ウルトラマンGATE 超人 彼の地にて、斯く戦えり   作:食卓の英雄

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やっぱザラブ星人は人気ですねぇ…。
あと何で政府にいる宇宙人がメフィラス星人だって分かったんです?(現場猫)


SD3C特地現着!

「テュカ、起きなさい」

 

 少女の優しい夢は、父親の切羽詰まった様な声に破られた。

 

「お父さん、どうしたの?折角いい気持ちで寝てたのに」

 

 目を擦り、身を起こそうとして、突如響き渡った轟音と衝撃に体を揺さぶられて体が床に叩きつけられる。

 

 思わぬ衝撃に瞠目しながらも、辺りを見渡して見ると、居間には暖かな日差しが差し込んでいる。

 午睡からの痛みを伴った目覚めは焦りを何事かと混乱し、ただ、自分を起こした父の顔は異様なまでに険しくなっていることには気がついた。

 

 意識を向けてみれば、外からの雑多な足音や喧騒も耳に入る。集落中が騒ぎの中にあった。そのただならぬ様子に何か重大なことが起こったのだと感じた。

 

「どうしたの?」

 

 その答えは、直後に現れた。

 

「グァアアアア!!??」

「きゃあああっ!!?」

「ぐああっ!??」

 

 彼女のいる木造の一軒家を突き破って、赤い巨体が転がり込んできた。

 一瞬で慣れ親しんだ自宅が倒壊し、家具はぺしゃんこに潰れる。あと少し着弾地点がズレていれば同じ末路を辿ったのは自分達だっただろう。

 

「っ、早く外へ!」

「う、うん!」

 

 何が起こったかは分からずとも、ここにいては危険だということも分かる。

 

 テュカは父の手にしている弓を見て、愛用の弓矢を手にしようとして、それは先ほどの倒壊に巻き込まれて半ばから折れてしまっていた。

 そのことにショックを受けつつも、父に手を引かれて外へ出る。この様な非常事態に武器を持っていないことに不安を覚えるも、武器に拘って巻き込まれる方がよっぽどいけない。

 

 戸口から出たテュカは、逃げ惑う住民たちを見て、後に自分の家を突き破った正体に悲鳴を上げる。

 

「これって、もしかして炎龍っ!?」

「ああ、そうだ」

 

 何と、己の家を潰していたのは巨大な古代龍の姿だった。このあたりに龍は棲まない。テュカのエルフとしての長い生においても実際に見たことは無かったが、しかし幼い頃から父親に受けた博物学の講義で知っていた。

 

 古代龍が襲ってくるというのは、正しく絶望の一言。古代から生き続ける龍の鱗は鋼鉄よりも硬く、何物をも通さぬ頑強さを誇り、常識を超えた速度で大空を羽ばたき、あらゆる生物を殺す業火を放つ怪物。

 正神や亜神などを除いた存在としては古代龍を超える存在は(少なくとも地上には)いない。

 そしてこれまでに数多の国、数多の勇者が退治しようとしてきたが、全て失敗に終わっている。

 

 つまり、龍とはこの世界における天災にも等しい存在であり、対応策は住居を捨てて逃げる他はない。

 

 それがテュカの、ひいては世界の認識であった。

 

 だからこそ、目の前の光景に瞠目する他ない。

 

「ギィアァゴォオオオオ――――ッッ!!!」

「ギュアアアアアアァァッッ!!」

 

 その炎龍すら身の丈の半分程度にしか届かないほどの巨体の怪物が、炎龍を相手に咆哮していたのだから。

 家に突っ込んできた炎龍の姿勢、そして進路上の木々や家が抉れている所を見るに、巨大な怪物が炎龍をここまで飛ばしたのだろう。

 

「何、あれ。大きすぎる…!」

「分からない!だが、注意が向いていない内に逃げよう!」

 

 テュカの知る中で、最も大きい生物というのは、『鎧鯨(コルヌ・ケートゥス)』と呼ばれる巨大な海洋生物で、成体は五十〜六十メートルほど。

 それだけならば、その生物とそう大差はないのだが、水の中と陸とでは勝手が違う。それほどの巨体が維持できるのも、浮力が働くことで重い体を支える必要がなく、まして水の中では直立する必要もないからこそ、大きな体を維持できるのだ。

 

 だからこそ、目の前のそれは規格外だった。それだけの巨体だというのに、四足歩行どころか、二の足を地面に着けて直立している。

 

 テュカはそこまで詳しく理解していた訳ではなかったが、その存在が危険だということは分かった。

 

 見れば、炎龍は大きく非常にして、最大の武器である炎の吐息を怪物へと直撃させたが、角の生えた怪物は怯むことなく炎龍を目で追っていた。

 

