ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:食卓の英雄
怪獣出現に関する衝撃の真実が語られた後も、議事堂ではウルトラマンノヴァへの更なる質疑応答の続きが行われていた。
「えー、委員長、私からもよろしいですか」
「どうぞ」
次に挙手したのは、これまた伊丹の説明の補足を行った防衛副大臣だ。防衛大臣たる嘉納の次に国防を担う人材として、何を問うのかと注目が集まる。
「端的に問います。貴方がこの地球に訪れた理由とは一体なんでしょうか」
その言葉にみながハッとする。映像作品でのウルトラマンが現れるには様々な理由があるが、今回、ノヴァの話を信じるのであれば別世界からわざわざこの地球を目指してやって来たのだから。
特に、現地人がトラブルに巻き込まれて変身する場合を除けば、何かしらの使命を請け負っていたりすることが殆どだ。
出身地と怪獣出現のインパクトでそこまで考えが及んでいなかった衆がそう言えばそうだと耳を傾ける。
『それも当然の疑問だ。…詳細は言えないが、私がこの地球にやってきたのは空間や次元を超える事象が複数例発生していることに関して報告を受けたためだ。勿論、それだけならば然程の問題はないのだが、その反応が通常とは異なる奇妙なものだったため、その詳しい調査、対処のために私が赴いた』
その理由はかなり簡易的なものだったが、詳しい話をしても今の地球人の文明では確認することは非常に難しいだろう。その通り、真実であるか否かは一旦脇において、そうであると仮定する。
「…わかりました。ありかとうございます」
『構わない』
先の怪獣出現の際に語った理由と結びつけるのなら、その事情が原因なのだろう。
何事にも関連付けるのは大事…というわけではないが、怪獣出現以後やっと手に入った情報だ。当分はこれだけで紙面やニュースの枠を独占することが出来るだろう。
しかし、それだけでは疑問は尽きないのだと言うかのように次々と挙手されていく。
「質問よろしいですか。特地に現れた姿を変えるウルトラマン。そして渋谷区に現れたウルトラマン。両者は一体何者なのでしょうか。特に、渋谷区に現れた方ではその見た目から侵略者が化けているのではないかと疑問視する声が上がっておりますが」
踏み込んできた。これはノヴァが新星の状態で仲間たちが議論していたのと同様、市民の間でも意見は割れているのが現状だ。
そのあたりをはっきりさせたいのだろう。
そして、それに対する答えをノヴァは持ってきていた。
『…片方は本人の許可を得ていないが、後者の方には回答できる』
実は、この会見の前に一度ザインの元へ向かい、今のこの現状をどう思っているのかと問い質してみたところ、「そりゃあ、ニセメビウスもありますし、疑われますよ。まあ仕方ないんじゃないですかね。私としては、変に誤解されるくらいなら、信頼できる
だからこそ、前置きをしてから話す。
『貴方がたに不安を感じさせてしまったのなら、申し訳ない。彼は、確かに疑問視する様にウルトラマンではない。その正体は貴方がたもご存知のザラブ星人だ』
これには何だって!?とざわめく人々。
ザラブ星人。初代ウルトラマンに登場して以降比較的メジャーな宇宙人で、その性質は殆どの場合悪辣。
初代では地球を取り巻く放射能の霧を除去して友好的なフリをして近づくと、実態は全てマッチポンプ、人やウルトラマンに化けて、信用を傷つけて地球を侵略する宇宙人なのだ。
実際に、凶悪宇宙人という別名からしてもその性質は想像出来るだろう。
異星人連合の件もあって、侵略的な宇宙人が実在していることに驚き、そして齎される怪獣とは別の懸念に苛まれながらもノヴァの言葉を待つ。
願わくば、その様な危険を排除してくれることを願って。そして語られたのは、これまた想像の埒外にある言葉だった。
『この世界ならば、ザラブ星人がどのような宇宙人であるか、どのような悪事を為したのかを把握しているだろう。だがしかし、彼は侵略者ではないことを留意して欲しい』
