ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:食卓の英雄
まさか左の親指がそろそろ治るかという時に右の人差し指を折ってしまいました。
お医者さんが言うには状況的に親指以外全部切断でもおかしくないくらいのものだったらしいです。人差し指だけで開放骨折で済んだのは運が良かったのだとか。初めて生で自分の骨見ました。
左の親指も酷使しすぎると治りが遅くなるのでスマホ入力の私は更に書きづらくなってしまいます。
どうかご容赦を……
一難去ってまた一難。二度あることは三度ある。
この短い期間で多くの窮地を切り抜けた彼らへと、巨大化したケムール人が立ち塞がる。
完全に気を抜いた瞬間を狙っての奇襲。ウインダムもいなくなった今、形勢はケムール人へと傾いていた。
うつ伏せになったにせジードは押さえつけられるように踏みしめられ、抵抗することは困難だ。
「不味いんじゃないか…?」
「……不味いですね。巨大化した以上、当然消去エネルギー源の範囲も拡大しています。転送対象はもとより、発火した際の威力も。…先ほどの爆発でそれは証明されとりますから」
「ってなると、ここで暴れられたら……」
対象を見上げながら言葉を漏らす伊丹。肯定する声が村崎から届く。先の通信やあの宇宙船の位置などを考えて、火災が起きてしまえば、下にいる新星や真樹。そして多くの救助者達は火の海に沈むことになる。
先ほどのゴドラ星人も脅威だったが、ケムール人は何よりも一撃必殺な上に、迎撃してもいけないという悪条件で対処しなければならないのだ。
しかし、現状それを出来る唯一の戦力はケムール人の下で身動きが出来ない。
急行中の応援部隊の到着もそうかからないだろうが、今尚自衛隊の主な火力はミサイルが主だ。救助者するはずの人々を自らの攻撃で燃やし尽くすわけにもいかないだろう。
八方塞がりと言ってもいいだろう。
「くっ…」
「このっ…!」
多少は気を引けないかと高瀬、栗林の両名が露出した眼球へ向けて銃を構えるも、それすらもお見通しという風にケムール人は手を翳して遮る。
「無駄な足掻きはよせ。分かっているんだろう?」
ケムール人の発光体の点滅に合わせて頭のなかに鈍い声が響く。突然のことに驚くが、何やらテレパシーの様で耳を押さえてもその音量が変わることはない。
しかし何故、今になって話しかけてきたのか。それが分からない。
「ゴドラ星人も消えた今、私を縛るものは何もない。そこはザラブとウインダムに並んで感謝してやろう。そこで、一つ提案だ」
「提案だって?」
「そうだ。この話を飲んでくれれば、お前たちのことを見逃すと誓おう。何なら、これまでに攫った人々も全て無事に返してやろう」
「な、何だって…!?」
その提案ははっきり言って魅力的だ。だがそれだけに解せない。ケムール人にとっては圧倒的に有利な状況なのだから、そのまま制圧しても構わないだろうに。
その勝ち誇ったような声に思わず反発したくなるが、ここでの一挙手一投足が人命に、ひいては日本の安全に関わる。
「その話とは…?」
「簡単なことだ。特地にいるという種族……エルフ等といったな。それらを我々ケムール人に引き渡せ。我々の目的は延命の為の新たな肉体の確保だ」
ハッと息を呑む。ケムール人に関しての事前知識のある日本人はやはりかと納得し、特地…特に実質的に同種族が標的とされていると知ったテュカは瞠目する。
「先に捕らえた亜神というのが稀少なのは理解している。だが、エルフというのは一定数いるのだろう。エルフさえ手に入るのであれば、より寿命や特性に劣る地球人を狙う理由もなくなる。何、自分たちの星の民を渡せといっている訳では無いのだ。それもあちらが先に仕掛けた侵略。そのごく一部を引き渡すだけでいい。それで地球人は戻ってくる上、互いの攻撃も水に流す。悪い条件ではないだろう?」
ケムール人の言葉が真実であれば、好条件であることは間違いない。特地の帝国とは未だ和解も済んでおらず、ましてやその支配圏や各民族ごとの管理も未だされていない。
言ってしまえば、現時点での日本には全く預かり知らない問題で、これを了承したとしても知らぬ存ぜぬを突き通せてしまう。
勿論真実を知る人間からすれば反感を買いかねないであろうが、日本としてはやむなしの対応。特地の文化レベルでは非難のしようもない内容なのは間違いない。
