憑依者がいく!   作:真夜中

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42話 引き入れる

翌日。イェーガーズ本部の談話室にメンバー全員を呼び出した。

 

内容はもちろんのこと……ナイトレイドと新型危険種についてのことだ。

 

ナイトレイドについての話しは、トントン拍子に進んでいった。すでに、わかっていることの方が大半を占めているのだから。

 

だが、新型危険種となると違った。

 

新型危険種が人型であるのと知能がそれなりにあるのを知るやいなや……ドクターの表情が変わったのだ。

 

ほんの少しの変化であり、すぐにいつもと同じような表情に戻った。故に俺とエスデス以外には気づかれていない。

 

「……怪しいですね。何者かの仕業と考えた方がよさそうですね、これは」

 

「うん。私もそう思う。これは明らかに何者かの仕業……でも、この出現地点のまばらさが作為的なのか無作為なのかわからない」

 

「そうだね。表れた場所に共通点はないし……それに、こうも表れた場所がまばらだと複数犯もしくは帝具使いの可能性が高いね」

 

ラン、クロメ、ボルスが次々と意見を出していく。若干くたびれた様子のウェイブは共通点を探しているのか机の上に広げられた地図を見ている。

 

「でも、離れた場所に移動する帝具ってあるんですか? あったら帝国もしくは革命軍が探していそうですが」

 

「サヨの疑問に答えるなら、離れた場所に移動することの出来る帝具は存在している。一応、帝具の中でも5指に入るぐらい強力なものだ……」

 

そのまま、続けてその帝具は何処にあるのか不明だがなと言おうと思っていた所でドクターが珍しく神妙な様子で口を開いた。

 

「……この件についてはアタシに少しばかり任せてくれないかしら」

 

「ほう……何か宛があるのか?」

 

エスデスが興味深そうに問う。

 

「ええ……アタシの勘違いだったらそれで構わないのだけれど、そうでなかった場合を考えるとね」

 

「期間は?」

 

「1週間……それだけ確認できるわ」

 

1週間か……些か長いと感じるが、これでもし当たりを引いたならば、それは大きな1歩となるのは間違いない。

 

「なら、1週間で確認してくるといい……ランスロット、別に構わんだろ?」

 

「ああ、構わん。これで当たりが出れば犯人は確定するんだ。反対する理由はない……それと、護衛は必要か?」

 

エスデスの意見に答えてからドクターにそう言うとドクターは少し悩むような素振りを見せた。

 

「…………そうね。お願いするわ、将軍に」

 

「……他の誰かでは駄目なのか?」

 

「駄目と言うことは無いんだけれどもね……それに将軍に少し相談事があってね」

 

相談事か……ドクターに発注したガトリングのことだろうか?

 

「わかった。1週間も時間があるのだ当然、帝都から離れた場所に行くことになるんだな?」

 

「ええ、何てたってアタシの秘密の研究所だからね」

 

 

 

 

3日後。

 

俺はドクターの秘密の研究所に訪れた。

 

私兵がいた頃は私兵に護衛を任せながら来ていたらしい。

 

だが、その私兵もナイトレイドとの戦いで全滅した。

 

周りは鬱蒼とした森であり、決して一般人が立ち入れないような場所である。

 

「……鍵が開いてる。壊されてない所を見ると単なる閉め忘れね」

 

「ドクター以外にこの場所を知ってる奴が来ていたようだな」

 

「ええ……ますますアタシの知り合いの線が濃くなってきたわ」

 

ドクターが研究所の入口の扉を開き、中に入っていく。

 

俺もその後に続いて研究所に入り、ドクターの少し後ろを歩く。

 

通路は明るく、1本道であり、等間隔で左右に扉がある。

 

その扉を一別もせずにドクターは歩き続ける。突き当たりまで行くとドクターが隠し扉のスイッチを押し、扉を開くと下へと続く階段が現れる。

 

下へと続く階段を降りていくとドクターがこの研究所についての説明を始めた。

 

「ここは……人に危険種の因子を埋め込む実験をしていた研究所の1つなの。何故、この研究が行われたのか……その理由は」

 

この後に続くドクターの言葉はとてもではないが信じられないようなものであった。

 

「安寧道の教祖が……人と危険種のハーフなのよ」

 

「……それはあり得るのか? 生物としての規格が違うのだぞ」

 