 全ての生物の弱点である炎、それも人を一瞬で炭に変えてしまうほどの熱量を受けて尚、その怪物の強固な皮膚を溶かすことはおろか、僅かな焦げすらつけることはなかった。

 

 更に、あろうことかその怪物が口を大きく開けると稲妻のような軌跡の熱光線が直線上の景色を灼いた。

 上空の炎龍に向けて放たれたから良かったものを、あんなものが地上に放たれれば、被害は炎龍の炎の比ではない。

 

 炎龍が生き残っているのも、空を飛び射線を絞らせていないためだ。炎龍最大の攻撃である炎では上をいかれ、それまでは何の問題もなかった体格も相手の半分未満。

 

 これまで一体何故この存在が世に表れなかったのか。ぞっと背筋が粟立つような感覚に陥った。

 

「テュカ!早く!」

 

 父の焦った声に我に返り、みんなと同じ方向へと逃げ始める。炎龍が自分たちを狙っているだけならば、抵抗する道を選ぶ者もいただろう。

 

 炎龍に襲われては逃げることも難しく、逆に炎龍の攻撃をものともしない怪物に弓が通るはずも無い。

 一部の達人であれば、目を狙うという絶技も可能だったであろうが、それは火を吹きながら飛ぶ炎龍には当てられても、直立したままの巨大な怪物には角度の問題で難しい。

 

 だが、炎龍に加えて未知の脅威。それも力や硬さならば炎龍をも凌ぎかねない存在と争っていたことで、その隙に逃げる隙が出来ていた。

 

 だがしかし、その僥倖もこれまで。自身の攻撃が通用しないことと、相手が遠距離攻撃手段を持っていることで不利を悟った炎龍が逃げ出したのであった。

 

 炎龍が逃げ出す。それ自体は途轍もない幸運であったが、均衡を保っていた今は最悪の展開と言えるだろう。

 

 空を飛び逃げる炎龍を追う手段は怪物には無く、ならば次に注意が向くのは、一斉に逃げているエルフたちに他ならない。

 

「不味いぞ!」

 

 それに気づいた戦士たちが逃げる家族や友の時間を稼ぐため、弓を射掛け、召喚された風や水の精霊が攻撃を加えているが、相手は炎龍の攻撃すら凌いだ怪物。次々放たれるそれは外皮に僅かな傷すらつけることは出来ない。

 

 逆に放たれた一条の熱線が地面を貫き、衝撃で人々が吹き飛ばされる。

 

 何とか直撃は避けたエルフ達であったが、その威力で吹き飛んだ人々が、地面や壁に打ちつけられて腕や足を砕かれる。

 精霊は今の一撃で蒸発し、徐々に怪物が迫ってくる。

 

 その歩みは決して早い訳では無いが、巨体ゆえの一歩の大きさも相まって、却って絶望を演出する。

 

「お父さん!起きて!」

「ぐっ、うう…。テュカ、君だけでも逃げなさい…」

 

 同じく、光線の衝撃波から庇ったホドリューが肩と足を砕かれ、立ち上がることも出来ずに逃げるように告げる。

 

 テュカはその言葉を聞こえないふりをして、父の手から離れた弓を手にとり、庇うように前に出る。

 

 矢を番え、立ちはだかるテュカは威嚇するように、勇気づけるように精霊に呼びかける。

 

「ダメだ、テュカ…!」

「Acute-hno unjhy Oslash-dfi jopo-auml yuml-uya whqolgn!」

 

 風の精霊の助力を得て、速度を増した矢が怪物の目へと突き進む。そこ以外に、狙う場所はありえない。

 真っ直ぐ突き進んだ矢は空気抵抗を受けながら減速し、怪物の眼へと突き立って、懇願虚しく瞬きによってはたき落とされた。

 

「あ…」

 

 そして当然、僅かながらでも注意を向けてしまったテュカへと視線が突き刺さる。

 

 再び口元にあの光線を溜め始めたそれに、テュカは最早抵抗する気を無くしていた。

 

 それでも尚、娘を庇うために手を伸ばす父の姿を視界に入れて、共に散るのだと妙に冷静な気持ちで理解した次の瞬間。

 

「ダアァァッッ―――!」

 

 ストレスから気絶する瞬間、テュカの瞳が最後に映したのは、自分たちを庇うように現れた光の巨人だった。

 

 その体色は銀の下地に赤・紫・黒の模様が差し込み、胸部にはO型の光が青く輝いていた。

 

 

 

●●●

 

 

 

 ウルトラマンノヴァである新星 渡は、アルヌスの丘頂上近くに建設された特地派遣部隊本部の看板が下げられた建物に集っていた。

 

