ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり   作:食卓の英雄

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2話目


異次元からの来訪者

 

 その日は、蒸し暑い日であったと記録されている。それと同時に、人類史上における、異界の者との初めての接触としても、だ。

 

 気温は三十度を超え湿度も高く、にも関わらず、土曜日であったためか多くの人々が都心へと押し寄せ、買い物やウインドウショッピング、或いは何かのイベントを楽しんでいる。

 

 ここは銀座。日本の首都東京都中央区に位置する眠らぬ街である。

 

 さて、そんな週末ではよく見る当たり前の日常を謳歌していた人々の前に、その日、非日常が飛び込んできた。

 

 午前十一時五十分。人通りの多いスクランブル交差点のど真ん中、何の兆候もなく突如として巨大な構造物が出現する。

 

 それは正しく【(ゲート)】であった。

 

 事態を飲み込めず、ただ唖然とその場に現れた門に注目を集めていた人々だったが、悲劇はそこから始まった。

 

 門が開き、そこから現れたのは中世ヨーロッパに見かけるような鎧を身にまとった集団と、武器を手にした異形たち。

 

 事態の把握も出来ずに立ち止まっている民衆へと襲い掛かり、赤い花を咲かせると、数瞬して悲鳴が、恐怖が、混乱が伝染する。

 

 現地にいた人々は老若男女問わずに攻撃され、唯一武器を持っている警察もその異様な光景に腰が引け、為すすべもなく殺されてしまった。

 

 平和だった筈の日本で起こった惨劇。それだけでなくその集団は移動を始め、逃げゆく人々を殺して回ったのであった。

 

 

 

●●●

 

 

 

 伊丹耀司はオタク自衛官である。

 

 これは彼を知る誰に聞いてもその趣味に言及する程の重度なもので、所謂オタク趣味というものに情熱を注いでおり「趣味の合間に人生」と自信満々に言い切るほど。

 

 そして、そんな彼は真夏の同人誌即売会へと参加するために、新橋駅でゆりかもめを待っていると、門から来た軍勢による殺戮事件へと出くわしたのである。

 

 警官に襲いかかる鎧姿の兵士を投げ飛ばし、即座に奪った短剣で喉を突いて仕留める。

 突然のことに、何が起きているのか分からず逃げるばかりで、指揮系統も混乱している。そのために命令が遅れ、自衛隊の出動もままならない。

 

 故に、伊丹は付近の警察へと呼びかけて人々を皇居へと避難させることを決断した。

 そんなことできるわけがないと言うものもいたが、何もしなくては無駄に犠牲を増やすだけだ。皇居警察からの文句もあったが、皇居に住まわれる方々の言もあり、無事避難が完了する。

 かつては敵を迎え撃つ城塞であった皇居は、中世レベルの技術力しか持たない彼らの足止めをするには充分であった。

 

 それから少しして、皇居にある近衛と称される第一機動隊と、市ヶ谷から自主的に出動してきた第四機動隊、そして指揮権が戻ったのか、陸上自衛隊から航空科のヘリ部隊が到着した。

 

 これまでに置いて市民や現地の警官を虐殺していた頃とは一転し、制圧のプロである機動隊に加えて、武装したヘリを出されては、あちらの技術ではどうにも出来ない。

 

 対人火器では効果の薄いジャイアントオーガーも、上空からの機銃の掃射には無力だった。敵唯一の航空戦力である飛竜も、近づく前に蜂の巣に。

 中には魔道士が礫を飛ばしたり、弓を持つ兵士が射掛けるが、ヘリの飛んでいる高度に達せず、或いは装甲に阻まれ、その勢いを削ぐことすら叶わないまま散っていく。

 

 最早、戦況は決まったも同然だった。

 

 門からやって来た兵士たちの指揮官は、まるで悪夢を見ているような気分であった。最初こそ抵抗すらさせずに意気揚々と侵略出来ていたが、遅れてやって来た鋼鉄の天馬が、無慈悲に、圧倒的な力でこちらを刈り取っていく。

 

 人類を遥かに超える怪異も、飛竜の鱗も、鋼鉄の鎧すらまるで効果を発揮せずに、瞬く間に数百人単位で死んでいく。

 これはどういうことだ。戦う力すらない蛮族ではなかったのか。などと疑問が泡のように浮かんでは弾けて消えていく。

 

