ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:AGIの素
ちょうどウルトラマン熱が高まっている時間に合わせて投稿することで閲覧数を増やすって寸法よ
今回は、怪獣などによって変わった地球側の事情などをピニャ達が語る回です
ピニャから齎された情報の洪水に圧倒されたハミルトンは、すっかり乾いた喉を潤すための茶休憩を挟むこととなった。
これもニホンから取り寄せた上質な紅茶で、つい先ほどまでならその芳醇な香りと繊細な味に舌鼓を打つことが出来たのだが、今となっては味を気にする余裕などなかった。
そんな一時の休息を得て聞いた情報を噛み砕いてみるも、ハッキリ言ってハミルトンの常識は悲鳴を上げていた。
あの恐ろしい武器であるジュウを全員が装備し、10万の軍を一方的に壊滅させたジエイタイは、総数の10分の1に過ぎないということ。
センシャやセントウキを始めとする強力な乗り物に加えて、超遠方から一方的に爆撃を叩き込むミサイルなどをジエイタイはそれこそ山のように保有していること。
帝国が蹂躙され、一方的な死を叩きつけるそれらの武器の殆どが、ニホンにとっては型落ち品で、捨ててもよいとされているものだということ。
そして、ニホンのある門の先は、炎龍を10度殺して余りある攻撃を加えられようとも平然と闊歩する巨大な怪物が群れをなす魔境であるということ。
いや、むしろこのような魔境にて生き延びるにはこれだけの力を身につけるのも理解できる…とハミルトンは一定の理解を示したが、これからのことを思って胃がキリキリと痛み出す。
この情報一つ一つですら帝国が絶望するに十分な衝撃を持っているにも関わらず、本題はこれからだとのこと。
朝食を多くとっていたらもしかすれば戻していた可能性もある程だ。
もうお腹いっぱいと言いたいところだが、ここに来てやっぱり聞かないという選択肢などあろう筈もない。
「あら、殿下。ここにいらしたのですね。ハミルトンとのお茶の途中であったのですね。ではまた…」
そんなブルーな気持ちで茶を飲み干したその時、執務室の扉が開き豊かな金髪を縦巻きにした美しい女性が現れる。
そう。彼女こそピニャに同行し、使者として門の先の光景を目にした唯一の帝国貴族関係者だ。
一瞬、ハミルトンはこの話から一時離れられるとも考えたが、その淡い目論見は無意味と化す。
「いや、気にする必要はないぞボーゼス。休憩ももう終わりだ。今ちょうどハミルトンに門の先で得た情報を話していた所だ。お前もその補佐を頼みたい」
「え」
「……そう、ですわね。そういうことでしたら、お任せください」
一人の話ですら気が狂いそうなのに、証言が増えるとなると、最早心のなかで逃避することも許されない。
ハミルトンは処刑台に上がった罪人のような気持ちでその言葉を待っていた。
「それでハミルトンよ。話の続きだが……」
「は、はい」
もうなるようになれとハミルトンは構えることにした。
「これに描かれているカイジュー。……種としての名はマグラーというらしい。全身を覆う体表やトゲは金剛石以上の強度を誇り、尾の長さは110ヤード*1程。炎龍などのように火を吹くわけではないが、噛みつきや長い尻尾による攻撃が脅威とされているらしい。土竜や虫などのように地面深くに住んでおり、いきなり現れるのだとか」
「じっ、地面にですか…」
紡がれる能力はどれも驚嘆に値する。火を吹かないと聞いて安堵しかけたが、皮膚ですら金剛石以上の硬さとなると攻撃が通じるかも分からず、歩兵や魔導師の射程距離に入る前に、尾で薙ぎ払われて終わりだろう。
このマグラーというカイジューの攻撃は、生物としての柔らかさを保ちながら、金剛石以上の硬さに圧倒的な質量の長さ110ヤードの鞭を振り回すようなものである。
加えて、この巨体で地面深くに潜る。空を飛ぶ古代龍も脅威だが、目立つ分発見や報告は容易だ。
