ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり   作:食卓の英雄

21 / 46
ちょっと再開したらいつの間にか日間8位に。やっぱみんなウルトラマン好きなんですね…。
まあ、ちょっとお互い技術が足りないし時系列的にも地球のことばっかだけど、暫くしたらバランスよく書けると思う…。


炎龍の亡骸

 

 アルヌスの丘と銀座を繋ぐ『(ゲート)』。これを一度越えれば、近代文明溢れるコンクリートジャングルから、魔法や怪異の溢れる異世界の、緑豊かな丘陵地帯へと一変する。

 

 実際、調査初期は余りの非現実的な現象と、銀座の街中から広大な自然へと移り変わるのは、それなりの感動を有していた。

 

 しかしながら、今は『門』周辺は特地側も銀座側も、双方ともにアスファルトで固められ、門を保護し、制限を与えるために堅牢なコンクリート製ドームで覆われてしまっている。

 

 つまるところ、行っても来ても、無機質極まりない光景は変わりないのである。更に、ドームそのものも厳重に管理され、ICタグ付きの身分証・指紋・掌紋・皮静脈・網膜パターンといった何重ものチェックを経なければ近づくことすら敵わない。

 

 資材や物資を運び込む自衛隊のトラックでさえ、厳重な検疫とチェックを経て初めて通過を許されるのである。

 

 ……もっとも、ある程度の技術力を持つ種族からすればどうとでもやりようはあるのだが、ないよりはマシだ。

 

 さて、そんな自衛隊駐屯地アルヌス支部だが、コンクリートで出来た真新しい建築物が立ち並び、建物群も六芒星の防塁と壕によって守られている。

 その外側、アルヌス丘の裾野は野戦築城の教範を主体として、怪獣出現以降は大型兵器や対怪獣向けに備え付けられた壕や掩体、通路が作られている。

 

 そして、丘の南側にはコダ村やエルフの避難民達が住まう難民キャンプがあり、東側には滑走路と格納庫の建設作業が今尚続く土木工事現場があった。その一角には、空自地区も設けられており、本土から新たに仕入れたF4ファントムの組み立てが行われていた。

 

 様々な物資支援を受けている日本は、未知の塊である特地調査に戦闘機を複数配備していたのだ。これには各国からの支援による配備数と規模の増加に加えて、怪獣被害と交戦を予期してのことであった。

 実際に、特地に限るのであれば地球の戦闘機が人の操る兵器という点で見れば最も強い。少なくとも高高度を音速以上の速度で飛行し、歩兵の重火器を上回る口径のバルカン砲をばら撒き、回避しながらミサイルを放つそれに、対抗できなければ勝負の土俵にすら立てない。

 

 亜神ですらそこまでの飛行性能、対空攻撃を備える者はおらず、唯一勝負の土俵に立てる相手と言えば成熟した古代龍くらいなもの。それも、古代龍は世界的にも非常に珍しく、個体数も少ない。

 身も蓋もない言い方ではあるが、例え一体が勝負の土俵に立てたとしても、圧倒的な物量が違うのである。

 

 ……とはいえ、そのF4ファントムですら怪獣相手には力不足といっていい。現行の火器は殆ど通用せず、利点と言えば対空能力の低い怪獣相手に時間稼ぎをしやすい程度。むしろ、それならば固定砲台や誘導ミサイルなどを撃ちまくった方が補給の都合で火力を叩き出せるであろう。

 

 話題がそれたが、門の周辺はこのように、一般人からすれば少々珍しいかもしれないが、自衛官達にとっては日本にいた頃から住み慣れた雰囲気の続きなのである。

 

 つまるところ、帝国の第三皇女、ピニャ・コ・ラーダとその従者ボーゼス・コ・パレスティーにとっては、アルヌスの丘からが異世界の始まりであった。

 

