ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:食卓の英雄
まあその期間の3分1くらいをこの話で使っちゃってるんですけど…。もうそろそろオメガも終わりそうだというのに、拙作未だに一巻の下、或いは1クールも終わってないという…。
何なら作中時間だと記者会見の翌日っていうね。
後、すっごい間違いしちゃったんですけど、『禁じられた侵略:前編(2)』の話のことで、作中だと嘉納防衛大臣がいる指揮所は市ヶ谷らしく、箱根にある山海楼閣(モデルと思われる強羅環翠楼も箱根)との距離は100km近くあり、どう考えても伊丹や配備していた特戦群が立ち寄るのはあり得ないんですよね。なんかこう、いい感じのモブとかに置き換えてもいいでしょうか。
伊丹らを見送った新星と真樹の二人は、木の生い茂る真っ暗な山中を息を潜めながら進んでいた。
ゴドラ星人が避難先の旅館にまで現れたということは、特殊作戦群による護衛は失敗に終わったと推測できる。
だが、ゴドラ星人は知っての通り超能力を持つ宇宙人だ。テレポートでいきなり旅館周囲に現れたという可能性はゼロではなく、仮に交戦していたとしても、どのような結果になっているかは分からない。
ゴドラ星人を退けたのか、撤退を決めたのか。捕獲されているのか、はたまた気絶、最悪の場合はその場で殺されてしまっているのか。
何れにせよ、その確認はしなければならないだろう。
その様な状況であるため、いつゴドラ星人と出くわしてもおかしくない。
視界の悪い夜の山ということもあって、その緊張感は一入。寒さによって鈍感になった感覚をどうにか覚ましながら、足早に進んでいく。
しかし、その警戒態勢は予想に反して裏切られることとなる。
予め新星に伝えられていたポイントにたどり着くまでの間、ゴドラ星人の襲撃はおろか、何の気配も感じられなかったのである。
そして、彼らは見た。
「これは……」
「どういうことだ…?」
山中に倒れ伏す人。人。人。
銃器で武装しているが、その服装はちぐはぐだ。作業服やコート、カジュアルな私服といった様で節操がなく、とても山中での活動、ましてや銃器での戦闘に適した格好とは思えない。
サバゲープレイヤーかとも一瞬思ったが、落ちている銃器は明らかに実物だ。
倒れ伏す人々の年齢にも節操はなく、どのような集まりかも分からない。ただ、その厚みのない手やハリのない肉体。スニーカーなどの格好を見れば戦闘やそれに類する行動を生業にしていないのは明らかだった。
「……もう息はない」
警戒しながら屈み込み、その呼気と心拍を確認した真樹が首を左右に振る。
そう。彼らは皆死亡していた。目立った外傷こそ見受けられなかったが、恐らくショック死だ。ゴドラガンのリング光線の性質と似通った破壊痕もあった。
「これもゴドラ星人の仕業ってことか…」
「しかし…何故?」
「何故というと?」
「この格好からして、とても不意に巻き込まれたようには見えない。明らかに適当な寄せ集めだ」
「………確かにそこは疑問に思っていたが…。副隊長は、彼らがどこかから連れてこられたように思っているのか?」
「そうとしか考えられない」
真樹も、この短いやりとりだけでもこのちぐはぐな状況は理解している様で、彼らは恐らくゴドラ星人によってここに連れてこられたであろうことが推測される。
よくよく注視すれば、顔にハリがなかったり、頬のこけや髪につくフケなどが見て取れる。
その健康状態も相まって、その説の根拠が補強された。
次に、何故わざわざ人間に武器まで与えてこのような森に解き放ったのかという疑問は、新星たちがやって来たこの区画こそが答えになっていた。
「………特殊作戦群を誘い出す囮、或いは人質か」
「……だろうね」
護衛についている特殊作戦群を武装した人間で引き出し、宇宙人という正体を隠しての不意打ち。ゴドラ星人の襲撃までの間にこちらへの連絡がなかったことにも納得がいく。
こんな夜中の山中に銃器で武装した人間が複数現れては、それを人間による襲撃だと判断しても可笑しくはない。仮に彼らのちぐはぐさに気づこうとも、本命はゴドラ星人。対人を想定した準備しかしていないのでは、特殊作戦群といえど抵抗は困難だ。
「……無関係な人々を巻き込むとは、卑劣な」
その姿は、日常を謳歌し、当たり前の日々を過ごす一人の人間の姿であり、その平和を奪い去り、こうして使い捨てる様に新星が悪態をつく。
真樹も同様の思いで、ゴドラ星人をこれ以上のさばらせてはならぬと決意した。
