ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり   作:食卓の英雄

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続きじゃい!


禁じられた侵略:中編(2)

 

 今しがた、擬態して迫っていたゴドラ星人は、ロゥリィの活躍により撃滅された。その衝撃で壁は複数枚貫通しており、酷い有様だが、命がかかっているために気にしては居られない。

 

 再度廊下や外を確認して、一時部屋へと戻ってこう呼びかけた。

 

「とにかく、ここまで敵が来てるんだ。ここも安全じゃない。……クソ、電話も無線も通じない。……話は移動しながらだな」

 

 伊丹の指示に反対する者は当然ながらいなかった。

 特地来賓の護衛ということもあり、前衛は隊長である伊丹と真樹、そして自ら前に出たロゥリィ。真ん中には特地の来賓に、さらにその中央に一般人の梨沙。それを左右から守護するのが富田と浅永であり、その後方を守る一団には栗林や高瀬といった女性陣と、最後方の殿を務めるのは特災課側の副隊長、新星だ。

 

 そして一行の準備が整ったことを確認して、隊列を乱さぬように足を踏み出した。

 

 先に安全を確かめた前衛の背を見ながら、落ち着きなさげにしている梨沙の側へと新星が近寄った。

 

「梨沙さん、これを」

「へ?これって…」

 

 そう言って手渡されたのは、グリップのついたD字状の何か。それは特災課内で支給されている威嚇用の装置ソニッターだった。

 

「自衛手段がない、というのも不安でしょう。使い方は簡単です。こちらの照射装置を向けて、トリガーを引くだけ。……あくまで閃光と超音波による威嚇だけですが、この暗闇ならば通用するでしょう。自身の身に危険が迫っている時に使ってください」

「あ、ありがとうございます…」

 

 それにはいいのかと高瀬が視線で訴えるが、新星は何てことないように言った。

 

「あれは銃器ではないからね。貸し出しても非常時の自衛用な上、殺傷力もない。何も持たないよりは少なからず気は紛れるだろう」

「……まあ、変に攻撃力のあるものじゃないだけ良いってことですか」

 

 そして、周囲を警戒しながら足を踏み出す彼らへと、当然と言えば当然の疑問が特地娘から飛ぶ。まずはレレイからだ。

 

「私達は何に狙われている?人に化け、言葉を解し襲うという特徴は、私たちの世界の怪異、ダーにも似ている。あれはニホン特有の怪異か何かか?」

「そんな奴が特地にもいるのか…。これは要報告だな…。……ああいや、前に宇宙人の話はしただろ?その一種だよ。ええと、あれはウルトラセブンに出てきた…」

 

 周囲をクリアしながら思考する伊丹に代わって、横から緊張した様子の富田が呟く。

 

「ゴドラ星人、ですね。えっと、確か腕の先からビームを出したり強力な凝固液を発射可能で、飛行能力やさっきのような変身能力なんかを持っています」

「ウチュージン……。あれが…!」

「ウ、ウチュージン…?あの姿は怪異ではないのか!?」

 

 それに、会見の場にいなかったピニャから声が上がった。

 

「あー、と、宇宙人ってのはですね…」

 

 そういえばいなかったな。などと思いながらレレイ達にしたように簡単な説明を終えると、やはりと言うべきか、むしろ国を運営する側にあたる視点からでは脅威にしか見えない。

 何より、怪異などのように動物的な本能で動く低知能な存在では無く、高度な知性とニホンをも超える技術力を持っている場合が殆どだと言われては、顔を青褪めさせる他ない。

 

「とにかく、車両までが第1目標だ。それまでは可能な限り戦闘を避けて」

「隊長っ!」

 

 横目に後続を意識しながら進む伊丹の死角。森の中から新たなゴドラ星人が現れた。それも二体も。

 

「うおっ!?」

 

 ゴドラ星人が放ったビーム、ゴドラガンが咄嗟に躱した伊丹の背後の岩をいとも容易く粉砕する。 

 

「このっ!」

「隊長!」

 

 伊丹と富田が構えた小銃から5.56mm弾が撃ち出される。パパパッという軽快な音と閃光が木霊し、かつてその威力を見ていたピニャらは喜色の混じった声を上げる。

 

「ハハハッ、貴様ら人間の武器など我らに通じるものか!」

 