「侵略者じゃない?」
「どういうことだ…?」
『彼は確かにザラブ星人だが、私の協力者でもある。この調査にあたっての派遣員として、宇宙連邦の組織の一員としてこの地球に拠点を置いているのだ』
ザラブ星人がウルトラマンに協力。その言葉に動揺を覚えながらも、続けて出てきたのは宇宙連邦。詳細な内容は語られていないが、ともかく宇宙における公務員のようなものだろう。
『貴方方が怪獣による被害を受け、異星人への警戒もしているのは十分に理解している。そして、侵略的な宇宙人は特にピックアップされているとも。しかし、どうか彼を信じて欲しい。彼は戦闘を生業とはしていないにも関わらず、街と人々を守るため、単身怪獣に立ち向かったのだから』
そう言われてしまえば、あそこで怪獣デマーガの侵攻を食い止められなかった場合、渋谷どころか東京都心までもが極熱のマグマに侵されていたことだろう。
同種の怪獣に立て続けに首都に大きな被害を受けているのだ。不安視する声も分かるが、街を庇うように立ち回っていたのも事実。
半信半疑といった様子ではあるものの、ザラブ星人を危険視する声は小さくなっていく。
『彼がウルトラマンの姿を模して現れたのは貴方がたへ不誠実で、疑惑を加速させる要因になったかもしれない。ただ、彼はこの地球での自分の姿では安心させることが出来ないと、ウルトラマンの姿になることを選んだ。貴方がたには勝手なことと思うかもしれないが、どうか彼の配慮を受け入れてほしい』
ウルトラマンに言われてしまえば下手な反論も難しいようで、先の実績から考えても下手に糾弾することは難しい。それどころか、今の話が本当だとするのなら、そのザラブ星人も宇宙規模で活動する公権力側の組織の一員。これに何か下手を打てば、それこそ政府や国はおろか、世界、地球そのものに関わる。それこそ街を意図的に破壊したなどという証拠がなければ許されないだろう。
これには過激な野党も押し黙る他ない。
完全に受け入れるわけではなかったものの、この件は侵略的な異星人ではなく、人々を怪獣から守ったが故の正当防衛行為であるというお墨付きを押されたのだった。
そして、その後も怪獣の脅威性の確認であったり、攻めてきた円盤のような侵略者の有無。これからの生活や方針に関わる質問を数件ほど答えると、質問は次第に興味や好奇心由来のものへと移行していった。
「光の国には、我々の知るウルトラマンもいるのでしょうか。例えば、初代ウルトラマンであったりウルトラセブン、新マンやエース、タロウ等のウルトラ兄弟は、我々の知っているものと相違ないのでしょうか」
どうやらこの議員は新マン派らしい。
『相違ない。今挙げたウルトラ戦士の他にも…。そうだな。この世界で知られている戦士として挙げるなら、グレートやパワード、マックスにメビウス、ゼロなどもいる』
これまでの真面目くさったような雰囲気から、その反応は「おお…!」や「本当にウルトラマンが…」などの感激や感動などに似た声がちらほらと見えるようになった。
勿論、全体的に見れば少数ではあるものの、やはり政治家やマスコミも、これだけ集まれば幼少期の憧れのヒーローとして見ていた層が混じっていたのか、熱い視線がノヴァへと向かっている。
そんな人達ですらその有様なのだ。テレビや動画を介して視聴している人々はお祭り騒ぎである。
やはり自分の世代のヒーロー達が実在していると言われれば舞い上がり、名前の挙がらなかった層の人々が悲鳴を上げて続報を待つ。
中には、明言されずとも「いや、ゼロがいるならそれ関連でダイナ、コスモス、ネクサスは確定じゃん」「てか結局ゼロの母親は誰なんだよ」と話題を広げていく。
この興奮は何なのかと、ウルトラシリーズを見ていなかった世代や特地組は驚きを携える。
唯一、世代のウルトラマンがなかった伊丹は、しかしてその反応は一人のオタクとして理解できるもので、喜んでいる人々を目にしては