 しかし、彼らの悪夢は終わらない。

 

 彼らの想像の埒外、否、日本側としても全く予想だにしていなかった事態が発生したのであった。

 

 突如として、空に大きな波紋が広がる。

 

『ひっ、そ、空が…!?』

『まさか、こちらの神を怒らせてしまったのか…!!?』

『待て!落ち着け!まだそうと決まったわけではない!奴らのこちらを動揺させる作戦かもしれん!』

『で、ですがあんなもの神の御業としか…!』

『ぐ、ぐうぅ…』

 

 その異様な光景に、彼らは己たちの知る超常存在()による力の行使に重ね、慌てふためいている。指揮官が冷静になれと激を飛ばすものの、やはりその不安はその程度の言葉では解消できずに混乱だけが広がっていく。

 

 そして同時に、その現象を皇居に避難していた人々や、出動していたパイロットらも観測していた。

 

「な、なんだあれ…」

「オーロラ、じゃないよな」

「また、何か起こるのか…?」

 

『こちらアタッカー1、あの妙なのが見えてるか?』

『ああ、こちらでも観測できている。何だってんだよ。真夏日の日本ど真ん中にオーロラだと?』

『馬鹿野郎、気を引き締めろ!今回の門みてぇな何かかも知れないんだぞ!』

 

 双方の勢力が、その未知なる事象にお互いの仕業だと誤認する。それも仕方のないことだ。何せ突然起こった非日常。

 日本にとってはフィクションの存在であるモンスターが人を殺し、彼ら、帝国軍にとっては大きく超えた技術水準の兵器によって、わけもわからないまま蹂躙されていた。

 

 そんな状況で発生したその現象を、一体何人が無関係だと断定することが出来ようか。

 

 不可思議な光景に警戒した攻撃ヘリ部隊は一時的に攻撃を止め高度を上げると、その現象を注意深く見る。帝国軍もそうだ。そもそもが一方的に半壊させられた軍には、咄嗟に動けるだけの指揮系統は残されていなかった。

 

 固唾を飲んで見守る中、波紋の中からそれは現れた。

 

「グロロロロロ…!グルルラロロロ……!!」

 

 波紋から覗くのは、凶悪な眦。

 

 瞳孔の見えない目は爛々と輝き、口にはシャッターで覆う様に牙がずらりと並んでいる。頭部の黄色い角が特徴的で、全体のシルエットは刺々しい。

 

 背中には翼のように広げられた巨大なブレードが二対あり、それよりは小さいものの、明確に武器であると理解できる大きさの刃が備わっていた。

 

 いや、それだけではない。

 

『…おい、俺は今夢でも見てるのか?』

『そう思いたいところだが現実だ!ここにいる全員で集団催眠でもかけられてない限りはな!』

『記録映像は残せよ!』

 

 それは恐竜の様であった。それは二の脚で大地を踏みしめていた。それには長い尻尾があり、何よりも巨軀だ(大きか)った。

 

『随分と物騒なゴジラが現れたもんだなオイ』

 

 パイロットの、恐怖とも混乱とも取れるその問に、答えるものはいなかった。

 

 それの名はカミソリデマーガ。次元凶獣の別名を持つ怪獣だ。

 

 奇しくもその日、人類はフィクションの存在であった異世界と怪獣という二つの存在と初遭遇を果たしたのである。

 

 

 

●●●

 

 

 

 カミソリデマーガ。

 

 それはこことは異なる次元の宇宙における地球に現れた怪獣だ。デマーガと呼ばれる怪獣の亜種とされており、戦闘能力は高く、二人のウルトラマンを圧倒したほど。

 

 カミソリデマーガは銀座の大地に降り立つと、雄叫びを上げて己の存在を主張する。

 

 幸いというべきか、その周辺は門による騒動で既に市民はいなくなっている。仮に襲撃がなく、いつも通りの日常を謳歌している最中に現れていれば、その被害は門からの軍勢以上の被害を与えていた事だろう。

 

『こちらアタッカー1、応答せよ。銀座に巨大怪獣出現。繰り返す、銀座に巨大怪獣出現。至急応答されたし』

『一体いつから日本はファンタジー世界の温床になったんだ!?』

『無駄話はいい!あれの目的は何だ!?』

 

