アルチヴォ・アズール   作:火焔茸

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『人間は神の失敗作にすぎないのか、あるいは神が人間の失敗作にすぎないのか。』


青春への招待状

俺は改めて、自分の容姿を観察してみる。

白い髪、白い肌、白い歯…儚さよりも不気味さが先に立つ"幽霊のような青白さ"が第一印象だった。

真っ白なキャンバスに鮮血を垂らした鮮やかな紅の瞳と、人形じみた端正な顔立ちもそれを助長していた。

 

「というか…よく見たら結構可愛くねえか俺?」

 

そう。不気味な印象で台無しだが、ツラの形は端正ではあるのだ。

それに気づいて口角が上がった結果、ニヤリではなくニタァと擬音の付きそうな表情になったのが残念でならないが。

この体を創造した奴はギャップ萌えに似て非なる…ともかく難儀な性癖を持ってたんだろう。

 

「そして貧……圧倒的"貧"…ッ」

 

アホみたいに薄い体付きもテンションを下げてくる。

折角TSしたんだからさぁ…こんな男か女か分からんような、一部しか需要ないような…

 

「はぁ…」

 

寝間着なのだろうか、ダボダボの黒いワンピースを何一つ押しのけない荒涼たる平野を手で押さえて溜息を吐く。

まぁ生徒はまだ大人ではない、その成長途上で未だ眠れる霊峰が隆起することを祈ろう。

 

でもどうせなら正統派美少女が良かったなぁ…などと呑気な落胆を覚えつつ鏡に目隠しをかけ直し、俺はもう一度部屋を探索することにした。

結論から言うと、目当てのブツはベッド脇のサイドテーブルの引き出しから見つかった。

 

「…誰が用意したんだろうな、これ。」

 

学生証と銃である。

ソイツによれば俺の名前は『三田(みた) エルテ』、オーリン・ブランカ連合学舎の1年生だそうだ。

 

銃はまぁ良い、キヴォトスなら持ってない奴の方が珍しいぐらいだ。

それが100年近く昔の、設計からして古い.45口径なのも別に良い。現代でも現役のロングセラーモデルだ、それに銃の口径はデカいに限る。

スライドの刻印や細部の違いからしてコピー品(スター)なのも良いとしよう、排莢装置(エキストラクター)が丸出しなのを除けば大した不安要素でもない。

 

問題は学生証の方である。

学生証の写真は間違いなく俺だった、つまり学生証を発行されたという事実は既にある事になる。

それが意味する可能性は2つ。

 

その1。

俺が既に生徒として過ごしてきた過去があり、俺がそれを知らないパターン。

こっちの場合は交友関係の把握や立場の再構築がネックになりやすいし、過去に何らかの厄ネタを抱えているパターンが多い。

 

その2。

何者かが俺をキヴォトスに送り込み、その一環として学生証を用意したパターン。

こっちもこっちで面倒だ。ソレが可能な程度のフィクサーが俺の背後に居ることになるし、送り込んだ奴の目的によっては命に関わる。

 

何にせよ、俺が学園に在籍しているのは間違いないらしい。

まぁ聞いたこともない学園なんだけども…何だオーリン・ブランカって。

先程確認した俺のヘイロー、おそらくは髑髏と思しき形状からして死とかに関する神秘を抱えてるのは間違いないだろう。って事は死神が伝承されてる神話がモチーフの学園…死ぬほどあるから何の手がかりにもならねえな。

結局何も分からない…俺は何をすりゃいいのさ?

 

「あ"ー"……」

 

壊れかけの笛のような、乙女らしからぬ声を上げながらベッドに倒れ込む。

考えれば考えるほど、探せば探すほど謎が増えていく。

謎が解ければ、その答えはさらなる謎という有り様なんだから考えるのも面倒になってくる。

 

「………」

 

何もやるべき事が無いのなら、自分からやる事を見つけるべきなんだろう。

そう理解はしても、いまここにある混乱を抑えてまで動く気にはなれなかった。

 

「……?」

 

だからこそ、与えられた刺激には敏感になっていた。

学生証の入っていた引き出しの一段下、その化粧板の奥から伝わる振動に気付いた俺は携帯を見つけた。

画面を見れば、そこにはメールの通知が一件のみ。

 

『リマインド:入学式の日程について』

 

やるべき事は思ったより平凡で、初歩的な事からのようだった。

 

「キヒヒッ…何年ぶりだろうな、入学式なんてのは。」

 

俺はまた、ベッドから立ち上がった。

誰が何を考えてるとか、俺が何なのかとか気にすんのはやめだ。

俺は俺の青春を謳歌させてもらおう。




三田エルテ
入学式の案内メールで青春の覚悟キメちゃった様子のおかしい人。
自分で自分のお膳立てをしたのに、それを忘れて学生証片手に長考してた愛すべきバカ。
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