 世界で巻き起こる怪獣被害に対応するべく試験的に創設された特別指定災害級生物対策課(Special specified Disaster class Creature Countermeasures Course)。SD3C、或いは特災課と呼ばれるそれは、特地での怪獣発生の恐れがあるとして、その対応のための分遣隊を特地派遣部隊へ合流させたのである。

 

 元の特災課は志願者と能力を鑑みて、厳選された様々なプロフェッショナルを一個中隊程度の人数を集めた課だが、その中でも新星渡の所属する特地分遣隊の役割は、特地における怪獣、或いはそれに匹敵する生物などが存在しているかの詳しい調査と、データ収集などを主な目的としている部隊だ。

 

 つまりは、怪獣を相手に戦闘行為を行うためのものではないのだ。

 

 そもそもが、ここ特地に持っていける装備の質と量には限度があり、調査のための設備などで予算は使われている。第一、元の地球ですら未だ怪獣に有効な装備は開発されていないというのに、それを分遣隊に求めるのは酷なことだろう。

 

 一応、試験的な兵装などが配備されているのだが、これは少数のチームであることからテストにはぴったりということなのだろう。

 

 そして、元の地球からかなり小規模な作戦部隊となるので慎重さが求められ、分遣隊のメンバーは全員が怪獣災害に何らかの形で関わった人物のみに絞られていた。

 

 そしてここに集ったメンバーは、まずは特地派遣部隊のトップである狭間陸将へと顔合わせと挨拶を済ませると、彼らのために用意された作戦指揮所へと入っていく。

 

 『特災課作戦指揮所 アルヌス支部』と安っぽい字が提げられた看板に皆が微妙な顔をしながらも、中へと入っていく。

 

「おぉ…。中は意外としっかりしてますね」

「そのようだね。一応設備は地球で使っているものと遜色ないようだけど、一部衛星連携機器などは使えないからそこは注意しておいてね」

 

 ここに集った計8名の隊員達。所属問わず集められ、技術職であったり、武器科であったりとその経歴は様々だ。

 けれど、その面々は怪獣と直接相対した人物。怪獣のデータ解析などに一役勝った人々ばかりだ。

 

 この指揮所の中にはこれまでの怪獣のデータやパターン、回収した一部からの反応などが細かく記されており、土地ごとのシミュレーションや解析情報などが地球と連携して送られてきている。

 これを用いて、特地での調査とデータ収集などを行え、ということらしい。

 

「それでは改めて。私がこの特災課特地分遣隊の隊長を務める村田 明宏だ。よろしく頼む」

「私が副隊長の新星 渡です。怪獣対策などで分からないことがあれば私へ」

「はっ、私は元航空自衛隊パイロットの真樹 准一と申します。これからよろしくお願いします」

「私は元メカニックで―――」

 

 

 

―――…

 

 

 

 こうして各々の自己紹介が済んだ後は、荷解きをして、配備されている機器の様子や、装備の具合を確かめていた。

 

 8名中3名は事務仕事や、情報精査、データ収集などに長けており、中でも一人は技術開発にも関わっているらしい。

 

「そういえば、配備されたこれは?自衛隊の正式装備とは大分異なるが…」

 

 元パイロットの真樹 准一が、黒い防弾スーツの様なそれを手に取り尋ねる。

 それに答えたのはメカニックであったという隊員、村崎 裕馬。

 

「ああ、それは関東平野に現れた怪獣の一体…。識別名称ヘルベロスの体組織を使ったチョッキなんですわ」

「何っ?とすると、あのロボット怪獣にやられた方のか?」

「ああ、そういや真樹さんはその場におったんでしたっけ。そいつですわ。……光線でやられて爆散したから、バラバラではありましたが、人の装備に使うくらいなら十分だったんですよ。僕らに配備されてるこれはまあ、試作品っちゅうか、テスト用っちゅうか、まあ開発チームも色々試してみてる時期なんですわ」

 

 「でも性能はええんですよ?至近距離で12.7mm重機関砲の掃射を受けても変形すらしませんでしたし、皮膜の衝撃吸収能力で身につけてる人もそこまで痛くありません」と言われて、その驚異的な性能に驚き、加工されたその防刃ジャケットとチョッキを見て、真樹は唸るように呟く。

 

「しかし、削るだけでも加工できるなら一歩前進だな。工作機械が通ったのか?」

「いやそれが全然。ですんで、今鹵獲してるあのロボット怪獣の右腕に取り付けられてる刃を使わせてもらいまして、何とか削らせてもらったんですよね。素材と加工法の問題から、ここにある分しかありません」