 しかし、ゴドラ星人は高笑いを上げ防御姿勢すら取らずに直進してくるではないか。

 

「クソッ!」

 

 連射は続けるものの、ゴドラ星人に当たっては硬質な音とともに弾かれる。まるで手応えがない。

 

 瞬時に飛びかかったロゥリィが、内一体を吹き飛ばしたが、次いで飛びかかったそれを見た片割れがゴドラガンを放つ。

 小規模な爆発が連鎖し、ハルバードの刃で防いだもののロゥリィの見かけどおりに軽い身体は空中で後退する。ダメ押しとばかりに再度両腕を振り上げ、突如迸った一撃がゴドラ星人を撃ち抜いた。

 

「ぐあっ…!?」

 

 真樹の一撃だ。妙な銃の銃口からは煙が立ち昇り、それが有効な一撃であったことを実感させる。

 

「まだだ!次!」

 

 油断することなく真樹は再び引き金を引く。浅永、高瀬もそれに続いて怯むゴドラ星人へと追撃を加えていく。

 

 二、三、四と追撃が加われば、たちまちゴドラ星人はぶくぶくと泡を吹くような音を立てて倒れ臥す。

 顔の発光体からは光が消え失せ、生命活動を停止しているのは間違いなかった。

 

「な、何…!?今の人類に我々が…!?」

 

 戦線復帰したゴドラ星人が、ひび割れた甲殻を庇いながら慄くも、時すでに遅し。構える護衛の更に背後から、狙いを研ぎ澄ました一撃が顔の発光体に吸い込まれる。

 

「ぐあぁっ…!?」

 

 予想外の一撃に怯んだゴドラ星人の目前には、死神が迫っていた。

 

「衝撃を逃さなければいいのねぇっ…」

 

 両断の叶わない堅牢さを持つ宇宙人の甲殻への対策。それは吹き飛ばして衝撃を逃がしてしまうことから、地面へと振り下ろすことでダイレクトに衝撃を伝えることであった。

 

 月光を浴びて艷やかに輝く神鉄の槍斧が、処刑人のギロチンの如き勢いでゴドラ星人の頭頂部へと突き刺さる。

 

「ごばっ…!??」

 

 ゴドラ星人の頭部の構造は、中央に谷が出来るようになっている。それも功を奏したのだろう。一直線に吸い込まれた一撃は食い込み、あまりの圧力に内側から甲殻がひび割れた。

 

 半ばまで進んだ刃もやがて勢いを失い、ズッと引き抜かれたハルバードにはゴドラ星人の青い血がついていた。

 

「ご愁傷さま。……にしても硬いわねぇ。神鉄じゃないあり合わせの武器だったら、刃のほうがやられてるわぁ。この前のカイジュウのせいでただでさえ刃毀れしてるのにぃ…」

 

 刃の様子を見ては、嫌そうにぶんぶんと振るう。そのハルバードには、かつてアーストロンへと攻撃を与えた跡が残っており、神鉄という希少素材をこうまで加工できる人材は少ない。

 

 つまりは安易に修復することも出来ないまま使っているのだが、ただでさえ一部が欠けている刃を硬いものに振り回し続けるというのは、加速度的に刃の寿命を縮めていくことになる。

 

 さしもの死神ロゥリィといえど、愛着のある武器が壊れかねないという状況で、彼女基準でも面倒な硬さを持つゴドラ星人との連戦は避けたいのだろう。

 

 そんな憂鬱を置いておいて、自衛隊組は先ほどゴドラ星人に有効打を与えた武装へと注目が集まっていた。

 

「…今のは?」

「試作型対怪獣用電磁拳銃。特災課で極秘に開発されていた携行サイズまで小型化した電磁砲の技術試作品です。発射速度は100/分。電力と弾頭から、一弾倉ごとに20発撃てる計算です」

 

 伊丹の疑問に答えたのは高瀬隊員だ。

 

「それってレールガンってことですか!?」

「嘘っ!?」

 

 目を剥いて驚く富田。言葉には出さないものの、伊丹も栗林も同様の感想だ。元々レールガン自体の研究は防衛省管轄で1980年頃から進められているとは知っていたが、それでもかなりの大型でしかなく、またそれの完成も10年ほど先になるだろうとのことだったのだ。

 

