ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:食卓の英雄
仕事が忙しかったのに加えて、他に書いていたので……。
あと左の親指を骨折しました。モンハンがしにくいです
「いたぞ!」
「一人だ。囲んで殺せ!」
「ふっ、数ばかり多い!」
攫われた人々を逃がすために自ら囮を買った新星は、ゴドラ星人の宇宙船内を走り回りながら、避けられない相手だけを的確に倒して進んでいた。
これは極力戦闘を避け、囲まれないことと、目立つことで真樹達から注意を逸らす目的があり、やはり宇宙船内で地球人が暴れているとなれば、優先順位は高いのだろう。
次々とやってくるゴドラ星人を千切っては投げ、千切っては投げ。電磁短機関銃のバッテリーも残り20%にまで低下し、警棒も数分保てばいい方だろう。
状況は絶体絶命。迫りくるゴドラ星人に対しては絶対的に足りない。
しかし新星にはまだ奥の手があった。
一度撒いたゴドラ星人が通路を右往左往としている様子を陰から覗き、懐のノヴァスパークの存在を確かめる。
追っ手から逃れるために迂回すると、ある部屋にたどり着く。
「しっ、侵入者!?」
「な、何故ここに…!?」
「くっ…!」
咄嗟にノヴァスパークを抜き放ち、銃型へと変形させるとエネルギー弾を発射。ゴドラ星人はたちまち崩れ落ち、部屋に静寂が満ちる。
「ここは…この宇宙船の操縦室か」
咄嗟の遭遇で気が付かなかったが、その部屋にはモニターや多くの機器やボタンが集中しており、ここが中枢だと判断できた。
「よし、これなら私にも分かる。早速「いたぞ!操縦室だ!」くっ…!」
しかし先程の音を聞きつけたのか追っ手が迫る。反射的にノヴァスパークによる銃撃で危機を脱したものの、撃たれたことで狙いの逸れたゴドラガンが操縦パネルを破壊する。
「まずい…!」
慌ててパネルを操作しようとするが、重要な命令系統がそこに集中していたのだろう。既に残った機器での操作は殆ど受け付けない。
動力炉が異常な数値でエネルギーを集中させており、このままでは星間航空エンジンから発せられる負荷を抑えることができずオーバーロード。
宇宙船を満足に動かすほどの高エネルギーが溢れ出し自爆してしまう。
地球の機体ではエンジンの不調による爆発などは機体の損傷、或いは小規模の火炎が燃え移ることなどはあり得るだろうが、ことこの規模となると、最早一種の巨大な爆弾に近い。
周囲にいる筈の真樹達を巻き込みかねない。
今から脱出して避難を促そうにも、攫われた人々は暫く体を動かすこともままならなかった為に、宇宙船からの脱出で既に疲弊している。
加えて、仮に爆発に巻き込まれずとも、今は乾燥した冬の山中だ。爆炎は間違いなく周囲の木々に燃え移り、煙と共に彼らもろとも包み込んでしまうであろう。
「地上から引き離さなければ…!」
故に、新星は現在停泊中の宇宙船を動かすことに決めた。速度は出せないが、浮遊できる程度の余裕はあった。
躊躇いなくそれを実行。モニターに映る視界がだんだんと離れていく光景を見て安堵する。
さて、では後は脱出するだけだ。
そう行動を開始した新星の耳に、ある音が届いた。
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紛れもなく意味を持った言語。弱々しい言葉の羅列は、けれど新星の優れた聴覚によって拾い上げられた。
「
攫われた人々のなかには中国人もいたことから、中国語ですぐに返答できた。
弱々しい声の主は返答が返ってきたことに安堵したのか、肯定の意を何度も唱えている。
下手をすれば、攫われていた人々よりも弱々しい。こうして他の人々から隔離されていたことから、何か重要な意味でもあるのだろうか。
そう考えながら新星が扉を開くと、目に入り込んできたのは角刈りに眼鏡をかけた中年男性。衰弱しているものの、元はふくよかな体つきだったであろうことが予想される。
肉は萎み、肌は乾燥によって粉が吹いている程。
そんな彼を、しかして新星は見たことがあった。直接の相対ではなく、テレビやニュースを見る人であれば、ほとんどの人物がその名を挙げることが出来るだろう。
「薹徳愁国家主席…!?」
薹徳愁。それはこの地球における中華人民共和国の最高指導者の名前だった。
