ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり   作:食卓の英雄

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噂話

 

 特別指定災害級生物対策課第2工廠。

 

 突如として現れ、急増する怪獣災害に対応するための武装の開発や研究を行い、人類の期待を一身に背負う部門でもある。

 

 第1工廠はロボット怪獣(ギガデロス)の保存と研究解析に殆どのスペースを使用しており、現行の開発は専らこちらで行われていた。

 

「駄目です!出力想定から56%低減!」「安全装置は?」「もう起動しました」「ボディに深刻な損耗確認!」「耐久試験との差異は?」「大幅な出力低下に加えて経路の短縮で威力は落ち、逆に負荷は上がっている様ですね」「実用段階には遠い、か」

 

 そして今行われているのは、先日活躍したレイラインエネルギー収束砲の改良である。

 

 元の実験機のままでは土地に与える被害が大きかったことから、より威力や規模を抑え、安全装置を搭載して負荷を減らしつつ有効な攻撃手段として目下改善中である。

 

 今のところ怪獣に通用した唯一の手段として開発が進められており、しかしながら単純な小型化とも別の技術が必要とされるために試行錯誤が続いている。

 

 また、それらとは別に対抗しうる兵器の開発は進められており、レールガンや荷電粒子砲といった武装に注目が集まっていた。

 

 やはり、効率がよく、実際の発射にもコストがかからないレイラインエネルギーは、しかして地球にとって大切な要素であり、代替の利かないものだ。コスト面で圧倒的に優れているからといって、蔑ろにしていては本末転倒だ。

 

 特に、レールガンの小型化と威力の増大に関してはこの度のブレイクスルーによって実用化一歩手前まで進み、空想科学の域を出なかった荷電粒子砲も、一人の天才科学者がギガデロスから得られた技術の一部から転用出来ることを証明した。

 

 現在は理論実証中とのことだが、仮にそれを搭載した兵器が出来れば、また目標に一歩近づくだろうと言われている。

 

 客観的な事実として、これらを解明したのはれっきとした地球人である。これには紛れ込んでいる宇宙人ですら地球人の飛躍に驚いている程だ。

 

 また、それ以外にも既存の兵器などの改良、対怪獣への特殊装備なども鋭意制作中だ。

 特に、ミサイルの類ならばともかく、実弾兵器は単純な硬度が怪獣相手に押し負けることから、新たな素材や組成などが使えないかと研究中とのこと。

 

 要は、あらゆる方面から怪獣に特化した装備が造られているといっても過言ではない。

 

「胸部装甲の機構の精度は?」

「十分です。ただ、そうなると関節部の兼ね合いで総合的な強度が低下してしまいます」

「それはこちらでなんとかする。出来るならいいんだ」

「主兵装の並行開発は困難ですが…」

「別の部署に回してくれ。特に、レールガンと荷電粒子砲は備えたい。向こうも乗ってくる筈だろう」

「はい!…それと、重量制御とスタビライザーの件ですが、未だに問題点が多く、起動は難しいとのことです」

「わかった。私が見てみよう」

「すみません、お願いします」

 

 そしてここ、一般には知らされていない第3工廠内にて、極秘で進められている計画があった。

 

 『対怪獣特殊戦術機甲』。

 

 連続する巨大怪獣による被害を食い止めるため、同等の体躯を持つ大型兵器による鎮圧、行動の停止を試み、被害の低減や復興の支援を行うためのものである。

 

 ロボット怪獣であるギガデロスという例があることから、技術の流用で似たような存在を作ることが可能だと立証された。最初はギガデロスを修復し、再利用するという案もあったのだが、仮に暴走でもしたらそれこそ手が付けられない。故に、怪獣相手に十分な能力を持つ新たな機体を作成し、抑えることが目的とされている。

 

 特に、ブラックボックスだらけのギガデロスに比べると、自分達で作り上げたという機械の方が信用に値するのは当然だろう。

 

 そして、これまた当然ながらこの極秘プロジェクトを任されたプロジェクトリーダーは技術力に秀で、国の役人からもその立場を推薦されている程のものだ。

 

 その名も斎藤斬無。優秀な技術者で、ギガデロスに用いられている設計図を一部転用し、解析した若き天才科学者。

 

 しかしながら、その正体は日本政府に入り込んでいるメフィラス星人によって斡旋された異星人。脳魂宇宙人、ザム星人なのであった。

 