その返還される人物に帝国の皇女や、防衛省の幹部クラス、特殊作戦群などがいるのだから最早天秤にかけるまでもない。
ケムール人は今や余裕の笑みすら浮かべているように思える。圧倒的優位に立ち、にせジードには伊丹たちという人質を。伊丹たちには逆転のカードであるにせジードを抑えた上で、妥協点となる条件を与えているのだから。
「さあ、早く決断しろ。時間稼ぎは無駄だ。ここに増援が到着した時点で交渉は決裂と見做して貴様ら全員を消去エネルギー源で消す」
実際にそれが可能なのだろう。足で押さえている以上、避けられる心配もない。仮に下手な動きをすれば、即座に液を飛ばして転送すればいい。
それをせず交渉を謀るのは、ひとえに異世界という環境で点在するエルフを見つけ出すことへの手間と神という存在への警戒からか。
「イ、イタミ殿…」
「イタミ……」
震える声で伊丹の名を呼ぶのはボーゼスとテュカだ。
その瞳には迷いが見える。それも当然だろう。この交渉に乗らなければ、自分たちは消される。しかし生き延びるためには実質的にケムール人への人身売買を意味している。
それだけでなく、テュカは自種族であるからこその家族や友人たちへの憂慮。ボーゼスにとっては、ピニャが戻ってくるならばと賛成派ではあるものの、その提案を日本が呑むということ自体が自分たち帝国を無関係な存在と見做すことだと理解したからである。
レレイは直接の関係こそないが、これが受諾された場合の危険性を浮かべて口を噤む。
伊丹はここに選択を迫られた。
嫌な汗が止まらない。逃げられるものなら今すぐにでも逃げ出したいと伊丹は思考を続けるが、どう考えてもここから逃れることは不可能だ。
(何で俺がこんな重大な決断を下さなきゃいけなくなるんだぁ〜!)
趣味の合間に人生をモットーとする伊丹は、その責任の重さにキリキリと胃を痛める感覚を味わった。
「伊丹二尉!このままであれば、応援到着まで10分程度しか…」
村崎が焦った様にスマートフォンの画面を伊丹の顔面に押し付ける様にして突き付ける。
その勢いに仰け反る伊丹は画面を見るや、眉を上げて口を引き結んだ。
「………分かった。受けよう」
絞るようにして出された返答は、まさかの受諾であった。
「なっ!?」
「イタミ!?」
「隊長!!…あんなの聞いた所でいつ反故にされるか分からないんですよ!?」
「そうです伊丹二尉!考え直してください!」
伊丹の決断に口々に上がる悲鳴の様な非難。けれどそれを振り払う様に伊丹も怒声で食ってかかる。
「うるさいっ!俺だって受けたくなかったよ!だがしょうがねえだろ!このままじゃ俺らも日本もみんなお終いなんだぞ!?幸いまだ正式に条約は結んでないし、ピニャ殿下達がこっちにいるのだって極秘の内容なんだ。なら、最初からそういう話はなかったものとして、向こうの要求を呑むしかないだろ?日本と帝国の中枢がいなくなって支配されるのと、向こうの一種族なら比較にならないでしょ」
「嘘…。そんな…。イタミ…」
「し、しかしイタミ殿…」
「そう言うなよボーゼスさん。アンタだって分かるだろ?この要求を呑むだけでピニャ殿下は帰ってきてハッピー。俺たちもハッピーなんだ。それに前言ってたじゃないか。帝国領土でも、エルフ達の国民意識が低いって。…それに比べたら、王族の一員と引き換えなら悪くない筈だろ?」
「それは、そうだが……」
何処か普段の伊丹らしくない露悪的な振る舞いに困惑する一同に、その様な姿勢を見せた伊丹へと拳を握る者が一人。
「伊丹隊長!」
ズカズカと怒気を背負って近寄る栗林の目はギラギラと燃えている。しかし、その脇をすり抜けるように一つの影が伊丹へと踊りかかった。
「伊丹二尉っ!あんたって人は!!」
「ぐはっ!」
栗林を差し置いて殴りかかったのは、驚くべきことに村崎であった。突然の凶行に一瞬呆気に取られるものの、今同士討ちはマズイと見たのか引き離すように体を掴んで動きを抑える。
「よくもやってくれたな」
「うっ」
「伊丹二尉!?」
しかし、引き剥がされた村崎の腹に伊丹が拳を振るう。
今の一撃で気を失ったのか力をなくした村崎を見て、伊丹は冷たく指示を出す。
