ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:AGIの素
帝国第三皇女、ピニャ・コ・ラーダは焦っていた。
いや、焦るというにはやや余裕が見受けられたものの、しかしてその胸中に抱える焦燥は並のものではなかった。
その異変はピニャ配下の薔薇騎士団の団員もうっすらと感じ取っていたし、特に秘書としての役割も仰せつかっているハミルトンはその態度が気になった。
帝国とは、ファルマート大陸最大にして覇権を握っている国家であることは名実ともに間違いない。
帝国が攻めるぞと脅せば無茶な条件も押し通り、歯向かえば圧倒的な軍事力によりなすすべもなく蹂躙され、支配下に置かれる。
あの戦闘民族として名高いヴォーリアバニーの国ですら、継承権第1位の皇子が奴隷欲しさに攻め滅ぼしたという例もある。
本格的な侵攻でなくとも、片手間に国すら滅ぼせる。
帝国にとって力とは自らそのものであり、支配者としての圧倒的な力を有しているという自負があった。
帝国の支配者層である貴族関係者にとっては、大小の差はあれどその認識は歩くことや喋ることと同じように当たり前のものだった。
そんな帝国の貴い血筋たるピニャが、おかしな様子を外で見せたならばと考えると、憂うことを止められない。
そう。変わったのはイタリカでの戦いが終わって、独断で講和を結ぶべく門の先へと向かってからだ。
ジエイタイの圧倒的な力を目にしたときの態度も普段と異なっていたが、あれはまだ理解できた。
だが帰ってきてからの態度はそれですらまだ可愛いものだったと思えるほどに形の良い眉を苦悩に歪めて何事かを呟いていたからだ。
確実に、門の先でこれまでの価値観を揺るがすとてつもない何かを見たのだろう。
同行したボーゼスも似たような顔をしていたことから、間違いない。
あれ以来、毎日のように持ち帰った紙や絵を眺めては顔を青褪め、資料らしき何かを何度も見返しては別の紙を見て頭を抱える。
そして書類から離れれば積極的に元老院や知己の貴族らに日本との講和を説く。
それで日本で何も見ていないなどということはないだろう。
別に、ハミルトンはそのことに対して「栄えある帝国の皇女ともあろうお方が情けない」などと嫌味や小言を言うつもりはなかった。
ただ純粋にその身を案じており、そして何故そこまで思い詰めるようになったのかの理由が知りたかったのである。
そして言うべきか否かとここ最近ずっと悩んでいたものの、講和派議員を招いての日本側特使主催の園遊会が迫っているということもあって、思い切って聞き出すことにしたのである。
十中八九このようになった理由が日本にあるのだから、その園遊会でもきっと講和を持ち出すのだろう。しかしそれ程になる理由が分からなければ、納得もフォローも出来はしない。
そう考えてのことであった。
「…殿下。お尋ねしても宜しいでしょうか」
「何だ、ハミルトン。妾はまだやるべきことが山と残っているんだが……。いや、そなたには秘書としてよく働いてもらったからな。何か分からないことでもあるのか?」
「はっ、恐れながら申し上げますが、ピニャ殿下は一体アルヌスの門の先……ニホンで何を見たのですか?……ニホンの軍隊、ジエイタイの力は連合諸王国軍の敗北や、イタリカで共に見た私も身をもって承知しているつもりです。……しかし、その、ジエイタイとはそれ程までに恐ろしいものなのでしょうか?……殿下は帝国皇女たる身で在らせられます。それがこうも相手に謙るような態度を見せては、ピニャ様の立場が侮られかねません」
そう。確かにあれらの光景は恐ろしかった。
山といた盗賊たちが空を駆ける鋼鉄の天馬になす術なく死体へと変わり果てる様は恐怖を抱くには十分だった。
しかし、それでも帝国側にも勇壮たる竜騎士隊がいる。国力の象徴ともいえる多くの兵がいる。軍団を組めるほどの熟達した戦闘魔導師がいる。
何ならゴブリンやオークといった怪異も尖兵として暴れさせるのには有用だ。
それに、いざとなれば民兵を徴兵するという手段もある。