だが、どこに地面の下にまで目を行き届かせることが出来ようか。仮に穴蔵を掘って監視しようにも、見える距離に入った瞬間に押しつぶされて情報の伝達者が壊滅するため意味がない。
ある意味ではあらゆる障害を無視して空から襲い来る龍よりも奇襲性という点では上だ。
もし帝都の中心にこのマグラーが現れ、その場で回転したらと思うと気が遠くなる。
半径110ヤードの地面にあるものは尽く壊滅させられるだろう。
「どうだ?このマグラーというカイジューは」
「……カイジューとは、みなこのような存在なのですか?」
「しかも、このマグラーというカイジュー。ジエイタイの知るカイジューの中では臆病で弱い方なのだと言う」
「これが、弱い…?ほ、本当なんですか…?」
確認できた情報だけでも恐るべき存在だ。空の支配者たる古代龍とは評価点が違うが、こと陸戦能力という点に置けば地上の支配者となれるだけの存在だ。
そう勝手な認識をしていたものが否定されると、ぷるぷると確認を取るようにボーゼスの方へ目を向ける。
ボーゼスはちらりとピニャの方を伺うと、その手前口調を整えながら肯定する。
「…ええ。事実ですわ。直接確かめた訳ではありませんが、このカイジューの対処に当たったジエイタイの者らは、他のでなくて良かったという声や、…その、名であるかは分かりませんが、何事かを例に挙げてどれそれならば時間を稼ぐことも出来なかったと申していましたわ」
「これがマシ、ということですか」
「……事実、わたくしもあちらで見たカイジューの中に、同じく地面の下より現れ、亀の如き堅牢な鎧を全身に纏い、群れを呼び、岩をも溶かす毒液を吐き、光の刃のようなものを雨のごとく放つカイジューがおりました。しかも、そのカイジューは積極的に動く生き物を襲い、自分より大きなものであっても容赦なく喰らいにかかる獰猛さをもっていたのです」
「………」
先ほど地上の覇者などという評価を下したカイジューを全てにおいて上回っている存在が語られる。
ボーゼスはやや気持ちが先走る傾向が見られるものの、忠義に篤く熱血嬢だ。
そのボーゼスですらこうして証言するのだから、それは事実なのだろう。
正しい情報というのはいつの世も強力な力となるが、余りに常識からかけ離れたものであるとそれが却って災いするのだな、と何処か他人事にそう思った。
黙るハミルトンの姿を余所に、ピニャは一冊の書物を取り出した。
とてもカラフルで珍しい装丁だったが、精巧な絵で描かれる怪物と本に記されている文字でそれがニホンのものであると分かった。
そのタイトルは『新約ウルトラ怪獣図鑑1』。
怪獣出現に当たって新たに作られたウルトラ怪獣達のデータや図を纏めたものだ。
焦点は怪獣に当てられており、判明している生態や行動などが描かれている。
子どもでも読めるよう字幕付きの本ながら、簡潔な纏め方や、児童書などにありがちな不確かな表現等もないため、情報書物としても扱われている一冊だ。
「これは妾があちらの世界から持ち帰った本の一冊だ。見てわかる通り、カイジューの事が記されている」
ピニャがページを捲っていけば、恐ろしげな怪物や亜人に近いシルエットの何かが文字や絵とともに紹介されていた。その中のページには、先の絵と瓜二つのカイジューが描かれており、ニホンの文字の下には翻訳した帝国語が手書きで記されていた。
ハミルトンから見てもその情報は大雑把ながらに必要な部分は押さえられているように見受けられた。
「この情報が渡るのをニホンが許可したのですか?」
「ああ。検問のようなものはあったが、問題なく通された。……そして、これはニホンの子どもでも容易に手に入り、読むことが可能な書物だと言うのだ」
この世界での常識では、書物などは高級な羊皮紙を多く使う上に識字率の問題などから高級品とされ、手が出せないとまではいかないまでも、市民が私的に揃えるのは難しい。
ニホンの文化水準が高いことが伺える上、子どもでも手に入れることが出来る情報媒体であるということは、裏を返せば
