ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:食卓の英雄
ケムール人は打倒され、再びこの山間に静寂が訪れた。
「やった…のか?」
まだ油断はできない。人間大だったとはいえ一度その姿が崩壊するのを見ているのだ。警戒するに越したことはない。
ほつれかかる緊張の糸を声を掛け合うことでどうにか補う。
「うわっ!?」
「っ…!?何が…」
「へ?外?ってうわっ、なんじゃこりゃ!?」
「な、何が起こったのだ…?」
しかし、その声が聞こえたことでケムール人の脅威が去ったことを皆が理解した。
「ほっ…。これにて一件落着、か?」
「殿下っ!……それにトミタ殿も!」
「……本当に戻ってきた。あの奇妙な液による転移は個人の生命活動とリンクしている?どのような理が働いているのだろう。…ウチュージンとは興味深い」
「トミタちゃんに、梨沙さんも無事ー!?」
「良かった。浅永くんも無事ね」
転送されていた一行は突然の景色の変化と何故か高機動車から降りていることに動揺していたが、伊丹達の姿を見つけると何が起こったのかと質問を飛ばしていく。
「ボ、ボーゼス!一体何が起こったのだ!?何故妾達が外にいて、道がこんなにも崩れておるのだ!?」
「そ、それは…ええと襲ってきたウチュージンによる術で……」
「せ、先輩先輩先輩!何が、何が起こったの!?何かいきなり視点変わってるし後ろは大惨事だし何か起こったみたいだし!?時でも止まったの!?それとも飛ばされちゃった奴!?……ってウルトラマン!?本物!?デッカーい!!」
「お、おい落ち着け。パニクって変なテンションになってるぞ。ちゃんと説明してやるから…。あとあれはどっちかって言うと偽物……」
「……成程、もしかして私たちは」
「そう、ですよね。状況的に」
「分かっているなら話が早いわ。体に異常はない?」
「…あらぁ?何が……。ああそういうことぉ?……んもう…!今度会ったらタダじゃ置かないわあのウチュージン…!」
皆が再会と状況確認に勤しんでいる合間にロゥリィも戻ってきた。彼女は転送前の光景を覚えているために悔しそうにハルバードを振るっていたが、行動に支障はなさそうだ。
「ギュアアァァァァ!……ギュ?」
しかし次の瞬間、少し離れた位置に巨大な質量と衝撃が発生する。
「うわっ!?」
「げっ、あれは銀座のやつ!」
「またなの!?」
「ケムール人め、怪獣まで捕獲していたのか…!」
「ということは、いきなり消えたのはケムール人の仕業だったというわけね…」
「どうするの?やるのかしらあ?」
ケムール人によって転送されていたのは人間だけではなかったらしい。銀座に現れた怪獣グライムまでもが戻ってきたのだ。
一同が慌てて身構えるも、どうやらグライムも突然景色が変わったことや意識が途絶えた認識があるらしく、戸惑った様子で周囲を見渡すと逃げるように地面に潜っていった。
「シュワッ!」
それによって、構えていたザインも完全に腕を下ろすと空の彼方へと飛び去っていく。
疲弊しながらもそれを見送った面々は、この長い一夜の襲撃が終わりに向かっているのだと理解した。
ドッと疲れが押し寄せてくるが、直前に消された中国人までもがこの場に現れ、遠方から応援部隊と輸送バンの光が近づいてくる。
「終わったな……」
「ええ、本当に…」
通信機も機能を取り戻し、自衛隊本部からの通信が山のように押し寄せた。
その光に照らされた一同は無事を知らせるために手を振り、当初の予定から変更し、ヘリでの帰還となるのであった。
まだまだこの騒動は終わりを見せていない。むしろ政府や捜査機関からはこれからといった所ではあるが、そこは彼らの領分ではなかった。
●●●
そして以後の活動はやってきた救助隊と捜索隊、特災課の増援に引き継がれることとなる。
今回はことがことであるため、任務にあたる自衛官にしか行動目的は知らされることはなく、ケムール人によって攫われた人々の捜索や拉致監禁された民間人の護送。そして
同時刻、特殊作戦群や攫われた幹部陣も発見、合流して証言と対策をすることになるのだが……それは割愛しよう。
ケムール人に攫われた一人だという不透明な数の救助者に加え、予め共有されたゴドラ星人の能力や戦法などから伏兵や変身能力での奇襲を理由に電磁小銃の貸与なども認められることとなる。
それらの理由から救助隊が完全撤退するまでは時間を要したが、最終的な救助者総数は100名を超えることとなるのであった。
その後の日本での動きであるが、それは慎重に進められることとなった。
翌日の特地来賓の帰還であるが、
