ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり   作:食卓の英雄

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超音速のδ

 

 

 伊丹達第3偵察隊が付き添いの現地人、テュカ、レレイ、ロゥリィらを連れてイタリカの街へと向かっていたその頃。

 

 ようやく携帯が使えるようになったのもつい先日のこと。アンテナが設置されるまでは、携帯を確認するにはわざわざ門を越えて銀座に出なければならなかったのだが、それが携帯用の共同アンテナが設置されたことで、『門』の向こう側と個人的なやり取りもしやすくなった。

 

 マグラー出現時にもこれがあれば、もっと早期に対応が可能だった……否、あれはたまたま遅れたが故に渋谷側での怪獣出現の初期対応が間に合っただけであり、仮に増援として銀座に部隊を向かわせていれば、渋谷の被害は想像を絶することだろう。

 

 間に合わなかったが故に対応できたのは、運がいいのやら悪いのやら。

 

 そして、そんな中にあって、人々の営みは少しずつ形を変えてきていた。

 

 度重なる怪獣出現に、地域ではハザードマップが新たに配られ、避難経路の確認や保存食や水などが大いに売れていた。

 人々は、怪獣という災害への対処を取り始めていたのだ。

 

 そして、それは自衛隊や警官なども同じこと。

 

 自衛官はこれまで通りの訓練に加えて、対怪獣、宇宙人に向けての訓練や戦術、呼びかけが新たに加わり、警察が受ける通報が、荒唐無稽なものでも行かざるを得なくなっていたり。

 

 そんな、また新しい日常が始まろうとしていたその時、群馬県警にある通報が寄せられた。

 

『山の隙間に大きな何かが見える。怪獣かもしれない』

 

 最初はファースト・ウェイブ以降増えた悪戯か、或いは考えすぎかとも疑われたのだが、SNSなどでも複数の人物が目撃していることが確認でき、写真にそれらしきものが写っていたことで、警察と自衛隊は大慌てで駆けつけた。

 

 早めに到着していた警察や町の放送から、避難は完了しているらしく、確認が取れるまでは一箇所に集まって待機を下していた。

 

 まずはE-2Cなどの警戒機によって索敵が行われ、レーダーや熱源反応がなかったことから、地上からレンジャー部隊が接近することとなる。

 

 上空からの指示を受けながら、警戒態勢で山中を登った彼らは、対象の地点まで到着した。

 

「何だ、こりゃ…」

 

 そこで彼らが見たものは、巨大な布の様なものが横たわっている姿だった。

 

「怪獣の抜け殻、か?」

 

 そう、抜け殻である。既存の生物とはかけ離れた姿と大きさでこそあるものの、生物的な意匠は残したままで、まるでヘビなどの様な軟質の皮で出来ていた。

 

「……デカいな」

「40…いや、もっとありますね」

「感想はいい。怪獣本体ではなかったことは良かったが、これを残したヤツがいるということは確定した訳だ。……それに、怪獣由来のこれがどんな影響を及ぼすか分からん。重機などによる輸送を申請するべきだな…」

「……そうだな。一先ず下で待ってる住民にも知らせて」

 

 彼らが警戒態勢を解いたその時であった。

 

『……レーダーが飛行物体を確認!』

『この影は…全翼機か?俺たち以外に出動は?』

『いえ、ないはずかと』

『そもそも日本(ウチ)のじゃないぞ…!』

『無線でコンタクトはしたか?』

『反応ナシ』

『近づいてくるぞ!』

 

 怪獣と交戦の可能性アリとして上空を警戒していた飛行団のレーダーが、接近しつつある影を捉えたのだ。

 

「おいおい、今のご時世で領空侵犯か?」

「まさか。ありえない」

 

 無線が繋がったままの地上部隊も、一触即発の報せに上空へと目を向けるが、そこでは複数の自衛隊機が警戒態勢を取っている。

 

 再び警告無線を鳴らし続けるものの、反応は返ってこない。それどころか、未確認機は周囲をぐるぐると周り始め普通の飛行では意味のない行動を始める始末。最早、わざと煽っているとしか思えない挙動に、操縦桿を握る彼らの決意が固まる。

 

『いいか、これは明らかな領空侵犯だ。次の警告に従わなかったら、攻撃を開始する』

 

 その言葉に反応するかのように、未確認機が唐突にこちらへと加速を始めた。

 

『ッ!バカな、この期に及んで…?』

『なっ』

 

 彼らと未確認機の座標が重なる。恐らく上空を飛行しているのであろうそれの挑発に応えようと顔を上げようとして、誰もがその違和感に気がついた。

 

 雲の上、遮る者のいない筈の空にて明らかな影が差し込む。

 

 真上を飛んでいるというだけでは説明できない程の範囲に影が落とされていた。

 

『デカすぎる…』

『ッ、怪獣だ!』

『何だと!?』

『飛行怪獣かっ!?』

 

