ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:食卓の英雄
さて、銀座へと繰り出した一行は、テュカの服を買ったり、牛丼(参考人招致までは出張扱いで公費から賄われるが、食事は一食五百円までしか出ないので、銀座という土地の物価的に仕方のないことである)を食べて、それぞれの目的に分かれていった。
伊丹、レレイ、ロゥリィ、テュカの四人は議事堂の係員によって控え室へと案内されていき、同じく国会議事堂へと立ち入った新星は先についている村田隊長の元へと赴いた。
ここで、ピニャ、ボーゼスらは伊丹たちと別れることになる。
この二名は栗林、富田、浅永と高瀬らと共に、国会の正門前からマイクロバスで都内某所のホテルへと向かうのだ。
彼女たちは公式の使節ではないため公的施設に入れるわけにもいかず、更には表向きには日本に来ていないことになっているのだから、慎重になるのだ。
なにせ、交渉の窓口を得たとなれば、日本としては軍事行動よりも交渉を優先させるべきという意見が上がってくるだろう。しかし、現段階では色々と準備も、情報も互いに不足しているため、下手に口を出されて制限を加えられたくはなかった。故に、公式には彼女らの存在を無視することにしたのである。
とは言え、流石にVIPである。帝国との秘密交渉において、仲介役を得たことは国益にも適うことであるから、裏では別の名目で予算と人員が出て、このような対応がされているのである。
さて、こうしてピニャ達の戦いは始まるのだが…。
現段階では、そう悪くなるものでもないだろう。何故ならば、この段階で出来る会話や取り決めなどはそう多くはない。
国に講和を求めることと、交渉の仲介を担うのは根本的に違う。それでもやはりやることはあるもので、度々突っ込んだ話も出てきて彼女たちの額に汗を流させた。
幸いにも、ある程度の会話ならば通訳することの出来る真樹と高瀬によって、手違いや意思の疎通もそこまでの乖離なく進めることが出来た。
仲介役としての役目、交渉団の予定と人数。贈賄などと話は出てきたが、最後にあがったのが捕虜の取り扱いであった。
現在、銀座に侵攻した帝国軍将兵の生存者約六千名が犯罪者として逮捕されており、色々と理由はあれど、無条件での引き渡しなどが挙げられ、大層驚かせたのである。
度々行っている避難民への援助や、敵だった筈の存在へ向ける寛容とも言えるジンドウテキという対応。ピニャとしてはあまりに甘いと思わざるを得なかったその対応が、このような大国の権力者までもが備えているというのだから、尚更に驚いたのだろう。
今まではその様な国が生き残っていることと、対応に疑問を抱いていたが、今のピニャならばわかる。
あのウルトラマンと呼ばれた神秘の巨人。レレイの説明を受け取るのであれば、正しく無私の英傑。誰もが子供の頃には憧れるというそれを実際に目にし、救われてきた人々としては、それに倣うようになっていくのだろう、と。
実情は異なるものの、そう納得したピニャは、一縷の望みを宿しながら、必死に交渉を取り付けるのであった。
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国会中継といえば、面白みもなく、淡々と政治の話であったり、事件を取り扱ったりするもので、一部の重要な会議であったり、総理大臣の就任などを除けば、専ら視聴率は低く、また、その半数は何となく流し見していることだろう。
しかし、この日の中継は違った。
ネットやSNSでは、この国会中継にて「特地から美形エルフが出る」という書き込みがだんだんと拡散され、今までは公開されていなかった門の先の非日常を見ようと、瞬く間に視聴率はうなぎ登りになったのである。
短めの銀髪にポンチョに似たローブを纏ったレレイに、金髪碧眼にスーツ姿のエルフであるテュカ。そしてやたら長くて大きい包みを抱えた黒ゴス少女のロゥリィなど、コスプレでしか見れないそれが大真面目に立っているのは注目を集めていた。
一応、この場には伊丹や村田隊長などもいるのだが、外見で言えば草臥れた中年自衛官と、50代半ばの防衛組織隊長ではインパクトに欠けるものである。
そして、早速とばかりに問答は始まった。
最初に立ち上がったのは、少数野党の女性党首、幸原みずき議員だ。
「参考人に単刀直入にお尋ねします。特地甲種害獣、通称ドラゴンによって、避難民の七分の一、約百名*1が犠牲になったのは何故でしょうか?」
手にしているボードには『民間人犠牲者百名!!』と強調するように書かれていた。
それに答えるべく、委員長に名前を呼ばれた伊丹が進み出る。
「えー、それはドラゴンが強かったからじゃないですかねぇ」
これには揚げ足を取る気でいた幸原も絶句した。想像していた真面目で自己批判的な答弁からは懸け離れた物言いである。
「そ、それは、力量不足を転嫁しているだけなのではないでしょうか?百名もの数が亡くなっているんですよ。それについて責任は感じないのですか?」
