ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり   作:食卓の英雄

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前回のあらすじ

ウルトラマン本人が登壇するという会見が終わり、特地来賓を連れた一行は当初の予定通りに移動を開始する。
しかし、その裏には怪しい影があった。
地下鉄に予定を変えた伊丹たちだったが、なんと地下鉄を突き破って銀座の街中に『熱線怪獣グライム』が現れてしまう。
人々を守るために最善を尽くす自衛隊と特災課。人々が希望を諦めなかったその時、ウルトラマンノヴァが姿を表した。
一方、巻き込まれた地下鉄車両の救助に当たっていた真樹は、被害の大きい先頭車両にて、奇妙な光景を目にするのであった…。


冬の夜の夢のように

 

 地上にウルトラマンが現れ、怪獣と相対する様子は、現場にいた人々へと希望を齎した。

 

 ただ蹂躙される筈であった暴威の熱線をも無力化し、街を守るその偉業を、さも当然のごとく行う正義のヒーローというのは、それだけで見る者に活力を与えるものだ。

 

 突然自身の攻撃を防がれたグライムはというと、爪を高く掲げて威嚇の姿勢をとっている。

 

 対するウルトラマンノヴァも、積極的に攻撃を仕掛けようとはしない。何せ、守る対象が近すぎる上に、透視能力で地下を見れば、まだ市民は線路を伝って歩いている最中。

 何があっても対処できるように軽くグライムを牽制しながら、視線を引きつける様にゆっくりと弧を描くように歩み始めた。

 

 さて、そんな状況もよしなに、視点は伊丹達へと戻る。

 

「来たっ!ウルトラマンだ!」

「すげぇ。バリアで守ったぞ」

「あ、あれは、あの時のウルトラマン…?」

「あの巨体で門を越えてきたと言うのですか…!?」

「…盾のようなものを創り出し、守った?…あれだけの攻撃を容易く防ぐ光の盾。一体どのような理なら、それを成し遂げることが可能に…?」

「すごい…!あんな術の使い方もあるんだ…!」

「守るための術を持っているのね。本当に、話に聞く姿と変わらないのねぇ」

 

 逃げながら見える状況に歓声を上げる彼らに、その特異な技に目を剥く特地人。

 

 逃げる人も距離を取ったからか、少しだけ余裕が出来てきたのか、全力疾走から息を整え、様子を窺いながら歩いている。

 

 傍らでは、駒門が何やら通話相手に問いかけている様だった。

 そして、やられたとでも言うかのように渋顔を作ると、伊丹へと内容を告げる。

 

「ちとまずいかもしれませんねぇ。切り返しにつけてた連中と連絡がつかなくなりました。現場には、手荷物だけが残されてたとか」

「嘘ぉ…。でも、わざわざ痕跡を残す必要なんてあるのかねえ?」

「それがわたしも気になってましてねぇ。正体を掴ませない割には詰めが甘い…」

「挑発行為とか?」

「無くは無いかもですが、ちと考えづらいですな。しかし、やはり特地の来賓の警備は固めといた方がいいでしょうな。……多分、そろそろ直接的な分かりやすい手段を取ってくるとは思うんですが…」

「分かりやすい手ってのは?」

 

 そうして、人に聞かれたくない話ゆえに、少し足を止めた瞬間だった。

 

 人々の中に紛れて、一人の人間が飛び出してロゥリィが襲われた。彼女の帆布に包まれた大荷物を、人の流れに乗るようにして現れた男が奪い取ったのである。

 

「やってくれたわねぇ!」

「がっ!?」

 

 次の瞬間、ひったくった大荷物を持ち去ろうとした男の身体にロゥリィが即座に蹴撃をお見舞いしたのである。

 

 人間を超えた膂力から放たれる蹴りは、まるで自動車事故でも起こったかのような音を放ち、その音量に違わず錐揉みして吹き飛ばされる男の姿。

 