「クグッ…キィエアアアアアア――――ェッ!!!」

 

 ―――月光怪獣 デルタンダル。

 

 何と、未確認機と思われていた飛行物体の正体は、高速で空を飛行する巨大怪獣、デルタンダルなのであった。

 

『この野郎!』

『ってぇーーっ!!』

 

 彼らは突然の遭遇に出遅れこそしたものの、現れた脅威に対抗せんと各々の武装を放つ。

 

 押し寄せるバルカン砲に空対空ミサイル。

 

 特地に於いては正に敵無しの火力と速度を持つそれらが、1体の怪獣に向けて放たれた。

 

 が、しかし。音速を優に超えるそれらの弾幕を、デルタンダルは遊泳でもするかのような軽やかさで躱していく。

 

 その滑らかさはベテランパイロットである彼らから見ても感心するほどの機動制御で、怪獣でこそなかったら拍手を送りたいほどの軌道を宙空に描いていた。

 

『何てヤツ…!』

『敵飛行怪獣、更に加速します』

『マッハ3…5…7…。まだ上がるのか!?』

『駄目です!もう捉えきれません!』

『化物め…!』

 

 彼らの前に姿を現したデルタンダルは、彼らを嘲るかの様に速度を上げて引き離していく。その最高速度はマッハ9にも及び、速度に特化させた有人戦闘機の最高速度がマッハ6.7と言われれば、45mの飛行物体がそれだけの速度を安定して出していることは脅威以外の何物でもない。

 

「何だっ!?上で怪獣と戦ってるのか!?」

「とにかく下にも伝えろ!」

 

 遥か彼方へと飛び去ったデルタンダルを呆然と見上げる地上部隊だったが、ここでデルタンダルが思わぬ動きを取った。

 

「キィエアアアアァァァァ――――ッ!」

 

『戻って来たぞ!』

『何てデタラメな動き…!どんな戦闘機だろうが空中で分解されるぞ…!』

 

 そう、デルタンダルはその速度も脅威的だが、生物であるが故の機動力もある。人間の生み出した推進力による乗り物を優に置いてけぼりにする自由な飛行性能と、その動きに耐えられる強靭な肉体を持っているのだ。

 

 再びデルタンダルに攻撃を仕掛けるものの、完全に己の機動力を制御しているデルタンダルは見事な旋回で回避すると同時に、追い縋らんと迫る飛行隊に向けて背部からフレアの様な光弾をばら撒いた。

 

『うわあああっ!?』

『フレアっ!?こいつは本当に生物なのか!?』

『回避しろぉっ!!』

『掠ったっ、制御効きません!脱出します!』

『待て、今は危険、っがあぁぁぁっ!!?』

 

 その急な動きに対応することが出来ず、3機が被弾。1機は直撃したのか空中で爆発し、片翼が抉られ、脱出機能で打ち上げられた一人は高速で飛び回るデルタンダルの起こす衝撃波によってパラシュート諸共破壊され、悲鳴を上げることもなく絶命する。

 

 最後の1機は何とか指示を飛ばすも、デルタンダルの衝撃波に当てられて制御を失い墜落。たった二合の接敵で、精鋭3機が撃破された。

 

 地上からでもその光景は見えていた。

 見えていたが、空戦の支配者たる超音速戦闘機がこうも容易く翻弄される怪物など、どうしようもなかった。

 既に避難所では警報を発令し、その速度から周囲一帯にも警告と出現情報は出している。

 

 願わくば、その脅威が地上にまで牙を剥かないことを祈って。

 しかして不安に怯える民衆達の想いも無視して、更に凶報は続く。

 

『っ、そんな…!レーダーに反応アリ、同様の反応が、更に二つ!』

『3体、だと…?』

 

 旋回するデルタンダルに近づく反応に慄く二人のパイロット。その通信越しの絶望は地上で事の成り行きを見守っていた地上部隊にも伝播する。

 

 現に、地上からでもその光景は見えていた。雲を切り裂き、円を描くように旋回する三日月の影が3つ。

 

 更に、ここでデルタンダルは信じられない行動に移った。

 

『…待て、どこへ行く気だ?』

『俺達を無視した?』

 

 未だ空に2機の戦闘機が残っているにも関わらず、合流した3匹は編隊を組んで何処かへと立ち去っていった。

 目的は不明ながらも、どうにか助かったと胸を撫で下ろした次の瞬間、デルタンダルの存在をキャッチし続けていたE-2Cから困惑の声が上がる。

 

『待った。……この怪獣、妙だ。この航路、軌道……。間違いない、ここに来た道を辿っていっている…』

 

 唖然といった風に呟かれたそれに戦慄する。

 

 「まさか」「そんな筈が」と続けようとして、そもそも今の怪獣騒ぎにあり得ないもクソもないと閉口する。

 