「ええ、アタシも最初は驚いたわ。こんなこと実際にあり得るのかってね。でも、調べていくうちにそれが安寧道の教祖が不思議な力を振るえる理由であることがわかったわ」

 

「なるほどな」

 

恐らくその力は危険種の持つ力の劣化したものである確率が高い。

 

それよりも人の姿であることの方が奇跡だ。

 

力の方が遺伝しているだけだから、今まで生きてこられた上に教祖となることが出来たのだろう。

 

「だから……アタシは人工的に同じような存在を造ることが出来ないか実験を始めたわ」

 

「ふむ」

 

「結果は失敗。1000を超える実験を行っても成功はしなかった。身体は人型だけれど知能は駄々下がりの上に見れたもんじゃなかったの」

 

会話をしながら進んでいくうちに厳重に閉ざされた金属製の大扉の前に着いた。

 

「……やっぱりね。怪しいと思ってたのよ」

 

その言い方からしてドクターの予想は的中したらしい。

 

「犯人は誰だ?」

 

「犯人は大臣の息子……シュラよ。だってここの鍵を持ってるのはアタシとシュラしかいないもの」

 

ドクターが大扉を1回ノックする。

 

すると扉が独りでに開く。

 

その扉の奥には…………。

 

「……なるほどな。新型危険種が人型と報告された理由がすぐにわかるな」

 

そう、扉の奥には身体の1部が異形となった男女の死体だけでなく、8割型異形となっている人の死体があった。

 

「これを俺に見せた理由はなんだ?」

 

「簡単なことよ……保険よ、保険。今回の件でアタシの立場は非常に不味いことになるわ」

 

確かにそうだろう。当然、ドクターの才に嫉妬していて、機会があればドクターを害そうとしている輩はいる。

 

「私兵もいなくなっちゃったし、アタシの身を守るものが減ってしまったわ。だから、アタシはアタシの身を守るために最善であろう行動をしたのよ」

 

「そうか……正直に言えばドクターが味方になるのは心強い」

 

だが、幾つばかりか心配なことがある。

 

それは、後にしよう。ドクターが味方になることで俺も手札を1枚増やせた。

 

懐刀(チェルシー)を自由に動かせる算段がつけられた。何時、ドクターに協力を求めるかについてまだ決まっていなかったので、今回のこれは渡りに船だ。

 

「……少し先の話になるが手伝ってもらうぞ。その代わりに俺もドクターの身の安全と立場を守るために尽力しよう」

 

「勿論よ。ギブアンドテイク。将軍ならアタシと手を組んでくれると思ってたわ」

 

「渡りに船だったからな。この帝国にドクター以上に様々な技術を持っている人物はいないと断言出来る」

 

性格に難があろうが他に変えがたい才能の持ち主。敵であれば恐ろしいが、味方であるならば大変心強い。

 

毒を持って毒を制すようなものなので、色々と注意する必要があるが。

 

 

 

 

ドクターの研究所から帝都に戻り、明日……結果を報告するための資料を作成しながら考える。

 

内容は次に打つ手についてだ。

 

この手は切り時がまだ先になることが確定している。

 

犯人である大臣の息子のシュラを捕まえるなりしてからだ。

 

大臣を失脚させるには、これだけでは不十分。実の息子だろうが切り捨てるだろう。

 

だが、切り捨てなかった場合は何らかの功績を与えて、それをもって相殺してくると予想される。

 

それでもチェルシーがいれば如何様にも嵌められる。その事を考えるとガイアファンデーションは味方であれば頼もしく、敵であれば恐ろしい帝具だ。

 

「……………………」

 

今思ってみれば、味方は敵にしたら恐ろしい能力、技術を持っているのが多いな。

 

ドクター、クロメ、チェルシーと……。

 

内部の不信を煽り、理不尽と言うしかないような技術に骸を操る八房。

 

敵の指示系統をズタズタにした上にドクター作の爆弾、それを骸に持たせて特攻させる。

 

地獄絵図になりそうだ。我ながら惨いことを考える。例え死体といえども仲間を撃つことを選べる人がどれだけいるか。

 

それだけに敵の士気を低下させ、怯ませる効果は高い。逆に怒り、士気を上げる場合もあるだろうがな。

 