政治的な立場を持った人物とすり替わっている可能性は考えていたものの、まさか実権を握ってる存在が既に攫われているなどとは露ほども思わなかったのだ。
真樹との会話でも、この強引な侵略となると中国の実権には届いていないのではないかと言ったばかり故に尚更に。
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薹徳愁は長い間ここに拘束されていたのだろう。どうやら突然の変化に対応できずに言葉を絞り出していた。
対する新星も、この宇宙船が間もなく自爆することに加え、地上から離れていっているために時間の余裕がない。
最低限礼儀を弁えながらも、手早く拘束を解いて解放する。
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薹徳愁の体を支えながら、新星はゴドラ星人の宇宙船から脱出を始めた。
道中暴れ回ったお陰でゴドラ星人の配置もまばらだ。加えて今の異常に対応するために人員は割いていることだろう。
先程のことで船内の構造は概ね理解した。
未報告の武器の所持を追求されないためにも、再び電磁短機関銃へと持ち替える。
突破するだけならこちらでも不可能ではない。
「しまった!薹国家主席が…ぎゃあっ!」
「なっ、こんな時に…!」
ゴドラ星人の追及の手を尽くすり抜け、新星は急ぐ。
「確か、この先だ…!」
やがて見えてきたのは、出入りしてきたハッチの箇所。既に閉じられているが、ことここに至って見張りはいないようで制御盤も簡単に操作できた。
しかし、ハッチは途中までは開いたかと思えば、半ば程で異音と共に動きを止める。
船のエネルギーがいよいよ正常に回っていないからである。
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(仕方ない…。ここはウルトラ念力で…!)
不安を覚える薹徳愁に構わず、更に制御盤で操作するフリをしながらウルトラ念力によって無理矢理こじ開ける。
バキッという破壊音を立てながら、ハッチが全開になる。最早開閉は二度と出来ないであろうが、どの道この船はもう直ぐ爆発する。文句を言うのも侵略者であるゴドラ星人だけだ。
ハッチが開けばそこは空中。浮上中の宇宙船からではひゅうひゅうと風切り音が聞こえる。
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弱りきっていても、流石にこの状況には驚愕と批判の声を顕にするが、生憎と時間の余裕はない。
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流石の薹徳愁も動揺を隠しきれない様子で新星へと問いかけるのだが、当の本人は落ち着いた様子で薹徳愁の体を固定させると、そのまま空中へと身を躍らせたのであった。
何もヤケになった訳でも、一か八かに賭けた訳でもない。
既に人類は、その身一つで空を征く手段を手に入れていた、ということだ。
「試作機だが、性能は十分だな」
新星は山中での活動も考えられたこの作戦において、試作品であったジェットパックを持ち込んでいた。
試作品であるために数は一つ。メインに運用するわけではなく、高所移動や偵察などでの活躍を見越した装備品であったのだが、残念ながらゴドラ星人による奇襲や捜索網によって使う機会のなかった武装だ。
今この場に持ってきているのも、高機動車に人員を詰め込むために持ち出しただけである。
とはいえこれも機密情報の塊であり、最近導入された新技術の一端が使われているために放置することもできなかったのだ。
幸い、身に着けるだけであればそこまで嵩張るものでもないために、新星が装備していた形になるが、これが功を奏した。
「………ッッ!??」
薹徳愁は恐怖と困惑を隠しきれていないが、舌を噛まないよう律儀に口を閉じ、必死にしがみついている。
その感触を確かめた新星は、両腕のグリップを握ると、両腰部と両手に握られた噴出口からガスを噴き出して落下速度を緩めていった。
このジェットパック、元より開発が進められていたジェットパックを特災課の技術で完成させ、更には色々と手を加えた新型装備だ。
元来のジェットパックの機能は殆どそのままで、強いて言うならば兼ねてから検討されていたファンエンジンを導入し、両腕に加えて腰部や背部からも噴出口を着けたことにより、より安定した姿勢制御と飛行性能を手に入れた。