 とはいっても、彼はウルトラマンネオスに登場した個体のように人類への敵愾心といったものは皆無だ。第一、作中での敵対も逆恨みとは言え追い込まれた末に首領を失った事が原因。

 

 元からザム星人自体は侵略的な思想を持つ宇宙人ではないのだ。

 

「ここは…転用できそうだな。こちらの設計図は…。うん、非常に良くできている。これを作った宇宙人(科学者)は天才だな」

 

 中でも、彼は科学者タイプのザム星人。優れた科学力を持つこの異星人から見ても、ギガデロスの出来は素晴らしいの一言。特に初飛来時に見せた光線を吸い取り己を増殖させる機能など、どのようにして作ったのか見当がつかないと匙を投げるほどであった。

 

 そんなザム星人が、何故このようなプロジェクトに関わっているのかというと、人類の対抗戦力の開発のためである。

 

 ギガデロスの解析や、地球人では発見の遅れている理論や技術力を見込まれてのことで、更に言えば、地球人が余計なことに手を出しそうになった際のストッパーも兼ねている。

 

 要は、怪獣に対抗できるロボットを作りつつ、行き過ぎた力に手を出さないようにしているのだ。

 

 人類にとってはかなり有り難い存在なのだが、実はザム星人にとってもメリットのある話である。

 

 このザム星人、宇宙で一人放浪していた所、宇宙船の故障で地球に不時着。宇宙船は分解され、地球では必要な素材を集めるにも苦労したものの、メフィラス星人に身分を保証されながら日銭を稼ぎ、危険の少ない地球での生活はザム星人には苦ではなかった。

 

 しかしながら、ファーストウェーブ以降は事情が変わった。彼の保証人であるメフィラス星人はどうか知らないが、ザム星人は科学者タイプ。巨大化したとして、怪獣には敵わないのだ。

 

 その癖、この地球に怪獣への対向戦力がないのであればどうしようもない。

 

 故に、ギガデロスの存在を確認した時からメフィラス星人に頼み込み、どうにか身を守れる状況を手に入れようと奮闘しているのである。

 ついでに言うと、こうして恩を売っておけば帰還や宇宙船の修復にも協力して貰えるかもしれないという打算もあったが、何れにせよ、地球人たちにとっては心強い味方であることに変わりはないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 マグラー襲来から、暫く巻き戻る。

 

 

 炎龍が討伐された。

 

 そんな話を聞くと、誰もが「そんな筈がない」と一笑に付した。

 今まであらゆる英雄、賢者や国々が挑んできて尚、その障害を取り除くことは叶わなかった。

 英雄や国が柔弱であった、などという話ではなく、純粋にそれらをもってしても勝てない相手だったというだけだ。

 炎龍を始めとした古代龍の存在は、かつてから人の力では抗し得ないという意味で天災と並び立てられた。豪雨や落雷による災禍と同じ様に、運が悪かったのだと諦念という形で受け容れられてきた。

 

 ゆえにこそ、その様な噂話は眉唾ものとして誰もが疑ってかかった。

 龍を制するドラゴンスレイヤーなど、それこそ御伽噺の中にしかいないというのが常識だからだ。

 

 けれど、そんな中にて突如として流れた噂話。凌いだ、撃退したというだけでも驚きなのに、「討伐した」と明言されてしまっている。

 あまりに荒唐無稽な話に出来の悪い冗談だと流す者もいたが、流石に様々な方面から伝わって来ると、人々はどうにか受け入れる様になってきた。

 

 ただし、噂には尾ひれがつくものだ。故に「もしかすると本当なのかも知れない。ただ、炎龍というのは間違いではないか?」と都合良く考えたのである。

 

 まあ、これには炎龍の活動時期が五十年ほど先と言われていたことと、古代龍を倒すと言われてもそんな代物が想像できなかったから仕方ないのかもしれない。

 よって、人々は炎龍には劣るものの、大型の亜竜ないしは新生龍だったのではないかという考えが説得力をもって迎えられた。

 

 とはいえ、亜竜と言えども齢を重ねたものは古代龍並みに大きくなるし、新生龍も翼竜などよりも遥かに巨大で危険なのだ。従って、それを撃滅したというのは正しく「龍殺し」に次ぐ「竜殺し」といっても良い。