 彼ら、現地の自衛官達は、まだ人並みのサイズに収まっていた異世界の軍勢と比べて、銀座の街並みを闊歩する巨大怪獣というのはあまりに浮き世離れした光景だったのだろう。

 

 ただでさえ異世界やら門やらと対応が後手後手に回っているのに、それに加えて巨大怪獣まで現れたのだ。まっとうな対応など出来るはずもない。

 

『…はっ!まだ地上には機動隊が!』

 

 ようやく脳が事態を認識し始めたのか、俯瞰していた地上に、制圧のために乗り出した機動隊達が残っていることを思い出す。

 

 既に軍勢の多くは死亡、ないしは無力化され、捕虜として捕らえているが、流石にあれだけの規模だ。そう易易と処理を終えられるはずも無い。

 

 当然、地上は大混乱だ。

 見上げる程の巨軀、地を揺るがす振動。恐怖を掻き立てるような恐ろしい咆哮。

 

 機動隊も、異世界の軍勢も、怪異も、皆おしなべてそれを見上げていた。

 

「うおおおっ!!?何だあれは!?」

「やばいっ、こっちに向かって来てるぞ!」

「早く捕虜を搬送しろ!指定の人数を積んだらさっさと行け!」

「クソッタレ、あれもあの門のせいなのか!?」

 

 カミソリデマーガが一歩踏み出す度、その距離は縮まっていく。慌てて作業を進めるも、当の異世界人達がカミソリデマーガに怯えてしまって護送もままならないのが現状だ。

 だが、それも仕方ないだろう。

 

 カミソリデマーガの大きさは60m。技術の進んだ現代においては、それよりも大きな建造物も、倍以上の大きさを誇る乗り物だってある。

 だがしかし、60mクラスの生物が、それも恐ろしい見た目をしたそれが動く瞬間を目の当たりにしたことなどないだろう。

 ましてや、前時代的な彼らの技術水準ではそれだけの大きさの建物となると、一朝一夕では出来ないことは確かだ。

 

 それが、明確にこちらに向かって来ている。彼らの知る比較対象といえば、古代龍と呼べる存在だろう。

 翼を持ち、強固な鱗と口から吐く火炎で全てを焼き尽くす、彼らの世界の生ける災厄。

 

 そもそも古代龍に直接相対して生還したものなど何人いるだろうか。ましてや、今回現れたそれは、その龍ですら体の半分に届くかすら怪しいと言う程の巨体。

 

 空を飛ぶための翼ではなく、陸上生活に特化しているからかその体はどっしりとしており、例え同じ体躯であっても骨太に感じられただろう。

 

『何なのだ、あれは…。あんなもの、どうしようも…』

『おお、神よ…』

『こんな怪物がいる世界などと、聞いていなかったぞ』

 

 恐怖に竦んでいる身体を無理やりにでも起き上がらせて護送車に詰め込む。

 

「捕縛出来た捕虜はこれで全員です!後は…」

 

 ちらり、と一人の機動隊員が無力化したゴブリンやオークなどの怪異が一部扱いに困って分けられていた。

 これも一部ではあるのだが、やはり体躯や意思疎通の素振りから分けて扱われており、それらを逃がすには、車両も時間も足りなかった。

 

「…やむを得ん、見捨てるぞ」

「はっ、はい!」

 

 今にも踏み潰さんと迫るカミソリデマーガに、最早それを為すだけの時間はないと悟り、そのまま護送車を走らせる。

 

 が、しかしギリギリまで粘り過ぎたのが良くなかった。

 

 既にカミソリデマーガの興味は己から逃れるために動き始めた護送車へと移ってしまっていたのだ。

 

 襲撃の影響で使えない道路や封鎖されてしまった道もあり、その中を果敢に走らせるが、カミソリデマーガが動きを止めて力を溜めるような仕草をし始める。

 

『何だ?動きが止まったぞ?』

『あの感じ、力を貯めてるように見えるが…』

『おい、不味くないか…』

『怪獣映画じゃ、お馴染みだろうが…!』

 

 航空部隊の懸念は正しかった。カミソリデマーガの全身から、視覚化出来るほどのエネルギーが頭部の角に集まっていき、発光する。

 

