ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり   作:食卓の英雄

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ニセモノ行進曲

 

 アルヌスの丘、中腹。

 

 自衛隊は進行するマグラーに手を焼いており、それでも僅かな抵抗が実を結ぶと信じて、飽和攻撃を維持していた。

 

 が、それも物資あってこそのもの。飽和攻撃では見る見る弾薬やミサイルが消費され、このままでは直ぐに弾切れになってしまう。

 

 故に、本土へと支援要請をかけたのだが、そこで知らされたのは渋谷での怪獣出現に伴い、支援に回す余裕がないということ。

 

 その一報に悲嘆し、葛藤に苛まれながら、通信機を繋げ始める。

 

 こうなっては真綿で首を絞めるようにじりじりと押されていくであろうことは容易に想像できた。故に、「脱兎」を発令すべきかと葛藤しているのだ。

 特地に派遣されている自衛官は、いざという時には全てを捨てて本国に帰還することが許されている。その緊急事態の発令こそが「脱兎」である。

 

 今はまだ対象と距離があるが、粘ればその分だけ撤退が遅れる。ならば、距離のある今、一斉に発令して退却すべきだと判断したのだ。

 

 そうして、狭間陸将は苦々しい顔を切り替えて、努めて真面目に指令を下した。

 

「全自衛官に次ぐ。本土に怪獣が出現し、支援は絶望的。この怪獣による侵攻を防ぐことが出来ないと判断し、「脱兎」を発令―――」

 

 しかし、そう口走った瞬間、夜空に出現した輝きが人の形となって固まった。

 

 マグラーの目の前に拳を掲げた姿で現れたのは、ウルトラマンの特徴を持った存在だった。

 

「あれは…!?」

「第3偵察隊と特災課の報告にあった外見と一致します…!ウルトラマンです!」

 

 現れた()()ウルトラマンオーブに向けて歓声が向けられる。

 

 ババルウ星人の変身能力は、外見だけならば親しい者が見ても気が付かないほどの精度を誇っている。

 

 まして、本物のウルトラマンオーブを見たことがない世界の者からすれば、挙動や行動の差も気にならないだろう。

 

 見れば、その光景を眺めていた自衛官や攻撃を続けていた部隊からもどよめきと歓声が沸き上がる。

 

 それもそうだろう。怪獣出現による被害は世界各地で発生したとは言え、絶対数はようやく2桁に差し掛かった程度。実際に怪獣と相対し、ましてウルトラマンを見たものは自衛隊の中でもごく少数。

 そして、それらに深く関わっている者は基本的に特災課へと流れ込んでいるために、殆どの人員はここで初めて味方の巨大戦力を目にすることになる。

 

 そして彼ら自衛官は大多数は男。年代層による差異はあるが、幼い頃にウルトラマンを見たことのある隊員が多数派だった。

 

 そんな驚きと好奇の視線を向けられながら、ニセオーブは気合を入れるように勢いよく腕を下ろすと、驚き戸惑っているマグラーへと踊りかかった。

 

 

●●●

 

 

 ニセオーブ、ババリューはマグラーの顔に勢いの乗った飛び蹴りを食らわせると、低い姿勢のマグラーの頭部へと組み付いて反対の腕で横顔を強烈に殴りつける。

 

 硬い皮膚に覆われているマグラーとて、それは他の強力な怪獣たちに比べれば取り沙汰されるほどのものでもない。

 

 そして、攻撃能力はというとそちらも頭突きや噛みつき、尻尾による薙ぎ払いなど、特に目立ったものはない。

 他怪獣のような光線や光弾もなければ、レッドキングやゴモラ程のフィジカルもない。

 

 ババリューがこうなるきっかけであるテレスドンや、あの一件で戦った宇宙凶険怪獣ケルビムに比べれば圧倒的に迫力というものに欠けている。

 

「うおおぉぉぉっ!」

「ギュエエェェェッ!」

 