「妾たちがアルヌスの丘を訪れた際の情報だが、こちらの世界に来ているジエイタイが持つ武器では武器庫をひっくり返しても、弱いとされるマグラーすら倒せない。……分かるだろう?帝国の侵攻を跳ね除け、10万もの連合軍を容易く排除した強大な戦力とやらは、あちらにとってすれば爪先ほどの労力に過ぎないのだ、と」
「……ニホンとは、門の先の世界とはそれ程の魔境ということですか。いえ、むしろその様な魔境を生き抜くためにあれほどの技術力を…?」
「ああ。妾もそう考えている」
「あれほどの災禍にありながら、あの摩天楼の如き都市を作り上げる国力を見れば、他の者もきっとそう思われるでしょう…」
三人はその環境と技術力の差に顔を青褪めさせる。
今はまだ旧式の武器と僅かな人数で済んでいるが、もしも本腰を入れて怪獣すら打ち倒すという圧倒的な攻撃を繰り出されたら…と考えて背筋が強張る。
旧式が持ち込まれていることは事実であるが、断片的な情報を汲み上げては勘違いを加速させていく彼女たち。
「さらに、帝国はニホンだけを敵として見ているが、その実態は異なる。…なあハミルトンよ。このファルマート大陸に、いや、さらにその外も含めれば、一体どれだけの国がある?」
「………まさか」
「ああ。そのまさかだ。ニホンというのはあちらの世界の一国家に過ぎない、というのは言わずとも理解できるだろう。無論帝国もそれは承知のことだろうが、目先の戦果にとらわれてその先を見通すことが出来ていないものとして思えぬ」
ピニャは頭が痛いとばかりにそう愚痴る。
確かにそうだ。奇襲を仕掛けたこちら側が逆にアルヌスの丘を占領されているニホンのごく一部に手間取っているが、門を越えれば他の国もあるだろう。
「妾が敢えて挙げたということはもう理解できているだろう?……門の先には、ニホンに匹敵する力を持つ国家が両手の指では足りんほどにあるということだ。カイジュー退治の兵器などはニホンが一歩上を行くと言うが、それを使われずに帝国は追い込まれているのだ。旧式と言っているからには、当然他の国も同等の装備程度揃えていると考えるべきだ」
ニホンに匹敵する力を持つ国が、武器が、門の先では当たり前のように使用されている。
仮に旧式と知らされていなければニホンが最新の兵器を揃えているからだという妄信も出来た。
だが、兵士の隅々にまで生き渡る旧式の武器を、ニホンに並ぶという国が持っていない等という希望的観測に縋る程、彼女たちの目は腐っていない。
見ればピニャの指は震え、ボーゼスも眉尻を下げて残酷な真実を告げる。
「……兵力数は分かりませんが、ニホンの民の数は、あちらの世界における国家の中で、上から12番目とのことですわ。……抱える民の数は即ち兵となれる者の数。……低く見積もって、仮にニホンと同じ数を抱えているとしても300万を超えますわ。……他の国家もある分、確実に下回るなどということはないですわ」
「一億人もの国民を抱えているのに、ですか…?」
震える声で尋ねるハミルトンへの答えは更に悪い方向に齎された。
「ああそうだ。仮に奇跡か神の手助けが起きてアルヌスの丘からジエイタイを撤退させたとして、その先は?…一度押し返したのだから勝てるはずだ等と宣い門の先へと攻め入る連中がいないとは言うまい。いや、必ずいる」
「……」
ハミルトンはその言葉に思うところがあり押し黙る。彼女自身、この話を聞くまでは、何だかんだと帝国の力であれば楽勝とは行かずとも最終的には勝てると思っていたので、貴族なんかは特に騒ぎそうなものとよくわかっていたからだ。
「そうなれば、最早我らに道はない。あちらの世界にはこちらの百倍、数百倍はあろうかという兵がいるのだ。更に侵攻された以上自らの国を守るため強力な兵器の使用も惜しまないだろうな。
それに加えて、ニホンは多くの国家と一種の同盟を築いているという情報も入った。……仮にニホンとの戦況を覆せたとして、同盟国の兵まで現れたらどうなる?」
「……それは、流石に」
「考え過ぎと思うか?門の先は我らにとって異世界であるが、彼らにとってはこちらが異世界なのだ。…『異世界から侵攻してきた軍からこちらの世界を守るため』と言って