 何故このようなことになったのか、簡単なあらましを説明すると、翼竜の鱗を換金するためにカトーの知己である商人を尋ねにイタリカへと赴いた伊丹達第3偵察隊は目的地であるイタリカが兵士崩れの盗賊によって襲撃を受けていると知る。

 

 レレイの進言と、後はピニャの打算ありきの成り行きで、共に街を襲う盗賊を蹂躙。

 自衛隊の圧倒的な暴力を見せつけられたピニャと自衛隊とで協約を交わし……トラブルにより伊丹が暴行を受けてしまう。

 その協約破りに焦ったのはピニャである。結んだその日に協約破り。しかも相手は徹底的なまでに格の違いを理解させられた軍(だと思いこんでいる)だ。そのまま協約破りを理由に国ごと攻め滅ぼされても、この世界では可笑しい話ではなかった。

 そして、その暴力が人に、国に向けられれば、一方的な蹂躙が始まるであろうことは理解していた。だからこそ何とか弁明しようと必死に頭を巡らせたのだが、当の伊丹が国会から参考人招致がかかっていたために直ぐに帰らなければいけないと説明を受けた。

 

 ピニャの属する帝国では、出世コースにいる超エリートは、将来の指導者層となる人材と目されると、現段階での位階が低くとも、元老院での戦況報告や皇帝への意見具申をする機会が与えられるのである。

 

 この際、翻訳が語彙と文化の違いからそう伝わってしまい、ピニャが伊丹をその重要人物であると勘違いをしてしまった。

 その為、より一層このまま行かせてはいけないと感じたピニャは、今回の協定違反を健軍、あるいはより上位の指揮官に謝罪をしたいと申し出て、伊丹がしぶしぶながら同行を許可したのである。

 

 流石に時間が余りないために、騎馬の護衛やら側仕えだのとぞろぞろと引き連れていくわけにもいかず、高機動車に乗れる2名のみと条件をつけた。

 

 これにピニャが真っ先に支度し、単身では行かせられないと取りすがる部下からボーゼスを指名。こうして高機動車に載せられてアルヌスへと向かっているのである。

 

 その最中、ボーゼスはある信じられないものを目にして瞠目する。

 高機動車を飛ばしていると、次第に遠くに見えてきたのは、平原のど真ん中にポツリと佇む小山。否、それは小山というには赤赤しく、動かぬ骸となって尚生前の威容を想像させていた。

 

「で、殿下…。アレを…」

「な、な、な…!?」

 

 そして当然、謝罪と戦闘の回避に頭を支配されていたピニャにとって、不意打ちのようにそれは視界に突き刺さった。

 

 炎龍。紛うことなき古代龍が、見るも無惨な姿で横たわっていたのである。

 

 往々にして、人間が自分より大きな相手を倒す時には、小さな傷が多くつけられるか、急所に深く攻撃が加えられているかである。

 

 それが、ありとあらゆる武器を弾く炎龍の鱗であればなおのこと。

 しかしながら、ピニャが目にしたのは、肉体の半分が抉られたかのように消し飛び、首から上は存在せず、数多の人類種を鏖殺してきた頭部は処刑された罪人かのように野晒しにされていた。

 

「イ、イタミ殿…。あ、あれは一体…?」

「うん?……ああ、炎龍ね。まだ残ってたんだな」

「そろそろ運んでもいいと思うんですけどね」

 

 恐る恐る問うてみれば、返ってきたのは余りに淡白な返事。普通、大型の竜を討伐したともあれば、正しく大英雄の所業。その成果とどれだけ強大で如何にして倒したかという噺を延々と続けたとして、誰も文句をつけられない程。

 

 だというのに、ジエイタイの反応はちょっとした世間話のようにスルーしようとしている。

 

 それも相まって信じられないと目を剥いたピニャは、確信を得るために頼み込んだ。

 

「す、すまないイタミ殿。急いでいるのは重々承知しているが、少しあれを見ても構わないだろうか?」

「え、うーん………」

 