 一時は押されていたマグラーだったが、気を取り直したのか、頭を強く振るって拘束を抜け出すと、ババリューの腹へと頭突き。

 

 これに一瞬たたらを踏むが、返す刀で顎を渾身のアッパーで打ち上げる。

 

 続けてキックを食らわせるも、硬いトゲに阻まれ効果を阻害されるばかりか、蹴ったババリューが足を抱えて痛みに悶える。

 

 その隙をついて長い尻尾による薙ぎ払いが横腹に打ち付けられる。

 

「ぐわあぁぁっ!」

 

 思わず声が出るが、吹き飛ばされる程重くはない。逆に、しっかりとその尻尾を掴むと、どうにか投げ飛ばす。

 

 地面に轟音を立てて落下したマグラーは、けれど諦めることなくババリューへと立ち向かっていく。

 

 元来臆病なマグラーが立ち向かってくるのは珍しいが、その前の攻撃などで苛立っているらしく、好戦的になっている様だった。

 

 その突進を受け止め、二の脚で踏ん張るマグラーを押し返していく。

 張り合うために立ち上がったマグラーの腹を蹴り飛ばし、距離を取ると、即座に航空機からマグラーへ向けてミサイルが放たれる。

 

 マグラーは急に視界が明滅したことに戸惑い、ババリューは驚いて空を駆るF-4戦闘機へと目を向ける。

 どうやら現れたババリューにより形勢が傾いたことで、撤退は見送りとなり、ババリューの援護へと舵を取ったらしい。

 

「よーし…!」

 

 再び威勢良く突進を仕掛けるババリューだったが、その突進が当たる寸前にマグラーは背を向けて硬いトゲを前面に押し出した。

 

「げっ!?」

 

 これには堪らず大慌てで急ブレーキをかける。何とかトゲに当たる寸前で停止することが出来、「ふぅ…」と一息つくや、振り返ったマグラーの頭突きをもろに受ける。

 

「のわあぁっ!??」

 

 これには堪らず吹き飛ばされてしまい、そのままマグラーにマウントポジションを取られてしまう。

 

 のしかかったマグラーはそのまま鋭い牙で噛みつこうとすると、それは上顎と下顎を押し返してどうにか回避する。

 

「こんの野郎っ!」

 

 だんだんと強くなる力。どうやらマグラーも脅威と判断しているのか無理矢理にでも攻撃を通そうとしてくる。

 ババリューも逃れようと足をバタつかせるも、マグラーの身体上届かない。

 

 次の瞬間、ババリューの左右スレスレを通った戦闘機が開きっぱなしのマグラーの口腔へとミサイルを叩き込んだ。

 

 流石のマグラーも無防備な状態で口の中で爆発が起これば応えるようで、黒煙を吹きながら咽ている。

 

 その隙に腕で押し返していく隙間を作ると、横に転がって抜け出したババリュー。

 

 再び向き直るが、やはりマグラーの身体は硬く、特にトゲがあるせいで中々攻めきれない。素手で思いっきりいってしまえば、先ほどのようにトゲを盾に使われて、こちらが不利になってしまう。

 

 ジリ貧だ。今はババリューが優勢を保てているが、決定打がない。テレスドンを追い返したのだって、互いに不意の遭遇で、撃破してしまうほどのダメージを与えたからではない。

 

 ババルウ星人には強力な武器や光線を扱う個体もいるが、ババリューはそのどちらも保有していない。そもそも当初の目的がオーブに化けて破壊活動をして人々の評判を落とすことだったので、オーブに似つかわしくない武器では不審に思われるからと、当時の上司であったメフィラス星人ノストラの宇宙船に置きっぱなしだったのだ。

 

 既にノストラは死に、宇宙船も破壊された今では、回収する術はないだろう。

 

 ならばと、ババリューは右手のブレスレットへと手をかけた。

 

 そのブレスレットは、元々ババリューが持っていたものではない。新星が地球へ帰る際に「何かあった時に」と渡していたものだ。

 