そうならないことが肝心とは言えるが、やはり兵の数とは力なのだ。
いかにジエイタイの武力自体が上回っていたとしても、帝国という巨大国家の総力には及ばないだろう。
そうハミルトンは考えていた。
個で優れる代わりに結束力の弱いとされていたヴォーリアバニー達が一致団結して抵抗した戦いに於いても、帝国からすれば大した被害も出せずに滅ぼされたのだから。
いかに質で勝ろうと圧倒的な数には敵わない。そう、かつては亜神ですら捕らえて幽閉した国すらあるのだから。
「……ハミルトン。アルヌスの丘での戦い、ジエイタイ側の数と被害はどれほどだったと思う?」
「…は?いえ、帝国の侵攻を跳ね除け、連合諸王国軍すらも敵わなかったことから、最低でも半分以上は確実かと…。被害の程は分かりかねますが、あのジュウという武器と丘の地形から見て、数百人に届かない程度かと」
ボーゼス越しに、銃器が武器であることを理解したハミルトンはそう推察する。
普通はそれですら過大な評価であると戦略家は鼻で笑うであろうが、ハミルトンは真面目な顔でそう答えた。
「いいや。こちらに来ているのは2万4000程らしい。実際に戦ったのはその半分に届くかどうか…。そして犠牲者はゼロだ。10万の兵に攻められて、ジエイタイはただ1滴の血すら流さなかったのだ。怪我人はいたらしいが、それも自陣営での転倒や打撲などで、帝国がつけたわけではない」
「ゼロッ…!?」
「驚くにはまだ早いぞ。門の先にいるジエイタイの数はその10倍だ。当然、全員がジュウを所持している上、予備もたんまりとある。…しかも、こちら側に来ているジエイタイの持つ武器はほとんどが捨てて逃げてもよい骨董品らしいぞ?」
「はっ…はっ!?」
ハミルトンは続けざまに放たれた言葉に喉を引きつらせる。
数で見れば、帝国の総兵力では勝っているだろう。だがその性能差は明らかだ。
真っ向勝負で10万の兵を5分の1未満の兵で無傷で殲滅しておきながら、更にその10倍の数が控えている。
更にはあの破裂音と共に遠方から一方的に鎧すら貫き穿つジュウが、捨て置いてもよいもの?
そう豪語するからには、全員分の予備を備えていると考えるのは当然だろう。
「民の数も言ってやろうか?我らの帝都が100万の民が住むことは言わずとも知っているだろうが、あちらの首都はどの程度だと思う?」
「ど、どの程度で…?」
「妾も詳しくは分からぬが、1000万人は優に超え、国民も億を超えるとのことだ」
「お、億…!?」
そんなもの、周辺国家全てを合わせてようやく勝負の土台になるかといった数ではないか。
むしろ、国民の数に比べて兵の数が少なすぎるのではないかと思うほどだ。
「ハミルトンも、炎龍の噂は聞いたであろう?」
「は、はい。本当にあの伊丹殿が仕留めたとボーゼスから」
「分かるだろう?炎龍をも倒せる武器を持ち、一人で数十人の兵を近寄らせずに攻撃できる兵士が山のようにいるのがジエイタイなのだ」
「……で、ですが…それならばまだやりようは」
真っ向から勝てないのならば、真っ向から戦わなければいい。地の利はこちらにあるのだから、戦法さえ整えばどうにか崩せるのではないかと意見するハミルトンだったが、それすらピニャは鼻で笑う。
「これを見てみろ」
「これは…?」
それは、ピニャが銀座に滞在時に掻き集めた資料だ。
その中でも戦車や戦闘機、ミサイルや迫撃砲などが纏めて取り上げられている。
何れもその性能の素晴らしさを発揮し、巨大な石壁*1をただの一撃で何層も粉砕し、こちらの世界からではあり得ない距離から榴弾やミサイルが着弾し、広範囲を焼き尽くしていく。
「……ジエイタイは追いつめられればこれらの使用に踏み切るだろう。……未だ一方的にこれを撃ち込まないのは、ニホンにとって帝国は滅ぼす対象ではないからに過ぎないからだ。………我らの兵士との戦いなど、ニホンにとってはほんの小競り合い程度に過ぎないのだ*2。攻め滅ぼす気でいるのは帝国だけなのだよ」
「………」
その資料をマジマジと見て、ハミルトンは最早一言を発する気力も失っていた。