やはり今後の対策に関わる必須情報は直接関わる問題のために喜んでなどいられなかったが、こういった情報はエンタメとして人々を賑やかすようである。
「貴方は先程、この地球に派遣されたと仰っていましたが、やはり、所属は宇宙警備隊なのでしょうか。それとも、青い体のウルトラマンということで、科学技術局の出身であったりするのでしょうか」
どうやら、ここからはノヴァ個人に関する質問らしい。全体や種族そのものに携わるものというよりも、自分たちを守ってくれるウルトラマンは一体どのような存在なのかという、所謂ステータスが気になるのは当然とも言えた。
『今は現役を退いているが、過去にその両方に所属していた。今は宇宙警備隊員訓練校の臨時教官と協力関係にある星系への支援や教導、専門的見地が求められる事態の対処などをしている』
議事堂内がざわついた。
何せ、宇宙警備隊の教官と言えば、ウルトラセブンやウルトラマンタロウと言ったように、それこそ名だたる面々が就いていた地位でもある。
それに加えて、宇宙警備隊の大隊長であるウルトラの父などはウルトラの星の宰相なども務めており、宇宙警備隊の高官はそれだけ重視される立場と言っても過言ではないのだ。
ウルトラの星に置ける教官の立場を知らぬものでも、治安維持組織の者が星を越えた協力関係の構築を任されているとなれば、その地位も低くないと想像に難くないだろう。
「……えー、おいくつでしょうか?」
『あと300年ほどで5万歳になる』
静まり返る議場。先程、ロゥリィの961歳という数字が霞むほどの年齢だ。その差は約50倍。亜神となって1000年という長い年月を経て神へと成ることを考えれば、彼のこれまでだけで、順番に神へ成ったとしても50人近くの神が生まれる計算と成るのだ。
それに地球で5万年前ともなると、人類の祖先たる霊長類が石器を持って暮らしていた様な時代となる。
地球の人々は設定でウルトラマンの年齢はある程度理解しているが、それでも光の国のウルトラマンとしてはウルトラマンキングやウルトラの父と母、そしてベリアルに次いでいる。
まさかの主役、サブを含めても最年長とは思わなかったのであろう。
予備知識のおかげで驚きこそ少ないものの、やはり他種族との交流において、先ほどのような年齢による上位下位など枷にしかならないものである。
その後も、気になる話題や、ノヴァ個人に関する質問が相次ぎ、それらに答え、ぼかし、度を超えた質問には毅然と答えられないと告げていった。
『…すまない。時間だ。これ以上はこの星での活動に差し障る』
そして、その終わりは早くも告げられた。まだまだ聞きたいことはあるといった風で不完全燃焼のメディアであるものの、ウルトラマンが地球での活動にエネルギーを使っていることを知っているために渋々と納得する。
ここで無理に続けた所で、この超常的な存在は気にせず立ち去るであろうし、引き留めてしまえば、現状地球を守る力を持つ唯一の存在の体力を無駄に消耗させることは、自分たちの身の安全と風評に関わるのだから。
最後に、ウルトラマンノヴァは向き直るとこう言い残した。
『地球の人々よ。今はまだ混乱の中にあり、団結は難しいだろう。過去の遺恨や互いの思想。それらを無視するには少なくない軋轢があるだろう。だが、いつの日か手を取り合い、我々の世界の地球の様に、星々の間を駆ける日が来ることを願っている』
そう期待を寄せる言葉を吐いた。
現れた時と同様、ウルトラマンノヴァは青い光となってどこかへと飛び去っていき、中にはそれをカメラで追った者もいるものの、ある一定の所まで飛び上がったところで煙のように消え去った。
先程までの光景が嘘だったかの様に、議場は粛々としており、しかして人々の胸には今の僅かな時間の問答が刻み込まれていた。
こうして、思わぬサプライズのあった参考人招致は幕を下ろしたのである。
この後は色んなメディアがお祭り騒ぎです。