「いいか。連絡が出来ない以上、この場で最も高い階級の持ち主である俺に決定権がある。その俺が決断したんだ。お前たちがどうこう言おうが覆ることじゃない。……高瀬と、そこの隊員二人も。また暴れられても面倒だ。車内にでも放置して見張っとけ」
「ちょっと隊長…!そんな言い方は…!」
「…………成程。そういう方針でいくんですね……。了解しました。申し訳ありませんがお二人は補助をお願いします」
「しかし……」
「お願いします」
伊丹に命令された通りに高瀬と特災課の二人はブッシュマスターへと村崎を押し込んでいく。
「ちょっと隊長…!」
「クリ、今お前に構ってる時間はないんだ。悪いが後にしてくれ」
「隊長…!……失望しましたよ…!もう少しはマシな人だと思っていたのに…!」
猛る栗林を流し、伊丹はケムール人へと向き直る。
「なあ!ケムール人さんよ!その話引き受ける前に明確にしておきたいことが何点かある!今慌てて引き受けて、後で痛い目を見るなんてハメになるのは御免だ!」
「ふん、いいだろう。言ってみろ」
「まず一点!あんたはこの取引に応じればこの場を見逃すと言い、攫われた者も返すと言ったが、今後の話はしていなかった!今この場だけを見逃して、後日また全員攫われたなんてことがあり得るならば、こちらとしても引き受けるメリットがなくなる!そこのところはどうなんだ!」
「ほう…。いい着眼点だ。確かに私は今後攫わないとは言っていなかったな。いいだろう。我々の目的は言っただろうが、エルフが手に入るのならば地球人を襲わないと約束しよう」
「次に特地への干渉の制限だ!今俺たちは向こうの帝国と和平交渉の準備を進めている!あんたらの擬態なら諜報や偽装情報も簡単なことだ!間接的に特地との関係性を悪化させるような真似は門の存続やエルフの流入にも差し障る!代わりにこちらが差し出す以上、下手に介入せずにいてほしい!」
「直接、間接問わず特地と地球に手を出すな、というわけか。……まあ構わない。そちらが我々の要望に応える限りは手出しはしない」
そして、伊丹は次々とケムール人に質問を繰り出した。その殆どはケムール人が名言化していなかった部分を埋めるものであり、臆病と言えるほどにその空白を埋めていった。
更にそこには伊丹自身の見解や身の安全を保障するものも紛れ込んでおり、ペラペラと言葉を絶やさない姿からは滑稽さが隠しきれていなかった。
自身の責任の所在や今後のキャリアのために保身に必死な姿をケムール人も最初は見下していたものの、苛立ちを覚えてきたようだ。
「いい加減にしろ。先ほどから些細なことばかり…!これ以上引き延ばすのならば時間稼ぎと見做す!今すぐに決断しろ!受け入れるのか!断るのか!」
「だが断る!」
「なっ…!?」
「はっ?」
「えっ?」
あれだけ条件を足しておいて、あっさりと一言で切り捨てた様子に理解が追い付かず全員が唖然とする。
「だから、断るっつったんだよ!第一こんなもん書面も何もない口約束だぞ!?そもそもそっちが無断で地球に侵入して人を攫っておいて交渉だ?それはもう立派なテロ行為と脅迫だろうが!うちは国際常識としてはテロリストの要求に応じたり譲歩するのはアウトなの。国民に愛される自衛隊がそんな人身売買紛いのことなんか出来るかってんだ!それにテュカ達エルフだって今の所在地は日本国アルヌス州扱い。自衛隊の庇護下で日本国憲法の下に暮らしてる人達を生贄になんか使えるかよ!」
一息に、今までの鬱憤を晴らすかのように怒声を張り上げる伊丹の姿に面食らったようだったが、ケムール人はすぐに気を取り直すと冷たい眼差しで睨みつけた。
「……交渉は決裂のようだな」
「言わなきゃ分かんないのかよ。……そして俺の時間稼ぎ終了!先生お願いしまーす!」
伊丹が叫ぶや飛び出す人影。
それは気絶して車内に運ばれていた筈の村崎と、平隊員二人。その手にはソニッターが握られていた。
「食らえっ!お前達ケムール人の苦手なXチャンネル光波や!」
「何っ!?」
そう言って引き金を引くと断続的なフラッシュと妙にチープな音がソニッターから放たれる。
そう。伊丹が任せられたのは自然な形での時間稼ぎ。
あの状況で特災課車両内部に引き返すのはケムール人の警戒を誘う。
しかし車両内でなければ準備を進めることは出来ない。
伊丹に突きつけられたスマートフォンは増援までの時間を知らせるものではなくその為の計画が記されていたのだ。