もう一度哀れな犠牲者の姿を視界に収め、そして何かに気づいたように声を上げた。
「ん?……こいつは」
「どうした真樹」
真樹が一人一人犠牲者を調べていた所、何か違和感を覚えたようで、遺体のポケットに入っている財布を取り出した。
スマートフォンは携帯していたものの、当に電源は切れていた。
金に目がくらんだという訳では無い。ありふれた革の財布を開けば、そこには日本札ではない紙幣に、免許証などが入っているのが見えた。
そこに記されていたのは簡体字の羅列。他のカードなども同様で、雑に入れられたレシートもまた日本のものではなかった。
「この遺体、中国人だ」
「何だって?」
それも、レシートを見る限りでは直近で日本での買い物はしていない。ただ受け取っていないだけかも知れないが、その様な人物ならば今もレシートが乱雑に財布に入れられたままというのは疑問が残る。
パスポートの類は見つからなかったため、正式な方法で日本にも入国していたのかの判別は出来ないが、一抹の不安がよぎる。
「既にゴドラ星人は中国を狙い、人攫いを終えていたのでは?」という疑念だ。
「……副隊長、これを」
「この日付は…!」
日付の証明が可能なもので最も新しいレシート。その日付はサードウェーブ当日。シャゴンが出現する約1時間ほど前のものだ。
加えて、確認できる住所は渦中の香港。シャゴン出現位置からは少し離れているが、避難が進められていた区域に入っていた。
先日の
状況証拠は少ないが、この最後の足跡と直近の事件に関連性があるというのも、どうにも的外れではなさそうだ。
他の面々も調べ上げたところ、中国人と日本人が主で、稀に系統の違う人種も紛れているが、確認できる一部は日本国内での活動記録が残っている。
「……この記録から見るに、活動範囲は中国と日本か。それも、中国には数ヶ月前から潜伏していたらしい。だが日本にはやって来たのは最近。まだ数週間と経ってないだろう」
「……ってことは、中国で地球での基盤を整え、人間同士の問題に見せかけたその裏で日本を狙っていた。と見るのがいいか…?」
断定は出来ないが、これまでの事件の発生を考えれば、そう遠くない予想にも思える。
犠牲者の遺体は今すぐどうこう出来るものでもなく、悠長にしている余裕もないため止むなく放置して進む。
やはりというべきか、いくつかに別れた複数個所にて、同じように人の骸が転がっている。そのことに顔を顰めながら散策を進めるが、特殊作戦群の姿はない。
屍と化して転がっていないことだけが救いだが、この状況を考えれば、無事に切り抜けたと考えるのは楽観が過ぎるだろう。
しかし注意深く見ていけば、そのうち他と異なる痕跡が発見される。
「副隊長、ここに足跡を隠したような跡が」
「……隠し方が慣れているな。こちら側から接近し、彼らを確認した。その後、警戒しながら歩みを進め………ここで途切れているな」
明らかに素人で困惑したまま行動したであろう群れと、注意深く隠されたものと思われる痕跡の区別はあまりに容易。
新星はウルトラ一族としての能力で痕跡を確認し、特殊作戦群のものであると確信した。同時に、途切れた箇所ではほんの少しだが土が凹凸状になっていた。
その隣では、のっぺりとした足跡のようなものも残っていた。
「囮の人々の確認に来た特殊作戦群は、 ここでゴドラ星人によって不意打ちを受けた様だ」
ここに至るまでは丁寧に痕跡が隠されていたのに対して、ここだけ杜撰だ。倒れたような微かな窪みと、足跡が急にその場に現れたことから、ゴドラ星人による不意打ちだと推測する。そうでもなければ、精鋭揃いの特殊作戦群がゴドラ星人に対してアクションを起こさない筈がない。
事実、正面から掛かってきたゴドラ星人でさえ、対処可能な装備を以ってしても苦戦を強いられたのだ。武器を有する集団への警戒をしたまま、宇宙人による不意打ちを完璧に対処できる人間などどれだけいようか。
落葉で勝手に隠されると思ったのかもしれないが、あいにくと季節を考えれば、ピークは過ぎている。
ゴドラ星人の人間を低く評価するきらいが、この杜撰な始末となったのだろう。
「だが、それにしては死体を残すのは余りに不用心だ。これではゴドラ星人の関係の有無に関わらず、警察の捜査も組まれるだろう。……となれば、考えられる理由は二つ」
「既にこの痕跡が支障にならない段階に進んでいるか、或いはこの場を離れなければならないような事態が起こったか。……この程度は障害にすらならないと人間を舐めている可能性もありますが、これまでの動向から考えて薄いでしょうね」
