ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり 作:AGIの素
大変お待たせして申し訳ない。
それはそうと戦う覚悟を決めたテオくんはいいね。今までは行動一つ一つに遅れが出たり躊躇いがあったけど、今回は連続攻撃や、攻撃を受けながらもどうにか反撃をするという戦闘のカタチが出来てた。
ビッグバンテオキックからすかさずワイドテオショットは戦闘者としての油断のなさが出てて最高だった
ケルビムによる攻撃の衝撃が抜けきらない彼らも、それの出現に開いた口が塞がらないといった様子で呆けていた。
自身らの背後で眩い閃光が瞬いたかと思えば、巨大な影が迫っていたのだから。
伊丹と古田がその巨人の出現に安堵の息をつく中、貴族らにとっては全く未知の脅威が現れたように映ったのだろう。
それも仕方のないことだ。
「な、何なのあの巨人は!」
「い、いったい何処から!?」
「ひいっ」
何せ自分たちよりも圧倒的に大きな肉体がすぐ目の前に出現したのだから。
現場ではあまりの光景に唖然とする者。新たな脅威に顔をひきつらせる者とに分かれていた。
送れて他の者もピニャが巨人の手の内にいると知れば迷いを残しながら剣に手をかける。
その迷いとは、ハミルトン越しに受けた忠告が原因だった。巨人の特徴と一致し人を守る存在であり、決して攻撃してはいけない。そうきつく言い含められていた。
ウルトラマンノヴァの出現に騒然とする中、当のピニャはかちあげられる程の衝撃で気絶していたらしい。
「う…。妾は…。ここは…」
「なっ、ウ、ウルトラマン…!?」
思わず腰を抜かして後退る。
そこでようやく顔の近さと足元にまで注意が向いたらしく、ウルトラマンノヴァの手の上だと気づいた。
驚くピニャを余所に、ノヴァはゆっくりと手を地面に近づけるとピニャが降りられるように緩く傾斜をつける。
ピニャはノヴァの顔と地面と視線を往復させて、恐る恐る大地に降りる。
「殿下!」
「姫殿下!」
すかさず伊丹や薔薇騎士団が駆けつけてその安全を確認するが、吹き飛ばされた際の衝撃で軽い打撲こそしているが命に別条はない。
「わ、妾を助けてくれたのか…?」
ピニャとしてはウルトラマンというのは怪獣を退治する凄まじき存在にして、自分たちを滅ぼすかもしれない脅威として映っていた。
これはピニャの集めた情報が断片的であり、帝国こそが侵略者であるという認識のためだ。
ここで講話に取り次げずにニホンを侵略するのであれば、ウルトラマンの排除対象となってしまう。そう解釈していたからに他ならない。
未だ正式な講話は進んでおらず、ましてや当事者でないウルトラマンにそのことを知る由はないと思っているし、ピニャからすればウルトラマンから自分への認識は「侵略戦争を始めた国の皇族」と映っているに違いないと思っていたからだ。
しかし、ピニャもよくよく思い返せば直前の光景は覚えている。
襲い来るケルビムの火炎弾と衝撃。そして空高く吹き飛ばされる自身の身体。
助けがなければ、そのまま死んでいただろうとも理解した。
だからこそ、怪獣に背を向けてまで、自らの命が危うくなるのにも関わらず、自分を助けたのか不思議がったのだ。
呆然と漏れた言葉だが、ノヴァはその視線に言葉を発することはなく、ただ静かに頷いた。
反応を待たずして立ち上がったノヴァは彼らを守るように背を向けてケルビムと顔を合わせたのだった。
その姿をただ目で追うピニャの姿に、伊丹は声をかけた。
「ピニャ殿下。俺たちもウルトラマンのことを理解してるって訳じゃあないですけど、そんな損得勘定とかで動いちゃいないんですよ」
「で、では…?」
「……さあ?ウルトラマンって言っても色々いるみたいですけど、無為に命が失われるのを黙って見てられなかった…。とかじゃないですかね?」
その言葉にピニャは衝撃を受ける。
これまではお伽噺の騎士の様だと称していたが、勧善懲悪では済まない現実においてもそれを貫く者がどれだけいようか。
地球ですら当たり前ではないその姿勢は、より個々の強さや社会が未熟なこの世界ではより顕著だった。
無論、出来る範囲で困っている人物を手助けする者も決して少なくないだろう。
