捨て犬と俺と見ていた少女と   作:壁打ち

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4話

 

「ただいまー」

 

 

 子犬が入ったケージを持ち家に入る。すると2階から騒がしい音と共に妹が駆け降りて来た。

 

 

「お姉ちゃんおかえり! 遅いよ! ワンちゃんは!?」

 

「茉奈《まな》落ち着きなー。 この子をお父さん達の所に連れて行ってくれる? 私疲れたから一旦部屋に戻るね。 ご飯になったら呼んで」

 

「んん? 解った!」

 

 

 子犬を受け取った茉奈がケージの中を覗きニヤニヤとした顔を浮かべながらリビングへ向かうのを見送った私は、階段を上り自室に入るとドアを閉める。 そのままドアにもたれかかると力が抜けていくのを感じて、その場へと腰をつけた。

 

 

「………………………………っああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

 

 

 安堵と羞恥心とうわついた気持ちが一体になった呻き声を上げながら折りたたんだ膝に顔を埋める。

 

 

最近の私はどうしてしまったんだ。

 

  

 

 クラスメイトで、気になっていた進藤くん。泣きぼくろがあって垂れ目がちで、見かけはめちゃくちゃイケメンってわけじゃないけれど、カッコいい寄りって言えると思う。普段の態度は冷たく見えて、クラス内では天宮くんといる時だけは楽しそうで。

 

 

 でも気になっていたのは、大体1年前位から、帰り道で彼が時たま一人で座り込んでる姿を見ていたからで。

 

 

 その横顔が、どこかで見たような、寂しさか何かわからない様なものを感じて。

 

 

 高校で初めて同じクラスになったのが解った時は何か声をかけようか、と思ったけど彼の他人を寄せ付けない感じが怖くて、何も出来なかった。

 

 

 

 だからこの前、彼が座り込んでいる場所で何か小さな動物が近づいてるのに気づいて、どうなるにせよなにかきっかけになるかなと。心を決めて近づいてみたんだ。

 

 

 

 そしたら。 なにあれ。

 

 すごい優しい声で捨て犬に話しかけてるし。

 

 恥ずかしがって耳まで真っ赤になるし。

 

 見つけた子犬達を見捨てれず何とかしようとするし。

 

 今まで感じていた怖さは何だったの、って。

 

 

 

 そこから私はずっとおかしい。

 

 

 子犬達を見つけたのは自分でもあるからって強引について行ったり。

 

 

 あなたの話が聞けると嬉しくなったり。

 

 

 家族と話す時の雰囲気がまた違って気になって。

 

 

 連絡先も知りたいと思ってたら向こうから言い出してきてびっくりしちゃって。

 

 

 その日の夜引き取れる事が家族会議で決まって、最初のメッセージを送るのがどうしてか緊張して送れなくて。ドキドキしてしまって。

 

 

 …どうしてなんてそんなわざとらしい事を、と考えながら、それが少し嬉しくて、温かい気持ちを感じて。

 

 

 でもまだその時は自分の中で認められなくて。

 

 

 だって今までちゃんと誰かを好きになんてなった事なかったし。

 

 

 友達の恋バナを聞いて大変だねーなんて気楽に言ってるだけだったのに。

 

 

 

子犬のひきとりだけなのに今持ってる服からなに着るかずっと迷ったり。

 

 

 気合い入れすぎるのもおかしく思われるかなって悩んだり。

 

 

 迷いに迷った結果髪だけでもやりたいって普段全然使わないヘアアイロンを引っ張り出したり。

 

 

 そんな所をちゃんと気づいてくれて可愛いっていわれた時は本当にドキッとして嬉しくて。

 

 

 ………彼女がもういる可能性を考えてなくてそれが頭をよぎった瞬間冷や水をかけられたかのような感じがして。 舞い上がってた自分が急に惨めに思えて。

 

 

 彼女じゃないと解ると心の底から安心して。

 

 

 一挙手一投足に振り回されてて。

 

 

 でも。

 

 

 

 それ以上に。

 

 

 彼のお母さんが出てきた時様子がおかしくなって。

 

 

 追い詰められたあの横顔を見て。

 

 

 自分の事を辛そうな顔で話すのを見て。

 

 

 話してくれたことに喜びを感じて。

 

 

 その目から流れる涙を見た時。

 

 

 …気づいたのはその時だっただけで。 きっと本当はもう最初から。

 

 

 彼のそばにいたいと、心の底から思った。

 

 

 ……その涙さえも、私の前だけで流してほしいなんて感情も心の底にあって。

 

 

 どうしてなんてごまかす余地は微塵もなく。

 

 

 この胸の高鳴りは。

 

 

 想うだけで涙が出そうにるのは。

 

 

 後ろ暗いような独占欲は。

 

 

 

「私、進藤くんが、好きだぁ…」

 

 

 

 言葉と同時に涙が一筋流れるのを感じた。

 

 

 ああ。 なんてことだろう。

 

 

 恋とは、本当の本当に大変な事だったのだ。

 

 

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