ボードを叩きながら、やはり被害者数を強調する幸原議員。再び、伊丹の答弁が始まる。
「えー、力量と言われましても、色々ありましてねぇ…。何の力量でしょうか?それに、ドラゴンが現れたのは当時の反応、調査環境から予測できるものではなく、また避難民の発生も偶発的な出来事が重なったために起こった悲劇だと感じておりますが…」
「私が言っているのは、あなたの指揮官としての能力とか、上官の能力とかっ、自衛隊の指揮運営方針とかっっ、政府の対応にっっ、問題はないかと尋ねているのですっ!それと、ドラゴンの出現に関してまであなたのせいと言っているわけではありません。ただ、現場で関わった者として、犠牲者が出たことをどう受け止めているのですか?と尋ねているのです!」
息を荒くしてまくしたてる幸原議員を前に、対して気にもとめていないといった風に伊丹は答えた。
「力量不足と言えば、銃の威力不足は感じましたね。備え付きの12.7mm弾でも鱗を貫通出来ませんでしたし、急な襲撃に、広がった避難民を庇いながら発砲しろ、とは手厳しいことを言われますね。でも、それは怪獣だって同じですよ。対応できる武器が現場になかったことで、被害は増える一方ですし、今回の件に関しても、調査と現地住民との交流に過剰な火力を持ち込む方がおかしいでしょう。避難の際は広がりすぎたせいで対応が遅れた列もありますので、その点に関してはとても残念に思いますよ」
この相手に出来るのか?とでも問うような、それでいて混ぜっ返すような態度に、苦笑と不謹慎だなどのヤジが飛ぶが、そこで防衛副大臣が手を挙げた。補足するようだ。
「伊丹二等陸佐から提出された、通称ドラゴンに関する情報として、鱗の強度はタングステン並の強度で、モース硬度にして九。それでいて重さは七分の一です。装甲も相応に分厚く、これは空を飛ぶ戦車のようなもの。シェルターのない平野においての遭遇戦では、避難民を庇いきることは至極困難です。まして、当時は現場に怪獣2頭の乱入があり、偵察隊の手に負える状況ではなくなっておりました」
その言葉とともに、村田隊長の計らいで特地で撮影されたアーストロン、アントラーの写真が映し出される。
やはりこういった場に出席できるほど高い年齢層や、情報収集を生業とするジャーナリストからすれば、初めて見る既知の怪獣達に興奮と畏れを覚える。
それと同時、ここの役割を担う村田隊長が発言権を求めた。
「ここからは、私が。当時、地底の熱源と磁場の乱れによって怪獣の可能性があると見て、現場に部下達を派遣させました。現場では怪獣とウルトラマンによる戦闘が行われており、吐き出される熱線などの関係で合流や指示の伝達も阻害されておりました。その様な状況下で、彼らは各々の最善を成せたと思っております。加えて、ドラゴン自体の討伐は伊丹二尉自身が行っております。その際軽度の骨折などもしており、まさしく体を張ってそれ以上の被害拡大を防いだ立役者である、というのが我々の意見です」
ドラゴンの討伐を伊丹が行っていたとは知らず、質問した議員もマスコミもどよめいている。
当時は特地に出現した怪獣やウルトラマン、メキシコの一都市を停止させたゲバルガや渋谷に現れたデマーガなど、インパクトの強い出来事ばかりあったので、知られていなかったのだ。
これが伊丹自身が言ったのであれば、まだ追及のしようもあるが、言った人物が人物である。
世界初の対怪獣対策組織である特災課。その幹部格ともなれば、やはり相応の地位にいる。
それも、特災課の活躍は目覚ましく、世界的にも注目されていることから、下手につついてしまえば、協力関係にある各国からの怒りも買ってしまいかねない。
おうおう、それは人員も割いて兵器も使ったうえで対処できなかったウチの国を下に見ているのか?と言った風に。
いかに売国奴と揶揄される思想を持っていようと、自国だけでなく他の国家まで敵に回すような真似はしない。
怪獣出現における確実な対処法をどの国も確立できていないのだ。そのうえでこうして技術提携や協力に当たっているからには、それなりの責任が伴っているのである。
言い分も封殺され、不満気に質問を打ち切った幸原議員は、その対象を変えた。
そこからは、怪獣出現に置ける規模の差はありつつも、概ね当たり障りのない…。いや、途中ロゥリィの年齢関係での騒動が起こったりもしたが、どうにか穏便に答弁は続けられるのであった。
そして、知りたいことも聞けたとばかりに、場がお開きになりかけた次の瞬間、彼らの耳にある言葉が届く。
『すまない。後少しだけ付き合っていただいても構わないだろうか』
聞き馴染みのない男の声が、この場にいる全員にはっきりと聞こえたのである。それぞれの位置が離れていたにも関わらず、一様に同じ音量で聞こえたそれに、みなが驚いてその出所を探す。
「あっ、あれは…!」
一人が、思わずといった様子で指を指した。その慌てようにやや迷惑そうにされつつも、指の先を見れば、そのどよめきも理解できた。
どこからともなく青い光の玉が現れ、先ほどまで伊丹達が答弁のために立っていた席の前に浮遊していた。