真樹がそう呟き、その場を後にしようとしたその時だ。
茂みの奥から話し声と草を掻き分ける音が届く。
「「!」」
咄嗟に二人は身を屈め息を潜める。
近づいてくる音に耳を澄ませれば、二人分の足音と共に会話がなされているのが分かる。
周囲一帯には避難指示が出されており、また事情を知っている側からすれば、こんなにも無警戒なことはあり得ない。ほぼ間違いなく、敵側とみていいだろう。
そう判断したのは正しく、草陰から視界を確保すれば見えてきたのは二体のゴドラ星人。
「我らに回収の任が下るとはな」
「仕方あるまい。対象を捕獲できなかったせいで既に地上に来ていた同胞が早急に向かう必要があったのだ」
「そのせいで囮にも一人逃亡者が出たらしいが…今頃始末されているだろう」
「ケムール人の奴も失敗したらしい」
「同胞が周囲を警戒していた筈だが、連絡はないのか?」
「最後の連絡は作戦前の定期連絡だ。どうやらあちらで予想外の事態に遭遇したようだ」
「フム、防衛大臣とはいえ、作戦指揮所ならば油断していると踏んだのだがな。思ったよりもやるらしい」
「それよりも、行方が分かっていない以上、我らの存在が露見する可能性も考えなくてはならない。本来のプランを実行する準備をしておけとの話だ。既にケムール人もこちら側に来ていると聞くぞ」
「当然だ。ここの襲撃もケムール人の要望によるものだ。作戦指揮所から攫いやすいという利点もあったとはいえ、失敗では話にならん。いくら協力者といえど、こうなっては我らに従ってもらわなくてはな」
「違いない。やつの消去エネルギー弾はまだまだ使い道がある」
そう言いながら、二体は赤い霧で犠牲者を包み込み、浮かせていく。
(ケムール人に、防衛大臣、それに本来のプラン、だと?)
(聞き捨てならないな。……しかしこれで確定したな。ゴドラ星人の狙いは嘉納防衛大臣だ。ケムール人と協力関係にあり、そのケムール人の狙いは伊丹二尉達一行と来たか。……これは推測になるが、ケムール人は特地住民であるエルフや亜神の様な長命種の肉体を求めているのだと思う。かつて、ケムール人が誘拐を試みたのも、若い肉体を求めたため。ならば長命の種族であり、宇宙人や怪獣といった存在に馴染みのない特地の住民を狙うのも、そう的外れな考えではないと思っている)
一拍置いて、その情報を噛み砕く。
(…まとめると、ケムール人は特地来賓…テュカとロゥリィが狙い。ゴドラ星人はこの作戦で外に誘き出される嘉納防衛大臣の排除が目的ってことか。……失敗に終わったみたいですが、本来のプランってのが気になりますね)
(ああ。嘉納防衛大臣を排除しようとしたということから、ケムール人同様特地関係での潜入か、或いは対抗手段を持つ特災課の動きを鈍らせることが目的だと考えられる。その間に日本を征服しようとしていたのならば、本来のプランというのも、特災課や自衛隊を混乱させることが第一になる筈だ。仮に擬態能力で頭を挿げ替えても、反抗勢力は力を残したまま、というリスクを抱えたくはないだろう。短期間ならともかく、長期的に見れば怪しまれる上に、目撃者を取り逃がしていることから、悠長にはしないだろう)
(成程、ゴドラ星人もああ見えて後がないと。ですが、それなら不味いのでは?通信機器も使えないから、警戒を促すことも難しい)
(加えて、ケムール人がこちらに来ているということは、伊丹二尉達が狙われていても不思議ではない。逃げ延びていてくれればいいんだが……)
二人が小声で言葉を交わしていると、ゴドラ星人は赤い霧を出したまま茂みの奥へと進んでいった。
(追いますか?)
(そうしよう。通信ができない以上、応援は期待薄だ。何より、やつらも今ここで事態を大きくはしたくないはずだ。遺体を放置しても、何らかの方法で処分するにせよ、この地での露見に繋がりかねない。ゴドラ星人の数や、先ほどの会話からも踏まえて、恐らくそう遠くない位置に拠点に類するものがある筈だ)
そうやり取りした後、二人は去っていくゴドラ星人の後ろ姿を追っていくのであった。
前回のゴドラ星人達は、山中で特戦群と囮を相手にしていたものの、襲撃失敗と聞いて急遽駆り出されたというわけでした。
さて、伊丹達側も新星側も核心に迫ってきていますね。これで中編は最後です。次回からは後編。ゴドラ星人やケムール人の恐ろしい計画が明らかになります。更にはあの人気怪獣の姿も…?