だが、見ず知らずの人間。自らの守る存在に危害を加えた相手を守るために、何の見返りもなく命すら賭ける。
甘すぎる。いや、もはや甘いを超えて怖くすらある。
そんな考えなど一体どこの世界で通用するのかと疑念を抱いたこともある。けれど、そうではないのだ。
その考えにたどり着き、実行する存在が、どうしてか愚かにも戦いをしている自分たちの身を命懸けで守る。
ピニャの脳裏でどうしようもない嫉妬と羞恥の感情が吹き荒れる。
「どうしてそのようなことができる」「守っている自分はそんなにも高潔な志などない」
と。
けれどそれすらも気にならなくなる程の子供じみた憧憬と尊敬の念が今初めて溢れ出た。
自分たちが悩んで不安に思っていたそれの理由がまるで理解できなかった故の思考への恐怖。
それは一見思考放棄にも思える「ただそうしたいだけ」と考えれば妙にしっくりと来たのだ。
「ど、どういうことだ…?巨人の手からピニャ殿下が…」
「何か言葉を交わしたのか…?」
「わ、私達に背を向けた…」
その光景を見ていた一同から謎の巨人への不安と戸惑いが伝わってくる。
一瞬の静寂。
ケルビムは突如出現したノヴァへと威嚇し、先ほどの火球を連続で放つ。
これまでとは比べものにならない程の連射に、更なる悲鳴と絶望が入り交ざる。次なる惨劇を予期した彼らは、そこで見た。
「フゥッ!デュア!ゼェイッ!ジュアッ!ハァア!」
次々と放たれる火球をその肉体で弾き飛ばすノヴァの姿を。
腕で払い、殴り飛ばし、手の甲で弾き、殴り、手刀で霧散させる。
更に出来た一瞬の隙にバリアを手の前に出して残りの火球全てを防ぎきった。
「ふ、防いだ…」
「あの火球をいとも容易く…」
「ど、どういうことだ!?」
先程まで猛威を見せていた攻撃を弾き返したその実力に慄くと共に、まるで自分たちを庇うかのような動きを見せる巨人に戸惑う。
特異な現象に連続で巻き込まれた彼らは、命の危機だということも一瞬忘れて、輝く銀と海のように青い巨人を仰いだ。
「ディアッ!」
全ての火球を弾いたノヴァは、威嚇するケルビムへ向けて走る。
その振動に人々がその巨体に秘められた重量を感じている中、ピニャはただ呆然とその後ろ姿を目で追っていた。
「キュゥワッ!!」
「デュオッ!?」
接近されたケルビムは飛び上がるとその長大な尾を振り回して棍棒のような先端でもってノヴァの体を打ちつける。
ノヴァ自身、そこまでの勢いと遠心力による増幅を受けた予想外の威力に防御を崩されるも、すかさず尻尾に体全体で組み付いた。
尚も勢いを止めないケルビムはノヴァごと高速で振り回す。
その勢いはプロペラ機もかくやというほどで、当然それだけの速度で回れば風の勢いも増す。
「う、うおぉぉぉぉぉ…!?な、何がどうなっている!?」
「嵐か!?あれは嵐を起こしているのか!?」
「ぐうぅ…!え、炎龍の羽ばたきですらこうは…!」
襲い来る暴風に必死に耐える一同だったが、姿勢を低くした伊丹は薄めた瞳でそれを見る。
あのまま振り回されては遠心力でウルトラマンが弾き飛ばされてしまう。そして大質量のウルトラマンがあの速度で振り回された後に吹き飛ばされれば、その威力はさることながら予測も出来たものではない。
故に頑張ってくれと念じる他なかったが、そこで動きが変わる。
「あっ、あれは!?」
ふり回されていたノヴァは、しかして姿勢を安定させるや、逆にその尻尾を更に押し込むようにしてケルビムの回転と同じ方向に高速飛行を始めたのだ。
「まさか…」
伊丹はその光景に一つの光景を思い浮かべる。
あれはそう。この世界の商人の荷車なんかが泥濘や溝にはまった時。
前から引き上げる者と後ろから押し出す者とで協力する中、押し出し側にロゥリィが参加したことにより急加速した荷車が前方の自衛隊員が危うく轢かれそうになったことがあった。
今はその光景とは異なるも、力の関係は同じだ。
同じベクトルに与える力が、引き上げる側と押し上げる側とで力の逆転が起こったとき、それはその方向にいる側は勢いを失い後方からの力に押されることになるということだ。
「は、速い…。竜巻のようだ…!」
ウルトラマンノヴァはケルビムの回転に負けじと加速する。