 ブレスレットの外見は、銀のリング上に赤や黒のラインが混じり、その中央には薄く光るO型の装飾が取り付けられている。

 

「確か、これをこうして…」

 

 説明通りその装飾を取り外すと、リングは瞬く間に槍の穂先に二つの湾曲した刃を備えたかのような武器へと変化した。

 

「これは、あの時の…!?」

 

 ババリューは手の中に現れた武器を見て驚いた。

 

 思い出すのは、ケルビムに負け、殺されかかった寸前に現れた本物のウルトラマンオーブ。火球を防いだオーブが攻勢に出た時に変えた姿。

 

 その形態で用いてケルビムを撃破した武器こそが今握られているものそっくりであり、一体どういうことかと驚いたが、その停止を好機と見たのかマグラーが勢いを着けて突進してくる。

 

「〜〜考えても仕方ねえ!この武器なら、こうだろ!」

 

 疑問を振り切り、オーブの真似をして構える。

 

 ババリューの姿はこれまでの赤と紫を基調として銀色が目立つ姿から、青と黒が基調で、銀や赤は手足のラインや、胸部から肩にかけてのプロテクターなどの周りにしか存在しない。

 

 そして何よりも、額のランプは紫紺から蒼に染まり、金色のラインがあった箇所からは二本のスラッガーが取り付けられている。

 

「何だあれは…」

「姿が変わった」

「タイプチェンジって奴か…!」

 

 ババリューが真似たこの姿の名前はハリケーンスラッシュ。

 

 あの時にしっかりと脳裏に刻み込んでいた姿へと、寸分狂いなく変身したのだ。

 

「でぇやあああぁぁ!」

 

 見様見真似でレプリスラッガーランスを構えて、マグラーへと立ち向かう。

 

 今度は正面からではなく、すれ違いざまに両手で斬りつける様にして振るう。

 

「ギュェェッ…!!?」

「ハッ…、効いてる…!」

 

 そうと決まれば、行動は早かった。レプリスラッガーランスを持ち直し、次々と疾風怒濤……というには普通の速度だったが、それでもババルウ星人。専門でなくとも、少し齧った程度の技量は備えており、次々とマグラーの体を斬りつけていく。

 

 レプリスラッガーランスは長物で、一定の距離を保ちつつ攻撃を当てられることが良かったのだろう。

 

 軽快に振り回し、斬りつけた末にその顎を蹴り上げる。

 

 これには堪らず後退るマグラー。これを逃しはしないとババリューは必殺技の準備にかかる。

 

「えぇっと、オーブはこうやってたよな…?」

 

 恐る恐るレプリスラッガーランスのレバーを2()()引き、その下にあるスイッチへと触れる。

 柄の球が高速で回転を始め、青と赤の線が纏わりつくと、刃先へと収束されて輝きを放つ。

 

 あの時に見た背中のように、槍を回しながらマグラーへと高速の斬撃の嵐を加えようと振り切った。

 

「うおおぉぉ!!トライデンとああぁぁぁっっっ!??」

「ギュエエエエエエエェェェェェェッッッ………!!?」

 

 瞬間、四度ほど斬りつけたタイミングでマグラーの全身にヒビが入り爆散。

 

 まだまだ斬りつける気でいたババリューは急な爆発に巻き込まれて地を転がる。

 

 それはそうだ。ババリューが使おうとしたのはトライデントスラッシュで、実際に放たれたのはビッグバンスラスト。

 

 トライデントスラッシュがエネルギーで強化した刃で高速の連続斬りを加えていく技だとすれば、ビッグバンスラストは刃に込めたエネルギーを相手の体内へと放ち爆散させる技。

 

 何度も斬りつけるつもりで突き刺さなかったため、本来100%伝わるエネルギーが中途半端になっている様だ。

 

 トライデントスラッシュを繰り出すには、レバーを3回引かなければならなかったのだ。

 

 放たれた爆発に巻き込まれて悲鳴をあげたが、マグラーの背後に回っていたために自衛隊からは見えなかったのが幸いだ。

 