突然の怪奇現象に驚き、距離を置く面々。伊丹も、最も近くにいるためか咄嗟にテュカやレレイを背にして庇う姿勢を見せる。
その中でただ一人、ロゥリィだけはその光が何であるかを察したかのように、浮き上がりかけた姿勢を元に戻したのであった。
どこか神秘的な光を放つ光球は、その光量を抑えながら、次第に姿を変えていく。
「なっ…」
「あれは…」
球体はみるみる内に人型に変わっていき、そこには青い体に銀色の顔とラインを持つ、今世界で最も注目されているウルトラマンが立っていた。
突如現れたウルトラマンに色めき立つ観衆。
誰もが興奮と疑念を抱き、先ほどまではフラッシュや個々人の出す音などでうるさかった議事堂がしんと静まり返る。
「ウ、ウルトラマン…?」
「本物か…?」
ウルトラマンや怪獣とは、フィクションの存在。つい数カ月前まではその様な認識だった彼らとしては、やはり疑い深くなるのも仕方がない。
これまで信じられたのは、特撮ではありえない巨大な姿に、甚大な被害を齎す怪獣と戦ってきたからこそ。
大半の人間にとっては、ウルトラマンとは巨人であるという認識があるからである。
こうして人とそう変わらない背丈であると、スーツを纏った人間かにも見える。特に、周囲をスーツや礼服に身を包んだ大人たちに囲まれて議場の真っ只中にいるのだから、テュカやロゥリィらと比較しても浮いた存在だと言えるだろう。
誰かが、ゴクリと唾を飲み込む音すら聞こえる静けさはウルトラマンその人によって打ち破られた。
『初めまして。日本の、ひいては地球の皆さま。私はM78星雲、光の国からやってきたウルトラマン。名を、ノヴァ。
―――ウルトラマンノヴァ』
その言葉は、異なる言語話者の人間にも、等しく聞き馴染みのある言語に聞こえたそうだ。
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寂れた工業地帯の片隅。疾うの昔に廃虚になったコンクリート造りの建物に、それはいた。
「はあ、はぁ…!ようやく傷も癒えたか…!」
「まさか、この地球にウルトラの一族が現れるとは…!我らの同盟者も奴に討たれてしまったぞ」
「お陰で俺等の商売は台無しだ!せっかく集めた機械や宇宙船も、怪獣軍団も何もかもやられやがった!」
「ギャラクシークライシス以降各宇宙に現出した別次元の怪獣も、苦労して集めたのにパーだ。この次元の地球ならば、我らへの対抗策など皆無だったものを、邪魔してくれる…!」
二つの人影が、寂れた廃虚を改造し、どこか昭和のSFチックな機械を動かしながら怒りを顕にしていた。
人の言葉を話し、人のシルエットをしているそれは、しかしてその見た目に大きな差異があった。
一人の肉体は白く、苦瓜のようなぼこぼことした体表の上に赤い瘤が散見され、その特徴的な頭部は茶色い岩のようで、感覚器官を表すかのように赤い結晶体がついている。
もう一人は、片割れと比べればより人間に近しい姿をしていたが、金色の髪に、まるで仮面を着けているかの如き顔に巨大な青い瞳。その黒い肉体には銀と青の美しい鎧を纏っている。
そう、彼らこそ、かつてこの地球を攻め滅ぼそうとした異星人連合の生き残り、ナックル星人とマグマ星人だ。
「我が弟も奴にやられた。マグマ星人侵略軍隊長という地位を蹴ってまで入ったビジネスを、邪魔した罪は重いぞウルトラマン…!」
マグマ星人が拳を突き立てると、ナックル星人も同様に復讐に燃える。
「だが、まだ俺等には手がある。こいつの保管庫は特に厳重だったからな。幸い持ち逃げすることが出来たぜ」
「ああ…!必ず息の根を止めてやるぞ、忌々しいウルトラの一族がっ…!」
そんな彼らの手には、赤い石と青い石。そして何やら長方形のデバイスの様なものが握られていたのだった。
何と、ノヴァが地球にやってくる前に壊滅させた異星人連合の残党が残っていた…!?彼らの恐るべき作戦とは…!?
「暗殺宇宙人 ナックル星人」
帰ってきたウルトラマン第37話「ウルトラマン夕陽に死す」にて初登場。
異星人連合の一人。顔のタイプはバンデロらと同じ。何やら青と赤の石を持っている
「サーベル暴君 マグマ星人」
ウルトラマンレオ第1話「セブンが死ぬ時!東京は沈没する!」にて初登場。
異星人連合の一人。纏う鎧はアーマードメフィラスの様なデザイン。コピー品。元マグマ星人侵略軍の一人で、隊長候補にもなっていたが、ナックル星人らに誘われて異星人連合へと加入。
何やら謎のデバイスを持っている。
「異星人連合」
彼らのこの連合はビジネスのため。彼らは怪獣やロボット兵器のブローカーである。
怪獣を育て、ロボット兵器を盗み、それを他の星に売却する死の商人である。
その際、原生生物ではないギャラクシークライシスによるはぐれ怪獣などもコレクトしており、また地球へ降り立とうとしていた理由は手持ちの怪獣を繁殖させ出荷する牧場へと変える為であり、安定した環境と豊かな自然、それらを備えながら、対抗手段がまるでない星なので狙い目だった