 そしてその手から離れ、地に落ちるロゥリィのハルバード。

 

 それは注目を集めるには十分だった。やはり、その音はさながら、人が吹き飛ぶほどの威力の蹴りを放つ身体能力は、まるで映画の中のハリウッドスターさながらである。

 

「お、おい。大丈夫なのか?」

「ひゅう、ナイスキック!」

 

 上から富田と栗林。しかしこれに焦ったのは伊丹である。

 

 何せ、その行為は目立つ上、いくらひったくりに扮した工作員であっても、あれだけの威力で蹴られては、ミンチになっていてもおかしくはないと思ったからである。

 

「ちょちょっ、ちょっちょっ!何してくれてんの!?」

「だってぇ、あの盗人が私の大切なものを盗むからぁ…」

「だからって街中であれはないでしょ…」

 

 ぶすくれるロゥリィに「流石に死んじゃいないよな…」と見回す伊丹。

 けれど、吹き飛ばされた筈の件の人物の姿はない。

 

「あれ?」

「いない?」

「あの吹き飛びようからして、無傷じゃすまないと思うんだが…」

 

 これには富田も不思議そうに首をかしげる。

 

 誰か目撃者がいないかと尋ねてみれば、その男は吹き飛ばされた直ぐ後に立ち上がって人混みに姿を消したとのこと。

 

 そのことにエラくタフだなぁ…。と感心するも、袖を引っ張られる感覚に目を向ければ、ロゥリィが犯人だった様だ。

 

「どうした?やっぱり怒ってる?」

「…そうじゃないわぁ」

「じゃあどうしたの?」

「……わたしぃ。手加減はしたけどぉ、あくまで殺さないようにしただけなのよぉ」

「へぇ」

 

 伊丹としては、それって手加減なのだろうか?特地と日本とでは手加減の基準が違うのだろうかと、自身が受けた待遇に重ねて返事をするが、対するロゥリィは適当に聞いているのが分かったのか、「はあ…」と前置きして忠告する。

 

「だからぁ、わたしとしては骨くらい折るつもりだったのよぉ。大切な得物をかっさらうわけだしねぇ。それが、あの短い時間で姿を見失うくらい動けるってぇ、こっちの兵士では普通のことだったりするのかしらぁ?」

「……そんな筈は、ないとは思うけど」

 

 選りすぐりのエリート部隊とかであれば、なくはないだろうが、それならばもっと綿密に立てられた作戦となるだろう。

 そう考えれば、伊丹の頭に浮かんだのは「宇宙人」の三文字。先ほどの会見での宇宙人のこともあって、記憶に新しい。

 

「…もしかして?」

「そうねぇ。少なくとも、気をつけた方がいいかもぉ?」

 

 肯定とも否定とも取れる発言に頭を抱える伊丹。

 

 項垂れる伊丹の耳に入ったのは、駒門の唸るような声だった。

 

「ぐ!!」

「駒門さん!?」

 

 まさか新手かと、そう思い顔を向ければ、放置された大荷物に向かって逆Uの字で硬直する駒門の姿があった。

 

 ロゥリィの荷物を持ち上げようとした拍子に、あまりの重さに腰に負担がかかったらしい。

 急性の腰痛捻挫。所謂ぎっくり腰である。ぎっくり腰と言われれば深刻には聞こえないが、下手をすると椎間板ヘルニアを起こしている可能性もある。

 

 腰に走る激痛に崩れるようにして膝をついた駒門は、片腕で腰を押さえて地に伏した。

 

「なんてぇ重さだ。バーベル並みだぜ」

 

 額に脂汗を垂らしながら、深刻そうに倒れ伏す駒門。

 

 如何にある程度の距離をとったとはいえ、ここはまだ怪獣の暴れる銀座内。流石にぎっくり腰で動けない人間を放置するわけにもいかない。

 