 キーンと戦闘機の近づく音に慌てて立ち上がって態勢を整える。

 ババリューは白煙の中に残る影に気がつくと咄嗟にスラッガーランスを構えるが、そこには体中からぷすぷすと煙を噴き出しながら倒れ伏しているマグラーがいた。

 

 ババリューは生きていないかと恐る恐る近づくと、呼気を確認して胸を撫で下ろした。

 

 マグラーは完全に死亡していた。本来であれば深く突き刺し、高エネルギーを送り込む技だが、斬りつけた瞬間にしか効果を発揮せず木っ端微塵に粉砕する程の威力にはならなかったようである。

 

 自衛隊からは生死の判別がつかず、期待の面持ちで様子を伺っていたが、ババリューがスラッガーランスをブレスレットに戻すと、わっと歓声があがった。

 

 特地に来ている自衛官の人数は2万5000人。急な襲来に展開が遅れている部隊などはあるが、それでもその半数以上からあがる万雷の喝采には、ババリューも思わず動揺してしまう程。

 

「総員っ!怪獣を撃破し、我らと駐屯地を救ってくれたウルトラマンに、敬礼っ!」

 

 狭間は握りしめていた通信機に指示を出す。

 

 上官からの指令に、盛り上がっていた一部の下士官も表情をきりりと引き結び、一斉に敬礼を向ける。

 

 その意味が通じたのかは、ババリューのいた地球での知識次第であったが、鷹揚に頷き返すと、必殺技の行使にエネルギーを使ったのか、体から粒子が漏れ変身が解けかける。

 

 大慌てで巨大化を解除し、光の球となって去っていく姿を、自衛官達は光が見えなくなるまで敬礼の姿勢のまま見送っていた。

 

 

 

●●●

 

 

「ジュワッ!」

 

 渋谷を襲撃した怪獣の目の前に現れたのは、これまでに一切の情報がないウルトラマンだった。

 

 どこか映像作品のにせウルトラマンや、悪のウルトラマンであるベリアルの様な意匠に、信を預けていいのか戸惑う司令部だったが、デマーガは待ってはくれない。

 

 自身と匹敵する大きさの存在が現れたことで驚いた隙も消え、デマーガは溶鉄光線を現れたウルトラマンへと放った。

 

「ジュワジャッ!」

 

 しかし、謎のウルトラマンはこれをバリアーを張って対応する。

 

「ジュァッ!アヅヅァッ…!?」

 

 バリアーを通して伝わる熱量に苦悶の声を上げるも、放射時間全てを耐えきってみせた。

 

 その後隙を逃さず腰を落としてデマーガを市街地から引き離す動きを見せたのだ。

 

「あれは…」

「少なくとも、怪獣から守ろうとしているのは確かな様だ」

「…各機、あのウルトラマンを援護しろ。村崎隊員はレイラインエネルギー砲の整備を急げ!」

 

『『『了解!』』』

 

 威勢のよい返事と同時に、デマーガの視界を奪うように攻撃を加えていく飛行隊。現れたウルトラマンはそれを邪険にすることなく、キックやタックルを駆使してデマーガの反撃を食らわないように立ち回っていた。

 

 攻撃しようにも、視界を塞がれるのは手痛いことらしく、デマーガは上空の飛行隊へと攻撃の矛先を向けるのだが、その隙をついて角へと強力なチョップが炸裂する。

 

 この一撃に悲鳴を上げて後退るデマーガ。対するウルトラマンは熱かったのか手を軽く振っている。

 

 互いに体勢を立て直したのは同時。膠着状態が続く。

 

 じりじりと駆け引きが行われ、互いに誘い込むように一歩踏み出しては構え直す。

 

 膠着状態を破ったのは、ウルトラマンの方からだった。

 

 指先から青い光弾を発射して意表を突くと、怯むデマーガへ向かって飛び蹴りを食らわせる。

 