そう言われては黙る他ない。何せ、攻撃を仕掛けた筈の帝国がそれを先に行ったのだから。
「やろうと思えばいつでも帝国を滅ぼせるにも関わらずニホンがこうも遠回りな理由は、講和と賠償を前提としているからに他ならない。……仮にそれを反故にして犠牲を出し続けてみろ。今はまだ寛容かもしれんが常に攻撃を仕掛け、徒に資金を浪費させる存在を放置する理由などないだろう?」
ピニャの推論はそこに行き着く過程はどうであれ、ある程度的を射ていた。
ましてや、人の住む街中ですら現れる脅威に対応しているのが門の先だ。いつ状況が変わって、帝国に割く戦力が勿体ないなどと言って一気に攻めてこないなどと決めつけることが出来ようか。
「戦を続けては勝てぬ。それにそのような真似をすれば戦後の扱いがどうなるかなど分かるだろう?」
当然、日本とこちらでは価値観や文化の基準が違うのでそうとは限らないのだが、特地の住人たるピニャらはそれを杞憂と断ずる理由がない。
相手の弱みに付け込むのは戦略だが、相手の容赦に甘えて攻撃を続けるのはただの愚者だ。
「…だからこそ、講和というわけですね」
「ああ。それしか帝国が生きる道はない」
そう断ずるピニャだったが、ふとハミルトンはあることを思いつく。
「その、帝国が勝てないということを念頭に置くのであれば、その様な土地と繋がる門を破壊するというのは…?」
敵を前にして逃げるようなものだが、国がダメになるかどうかの瀬戸際ならば、相手を撃退するという意味では同じもの。
門の破壊のみに専念して攻めれば、その場での犠牲には目を瞑るとしても何とか帝国は今の姿のまま継続されるのではないだろうか、ということだ。
「妾がそれを考えなかったとでも?残念だがそれは駄目だ。そもそもあちらとしても門の重要性などはよく理解している。間者を送り込もうにも、ある程度から内側には侵入することも不可能と思わせる警備を誇り、人がおらぬ様に見えても如何なる魔法か、街中に警報が響き渡り捕らえられる。顔や名、所属をくまなく調べられ、とてつもなく精巧な割符のようなものも確認される。それがバレればニホンも黙ってはいないだろうな」
そもそもが近づくことすら出来ていないのだ。
民に紛れて破壊工作をしようにも、あの厳重な警備は抜けられないだろうという確信があった。
そんなもの、相手の逆鱗に触れるだけだ。
いつも通りの戦であればそれも策として取り入れたかもしれないが、相手が悪い。
「そして、既にただ門を閉じればいいという話ではなくなっているのだ」
はて、門が閉じれば少なくともニホンはやって来ず、帝国もどうにか持ち直せるのではないかと思うハミルトンはどういうことかと問う。
「講和という手段に拘るのは先ほども言ったとおりではあるが、それ以外にも二つの理由がある」
「二つの理由、ですか?」
ハミルトンは既に勝つことを諦めたような顔でそう尋ねた。
その雰囲気に違わぬ神妙な雰囲気で、ピニャはその言葉を絞り出した。
「…カイジューと、ウルトラマンだ」
原作との相違点として
・マグラーの亡骸と山のような集中砲火ですら止まらない様を見ている
・10万を数日で壊滅させ、帝都が火の海になるとまで思った武器は旧式で、怪獣を倒すに至らないと言われた
・そんな怪獣を門の先のニホンは倒すことができる()
・特地側に怪獣が出現するのも見ている
・ニュースで流れていた怪獣やウルトラマン特集にしがみついていたため、梨沙のBL本に気づかず娯楽によるストレス発散が出来ていない
・その結果銀座では怪獣やウルトラマンを調べ、そこに出てくる単語を解読した結果、他の国やミサイルなどが釣瓶式に調べられた
・↑日本側も余裕が原作ほどないから、子どもでも閲覧可能な程度のミサイルや国とかの情報なら理解してもらったほうが早く済むと思い検閲に通された
・侵略宇宙人対策として警備や認証は原作よりも遥かに厳重
・各国と日本が同盟を結んでいて原作より仲がよい
等あります