 どうしようかと顔を見合わせあったが、幸いなことに、近くを通っていた避難誘導車が騒ぎを聞きつけたらしく、同じ警察組織ならばということで、伊丹達は駒門を放置して目的地へと向かうのであった。

 

 

 

 

●●●

 

 

 

 

「ディアッ!」

 

 再度放たれた熱線を再びバリアで防ぐノヴァ。赤い輝きの奔流にも負けずに背後の街を守る様子は、頼もしさを覚える。

 

 いとも容易く熱線を防ぎ、ファイティングポーズをとるノヴァに気圧されたのか、じりじりと後ずさるグライム。

 

 そして、覚悟を決めたかのように爪を大きく振りかぶると、ノヴァは合わせるべく構える。

 

 が、次の瞬間、グライムの姿が空気に溶けるように消えていく。

 

「ディッ…!?」

 

 急に姿を消したグライムに驚き、キョロキョロと周囲を見渡し、何があってもいいように腰を低く落として警戒態勢に入る。

 

 これは人々の目にも映っており、驚愕をもって迎えられた。

 

『こちら現場、怪獣の姿が消えました!』

『捕捉出来ません!』

『ああ、こちらでも把握している。……姿を消した。となると、ネロンガなどのように透明化する能力を持っているのか…?』

『だとしたら、脅威なんてものじゃありませんよ』

『とにかく、何でもいい!何か捕捉できるようなものはないか!』

 

 日本は度重なる怪獣災害に遭ったことにより、その索敵方法を幅広く用意しており、サーモグラフィーやレーダーなどは勿論のこと、本来は土地の調査などに使われる機器までもが駆り出されていた。

 

 彼らが画面越しに見つめる先では、構えたまま様子を窺うウルトラマンノヴァの姿が映っており、その絵面に変化はない。

 

『妙だな…。姿を消したのに、攻撃も逃走もしない?』

 

 フィクションであれば、透明化した相手はその様な手段を取るのが常である。こっそり逃げようにも、都心ど真ん中に現れた巨大怪獣では、痕跡を残さず動くことは難しい。

 

 よって、その場から動いていないのかと、構えを維持したノヴァが手を伸ばすも、何らかに当たった感触もなく、空を切る。

 

『レーダー、各種反応はなし。熱源反応も、二酸化炭素の変動もありません!……完全に、消失しています』

『透明化したのではなく、文字通り姿を消したということか…?』

 

 指揮所でその突然の現象に困惑の声が上がっていると、再び見回したウルトラマンノヴァが構えを解き、光とともにその姿を消した。

 

『ウルトラマンノヴァが姿を消しました』

『怪獣は去った、ということなのか…?』

 

 ウルトラマンノヴァ自身は自らその姿を消したように見えた。突如消えた怪獣に、訳が分からないと困惑しながらも、彼らは被害にあった現場へと救援を送ることにするのであった。

 

 

 

 

●●●

 

 

 

 

 

 梨沙は今、かつてない程の焦りと共に、大慌てで避難する準備を進めていた。

 ことの始まりは、生活に困窮し、元夫でもある()()に助けを求めるかと悩んでいたその時である。

 

 梨沙は、元はと言えば冬の同人誌即売会に向けて出す同人誌の執筆作業を進めていた最中であった。

 梨沙の生活は決して満たされているとは言い難い。同人誌作家というあまりに安定しない収入では、下振れている時は赤字の連続だということもざららしい。

 

 梨沙もそんな例に漏れない一人の同人誌作家であった。

 

 料金滞納によって携帯が止まり、ガスも既に止められている。

 水道代は督促状が来ているし、年金や健康保険料も絶賛滞納中である。仕事道具であるパソコンが止まった時点で破滅回避のためにどうにか電気代とネットの回線代、プロバイダ料は払ったものの、それで犠牲になったのは食費である。

 

 シリアルと豆乳で2食分、惣菜とご飯を買って晩御飯。

 