 デマーガは堪えた様にたたらを踏む。しかし着地したウルトラマンは攻めの手を緩めない。

 

 着地した姿勢のまま膝をつき、指先から先程のように青い光弾を発射し続ける。

 当たった破壊光弾は火花を散らし、デマーガにも痛手を与える程。……だが、予想とは裏腹にデマーガは光弾が直撃しているにも関わらず、その中へと突っ込んできた。

 

「ジュ、ジュアッ…!?」

 

 この捨て身の突進には動揺してしまい、動きを止めてしまう。当然、避けることも間に合わずにそのままデマーガへと押し倒されてしまう。

 

「ギュィォォオオォォオッッ!!!」

「ジュワァァァッ…!!」

 

 跨ったデマーガが追撃にと繰り出した咬みつきを左腕で防御して、拘束を緩めるよう手を尽くすが、逆にその抵抗がデマーガへと危機感を募らせ、更に噛む力は強くなっていく。

 

「ジュワアアァッッ…」

 

 痛みに悶えるウルトラマンに、勝ちを確信したデマーガの喜色が伝わって来る。

 

 恐ろしいことに、デマーガは念入りに仕留めようとしているのか、噛みついたままに溶鉄光線を放とうとしているのか、背鰭が熱に満ちていくように赤熱化し、口腔が紅く燃え盛る。

 

「ジュ…ジュア…!」

 

 腕が燃え盛るように熱く、既に逃げられないこの状況に、もう駄目だと右腕で顔を覆ってしまう。

 

「発射ぁ!ってー!!」

 

 しかし、諦めかけた次の瞬間、勇ましい声が轟き、バチバチと稲妻状の強力なエネルギー弾が目の前で炸裂する。

 

「ギュイアアッッ!?」

 

 デマーガの角に当たったそれは期待通りの効果を見せ、怯んだデマーガが腕を離し体が持ち上がる。

 

「…フゥァッ!!」

 

 自由を取り戻した体でデマーガを殴りつけ、右足で蹴り飛ばして体を後ろへ飛ばす。

 

 バク転して立ち上がって、件の声の聞こえた先を見ると、ぷすぷすと煙を上げる巨大な砲と、それを発射したと思わしき一人の特災課の隊員がこちらを見つめていた。

 身につけているのは、黒いベストと赤いスーツであり、双方共に怪獣の肉体を加工したものであることから、直ぐに特地派遣分隊であることが伺えた。

 

 その彼は、こちらへ向けて声を荒げ、合図を出していた。

 

「今です!!」

 

 その声に頷き、ニセウルトラマンジード(ザラブ星人 ザイン)は手を下に向けて交差させ、バチバチと紫電を纏わせる。

 

 それと同時に、彼はウルトラマンノヴァとの会話の一部を思い出していた。

 

―――…

 

 それは、彼の知る怪獣の情報やウルトラマンたちをファン心増し増しで紹介してもらっていた時のこと。

 

「おお…。やはり様々な次元にもウルトラマンが…。……おや、このウルトラマンは?どうにも目が荒々しいような…」

「ああ、彼か。彼の名はジード。ベリアルの息子でとても心強いウルトラマンさ」

「ベ、ベリアルの…!?それはそれは、確かに言われてみればかなり似て…。しかし、ベリアルの息子ともなれば、相当な苦難に襲われたのでは?」

「……確かにね。息子といっても、彼はベリアルの復活を望む信者の策謀によって生まれたデザインベイビー。いわば復活のためだけのウルトラマンの模造品として造られてしまったんだ」

「なんと…」

「悪の戦士の模造品として、利用されるためだけに造られたという残酷な出自を持ちながら、それでも人々との関わりを通じ、歩みを進め、人々を守るために前に進み続けた。彼自身の心の強さによって、運命の呪縛を解き放ち、最後にはベリアルすらをも“親子”として決着をつけた、若く強きウルトラ戦士さ」 

「ウルトラマン、ジード…」

 