 そして、凝縮されたエネルギーを破壊光線として正面へと撃ち出した。

 デマーガバリオンと言う名の光線は、地上を走ることしか出来ない護送車へと向けられ、次の瞬間ビルを切り裂いた。

 

 何故突如として軌道が変わったのか。それは遠方から現れた。

 空を切り裂くように現れたのは流線型のシャープな見た目をした戦闘機がミサイルを怪獣の頭部へと向けて一斉に放ったからであった。

 

『航空自衛隊だ!』

 

 彼らは百里飛行場からやって来た第3飛行隊。怪獣出現と同時に、多くの通報を受けてやって来たのだ。

 

 その様子は避難している人々からも見え、ようやく与えたと思われる打撃に歓声が沸く。

 が、人類はこれまでに怪獣と相対したことがないが故に、その脅威を甘く見積もっていた。

 

 爆炎が晴れ、デマーガバリオンによって両断されたビルの欠片が溢れている最中にそれは衆目に晒された。

 

 唸るデマーガの肉体に、損傷といえる程のダメージがついていないことを。

 93式空対艦誘導弾。つまりは対艦ミサイルによる一斉掃射を、生物の急所である顔面に受けて尚、目に見える成果はない。

 

『なんて奴だ』

『あれでもこの程度かよ』

『私語は慎め!生物なら何度も繰り返せばいつかは死ぬはずだ』

 

 再度ターンしたF-2戦闘機が同じく93式空対艦誘導弾をすれ違いざまに直撃させることに成功するも、またしてもダメージにはなり得ない。

 最初の一撃は、突然の攻撃に驚いただけだったとでも言うのだろうか。

 

 それどころか、自身で倒壊させたビルのお陰で車両からの注意は引けたが、代わりに第3飛行隊へと怒りの眼差しが向けられた。

 

 しかして、それを駆る彼らもプロフェッショナル。その威圧に竦むことなく操縦桿を構えると、何度でも、倒れるまで撃ち込んでやろうと覚悟を固めたその瞬間に、体から生える刃――レザーエッジが青く発光する。

 

『――何だ?』

『…っ、来るぞ!』

 

 付近を飛び回るF-2を迎撃したのは、レザーエッジから放たれた斬撃。カッター光線は弧を描く様にして放たれ、戦闘機を追尾してその機体を捉える。

 

『ッ!!?』

『無理です躱せませ――』 

 

 突然の迎撃に、制御に手を取られた二機が直撃。大きな爆炎を上げて空中で四散し、一機は離れていたことから辛うじて躱せたものの、一度の攻撃で二機が撃墜。

 カッター光線を警戒したF-2は射程外へと逃れるべく戦線を離脱するのであった。

 

「嘘だろ…」

「戦闘機でも駄目なのか…?」

 

 その様子を見ていた彼らは、絶望的な現実に打ちひしがれたようにそれを眺めていた。生物に対しては過剰すぎるほどの兵器が、まるで通用せずに敗れ去ったのだ。仮にこれ以上の火力が必要とあれば、それは自然と周囲すら巻き込みかねない、つまりは国土を破壊しながらの破壊でしか対応できなくなってしまう。

 

 いや、それはまだいいだろう。それでこの危機を打倒でき、終息するのならば。

 だが、それでも耐えてしまうほどの生物であったならば?そして、仮に通用したとして、同じ様な存在が今後立て続けに現れてしまえば?

 

 ない、等とは口が裂けても言えない。何せ、今日だけで非常識な存在が立て続けに現れてしまったのだから。

 

 そう嫌な想像をして顔を強張らせるパイロットに、別の機体からの声が届く。

 

『…!二機のパイロットの脱出を確認した!』

「射出座席か!」

 

 顔を上げてみれば、そこにはF-2戦闘機に備わった脱出機構にてベイルアウトしたパイロットが2名、銀座の空に落下傘を開いたのが目視できた。

 

 怪獣のエネルギー波と機体の爆発により、脱出時の姿が見えなかっただけらしい。

 

 ほっと胸を撫で下ろすも、状況は変わらない。

 

 依然として怪獣は進撃を止めず、F-2戦闘機による攻撃すら注意をひくのがやっとの相手に、速度も火力も劣るようなヘリではとても太刀打ちなど出来はしない。

 