一応ゴドラ星人残党の奇襲も考えられたため、梨沙も同じ提案をしたが、あのような異星人に地球での常識が通用するか不明で、巨大化能力を合わせれば被害拡大の恐れがあるために承認されることはなかった。
一部メディアなどはその来訪を目敏く見つけたものの、報道協定を理由に中継は見送られることとなる。
そしてその報道協定の最たる理由である薹徳愁国家主席がゴドラ星人によって攫われており、現在表に出ている国家主席がゴドラ星人の成り代わった偽物という秘中の秘。
更に成り代わったそれが日本に訪れ地上波のもと会談を行うという何ともデリケートな問題。
本来ならば国の威信や多くの問題からメスを入れるのが難しい問題で、会談を中止し秘密裏にことを済ませるのが無難かと思われたのだが薹徳愁国家主席との綿密な協議のもと、驚くべき策に出たのである。
そして始まった日中の会談。首相と薹徳愁、そして外周に控える護衛やマスメディアなどが取り囲む中始まったそれは最初こそ当たり障りのない内容であり、緩やかに始まったものだったが、30分を過ぎたあたりでとんでもない爆弾が投げ込まれた。
それは日本政府の門独占や対怪獣装備の共同開発についてのイチャモンつけから、その利益と軍事技術、門の権利の一方的な譲渡要請であった。
既に各国での話し合いから誰も口に出していなかった内容に突っ込んできたのである。しかも、従わない場合には経済圏への攻撃や、核の使用まで仄めかしたのである。
当然その余りある発言には皆が慄き、驚愕と怒りを向けている。ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる薹徳愁国家主席の態度には中継を目にした国民からも反感を買い、中国側も事前の政策や活動から著しく離れた暴虐に耳を疑うほどに。
ネットは大荒れし、反日反中、戦争反対などあらゆる罵詈雑言が互いに飛び交っていた。
流石に看過できないと感じたメディアの一人がその思惑を尋ねるも、これを拒否してあろうことか射殺しろとまで言ったのだ。
これにはメディアも国民も絶句し、動き始めた護衛が拳銃を取り出したことで緊迫した空気が広がる。
しかしその最中においても顔色一つ変えない一団がいた。
本位総理とその護衛である。
それに気づいた皆は不思議がった。「おや?
その答え合わせの機会は直ぐに訪れた。
「もう、茶番はこのくらいでいいでしょう」
そう言って立ち上がると、驚く周囲を他所に壁際まで下がると同時、全ての出入り口から武装した警備員と特災課隊員が雪崩込む。
突然のことに目を白黒させる衆目の代わりに、薹徳愁は水を得た魚のように本位と日本を非難して中国へも呼びかけたが、その直後である。
「あっ、あれは…」
護衛たちの中から歩んできた人物がサングラスとマスクを外すと、皆が目を疑った。
何故なら新たに現れた方はやや痩せているものの、その顔は紛れもなく薹徳愁のものだったからだ。
周囲の視線も気にせずに堂々と歩む姿は国家の長たる風格があった。そのまま本位総理の元まで歩むと二人は笑顔で握手をしたのである。
同じ顔の人物が二人。すわ影武者か、兄弟かと疑られるも、最も驚きを露わにしたのは先にいた薹徳愁とその護衛たちである。
仮にこちらが替え玉ならば堂々とするなり、追求する理由にするなりすればいいのにも関わらず、互いに顔を見合わせて動揺している。
その態度には皆がおかしいぞと察したらしく、いよいよ全員の目が先にいた方へと固定される。
その視線から逃れようとしたのか、唾を撒き散らしながら護衛を突撃させる。
向けられる銃口にざわめくも、今の今まで隠れていたのだろう。特災課隊員である真樹と浅永が飛び出して腕を蹴り上げ跳ね飛ばす。
護衛の黒服も応戦するが、その動きは
クセを覚えていた二人は的確に隙を捉えて打撃を打ち込むと浅永はプロテクターをインパクトポイントにしたヒザ蹴りを下顎にお見舞いし、真樹は胴体に押し当てた電磁警棒で怯ませるとその体を蹴り飛ばした。
手痛い一撃を受けた二人の護衛はダメージからかその変身を維持できなくなり、その姿を異形のものへと変えた。
「おのれえっ!地球人風情が調子に乗りおって!」
「我々の目的が台無しだ!」
それを皮切りに最早意味なしと悟ったのか全員が変身を解きその姿を晒した。
二転三転する光景に置いていかれるメディアであるものの、しっかりと中継は続いており、その瞬間もしっかりと捉えていた。
「ご、ご覧になったでしょうか!攻撃を受けた中国使節が全く異なる姿に…!あの姿はウルトラセブンに登場するゴドラ星人に酷似していますが、その関係性は…」
