それが僕たちの幽霊に対する考えだった。
確かめるために、廃墟に噂を作り心霊スポットにすることにした。
その際来た人の感想をもらうノートを置いておき、半年後回収に向かう。
そこに書かれていた感想に僕たちは戸惑うことになる。
ここは本当にただの廃墟だったのか?
幽霊とは人による妄想であり、心霊現象は影や音、風などを都合のいいように解釈した人による想像である。
それが僕たちの幽霊に対する考えだ。
そんな考えに至った理由は友人と怖い話を聞いていた時に「幽霊ってみたことある?」と友人から聞かれたことがきっかけだ。
お互いに怖い話は好きであったが幽霊は見たことなく心霊現象と言われるものにあったこともなかった。
「怖い話が本当かもって思ったことない?」
「ないな、怖い話なんて大半は作り話だろ」
友人は怖い話が好きというよりも人を怖がらせようと話している様子が好きという少し変わった男である。
だからこそ内容なんて嘘だと思っているから幽霊なんて信じていなかった。
僕もどちらかというと信じていない方だ、怖い話も不思議なことや話の流れが好きってだけで幽霊自体は信じていない。
見ていないものを信じろと言われる方が無理だし、廃墟や墓場よくある禁忌と言われる場所じゃないと起きないなんて都合がよすぎると思うからだ。
ただ人がいない暗い場所で風により起きた音や物の動きを勘違いしている方が納得いくのだ。
「テレビやYouTubeで見る心霊現象はどう思っているの?」
「ただの演出だろ、再生数取るのは大変だね」
「その場所での自殺やら殺人なんてただのうわさかもしれないし、本当にあったとしても、なら家で死んだ人は何で心霊現象起こさないかわからんわ」
そのような言葉を吐き捨てるように少し早口で言い切るので、本当に信じていないのだろう。
「でも心霊スポットって言われる場所は書き込みで心霊現象にあったって書かれるのはどう思う?」
検索してスマホを友人に見せるが「ただの妄想だろ、自殺があったなんて記事にもなってないものをどうやって知ったんだって思うしな」
友人の考えを聞いた時ふと頭に思いついたことがあった。
「君は噂がある廃墟と噂のない廃墟どっちか入れって言われたらどっちに入る?」
「ないほうだろ」
「どうして?どっちも君には変わらないだろ?」
「いないと思っていてもある廃墟は怖いだろ」
友人が不貞腐れながら答えるのを見てやってみようと思った。
「心霊スポット一緒に作らない?」
それを聞いた友人の間抜けな顔を僕は忘れることがないだろう。
噂のある物件が心霊スポットになるなら、噂を作れば何もない場所は心霊スポットになり、心霊現象が起きるのではないか?
それを検証するために僕たちは現在使われていない温泉街にある廃ホテルを心霊スポットに選んだ。
町の外れにあるからか、近くに街灯はなく人もあまり来ないため、噂を作るにはちょうどいい物件だった。
ホテルも長く放置されているからか入り口の付近には冷蔵庫や電子レンジなどの粗大ごみが廃棄され、外壁は蔦で覆われており色も変色している。
「放置されてるホテルって雰囲気出るな、このホテルってなんか問題でも起きたの?」
「別に問題があって廃業したわけではないらしいよ、バブル崩壊でそのまま倒産らしい」
そんなことをしゃべりながら懐中電灯を片手にホテルの中で噂を作る部屋を探し始めた。
廃ホテルになってから年月がたっていることもあってか内部は葉や虫、埃などで汚れていたが。
客室部屋や食堂はものがそのまま置いてあり、まるで急に人がいなくなったかのようだった。
「ベットやいすはそのまま、食堂も食器なんかはおきっぱだったな」
何もないより怖いな、そんなことを友達はつぶやいていた。
「倒産して夜逃げしたんだろうね、捨てるお金なんかないだろうし」
部屋を探している最中、心霊現象と言われるものは起きずただただ暗いホテルを歩いてるだけだった。
まあこんなもんだろうな。
友人と歩いているからか怖いと感じることさえなかった。
驚かせようと友人が部屋に入った時、扉を体で押さえて閉じ込めたら「ふざけんなてめえ!」と結構まじな声で怒られたので、友人は怖がってたのかもしれない。