「貴重な怪獣サンプルによくやれたな…。しかし、そう言われてはますます失くせないぞ」

 

 真樹が苦々しげに語るが、村崎は笑う。そこへ新星がアンテナなどの入ったケースを置きながら割り込んできた。

 

「手探りの装備の実地テストも兼ねているということだよ。特に、こっちの方が土地的にもテストしやすいし、この程度の大きさなら、怪獣対策というよりは用途と加工幅の確認くらいのものだからね。ましてや、緊急事態でもなければ怪獣にぶっつけ本番で試すわけにもいかないだろう?」

「成程、あくまで確認用のサンプルってことか」

「だから使用感とかも報告に纏めておけよ?向こうの技術開発班の手がかりになるかもしれないからな」

 

 更には隊長の村田までが入ってきて、並べられた装備群を調べていく。今のヘルベロスの素材を使ったチョッキだけでなく、通常の銃器なども当然配備されているが、それだけでは足りないと分かっていたのだろう。

 怪獣素材を使ったという装備には皆興味があったのか、機器の調整をしている隊員達も遠巻きに興味深そうに耳を傾けている。

 

「この変なグリップみたいなのは何ですか?」

 

 怪獣発生に向けての機器調整・システム担当に編成された女性隊員、石山 彩子。持ち上げたそれは、持ち手の部分にトリガーの様なものがあるが、ローマ字のDにも似たシルエットは、どうも武器の様には見えない。

 

「ああ、それは……。ええと、向こうで試作中の携帯型対巨大生物威嚇用超音波・閃光発生装置。名前は『ソニッター』って言うらしいです」

「成程、物理攻撃が全然利いちゃいないが、相手も生物。超音波と閃光で怯ませるってことだな?」

「おっ、理解が早いですねぇ。まあ、やりすぎても興奮させちゃったりするんで、そこは要注意ですね。今まさに狙われてるってタイミングくらいしか使っちゃいけませんね」

 

 こちらも人数分用意されており、腰には専用のホルダーまで作られている。有り難くそれを頂戴しながら、各種装備の確認を済ませていると、急報が入った。

 

「…これは、巨大生物の反応が地底から浮上しています!距離にして……東北東50キロ!類似パターンなし!」

「怪獣か!?」

「まだ分かりません!…ですが、この方角、第3偵察隊が向かった方向と一致します!」

「刺激してしまったか、それとも偶発的な出現か。分からないが急行するぞ!可能ならデータを集め、対処可能かどうかを判別!必要ならば本部に支援を要請する!いいな!」

「「「「了解!」」」」

 

 支部には、隊長と分析員である女性隊員2名が残り、新星を始めとした現地組が専用に用意されたブッシュマスター防護機動車へと乗り込む。

 

 オーストラリアで開発された軽輪装甲車だが、こちらはSD3Cでのギガデロス解析に当たり、その協力費としてオーストラリアから格安で買い付けた車両である。

 この車両は非装甲車両であるランドローバー・ペレンティーの後継装備であり、兵員の防護輸送や哨戒を主任務としている。軽装甲で、装甲兵員輸送車や歩兵戦闘車のように乗車しての戦闘はあまり考慮されていないのだが、対怪獣戦闘においては、重戦車や艦隊ですら容易に破壊されるのが現状であり、ならば装甲はそれなりで済ませ、機動力や取り回しを優先するのは当然のことである。

 

 また、車両は技術開発班により改造されており、従来のブッシュマスターに比べて悪路での走行、踏破力と機動力が高められており、最高速度も150km/hと格段に性能が上げられている。

 

 本来操縦士1名搭乗員9名の合計10名が乗れる所を、指揮用通信やデータ収集のための機器を搭載しているため人の居られるスペースは少なくなっているが、それも少数の部隊であるために効率的な使い方である。

 

 各種機器の確認を済ませた彼らは、反応のあった方角目指して車両を走らせたのであった。





さあ、今回現れて炎龍を撃退した怪獣は皆さんなら分かりますよね?
「凶暴怪獣 アーストロン」帰ってきたウルトラマン第1話「怪獣総進撃」に初登場したオーソドックスな怪獣にして、帰マンことジャックが地球上で初めて倒した怪獣でもあります!

果たして最後、アーストロンの目の前に現れた巨人の正体とは…?



特別指定災害級生物対策課(Special specified Disaster class Creature Countermeasures Course)
SD3C、或いは特災課とも呼ばれている。

これは度重なる怪獣出現に伴って編成された新たな部署で、ウルトラシリーズで言うところの防衛組織とかの役割。
ギガデロスの解析、怪獣被害のパターンや、その組織の調査や兵器開発なども、ここが主導で他と連携して行っている。
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