 進言してみれば、何とも面倒くさそうに唸る。気分を害してしまうのは本意ではなかったものの、伊丹自身はこの世界的には大事なのだろうと「少しだけね」と前置きして高機動車を停止させる。

 

「ま、間違いない…。これは、紛れもなく炎龍……」

「え、炎龍というと、噂にあったあれは見間違いなどでなく……」

 

 コダ村の難民達から広まった噂はピニャ達にも届いていた。流石に帝国中央にはこの世界の文明の関係上広まっていないようだが、既にここら一帯ではその噂で持ちきりだ。

 

 しかしながら、ピニャ達はその噂を混乱の中の誇張か、或いは無知ゆえの見間違いだと断じていた。

 

 あれだけ多くの村人が一斉に伝えたものの、情報伝達手段の発展していないこの異世界ではやはり噂話というのは信頼性に欠ける。見間違いや勝手な想像に、更に尾鰭がついていった話など枚挙にいとまがない。

 

 加えて、この世界ではそれだけ炎龍は、古代龍の存在は圧倒的なものであった。

 無肢竜の撃退ですら人類が成し遂げるには過ぎた偉業。増して、あの古代龍の息の根を止めるなど、子どものつくる都合のいい創作としか思えなかった。

 

 それでも、偉業足り得るものと認めていたのは、やはりこれまたコダ村の住民が広めた内容の根本がしっかりとしていたからであったが、やはり最初から疑ってかかっては、真実であっても受け入れ難いのだろう。

 

「ボーゼス…。妾は夢でも見ているのか…?」

「いえ、殿下、私も同じものを目にしております…」

 

 呆然と炎龍の亡骸を見上げる二人に、伊丹もある程度はこちらでの常識を仕入れているので「まあ、気持ちは分からなくはないなあ」と頷く。

 

 ピニャ達は、何度もそれが炎龍であるかどうかを確認しては、圧倒的な暴力に打ち滅ぼされたかのような亡骸の状態を見て脳裏にその異常な威力の攻撃とそれを成した者に畏れを抱く。

 

 噂が真実ならば…いや、目の前に堂々と証拠が横たわっている以上は本当なのだろう。そう気を引き締めては、少しでも情報を探るべく問う。

 

「こ、これを成したのは一体?」

「うおっ!?……あー、えっと…」

 

 近くで警護も兼ねていた富田にボーゼスが掴みかかるかのように縋る。急に近づかれたその美貌にたじろぎながら、富田は伊丹の方を見て言葉を濁す。

 視線に気づいた伊丹は首を横に振るが、富田はその焦った様子のボーゼスに同情してか、指…は失礼なので手で伊丹の方を示した。

 

「…あちらの、伊丹隊長がトドメを」

「あっ、おい!言うなって!」

 

 自分を売ったことに伊丹は憤慨し、富田は申し訳なさそうに視線を下げる。

 そんな一幕は、彼女たちの耳にはまるで入らない。

 

 レレイによる通訳を介してそちらを見た二人の顔面は蒼白に染まっていた。

 

「だ、誰と?」

「言った通り。炎龍はイタミが仕留めた」

 

 これには心中でムンクの叫びのように悲鳴を響かせる。

 

 それも当然、元々伊丹への協定違反が原因だというのに、その伊丹が炎龍を討伐した張本人だと知ったのだから。

 

 ボーゼスの方は半信半疑といったところだが、ピニャは自衛隊の圧倒的な火力を目にしてしまったために、絶対に勝てない存在だとカテゴリしていたためにすんなりと受け入れた。

 

 とはいえ、流石にこれは完全に予想外だ。確かにイタリカ攻防戦で見せた圧倒的な力と鋼鉄の天馬(AH-1コブラ)への恐怖は抱いてこそいたものの、まさか炎龍すらも既に死していたとは夢にも思わなかったのだ。

