分裂すると、アーストロンの角と尻尾をスパッと切断した。

 

「ギィアァアァアァッッ!!?」

「おおっ…!」

 

 最大の急所である角を失くし、弱体化した上、姿勢制御に重要な尻尾が落とされてしまっては、最早にせオーブを抑えることなど出来ない。

 

 烈帛の気合と共に押し返し、逆に転ばし返したにせオーブが両腕を上げてノヴァへと礼を言おうと振り返る。

 そこで目にしたのは、ノヴァの背後の地面からゆっくりと現れるアントラー。その大顎を音を立てないように大きく開き、今にもノヴァの体を挟み込もうとしている。

 

『って危ねえっ!』

「デェアッッ!!」

「ギュイアアァァァ……ッ!!!」

 

 にせオーブが声をかけた瞬間、動いたアントラーだったが、ノヴァはそのまま半身を翻して迫る大顎へと肘と膝を上下から叩きつけるようにして食い止めた。

 

 否、食い止めただけでなく、その衝撃に耐えきれなかった顎が半ばからひび割れて圧し折れる。

 

 その完璧に合わせたタイミングで行われた技に、格闘技を齧っている地球の隊員からは「蹴り足ハサミ殺しっっ!?」と驚愕の声が上がる。

 

 折れた顎が宙を舞い、大地へと突き刺さる僅かな時間。それまでの間で決着は付いた。

 

 最大の武器が破壊され、たじろぐアントラーの腹を蹴り飛ばし、飛び上がったノヴァは腰だめに構えた腕を真っ直ぐに突き出した。

 腕からは螺旋リング状の薄青色の光線が発射され、アントラーの体に吸い込まれると、全身に光が浸透し爆炎を上げる。

 

『このっ、このやろっ』

「グルァッ、グルルァッッ!」

 

 ふらつくアーストロンの体を掴み、拳を叩きつけるにせオーブはノヴァが構えたのを見てアーストロンを思いっきり蹴り飛ばした。

 

 ―――ネビュラシウム光線。

 

 既に地球上でも幾多の怪獣を葬った必殺の光線がアーストロンを射抜く。アーストロンの頑丈な皮膚すらも穿ち抜き、その生命活動を停止させる。

 

 怪獣の脅威も去り、ノヴァとにせオーブは顔を見合わせると、お互いに光の玉となってどこかへと消えていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「…で、あんたがあのウルトラマン、なのか?」

「ああ、ウルトラマンノヴァ。この姿では新星 渡と名乗っている。よろしく頼む」

「お、おお、そうか。俺は…この姿じゃ馬場竜次って名乗ってる」

 

 所変わって、二人の巨人は人間そっくりに姿を変えると、互いの手を取って握手を交わしていた。

 にせオーブに変身していたババルウ星人の人間態は、黒髪の男性で、着ている服は所々汚れたり破けている清掃員の制服を身に纏っていた。

 

「……成程、オーブの姿に変身していたから恐らくはと思っていたが、やはり君がそうか。ババルウ星人としての名はババリューだね?」

「お、俺のことを知ってるのか?」

「ああ、勿論だとも。オーブ世界での記録として、私たち光の国のデータベースにも残っているよ。子どもたちのためにヒーローになったババルウ星人だと。実のところ、あれのお陰でババルウ星人に対する視点がいい意味でフラットになってね。ギャラクシーレスキューフォースにもババルウ星人のレイオニクスがいるんだが、否定意見が出なかったのもこの件の影響が強かったりするんだ」

「マジでかよ…!?」

 

 馬場竜次。ババルウ星人ババリューは驚きを顕にして声に出す。それもまた当然だろう。自身の無謀なヒーロー活動が、まさか他のウルトラマンにまで広がって、一組織の心象を変えるほどに至っているとは思っても見なかったのだろう。

 

「しかし、何故君がこの世界に…?」

「それが、地球で暮らしてた筈なんだが、急に変な歪みみたいなのに吸い込まれて…。気がついたら、地球よりも文明が未発達なこの星にいたってとこだな。……っと、そうだ!あんた、その格好と一緒にいた連中を見るに、地球の日本から来たんだろ?」

「…ここの調査のために地球人に扮しているのは確かだが」

「…よかった。じゃ、じゃあ、ちょっと着いてきてくれねえか?俺の連れに、地球から無理やり連れてこられたって奴が二人居るんだ。…鉱山みてえな所でボロボロになってたから連れてきちまったんだが、やっぱりあんたらみたいな組織に戻してもらった方が、こう、いいだろ?」

 

 ババリューのその言葉に、衝撃を覚えながらも、やはりかと想像の通りの事態になっていたことに険しい顔をする。

 

 ノヴァは銀座事件が終わった後にこそ現れたが、銀座事件という異世界からの侵略は念入りに調べ、その中でも地球側の人間が捕虜として扱われる。或いは奴隷として使われている可能性には思い至っていた。

 

 だからこそ、何の罪もない一般人がその様な目に遭っていることに対して義憤を覚えたものだ。それと同時に、鉱山という過酷な地で労働力として使われていた人物を解放したババリューへと一層の感謝を告げた。そして、「やっと地球に戻れるぞ」と肩を伸ばすババリューへと申し訳なさそうにある事実を告げる。

 

「すまないが、私のいる地球は君の知る地球ではない。私の担当している地球ではこれまでに怪獣や宇宙人による被害もなく、当然ウルトラマンオーブもいないんだ」

「な、は、…へ?」

「恐らく、君が巻き込まれたという事象によって、異なる地球と繋がるこの世界へと移動してしまったと思われるが……」

 

 そう告げると、ババリューはがっくりと肩を落として、それでも気丈に振る舞った。

 

「ど、道理で少し話が食い違うところがあると思ったぜ……。まあ、あいつらが元の世界に帰れるなら、悪いことじゃなかったってことだよな……」

「すまない。君を元の世界に戻すことは不可能ではないが、原因の究明が出来てない以上、下手に帰して手の届かない場所で何かあっても対応出来ないかも知れない。悪いようにはしない。出来れば、暫くは一緒にいて欲しい」

 

 「まあ、しょうがねえよな…」とババリューは言うと、気を取り直して攫われた二人の日本人が隠れている場所へと案内するのであった。

 

 その後、新星が日本から連れ去られた民間人3名を連れて戻ってきたことは特災課の面々に驚きと尊敬をもって迎えられ、看護資格を持つ黒川二等陸曹のいる第3偵察隊と合流しながら、彼らと共に、アルヌスの丘にある自衛隊駐屯地を目指すのであった。




という訳で、あのババルウ星人ババリューさん本人がオーブ世界から登場!
ババルウ星人ババリューは「ウルトラマンオーブ」第9話「ニセモノのブルース」にて登場した、惑星侵略連合が差し向けた刺客の一人。
ウルトラマンオーブに化けて悪事を働き、人間たちとの信頼関係を奪おうとしたが、直後に野生のテレスドンが現れ、これに対応している内に偶然逃げ遅れた子供たちを守り、それから色々あって、子供たちからヒーロー扱いされ、だんだんと正義の心に目覚めていく。
後は本編をどうぞ。
この話はニコニコ生放送で実施されたアンケートでは「1.とても良かった 98.9%」を記録するオーブを代表する名エピソードの一つ




ババリューに助けられた二名の日本人の名前はそれぞれ
「野上裕樹」「松居 冬樹」


ウルトラマンノヴァ裏話

実はスーパーウルトラマンの合体元になれる。なったことはない
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