 それが、まさか個人で携行出来るほどに小型化しているというのは、一体何段階の技術をすっ飛ばしていったのか。

 

 梨沙はレールガンの存在は知っていたものの空想上でしか実用化されていないと思っていたために興奮し、特地娘らは分からないものの、『ジュウ』を熟知している伊丹らの反応から凄いものであることはなんとなしに理解したようである。

 

 会見の際、内心で粒子砲やらレーザーキャノンやらでも実用化しなきゃどうしようもないだろ。と思っていただけに、これほどまでに小型化したレールガンが配備されていることに驚嘆とも感動ともつかない息が漏れる。

 と、そこで栗林から疑問が漏れる。

 

「あれ、でも拳銃…?」

「はい。ですから技術試作品と。レールガンの性能を保持したまま、小型化が出来るのかという試験の一環ですね。本来は拳銃サイズまでが予定されていたみたいですけど、現段階では短機関銃程度が限界とのことです」

「なるほど。その開発プロジェクトの名前がそのまま来てるのね」

 

 合点がいったと二人が納得するのに対して、富田は頭を捻って再び声をあげる。

 

「あの、レールガンは長い電極と大電力が必須と聞きましたが、その短い銃身でどうやってあの威力を…?」

「えっと…」

 

 言葉に詰まる高瀬が助けを求めるように背後を向くと、新星が説明を引き継いだ。

 

「……確かに従来の方法のレールガンで威力を発揮するにはより大きく長大なレールが必要だった。しかし、電気に関する新たな発見があった」

「新たな発見、ですか?」

「怪獣による強大な電撃攻撃は、電気であるにも関わらず、鉄筋コンクリートの建造物を貫通して粉砕した。これまでにも物体を破壊した電撃は枚挙に暇がないが、いくら大電力とはいえ、そこまでの物理的な破壊力を持つものかと考えた科学者がいた。そこで、その科学者方が該当怪獣のサンプルから研究を進めた結果、従来の方法では発生しなかった、より強力で、特異な性質の電気が見つかった。それを応用して作られたのがこれだ」

 

 ここで一拍。のみ込めはせずともいきさつは理解出来たようである。

 

「……これは世間には公表されていないが、日本はカナダとの取引でヘルベロスの角を対価に、デスドラコの角の片割れを入手している。そのため、より研究が進んだんだろう。…当初は、それを活かした電撃攻撃を行う砲塔も検討されていたものの、いくらコントロールしやすいとはいえ、電気であることに変わりはないから、周辺の被害や誘導の可能性を考えた結果、レールガン内部の機構に活かそうってことになったらしいよ。……まあ、これは村崎くんから聞いたことをそのまま言っただけだけど」

「地球舐めんなファンタジーしてる…。って、そんな機密話します普通…?」

「そもそもピニャ殿下らの来訪や護衛自体も機密だろうに。星人まで出てきたんだから今更変わらないだろ」

 

 ……伊丹が知りたくないものを知ったとばかりに頭を振るも、真樹はどの道だと諭す。何より、ここで立ち話をしている暇もない。

 

「どうやら体表よりも眼球や頭部の発光体は比較的脆いようです」

「それに目眩ましにもなる。……通常火器はこれらの部位を狙った牽制。私達はその隙に片付けよう。伊丹2尉もそれで構わないかな?」

「まあ、こっちの武器が通じない以上はそうなりますよね…。頼りにしてますよ、ホント」

「よし、気を引き締め直して進もう」

 

 ひとまずの攻略法を周知させると、可能な限りの交戦を避けるようにと再びゆっくりと歩みだした。

 

 彼らの長い夜はまだ続くことになる。





『試作型対怪獣用電磁拳銃』
作中で説明された通り、次々に襲い来る怪獣、宇宙人による襲来に備えて開発されていた装備の一つ。
見た目は例の怪獣王のアレのように、P90を逆さにしたような外見をしている。
電磁拳銃と銘打っているが、これは開発プロジェクトの名前であり、実際は今の時点で拳銃サイズまで小型化は出来なかった。
怪獣の放つ電撃の物理的な破壊力に目をつけた科学者が調べた結果、性質の異なる強力な電気が確認され、それを調べ上げ、組み込んだもの。

尚、携行サイズの電磁砲を製作することが可能であるか否かの試作品である。つまり、既に大型のものは……
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