みるみる速度を上げていき、ヘリのブレードのように残像が見えるほどになったノヴァに押され、ケルビムは自らの力で回転していた勢いをすっかり殺され、逆にノヴァによって自らの肉体を振り回されていた。
「キュアアァァァァ――ッ!??」
「ジィアッ!!」
更にそのままノヴァは回転の勢いをつけてケルビムを地面へと叩きつけた。
その衝撃は計り知れないもので、大地震もかくやという振動が一同を襲う。
地震大国である日本に済む伊丹ですら膝を折るほどの揺れなど、ただでさえ地震というものがほとんど知られておらず、耐性もない帝国の人々に耐えろというのは酷なことだった。
「キュアァァッ…」
どうにか立ち上がったケルビムは威嚇の声を上げるも平衡感覚は失ってしまっているらしい。上空のノヴァに牽制として火球を放つもその狙いは余りにお粗末だ。
「ディィィィ………ゼァッ!」
ノヴァは向かってくる火球へと恐れず突き進む。距離が縮まるごとに相対的な速度は増すというが、ノヴァはその殆どを微かな姿勢制御でひらりと躱し、一部はその腕で払いのけられる。
「キュ、キュァ!?」
ケルビムが驚愕と怯えを感じたその時にはもう遅い。更に勢いを増したノヴァは右腕からルクシウムブレードを出現させ着地の勢いと共に一閃。
上空からの一撃の勢いをそのまま逆袈裟に振り抜き、身を翻して正面からの斬撃。
N字の軌跡を辿った瞬閃はケルビムの知覚を許さず。
何があったのかも分からないままにケルビムの肉体は別たれ爆炎に包まれた。
「た、倒した…のか?」
時間としては僅かなものであったが、如何せん衝撃が大き過ぎた。
理解の域を越える怪物と、それすら屠る巨人。
しかし今迫る危機が消えた訳では無い。
呆然とノヴァの後ろ姿とケルビムのいた場所を眺めるも、未だ燃え盛る炎の勢いは留まることを知らない。
それに気づいた者たちが慌てて避難を続けようとするも、次の光景に身を竦める。
「ひ」
「何かする気だぞ!」
身を翻したノヴァが手を合わせて前に突き出す。先ほどまでの光景に目を奪われていた彼らは、この巨人が先ほどのように破壊光線を放つものだと思い腰を抜かす。
しかしその予想は裏切られる。
ノヴァは掌から大量の水を噴き出し、燃え盛る木々を次々と消火させていく。
「み、水?」
「見ろ、火が消えていく…!」
10m以上の火柱が経つほど大火がものの1分足らずで完全に鎮火されたのだ。
あまりに呆気なく解決したものだから、彼らもどう反応していいか分からない様子であった。
そして残るのはそれだけのことを成した巨人の圧倒的な力への畏怖だった。再びその姿をじっくりと見た彼らはその巨体に気圧される。
あれだけの力を見せつけた存在だ。こちらに向かってくれば一溜まりもないというのは十分に理解したことだろう。
彼らの不安も理解できる。
話を事前に聞かされていた薔薇騎士団員も剣から手を離すことはできずにいる。
そんな中、ピニャはその混乱を鎮めるように前へ進み出て、震える手をどうにか抑え込みながら声を上げた。
「わ、妾は帝国第三皇女、ピニャ・コ・ラーダ。ウルトラマンノヴァ殿、この度はこの園遊会に集った者を代表して、深く、深く感謝を捧げる…!」
帝国皇女の真に迫ったその謝礼は中々堂に入っている。遅れて、団長であり使える主君たるピニャの礼に追従するように、慌てて他の団員も謝礼の形を取る。
見るからに異なる存在に、伝わるかも分からない謝礼。
誰もが固唾を飲んで見守る中、その意味が伝わったのか定かではないが、ウルトラマンノヴァは静かに頷くや、掛け声と共に遥かな空へと飛び去っていった。
「通じた…のか?」
「恐らくは…」
ピニャが絞り出した声に、伊丹は呆気にとられながらも肯定した。
人々は去ったノヴァの雲を切り裂く飛行速度に驚いていたが、いよいよもってこの園遊会を妨げる災厄は潰えたのであった。
しかし、それで一件落着とは終わらない。
あのような脅威に晒され、会場は滅茶苦茶。青い巨人という存在に助けられたことも相まって、その混乱はひとしおだろう。
それを少し離れた場所から観測していた議員たちからも、次々と質問は絶えない。
そんな混乱の最中、騎馬の小集団が再びこちらに向かって来ていると連絡を受けたため議員たちを逃がし、伊丹は茂みへと身を隠すのであった。
次回から原作の流れが変わるかも…?