 避難民の六分の一が行方不明、ないしは死亡というのも、「よくぞその程度で済んだものだ」と受け止められた。

 

 この世界では、人は余りに弱く、死とはそういうものなのだ。平和も安全も当然のものではなく、だからこそ人では対抗せし得ない災害を打ち払った者を讃えるのである。

 

 故に、こそだろう。巨大な龍の倍以上の大きさで、龍の攻撃をものともせずに、たった一撃で一蹴してしまう怪物と、それすらをも打ち倒す光の巨人の話など、気が動転していたとまるで真剣に受け止められず、それよりもまだ信じられる噂のほうが強調して広まったのは。

 

 さて、そんな話を広めたのは、当然何とか逃げ延びたコダ村の避難民達だ。

 

 立ち去る自分達が見えなくなるまで手を振っている自衛官達の姿を見ると、村人たちは苦笑を押し留めておくことは出来なかった。彼らの献身と無償の支援は確かにありがたい。ありがたいのだが、そんなことで「連中は果たしてやっていけるのだろうか?」とそんな呆れた気持ちになるのだ。 

 

「いくらなんでもお人好し過ぎだろう?……あんなことで、やっていけるのかねぇ」

「他人の心配してる場合じゃないぞ。俺たちだって、これからどうしたらいいのか…」

「ま、いくら領主や貴族が馬鹿でも、あれほど腕の立つ連中をほっとくわけないさ。いくら傷ついていたからって、炎龍の首を一撃で吹き飛ばしちまうような強さを持ってるんだからな」

「……炎龍といや、あの化物達の方がよっぽど怖いさ。あの人達はあれを知ってたみたいだし、後に現れた巨人のことも知ってる様子だった。…きっと、炎龍を倒したってのにあんな顔してるってことは、あんな化け物が他にもいたんだろうさ」

「はっ、炎龍が子供に見えるような化け物がうじゃうじゃしてるとか、誰に言ったって信じやしないぜ」

「違いない」

 

 とりあえず、一風変わった衣装と価値観、そしてあり得ない程の強さを持つ傭兵団(自衛官達)の道行きに幸運があるように、とそれぞれの神に、そして、あの化物すらも倒してみた巨人へと祈ることにした。

 

 因みに、コダ村住民の幸運はこれで終わりではない。

 

 彼らは行く先々で人々から噂の証言を求められることとなる。

 

 彼らはプロの吟遊詩人ではない。語彙も少なく、描写も下手くそ。しかしながら、その目で見た光景、体験談には脚色は不要だった。

 

 見てきた事実なのだから、どうこうという問いにも答えられ、また、ほぼ全ての避難民の脳裏に戦闘のあらましが鮮烈に記憶に残っていることだから、情報も多く、整合性が取れていると見るや、徐々に信頼度は上がっていった。

 

 そして、傷ついたドラゴンの首が吹き飛ばされる瞬間など、みなが固唾を呑んで呻くのだ。

 

 まあ、そんな内容は伝播していき、人々は行く先々で「コダ村から来たんだって?」と呼び止められてはその時の話を尋ねられる。

 口によって語る言葉が違い、目にした描写も変わる。それがまた、不思議な立体感をもたらしていた。

 

 コダ村の住民たちは、語り部の仕事だけでも、帰村するまでに食べるに困らなかったと言う。

 

 また、人々は必ず途中で最後に恐ろしい怪物と巨人の話をするのだが、「流石にそれは盛りすぎだろう」と笑われるのであった。

 




というわけで、新たな友好宇宙人『脳魂宇宙人 ザム星人』です。
ウルトラマンネオスパイロット版、及びに第2話『謎のダークマター』で初登場の宇宙人。
本人たちも巨大化できるし、科学力も優れている種族です。因みに、ネオス本編中では、ダークマターの影響で母星の生態系が乱れ、怪獣の支配する星になってしまったため、母星を守る為ダークマターの力を得ようとするが失敗し、暴走してしまう。
暴走した本人との約束で、ネオスは彼を倒すのだが、そんな状態でリーダーを倒された他のザム星人がネオスを恨み…という具合で因縁が出来てしまう宇宙人。
このベースではダークマターによる生態系の乱れや怪獣出現などもなく、善良な宇宙人とされている通りに敵愾心はない。
打算はあるが、ちゃんと地球人たちと協力して開発に勤しんでいる。
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