 今は興味を持たれていないためこうして映像を記録できているが、何かの気まぐれで標的が移れば終わりだろう。そう冷めた心で理解していても、怪獣はそんな都合などお構いなしだ。

 

「不味いです…。パイロット2名の着陸先が……!」

 

 緊迫したような同乗者の声で視線を追うと、脱出したパイロットのパラシュートが、風に流されて怪獣の進行方向に向かって行っている。

 

 このままでは怪獣に踏み潰されるか、倒壊する建物に巻き込まれる。いや、そもそもが目立つパラシュートを広げているのだ。そのまま狙われかねない。

 

 よく見れば、パイロットも焦っているらしく必死に舵を取ろうとはしているが、変わらない。

 

 やがて、その小さな足掻きを踏みにじるかのように、怪獣の目が身動きの取れない空自隊員を貫いた。

 

「…っ、助けに行きましょう!後ろから注意を引いて逃げる時間くらいは…!」

「馬鹿野郎、それで刺激して、他のヘリや避難所にまで興味を持たれたら大惨事だ!…悪いが、脱出時の不幸だと割り切るしかない」

 

 若き同僚の言葉に叱責しつつも、まさかここまで無力感を感じさせられるとは、と苦々しく言葉を吐く。

 

 己の力のなさと、どうしようもない圧倒的な存在に対する畏怖が、食いしばらせる。「すまない」と。

 

 

――…

 

 

 陸上自衛隊の謝罪とほぼ同時刻、今当に降下中の航空自衛隊員は必死に足掻いていた。

 

 怪獣は、一歩、また一歩と歩を進めると、再び角の様な器官にエネルギーを溜め、それを解き放とうとしていた。

 

 ビルすら切り裂く様なレーザービーム。人間が喰らえばどうなるかなど、火を見るより明らかだ。鳩に対戦車ミサイルを撃つようなものだろう。

 

 ならばと切り離して落下するにも、今の高度ではとても耐えられそうにない。否、仮にギリギリ可能な高度であっても、射出時の勢いで腰をやられている以上、受け身や避難など到底出来るはずもない。

 

 このまま、街を切り裂く一撃を生身で受けるしかないのだろう。その巨体がこちらに視線を向けているのを感じながら、諦念の混ざった心のままに、彼は本来ならば考えもしないような発想、いや、懇願に近いそれを口に出していた。

 

「ちくしょう…。怪獣がいるんなら、光の巨人が来たっていいじゃないか…」

 

 彼の呟きは、誰の耳にも届かないまま、銀座の風と怪獣の引き起こす地響きによって掻き消される。

 怪獣の角に、エネルギーが溜まったのだろう。光が溢れ、その照射先が指定される。

 

(ああ…糞。死体、残んのかね…)

 

 現実味のない光景を最後に、男が諦めたその瞬間の事だった。

 

 突如として、怪獣が顔を空へ向けたかと思うと、溜めたその光線を放つ。

 

 一体何だと顔を上げるも、パラシュートが邪魔して見えない。が、次の一瞬には怪獣の顔へと何かがぶつかり、たたらを踏ませる。

 

(そんな馬鹿な。対艦ミサイルですらろくに受け付けない奴が…)

 

 空から降ってきたのは、光だった。

 

 それは、人型を取ると宙を漂う隊員二人を建物の屋上へと乗せると、怒る怪獣へと向かい合うのだった。

 

「お、おい…あれって」

 

 隊員は、呆然とした目で一連の流れを見ていた。もう一人も、驚きに目を見開いて唖然としている。

 

 そうだろう。人の姿をとった光は、銀色の光沢を持つ体に青いライン。大きく光る目に、鼻のないどこか無機質で、それでも安心感を感じさせる顔を持つ、50m近い巨人。

 

「―――ディアッ!!」

 

 彼らの知るものとは僅かに姿が一致しないが、それでもこの世界に置いては、あまりに有名すぎるそれの名が、自然と漏れ出していた。

 

()()()()()()…」

 

 この日、この世界に初めてウルトラマンが訪れたのだった。




実際の戦闘機だとどのくらい怪獣や宇宙人と戦えるのかね?
明らかに現実世界を超えた科学水準の防衛隊のマシンや戦闘機でも、ろくに倒せなかったり、ウルトラマンの援護が精々だったりするときがあるので…
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