ガイアファンデーションによる指揮系統の破壊工作と八房による骸操作にドクターお手製の爆弾がなければ打てない手だが、準備する時間はあるからやろうと思えば出来るのは間違いない。

 

「…………確実に内外共に非難されるな」

 

だが、有効な手であるのなら使うのに抵抗はないのも事実。

 

使える手なのに使わないのは怠慢だろう。それで、負けたら話にならない。

 

勝たなければ己の望むモノは得られない。例えどのような手段を使おうとも勝たねばならぬのだ。

 

陛下には明るい道を突き進んでもらい、暗いものは俺が処理するればいい。

 

ただ、陛下の望む国の為に。

 

 

 

 

「……ん~、何か暇ねぇ」

 

フェイクマウンテンにあるナイトレイドのアジト。その屋根の上に座っているチェルシーは棒キャンディーを口に加えたまま空を見上げる。

 

ナイトレイドの面々が自身の持つ力や技術を磨いているのにも関わらず、チェルシーは退屈そうにしていた。

 

風が吹き、髪の毛がばさつく。

 

それを手で押さえつつ、溜め息を吐いた。

 

「本当に暇ね。マインでも弄って遊ぼうかしら……でも、今のタイミングでやるのもねぇ」

 

邪魔をするような行動をとれば、自由に動きたいときに動けなくなる恐れがある。

 

そうなってしまえば、ランスロットの期待を裏切るような形になってしまう。

 

今まで成してきたことを考えれば罰せられたり、見放されるなんてことはあり得ないと断言できる。

 

ただ、ふざけすぎたな、と小言をもらうくらいだろう。

 

でも……そんなことになると、どんな形であれ悪く見られる。

 

それは嫌だと思う。要するに格好いいと言うか出来る女として見ていてもらいたいのだ。

 

駄目な所よりも良いところを見ていて欲しいのは誰だって同じだろう。

 

チェルシーにとってそう思わせる相手がランスロットだっただけのことなのだ。

 

長い付き合いの中で芽生えた想いは決して漏らさずに自らの内へと閉じ込めてきた。

 

「はぁ……」

 

溜め息を吐いた。

 

―――会いたいな。

 

溜め息を吐いた後に小さくこぼれ落ちたチェルシーの言葉は風に揺れる木々のざわめきによってかき消された。

 

 

 

 

帝国各地に出現した、新型の危険種たちは日を追う毎にその活動範囲と生息圏を拡大させていった。

 

幾つもの町や村が新型の危険種たちによって滅ぼされていく。

 

ついに……帝都周辺にも現れるようになった。

 

この事態にブドー大将軍が動き出す。

 

全軍にこの新型の危険種討伐の指令を正式に出したのだ。

 

当然、反発する者はなく帝国の各地に出現した新型の危険種を討伐すべく各地に軍が派遣された。

 

これはシュラという大臣の息子が今回の件の黒幕であることをイェーガーズのメンバー全員に伝えてから1ヶ月後に起こって出来事である。

 

その事を脳裏に思い返しながら、地方から帝都に続く道の1つをイェーガーズ全員で進む。

 

他の道は帝都警備隊、近衛兵が新型危険種を討伐すべく動いている。だが、数が多く中々殲滅しきれないのが難点だ。

 

流石に1000超える数の実験をしていただけはある。

 

エスデスから大臣にシュラの情報が流れている可能性は大いに高いが、それも俺の計画には含まれている。計画は単にきめ細かく作るのではなく、如何様にも柔軟に対応出来るようにしながら求める結果を出せるように作るべきだ。

 

少なくとも俺はそう考えている。

 

「……っ!? いけない、助けないと!」

 

突如としてウェイブと一緒に前方を進んでいたボルスが駆け出した。

 

走り出したボルスに一瞬戸惑うもウェイブはすぐさまボルスの後を追いかけだす。

 

「…………客か」

 

「ああ……あちらはボルスとウェイブに任せておけばいい」

 

こちらはこちらで新型危険種に囲まれ始めていた。

 

「囲まれましたね」

 

悲観した様子もなく、段々と状況を述べるラン。

 

イェーガーズの相手はこの新型危険種よりも強いはずのナイトレイド。

 

この程度の相手に悲観していられない。

 

「……だが、問題ないな」

 

奴等は自分たちが狩る側だと思っているだろうが、それが間違いであることを教えてやるとしよう。

 

 

 

 

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