1階から3階まで見て回ったが結局怖いことは1回も起きなかった。
置物は同じ、しいていうなら明かりが懐中電灯しかないため、上の階に進むことが億劫になるそれくらいだった。
だから僕たちは噂を作る部屋を最上階の3階305号室にした。
この部屋にした理由は特になく、ただ友人となんとなくで決めただけである。
部屋を決めて僕たちは噂の内容を話し合う。
いろんな意見があったがお互いに一致していた意見を採用し、決めた内容はこの部屋で首つり自殺をした女性がいた。
歳は20代後半で白いワンピースを着ており髪型はロングのストレート身長を160㎝という容姿にした。
少しお互いの趣味が入ったがそれは仕方のないことだろう。
心霊現象としてここの扉が開いたり閉じたりする。
部屋からギシギシきしむ音がする。
階段を上り下りする音や帰るとき3階からこちらを見ている人影が見える。
「こんな感じでいいんじゃない?」
「十分だね ノートには少しだけ書くとして部屋で手を合わせようか」
「拝むの?」
「成仏してくださいとね」
僕たちは笑いながら部屋の中で手を合わせ目を閉じる。
それが終わってからホテルの一階に感想を書いたノートを置いて帰ることにした。
ノートには心霊現象感想と書き、どこからか扉の音やギシギシきしむ音がした 階段から誰かが見ていたなど書いておいた。
「これからどうする?」
「心霊掲示板でこの場所にノートが置いてあったことを書き込みして半年後にノートを回収かな」
「落書きされるか適当なこと書かれてそうだな、誰も来なかったりして」
「まあ仕方ないね、今まで噂がなかったし心霊現象があったって書いてもらえたら成功かな」
「俺たちの考えた噂はみんなには見えたりするのかな」
「そもそもしてないものをしたって書いたんだ起きるわけないけど、人の思い込みってどこまで強いんだろうね」
僕はその日家に帰った後、初めてきた場所にノートが置いてあったと題して書き込みを行った。
色々反応があるのを確認した後、場所のヒントを出してアカウントを消した。
それから半年後友人と再びノートを回収しに向かう、途中誰かと会うと面倒なので夜は避けて昼間回収することに決めた。
「さてなにが書かれているかな」
友人は今日のことが楽しみだったのだろうか、スキップをしてホテルに向かっている。
「燃やされたりなくなってたら残念だな、意味なくなっちゃうよ」
ノートは僕たちが置いた場所にそのまま置いてあったためすぐに見つけることができた。
半年間多くの手に触れたのかノートに汚れや折れ目がついていることが傍から見てわかるほどだった。
「意外とみんな書いてくれるんだね」
僕たちは嬉しさと少しの怖さを感じながらノートを開いた。
初めの方はバカにするような言葉や落書きが書いてあった。
「まあそんなもんだろうな」
友人と笑いながら落書きを読み進める。
だが紙を何枚か捲ったところから、様子が少し変わり始めた。
ドアの開く音がした。
上の階から歩く音がする。
ギシギシと音の聞こえる部屋があるなど、心霊現象が書かれるようになっていた。
ほんとにあったのかわからないが、さっきまでとは内容が全然違うことに少し恐怖が出てくる。
ただ怖がらせたいだけだろう、そう思いさらにめくる。
上から覗いてる人がいた。
階段の上に人がいた。
3階から音がするなど、少しずつ僕たちが、書いてないことが書かれるようになった。
「すごいな やっぱり心霊スポットって謳うと勝手に怖がるんだな」
「そうだね こんな何もないところなのに」
僕もその意見に同意するが、どの感想も上の階、僕たちが噂を作った3階を差していることに、何とも言えない感覚に陥っていた。
たまたま誰かが書いたからみんな3階を怖がっているだけ、起きるはずがないそんなはずはない自分に言い聞かせ紙をめくる。
そんな思いは誰が書いたかもわからない感想に壊された。
3階に白い服の女性がいた。
全身が氷のように冷たくなっていくのがわかる、ノートを持つ手は震えてしまっている。
階層、服装、性別。