「だが、悪い知らせが更にある」
「まだですか!?」
……はっきり言って、ハミルトンはこれまでの情報だけでも悪寒が止まらない程の情報だった。正直耳を塞ぎたい気持ちが強いが、想定の最悪を遥かに突き抜けた最悪まで知った中で、情報を逃して滅ぼされたくない。
その気持ちがハミルトンの意識をつないでいた。
「炎龍が討伐されたという噂と共に流れた巨大な怪物の話は覚えているか?」
「え?…ええ。私もあの場に居合わせましたので…」
ハミルトンは確かにそんな噂があったなと思い返す。それを確認したピニャは鍵のかかった執務机から2枚の
「な…!?」
写真の内1枚は、死した
もう1枚は先ほど見たミサイルや榴弾、戦車砲に爆弾…。一つとっても帝国が抗う術のないであろう超兵器が一つの対象に向かって集中砲火している光景だった。
因みに、最初のマグラーを背にした写真は帰りの際に頼めば撮ってもらえたものである。写真に写る2人の表情はどうにも芳しくない。
「断言するぞ。……炎龍をも超える体躯の怪物は実在する。その亡骸が動かぬ証拠だ。……今度アルヌスの近くに行く予定があったら見てみるといいだろう」
「は、はぁ…。まさかこのような怪物が実在するとは……。と、ということは、この怪物をもジエイタイは上回る力を…?」
「ふっ、そうであれば事は単純であったのだがな」
その言葉にハミルトンはまたしても嫌な予感を覚える。
「……もう一つの絵があるだろう?……先ほどの全てこの怪物に放たれたものだ。……これはあくまで一時を切り取ったものであり、実際は雨のように撃ち続けたのは、言うまでもないだろう?」
「……そ、その結果、打ち倒したのですよね?」
頼むからそうだと言ってくれ。そんな願いを込めた疑問は容易く打ち砕かれた。
「いいや。この帝都が灰の山になるであろう攻撃を受けてもこの怪物は侵攻を止めなかった」
ヒュッ。そんな音がハミルトンから漏れた。
「……当然だが、当たれば炎龍の頸すら飛ぶ鉄の大筒。それを何発当ててもこれは死なないのだ。……炎龍の鱗すら貫けぬ我らにはあまり関係ないかも知れんがな」
自嘲気味に嗤うその姿は精根尽き果てており、ここ最近見る姿と一致していた。
あの姿は、これを思って憂いていたのだ。炎龍の鱗を穿ち、大木のように太い頸を一撃で引き千切るという攻撃すら意にも介さないというのは生物であるか疑わしいものだ。
いかに物量で勝ろうと、その攻撃で傷を負わなければいつか倒れるなどという目算も取れない。
「で、ではこの怪物は…?」
「……その前に言っておくことがある。ジエイタイ曰く、これはカイジューと呼ばれる生物だ」
「は、はあ…。カイジュー…」
名がなければ呼び方や判断に困る時はあるが、この脅威を前に名前などそこまで重要なのだろうかと間の抜けた返事をする。
「ふ、ハミルトン。恐らく勘違いをしているであろうから正しておくぞ。カイジューとは、この生物の名ではない」
「どういう……!?」
途中まで言いかけて、ハミルトンもそうやって区分されていることの意味に気づく。
あの圧倒的な古代龍とて、複数種が確認されているから炎龍や水龍などと呼ばれているのだ。一種のみであれば呼び分ける必要などあるまい。
「まさか、同じような種が…?」
「そうだ。しかも古代龍の中の炎龍や水龍といった細かい分類などではない。カイジューというのはな、我らで言うエルフやドワーフなどを纏めて亜人と呼ぶような大きな括りなのだ」
「そ、そんなにも…」
「そして、そのカイジューの種類が何種類が確認されているか分かるか?」
「いえ…まさか、100を超える等ということは…ない、でしょうが……」
まさかそんな筈がないだろう…。そうハミルトンは常識で考えるも、ピニャがこうして問いかけるということは、ありえなくはないとも思っていた。
「ハミルトンよ。その気持ちは妾にもよく分かる。……だが、現実というのは恐ろしいものだな。…………1000だ」
「せ、せん…?」