―――…

 

 ザラブ星人ザインは過去にウルトラマンに憧れて変身をしてみたが、どうしても目の吊り上がりと体の黒ラインが隠せなかったことから、似た姿のそれが最初は気になっていただけだった。

 

 しかし、話を聞くにつれ、悪に生まれ、偽物でありながら、全てを覆したウルトラマンの姿にどこか自身の姿を重ねていた。

 宇宙全土を巻き込んだ宿命を背負っていた当人からすれば比べ物にならない小さな物かもしれないが、勝手ながら感情移入してしまっていたのだ。

 

 それに、変身者がヒーローに救われ、憧れていて真似ているというのもザインポイントが高い。多分気が合うと思う。

 

 故に、その姿を勝手ながら借り受けたのである。

 

 回想は終わり、クロスさせた両手を高く掲げたザインへと、立ち直ったデマーガが隙と見做して襲いかかる。

 

 されど、ザインは慌てることなく両手を大きく広げ、上体を軽く逸らして唸る。

 

「ハアアアアアアァァァァァ――――!」

 

 紫の稲妻が体中を駆け抜け、その両手に凝縮される。

 

 腰を低く落とし、右腕を縦に、左腕を右腕の前に十字になるように交差させ、ピンと指を立てて叫んだ。

 

「レッキングバーストオオォォォォ―――――ッッ!!!」

 

 直進する青白い光線の周囲に紫の電撃が走るそれは、正しく必殺光線であった。

 

 直撃を受けたデマーガは暫く耐えるような素振りを見せたものの、光線を放ったまま軌道をそらされ、頭部の角へと集中するとたちまち角が粉砕され、そのまま撃ち倒されたのであった。

 

「ハア…ハア……」

 

 ザインは息を整えながら、逆転のきっかけとなったレイラインエネルギー収束砲を放った村崎へと頭を下げると、ボロが出る前に素早く地上を飛び立ったのであった。

 

 

●●●

 

 

 

 メキシコ、渋谷、そして特地。

 

 ほぼ同時刻に三つの土地で怪獣が出現したという大事件は大々的に報道され、ウルトラマンでも遠く離れた地で戦っていれば駆けつけられないということから、各国はより一層怪獣に通用する武装や作戦の開発が急がれた。

 

 その反面、明確に怪獣へと有効打を与えることが出来たレイラインエネルギー収束砲は、人々に期待を抱かせるには十分だった。

 

 そして、それよりも目立つ記事が見出し付きで目に入った。

 

『3大怪獣、3人のウルトラマンが撃破!』

 

 いつ撮影されていたのやら、それぞれが必殺技の構えを取った状態での写真が一面を飾っていたのであった。





はい、というわけで予想されていた方もいらっしゃいますが、謎のウルトラマンとはザラブ星人ザインが化けたニセウルトラマンジードだったわけです。
ザラブ星人特有の変身後の目つきの悪さや体の黒ラインがジードであれば自然なことと、その境遇から、ザインを登場させた時には既にジードだと決めていました。

それに、ババリュー=ニセオーブ。
オーブの次のウルトラマンはジードでしょう?

因みにザラブ星人の光線ですが、ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟でニセメビウスに化けたザラブ星人は光弾も使えたし、ゲームではメビュームシュート(色が紫だが、∞のマークが出てくるのも同じ)まで放つことが出来る。
ザインはファンなので、格闘戦や光線はかなり練習してました。
このニセレッキングバーストの威力は大体物語序盤のメビウスのメビュームシュートくらいです


『ウルトラオーブブレスレット』
ノヴァが作ったウルトラブレスレットのオーブバージョン。試作品のため、ウルトラランスなどからデータをとったレプリスラッガーランスと、オーブカリバーのカリバーホイールやオーブリングを模した形の盾にしか変形できない。
今回はババリューの攻撃能力の低さを補うために渡された。実は念の為、故意に悪事に使おうとした場合にはロックがかかって電撃が流れるようになっている。
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