 それと同時に、それだけの武功を誇っているのであれば、元老院から報告を求められるほどの優秀な兵士であることへの理屈がついたと、勝手な勘違いを更に確かなものにする。

 

 残念ながらそれを修正できる者はいないらしい。

 

 そして、またもや疑問が生じる。

 

 炎龍の討伐という異例の事態。この世界ではどんな英雄の英雄譚にも勝る筈のそれが、何故こんな場所に野晒しにされているのだ、と。

 

 ピニャ達の常識に照らし合わせるのであれば、炎龍を倒した証明と功績のため、その亡骸はこのようにして野晒しにせずに持ち帰るか、或いは他国へと喧伝するものだ。

 「自分が、自国がこれを成し遂げ征服したのだ」と示すのが当然。

 

 ピニャ達の耳に入ってから既に数日は経過しており、あれだけの力を携えている集団がこれを運ばない理由などない。

 むしろ、放置していてはその鱗や功績を横取りされかねない。少なくとも、帝国であるのならば軍や馬車、怪異などとあらゆる手段を用いて自国に持ち帰り、その首を掲げて亡骸は武具の素材とするだろう。いや、しない理由がない。

 

 しかし、ピニャは何故と訪ねない。それは度重なる異常事態に適応したのか、はたまた嫌な予感を覚えたからか。

 気にしつつも口をつぐんだピニャに代わって、直接目にしていないボーゼスが再び疑問を口にした。

 

 ピニャは思わずボーゼスを睨むも、レレイの返答のほうが早かった。

 

「…詳しいことは分からないが、これの優先順位が低いからだと思われる。今のジエイタイは、これにはあまり価値を見出していないらしい。……イタミが倒した所は私も見たから、ジエイタイにとって、炎龍は歩兵でも勝てる存在、という程度の認識なのだろう」

「な、な、な……」

 

 レレイの言葉に今度こそ絶句し、衝撃を受ける二人。レレイの抑揚のない物言いが、余計に痛烈に頭を穿つのであった。

 

 因みに、レレイのこの物言いもまた彼女の勘違いが多分に含まれていたりする。炎龍は戦闘機とタメを張るほどの飛行性能を持ち、歩兵の火力はおろか、機銃ですらロクにダメージが入らない。

 実際に討伐したパンツァーファウストⅢであっても、下手に撃っては回避されるか、ある程度の損害を与えるかといった程度で、歩兵で討伐できるなどということはまずない。

 

 しかし悲しいかな。レレイはなまじ怪獣や兵器による知識を経て、その勘違いもあえて否定されなかった。

 あれだけの攻撃を食らって健在であった怪獣を相手に戦えるのだから、いくら手負いとはいえ個人で首を吹き飛ばしたからには、出来なくはない。そう判断していたのだ。

 

 当然、これを他の自衛隊員が聞けばいやいやと否定し、そんな過分な期待はいらないと言うであろうが。

 

 伊丹達は魂の抜けたように呆然とする二人を不審に思いながらも、急かせば、背後にきゅうりを置かれた猫のように跳ね上がって反応。ここで気を損ねてはマズイと冷や汗をかきながら、高機動車内に戻るのであった。

 

 そんな二人は、この後も怒涛の衝撃が押し寄せてくるなど、まるで想像していなかったのであった。




《次回予告》

アルヌス支部へと到着したピニャ達は自衛隊、ひいては地球の圧倒的な技術力と国力に瞠目する。明日にも門の先へと向かうと言う伊丹達に恐々としながらも、彼方に見える威容、地底怪獣マグラーの遺体を目にするのであった。
炎龍すらをも些事と投げ(投げてない。単純にゴタゴタしてるだけ)、圧倒的な力を有するその存在に、彼女たちは何を思うのか。

次回、ウルトラマンGATE「皇女の見る未来(いつか)
ウルトラ焦るぜ!

※この内容とタイトルは予告無く変更する場合がございます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。