「詳しく分類分けするのであれば変わるらしいのだが、種としての数が1000程確認されているとのことだ。……無論、種としての数であって、同種は複数…。ともすれば群れで襲いかかることもあるのだとか」
そう考えて、ハミルトンは瞠目する。
雑多に纏められている亜人ですらそこまでの数はいかないだろう。
確認され記録が残っているということは、少なくともそれが人目のつく場所に現れたのは確定しているのだ*3。
古代龍をも軽く超える存在が、1000以上。
ただの一体の古代龍ですら手に余るというのに、人の身に襲いかかる理不尽としては余りに過剰すぎる。
しかもあくまで種というだけで、群れをなすこともあるなどとは何の冗談だ。
そんなものが跋扈する世界など、この世の地獄か何かか。
そしてそれ程の脅威を確認しておきながら生き残り、あまつさえジュウ等という武器を揃えるに至るニホンとは…。
「ニ、ニホンが数を誤魔化している可能性は?我々の士気を下げ侵攻の価値を下げようという宣伝文句では…」
「ハミルトン。妾は3日ほどニホンへ滞在したが、その僅かな期間にこの目で4種類ものカイジューを見たぞ?……しかも、同じ種類が複数現れる所も目にしている。イタミ殿の話ではこうも短期間に集中することは稀らしいが、ほんの僅かな間に、そう広くない範囲でそれだけの数を見たのだ。千を超えるというのも誇張ではないようには思えんか?」
「…………」
そう言われてしまえばハミルトンは押し黙る他ない。ただの噂や言伝ならば否定することが出来た。
だが、そんな想定外が立て続けに起こっているのが現状だ。
蛮族などと見下していた門の先の軍…ジエイタイは凄まじい武力とジュウという武器を作る技術を持ち合わせていて、噂と一蹴した炎龍討伐は事実だった。
そこに本人の目による証言があるのだから、冗談と笑うことなど出来ようか。
「さて、カイジューという脅威が嘘やはったりなどでないのだと理解したところで、次の話題だ」
「ま、まだあるんですか!?」
「肝心な部分がまだなのだ。……このようなこと、実際に目にしなければ妄言や戯言と捨て置かれるに違いないと思って言えぬのはお前も理解しただろう?…その秘密を紐解いたのだから、最後の一文までしかと聞き届けよ?」
今までこれを話せずに抱えていたピニャのストレスは計り知れないであろう。
だからこそ、「お前が聞いたのだから、逃げるなよ?そして同じ悩みを抱えるがいい」とばかりに引き込もうとする眼力に身を竦ませながら、ハミルトンは軽挙な思いで尋ねるんじゃなかったと後悔するのであった。
ピニャ達視点の総集編回みたいな感じです。
あちらに渡っている情報や、推測やらが含まれます。
また、ピニャにジエイタイの数や兵器の画像渡ってるのガバくない?
と思われるかもしれませんが、日本としては正直さっさと講和結ぶなりして程々に金や資源貰ってさっさと怪獣対策や復興資金、援助に回したいという思いあって、力の差を分からせるために許可されたものです。
特地の自衛隊に割く費用も安くはないですし、あちらにも怪獣がいるのだから、変に時間をかけたりして妙な真似をされても困る。
相手の底が分からなければいつか倒せると徹底的に反抗される可能性があるので、そうなると金はかかるし被害は増えるしで面倒だからです。
ハッキリ言うと、日本は帝国は脅威とかじゃなくて、もうマジで面倒くさいからさっさと侵略やめてくれ。あとこっちに出した被害の補填くらいしろ。マジで。
ちっ、誰だよ怪獣が攻めてくる時に噛み付いてくるバカはよぉ〜!
って感じです。
他国は資源は確かに欲しいけど、正直既存の品があんま効果なかったりしてるから、むしろ宇宙人の技術とかをリバースエンジニアリングして外目指したりしたほうが遥かにメリットあるやんと考えてます。
そして特地とかいう狭い門からしか展開できない上に衛星もないような僻地に行ってまで怪獣対応とかしたくないので「日本がやってくれるならいいじゃない。資金と怪獣に効果ない旧式の余り物くらい全然上げる上げる。その代わりなんかすごい技術とか開発できたら共有してね。マジで」って感じです