これだけでも既に5年は先の技術を一足飛びに実用化したと謳われていたが、特災課は更に改良を加えた。
まず、背負うタンクやファンエンジンを大幅に小型化。45%の軽量化を図り、取り回しやすさや携行性の改善に成功。
更に、本来の性能であれば地面からの浮上が限度であったものを、高所からの落下や短時間ながらに足場を必要としない事実上の飛行をも可能としていた。
それだけのことをしていながら、連続飛行時間は従来の1.7倍に、消費する燃料を26%カットしている。
それだけの偉業の裏には、特災課によって新規開発、導入された『
これはかつて群馬県に出没し、戦闘機をも弄ぶ驚異的な飛行性能を見せた怪獣、デルタンダルの発する特殊な粒子。通称デルタンダル粒子によって、爆発的な推進力と重力制御能力を得ることが出来、このために軽量化や節約に繋がったのである。
念の為周囲を見やれば、ゴドラ星人達がウインダムとニセウルトラマンジードによって完全に抑え込まれやられていった。
「着陸する!」
地上から見上げる人々に向けて大声で警告すると、人々は固まり空白地帯を作る。
次第に勢いを弱めていき、ゆっくりと着陸すると新星は腰を抜かした薹徳愁を地面に下ろす。
人々からの歓喜の声や称賛の声を浴びながらも、側に寄る真樹からの握手に応える。
ぐっと力を込められた直後、夜の闇が明るく照らされる。
「なっ…!」
「うわあぁぁっ!?」「きゃあっ!」「ば、爆発したぞ!」「も、もしかして、アンタがやったのか!?」「あの宇宙船を撃ち落とした…ってこと?」
ゴドラ星人の宇宙船が爆発したのだ。突然の爆発に驚いた人々も、自分たちの脱出のタイミングや最後に現れた新星からそう推測する。
「副隊長、ほんとにアンタが…?」
「いや、操縦室らしき場所で動かそうと試みたが、奴らの流れ弾が当たって動力炉がイカれたらしくてね。地上で爆発させるわけにもいかないから、どうにか空へ、という訳だよ」
「成程…。奴ら自分の船だってのに、自分で壊してしまったのか」
「幸い、ジェットパックがあったからもう一人の人質も救うことが出来た。運が良かったよ」
「そうか、あの船にもう一人取り残されていたんですね。他に誰か?」
「私が見た部屋には彼しかいなかった。どうやら立場故に特別に隔離されていたらしい」
「立場故に、ですか…?」
そう言って、かなり痩せこけた薹徳愁の顔を見た真樹は訝しげに頭を捻るが、どうやら完全に照合したようでギョッと目を剥いて驚きを隠せない。
「まさか、薹徳愁国家主席…!?なんてこった、ゴドラ星人は既に国家の代表を手中に収めていたのか…!」
「でも、間に合った」
「ええ、本当に。……人相が変わるほどに痩せ細っている。攫われたのはここ最近じゃないな。……となると、直近の中国政府の動きはまさか……」
「そういうこと、だろうな。今はとにかくこの局面を切り抜けて彼らを元の場所に返し、ゴドラ星人の陰謀を阻止することが重要だ」
「ですが、この人数を連れたって通信可能な場所まで行くには……」
しかし、今の彼らの武装は心許なく、多くの非戦闘員を抱えての行動はリスクを伴う。
特に、解放されたばかりの彼らに歩き通せというのは酷な話だ。そしてそれに手間取れば情報の伝達が遅れ、失敗を悟ったゴドラ星人に先を越される可能性がある。
だがしかし、それは今までと同じ条件であったら、という話だ。
今まではゴドラ星人によって通信が阻害され、情報共有や警告もままならない状況であった。しかし、ゴドラ星人そのものにそのような能力は確認されていない。
となれば、彼らの拠点でもある宇宙船を介して妨害を行っていたと見るのが自然。
そして今、ゴドラ星人の宇宙船は動力炉の暴走によって爆発四散し、スクラップと化した。
「つまり、宇宙船による通信妨害は既に解除されていると見ていいだろう」
「確かに、それならば今からでも要請が可能になる…!」
そうと決まれば、二人はそれぞれ本部と伊丹へと通信を急ぐのであった。
『AMATERAS REACTOR』
天照リアクター。デルタンダルを解析し、その粒子の発生機構を人工的に再現した動力炉。ウルトラマンブレーザーにおけるウラヌスドライブに近い技術。
作中においての名前の由来は日本の威信をかけた技術であるということから、最高神の名をつけた。