 …もっとも、少し前から3食シリアルと豆乳、たまに気分を変えてカップ麺や惣菜パン、野菜ジュースなどでどうにか食いつないでいる。

 

 門の繋がっている特地からしてみれば、命の危険もなく、高水準の安全が保証された美味しい(味のする)食事が3食摂れている、というのはそれなりに裕福な証ではあるのだが…。

 

 それは、世界が違えば常識が違う。彼女にとってはカツカツの生活であることに変わりはなかった。

 

 まあ、そんな状況であったが故、追い詰められた彼女がどうにかツテに助けを求めようとするのは自然なことである。

 世間的には、別れた夫にこんなことを頼むのはおかしなことだろうが、そこは当人達の事情によるだろう。

 

 そんな時である。

 

 辛うじて残っているスマホから、けたたましい音が響いた。

 そう、グライム出現による避難警報である。

 

 怪獣とウルトラマンという大事件は、当然梨沙自身も把握していた。

 梨沙としては専門ではないものの、やはりその存在が実在するとあっては脅威以外の何ものでない。この前にも、渋谷に某怪獣王に似た姿の怪獣が現れたことは記憶に新しい。

 

 如何に真っ当な生活から遠い梨沙と言えど、それらの災害に備えたグッズは買っていた。……まあ、この生活の中で少しだけ手を出してしまってはいたが、即座に問題になることはないだろう。

 

 出現場所が銀座という、そう離れた場所ではないこともあって、最悪の可能性を考えて準備を進めていたのである。

 

 ……決して、家が壊されて仮設住宅で配給を受け取ったほうがいいかも、等と思った訳では無いが、命あっての物種と、不摂生な生活で弱った体を動かしたのである。

 

「先輩、大丈夫だよね…?」

 

 準備の傍ら、入手した情報によると、現れた怪獣の目と鼻の先には、梨沙の先輩が派遣されている特地への門があった。

 もしも壊されてしまえば、異世界に置き去りになってしまうのではないか…。

 

 そう考えてしまい、不安に駆られるが、一旦その考えを振り切った。

 

 仕事道具ヨシ。毛布やら非常食やらヨシ。念の為充電機器や手回し発電機などもバッグに詰め込み、窓から様子を見る。

 

 ここからは怪獣の姿も何も見えないが、多くの人や車が銀座の方からここにまでたどり着いている。

 

 これには本格的にヤバいと思った梨沙は、本当に最低限だけ身なりを整え、いざその流れに乗らんとドアを開け放った。

 

「ぐえっ!」

「…へ?」

 

 ドアの先に人がいることなどまるで予想していなかった梨沙は、その伝わる感触と共に倒れる人影を見て、ようやく自分がしたことを理解した。

 

 こんな被災時に人の家の前に立つ人物などいるのだろうかと疑問に思ったが、学生時代に学んだ防災訓練では、周囲の家に残された人に避難を促すこともあると、回らない頭でどうにか考えついた梨沙は咄嗟に謝罪の言葉を紡いだ。

 

「あ、ああ!すみません!すみません!今避難しようとしてたところで………」

「痛っつつ…。よ、よう…。起きてたのか梨沙、ってまあ、怪獣警報出たしな…。急で悪いけど、ちょっと宿貸してくんね?」

「って、せ、先輩!?」

 

 そこには、したたかに打ち付けたのか、赤い鼻をさすりながら、かつてと変わらない優しい声で語りかける、元夫にして頼りになる先輩。

 今は特地にいるはずの伊丹耀司の姿があった。




次回予告

突如として怪獣が消え去るという奇妙な事件が起こった。
更に電車内の市民だけでなく、特地来賓を警護する者の消息までもが途絶えてしまう。
政府が緊張を高める一方で日本観光を楽しむ伊丹達一行へと迫る邪悪な影。その正体とは…!?

次回、ウルトラマンGATE「禁じられた侵略:前編」

答えろ!お前たちは何者だ!
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