僕たちが想像していたものと同じことが書かれていた。
「そういうこともあるんじゃね? 3階なのは他の人も書いてたし性別なんて2分の1服装だって俺らとたまたま想像が一緒だっただけじゃねえか?」
友人も怖かったのだろうか必死に納得しようとしてるようだった。
「夜……カメラ回して3階に行こう」
ここは何も起きなかった場所、噂を立てただけそれなのに心霊現象が起きている。
本当に起きるのか嘘を書かれてるだけじゃないのか、恐怖よりも確かめたい好奇心のほうが強くなってしまった。
「そうだな……やろうか」
夜になりカメラを持って僕たちはホテルに入る。
近くに車がないことから、今は誰もホテルにいないのだろう。
「直で向かうのか?」
「そうだね 長居して他の人が来たら面倒だからね」
友人を先頭にカメラを回し3階に向かう、ノートを見たからか以前来た時よりも空気が重く雰囲気も暗く感じる。
「何も音しないな」
階段をのぼっている最中友人がつぶやく。
「ノートに書いてあった心霊現象か」
「実際どう思ってるん?」
「怖いね 何もなかったところなのにこんなこと書かれちゃって」
「誰のせいだよ」
友人は少し笑っていた。
「また扉閉めていい?」
少しでも雰囲気を軽くしようとふざけてみたら。
「階段から落とすぞ」
「冗談だよ」
すこしやってみたいと考えていたが、やる覚悟を持った男の目をしていたのでやるのはやめておこう。
1階から3階まで歩いているが、ノートに書かれていた心霊現象は何も起きなかった。
しかし頭の中で想像ができてしまっている。
女が歩く姿……上から見ている姿……首を吊る姿……こちらを見ている姿が。
そこまで考えていなかった姿なのに、まるで見たことがあるように頭から離れることはなかった。
そうこうしているうちに305号室の前についた。
互いに顔を見合わせ覚悟を決めてその扉を開く。
中の様子は特に変わりなかった。
「よかった何かいるかと思った」
「荒らされてるわけでもなく特に変わりはなさそうだね」
カメラで部屋を一通り撮ったが何も問題は起きなかった。
「もういいだろ帰ろうぜ」
「そうだな帰ろう」
何も起きなかったことに安堵を覚えながら、僕たちはホテルを背に車で家に向かう。
家に帰った後、念のためカメラを確認してみることにした。
「何も映ってないなやっぱりそんなもんか」
ホテルから出るまでの間、音や人影はなくノートに書かれていたことは起きていなかった。
「ごめん 意味なかったね」
「いいよ 怖かったけどおもしろかったし」
何も起きていないのを確認して動画をとめようとしたとき少しおかしなところに気が付いた。
気のせいだと思ったでもおかしい音がある、廊下や階段、部屋を歩いている最中僕の後ろからなにか聞こえた気がした。
音を上げてもう一度再生を押す。
イヤホンをつけてもう一度見直す。
音を上げると疑惑は確信に変わった、カメラはヒタヒタと歩く誰かの足音を録音していた。
それは後方にいた僕の後ろから聞こえてくる。
僕たちの足音の反射ではない誰かの足音、僕たちの後ろに誰かいた。
そのことに気づいた僕はその場でうずくまってしまった。
あのホテルに入ってからずっと僕たちの後ろをついてきていた。
何かにずっと見られていたのだ。
「なにやってんの?」
そんな様子の僕に友人は戸惑っているようだった。
「後ろから音がする」
「何も起きてなかったじゃん?」
「僕たちの足音以外に音が聞こえる」
聞いてみてと、僕はイヤホンを友人に渡しもう一度動画を見せる。
友人も気づいたのだろう、だんだん顔が青くなっていく。
僕たちは動画を消しノートを燃やした後、お祓いに行った。
幸いにも後日、特に何かが起きたわけではなかった。
あの日以降も友人とは遊んでいるが、あのホテルには近づくことも話題に出すこともなかった。
お互いに忘れようとしているのかもしれない、意識をすれば後ろから足音が聞こえてきそうなのだ。
あの日後ろにいたなにかは僕たちが作ったのか、最初からいて無意識に感じ取ったものを想像したのかわからないが二度とやることはないだろう。