『不味い、不味いぞ…!あの怪獣は横田飛行場を真っすぐ目指してる…!』

 

 今回の怪獣騒動にあたって、信頼性の高い情報であることから、怪獣対策チームの本場が近く、情報伝達も行いやすいという理由で横田飛行場から飛行隊が飛び立ったのだが、まさか怪獣が航路を逆算して基地を襲う習性があるなどとは思うまい。

 

 結果として、デルタンダル達は一直線に横田飛工場…つまりは東京都に向かってしまうことになったのだ。

 デルタンダルの攻撃性は高く、その上ソニックブームも高層建築の多い首都圏では洒落にならない。

 

 浅間山から横田飛行場まで直線距離で約130km。マッハ9の速度で移動するデルタンダルにとっては、それこそ一分もかからない距離だ。

 

 気がついた時点で、既に猶予は半分もなかった。向こうでもその接近には気がついているだろうが、対処のしようがない。

 

 動物的な理屈をこねれば、狙いは攻撃を仕掛けてきた存在の巣となる場所。つまり、横田飛行場。しかし、逆に考えれば、攻撃を仕掛けた戦闘機しか目に映っておらず、人そのものは攻撃対象ではない可能性が大いに考えられる。

 

 大急ぎで、基地内の人員だけでも避難させんと通信を取るも、そんなにも直ぐに全体を動かせるはずもなく。

 無常にも迎撃準備中の基地へと迫ったデルタンダルは、上空というアドバンテージをとったまま、胸の発光体から強力な青い光弾。デルタンダル月光弾を放とうと力を溜めた瞬間、真下から迫る光の矢に発光体ごと撃ち抜かれて爆散した。

 

『…こちら横田基地、基地上空にウルトラマンが出現、光の矢で敵怪獣を一体撃破。交戦に入った』

 

 もう目視できないほどの遠方からの通信に、耳をそばだてていた住民たちからもわっと声が上がる。

 

『何て速さだ…』

 

 通信室からの、思わず漏れたであろう一言を拾い上げる。

 

 事実、あちらの空ではウルトラマンノヴァとデルタンダルの超音速の空中戦が繰り広げられ、デルタンダル光弾やフレア、光輪状の斬撃エネルギーや光波熱線が飛び交う戦場と化していた。

 

 その飛行性能を存分に活かした高速戦闘は、誤射を恐れて援護すら不可能な程。

 

 結局、一体のデルタンダルを絞め落としたウルトラマンノヴァは、続く一体の真下に潜り込み、そのまま上空へ向けて放った光線が直撃。大気圏外まで吹き飛ばされた後にデルタンダルは爆散した。

 

 飛び去ったウルトラマンの姿を映しつつ、圧倒的な空戦の記録は人々に驚嘆と憧憬を与えたのであった。

 

 

 

 

 

 

「解析を急げ!」

「この粒子が我々にも扱えるかどうか…。それで怪獣への対処能力は変わるぞ…!」

「保存を急げ、時間を無駄にするなよ!」

 

 特別指定災害級生物対策課第3工廠は、いつになく忙しない様子を見せていた。

 

 常日頃から後手後手に回っていることから、喧騒はいつものことであったが、こと今回は更に慌ただしい。

 

 それというのも、つい先日現れ、航空自衛隊機に被害を出した飛行怪獣。月光怪獣デルタンダルの亡骸が運び込まれているのだから。

 

 3体現れた内の2体は爆散したものの、途中でやられた1体は肉弾戦により倒されたために大きな損害もなくその身を横たえていた。

 

 放置されたこれを特災課は回収。貴重なサンプルとしての価値があったが、何よりデルタンダルが飛行時に放つ粒子の影響で既存の航空システムを遥かに超える性能の空戦能力が期待されており、その巨体を支えるための重力制御機能が更なる注目を集めている。

 

 生物の常識を超えた怪獣の動きに対応し、またより重い物資を抱えて尚機動出来るか否かは死活問題なのだ。

 

 だからこそ、デルタンダルの放つ粒子が鍵となり、血眼でこれを利用、再現出来ないかと研究を進めている次第である。

 

「……何かきっかけがあれば、とは思ったが、流石ウルトラマン。……思ったよりも、早くに完成しそうだな」

 

 その喧騒を後にして、斎藤斬無ことザム星人は、形を成しつつある機動兵器を見上げるのであった。





『月光怪獣 デルタンダル』。ウルトラマンブレーザー第14話『月光の記憶』にて初登場。
扁平なΔ型の飛行怪獣で、その最高速度はマッハ9。胸から放つデルタンダル月光弾などの強力な技を持ち、さらには群れで動くこともある厄介な怪獣。
基本は積乱雲の中に姿を隠して移動し、単身で大気圏を突破して、新たな積乱雲に身を潜めるという生態を持つ。
こんな外見と生態をしているが、れっきとした地球怪獣。
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