当然殴りかかったのも、気絶したのも予定調和であり、ケムール人の目を欺くための演技だ。
ケムール人は咄嗟に頭部を庇うがもう遅い。
ソニッターからは寸分狂わずXチャンネル光波が放たれケムール人を苦しめていく。
明確な反応に一同からも歓声が上がる。
「ぐおおおぉぉっ…………?」
が、しかし。少し浴びせた所で当のケムール人が不思議そうに己の体を確かめる。
「お、おい?」
「なんか…効いてない、ような…?」
「あー、やっぱり駄目みたいです」
「ど、どういうことだ!?」
「ダウンロードしてあるウルトラQの音を使ったんですが…。まあ効かないですよねぇ」
「何だこれは…。照射音が似ているからと警戒したが、これはXチャンネル光波等ではない。………舐めた真似をしてくれる!」
これにはケムール人も怒り心頭。
先ほどよりも荒々しい口調で彼らを始末せんと頭部の触手へ意識を傾けるが、その瞬間村崎が叫ぶ。
「皆さんっ!耳を塞いで姿勢を低くしてっ!」
自衛官である伊丹、栗林は咄嗟に身を屈め、事前に打ち合わせをしていた三人は特地の三人の姿勢を下げる。
軽く鋭い破裂音がした後、一瞬遅れて激しい轟音と衝撃が一同を襲う。
「「「っ………!」」」
「「「ッ…!?」」」
「ぐおぁっっ…!」
その一撃はケムール人の頭部に直撃し、予期せぬ強烈な一撃にケムール人は思わずたたらを踏んで後退る。
「今のは…!」
背後を振り返れば、反動で車体を後退させ煙を吹く長大な砲塔。
車両上部に備え付けられた砲はブッシュマスターの全長を超え、発射は車両内部にいる者…この場にいない高瀬が放ったのであろう。
「新しく車体上部に備え付けた対怪獣用の粒子砲です。副次的に得られたもんではありますが、威力は充分…!」
レイラインエネルギーの収束、レールガンの革新的小型化と実用化。そして怪獣由来の未知の粒子の活用。
それらのブレイクスルーを迎えたこの地球は車両に搭載可能かつ怪獣にも通用する粒子砲を開発することに成功したのであった。
しかし問題もあり、小型化と移動可能になった代わりに加速のための電力消費が増え、既存の車両に無理矢理搭載したために車体への負荷も大きく、回路もオーバーヒート寸前。そして威力の代償として砲身冷却とチャージのために連射速度が犠牲になった等と、様々な面で不便さが目立つ。
再度同じ威力を放つには実に5分ものインターバルが必要だ。
けれどここぞという一撃には持ってこいだ。
「やってくれる…!」
ケムール人は何とか気を取り直したようだが、怒りに支配された彼は立ち上がる巨影を見落としてしまった。
「ザインさんっ!後は任せますよぉっ!」
「はっ…!し、しまった…!」
青い目を闇夜に輝かせる巨人。にせジードことザラブ星人ザインがその体を持ち上げていた。
「おのれぇっ!」
ケムール人が即座に消去エネルギー源を無差別にばら撒く。ランダムなものであったが、ザインは指から放つ針状光線を雨のように放ち空中で起爆させる。
「ぬうっ!?」
拡散消去エネルギー源を誘爆されたことで視界一面が爆炎に彩られる。
怯むケムール人とは対照的に、ザインは臆さず雄叫びを上げて爆発の中を突き進む。
炎の壁を突破したザインはタックルのように引き倒すとマウントポジションを取る。
意識が追いつかないケムール人を置いてザインは体を弓なりに沿って両腕にエネルギーを溜め始める。
「はあああああああああぁぁぁっ…!」
「待っ、待て!やめろっ…!」
ケムール人が慌てて制止をかけるももう遅い。
ザインは反った体ごと叩きつけるかのように十字を組むとゼロ距離でエネルギーを解き放った。
「レッキングバースト!」
「うぅぐあああああああああァァァッッ……!!?」
一切の無駄なく撃ち放たれた光線は咄嗟の逃走すら許さぬままケムール人を焼き尽くしたのであった。
はい。また終わらなかったよコイツと罵って下さい。
次こそ…!次こそは終わるはず…!色々終わったあとのダイジェストになる筈…!
因みに挟む暇がなかったのですが、高瀬隊員は村崎隊員を任せられた時に意識があることに気づき、演技だと分かったため意図を理解し一緒に下がりました
(追伸)
アニメとかドラマにあるグロ表現で窪んだ傷から心臓の鼓動でプシュップシュッってなる奴、リアルにあるんですね。まあ自分の指だったんですけど(笑)