その言葉によって報道されていることを思い出したゴドラ星人が咄嗟にカメラを狙うも、それはシールドを構えた隊員たちに阻まれる。
そこに本位総理と本物の薹徳愁がゴドラ星人への最後の勧告を出すが、ゴドラ星人はこれを拒否。
苦し紛れに両名を殺害しようと迫ったものの、構えた特災課からの一斉掃射によって命を落とし、最後の一体である薹徳愁へと変身していた個体は薹徳愁本人が電磁小銃を受け取って手ずからトドメをさした。
この衝撃的な一連の流れを飲み込む間もなく、立ったままの両名がマイクを手に取り真相を語っていく。
因みにその真実は
成す術なく中枢を乗っ取られたことや日本人によって助けられたこと、この乗っ取りによる被害が日本に及んだことなどから、中国側としての立場は悪くなる一方なので、そこは互いに納得できる条件を出し合ったのだ。
またこの事件によって薹徳愁の側近等が軒並みいなくなってしまったことによる立場の悪化を、成り代わりに見抜けず武力衝突の準備までしてしまったことなどを挙げて有耶無耶にすることになったりする。
そして会談の最後に告げられたのは、日本と中国による一種の国際同盟の提案であった。
今回の騒動にあたって、現状のセキュリティや管理下では宇宙人による策略への対応の遅れや致命的な損失を被る可能性を提示し、今ある日本への技術協力体制を元により強固な繋がり…国際組織を作るべきであるという旨を力説したのである。
当然これも真実ではあるものの、日本としては技術面で先んじている点と門というフロンティアを抱えているが故に受けるやっかみの種の多さ。中国としては今回の失敗で受けた借りの返済と、対宇宙人対策を早々に進めつつこれらに早期に食い込んで力を回復するため等といった理由が多分に含まれていたりする。
これには世界中が注目し沸き立った。
それもそうだ。何せ宇宙人や巨大怪獣の襲来を受けての国際組織の設立など、それこそファンタジーでしか見なかったからだ。
今までその類いの話が出たことはあるが、それぞれの国での怪獣対策における競争での様子見、門の問題などから現在の技術協力に甘んじていたので本格的に挙げられることはなかったのだ。
言い出しっぺの法則やそれに対する体制面での不安などがあり及び腰になっていたのである。
しかしこうして国家を揺るがしかねない大事件が人知れず起こり、その当事者たる国家の代表同士が声を上げたのならば、話は別である。
このニュースはまたたく間に世界中に広がり、各国でもその話で持ちきりだ。
何より重要視されたのが提案者が怪獣対策においての技術や功績で一歩先を行く日本であり、その日本とは犬猿の仲と思われていた中国が共同で挙げたことである。
更には国家元首そっくりに化け政治的場にすら平然と忍び込んだゴドラ星人を、メディアの前で正体を暴いて撃滅したという目に見えやすい脅威と成果を世界中に示したからである。
これを捨て置けば宇宙人への内通や何かしらの不都合があるのかと痛くもない腹を探られることとなり、仮に自分たち以外の国がこぞって参加するのであれば怪獣対策の面でも置いていかれる可能性が出てきたのである。
故に為政者達は頭を悩ませ、参加に前向きな国も如何にいい立場で参戦しようかと皮算用を始めるのであった。
未だ草案であるものの、その名は既に挙げられていた。
『
ようやくこの長い銀座訪問編が終わりましたね…。銀座に来たのから実に1年以上も使ってしまいました…。
はい!というわけで国際的な対怪獣、宇宙人への防衛組織設立の下地という役割があるので今回の章は重要だったんですね。
なんと原作の実質的なラスボス(中国いなきゃ普通に帝国に対応出来てたし門が塞がれることもなかったでしょ)が弱体化し、同盟相手となりました。
因みに作中でも大分険悪で破壊工作まで仕掛けてきた中国が素直に飲むわけないだろ!!って方へ。
一応理由としてはまず今回狙われた内容的にそのまま始末されていてもおかしくなかったところへの救助。そして自身の側近や対外的な目から見たら、いくら宇宙人相手とはいえ相当やられてるので、それを挽回できる機会を与えたこと。
そして宇宙人という脅威に成す術なくやられたにも関わらず日本はそれを解決する能力と技術があることを示したこと。
自身の周囲の人材を丸々殺されたのでそこにつけ込まれかねないという所を、宇宙人や怪獣にも対抗できる組織との同盟に加入することで回復、横槍を阻止する目的。後単純に同盟の初期メンにいることで技術とかの恩恵を得やすいこと。
そしてこれらをしてくれさえすればこの件による政治的要求やその他の不平等な契約などを結ばず無償で国に返すことと後のフォローなどを約束したことにあります。
後はご都合主義…