捨て犬と俺と見ていた少女と   作:壁打ち

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それぞれの由縁

 一生分の恥をかいたと思える出来事が落ち着き、3人には一旦リビングにいてもらう。

 

 

 真尋はまだ恥ずかしいらしく、リリを抱えてその体に顔を埋めて隠していた。 ……どっちも羨ましい。

 

 

 ふとキッチンから舞伽と聡志が座るソファの方を見て、予めしようとしていた話を切り出す。

 

 

「舞伽、アレもうやらなくていいか?」

 

「褒めるやつ? 良いよ、もーいらない」

 

 

 あまりにもあっけらかんと言うので、安心はするものの疑問は拭えない。 そういったのを見抜かれたのか、はたまた顔に出てたのか。

 

 

「いや、彼女持ちに彼女の前でそんな事させられないでしょ。 普通に刺されるって」

 

「いやお前、朝陽……」

 

「ユミちゃんは私を刺さないし、逆に朝陽だけハブるのも可哀想でしょ?」

 

 

 果たしてそうか? と思いつつも1つ懸念要素が無くなりホッとしたのも事実だ。

 

 

 俺は調理の続きに戻り、豚バラを切って鍋に入れる。 すると2度めのインターホン……1度目は全く記憶に無いが……が鳴る。

 

 

「多分朝陽達だ。 聡志悪いけど代わりに」

 

「アタシが出る!」

 

 

 言うなり飛び出すように舞伽が玄関に駆けていく。勝手知ったるかも知れないが今は悠もいるんだから少し落ちいてほしい。

 

 

 ふと真尋を見ると、リリは解放され顔を上げ舞伽が飛び出していった方を見ていた。 その目には、戸惑いと不安の色が浮かんでいるような。

 

 

 顔の向きはそのまま聡志の方を見ると、少し苦しげな表情をしながら携帯をいじっているのが見える。

 

 

 そんな姿にああ、()()()()()()()()()()()()、などと思考を走らせていたら、聡志が姿勢はそのまま諌めるような視線をこちらに向けてきて、バツが悪くなる。

 

 

 後で文句言われそうだな、と思ったところで舞伽が朝陽達2人を連れて戻ってきた。

 

 

「おじゃましまーす。 さんむかったー! あ、北上さんちわーっす」

 

「こんにちは、緒方くん、藍………さ………………」

 

 

 真尋がそこまで言って固まる。

 

 

 やっぱりか、と思い朝陽達の方を見ると、朝陽の横に目元までかかる黒髪に眼鏡をかけた少女が立っていた。

 

 

 真尋の頭の中には朝陽の横にいる少女は茶色のショートヘア、という印象があるはずだ。

 

 

 しばらく考え続けた後、絞り出すように言葉を紡いだ。

 

「…………緒方くん、浮気は良くないと思うの」

 

 

 朝陽に浮気者の烙印が押された事に耐えきれず俺と聡志が同時に吹き出す。

 

 

 舞伽は興味なさそうにリリを撫で回して遊んでいた。

 

 

「朝陽くん、私と言うものがいながら浮気を……?」

 

 

 黒髪の少女が瞳から光を消し、圧を出しながら朝陽へと迫る。

 

 

「解ってて遊ぶなって、()()

 

「ふふふ、ごめんなさい?」

 

「………へっ?」

 

 

 目を丸くする真尋。

 

 

「これがさっき言ってた面白いものだよ、真尋」

 

「え、ええっと?」

 

「ごめんね、北上ちゃん」

 

 

 そう言いながら()()()()と眼鏡を外すと、真尋の中のイメージ通りの朝陽と同じ茶色のショートヘアが顔を出す。

 

 

「外では基本的にキャラ作って過ごしてるの。 混乱させてごめんね?」

 

「本当に藍崎さんなんだ……わざわざ黒髪のウィッグ用意してるの?」

 

「短髪はスッキリはするけど落ち着かないんだ。 昔からこれくらいの長さだったから何もない時はこっちの方が落ち着くの」

 

「全員揃ったし、ちょっと良いか」

 

 

 真尋が立て続けに質問をしようとしたところを俺は割って言葉を発する。

 

 

「改めて、俺の新しい家族を紹介するから」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「がわ"い"ぃ"〜〜〜!!!! ユミちゃんすごいよ、未来の妹とは思えない可愛さだよ!!」

 

「おい、どういう意味だっつの」

 

「マイちゃん……」

 

 早紀さんが抱きかかえている悠にむかって舞伽がはしゃぎ、その横では夕美が苦笑いを浮かべている。

 

 

 わざわざ早紀さんに出て来て貰ったんだからあまり疲れさせないようにと思った矢先にこれなので申し訳ないが、早紀さん本人は笑っているのでとりあえずはいいか。

 

 

「ほら、はしゃぐのもいいけど早紀さんに自己紹介してくれ」

 

 

 舞伽を一旦剥がしながら声をかける。 それぞれ目配せをし、先ずは聡志が早紀さんの前に出た。

 

 

「あー………雨宮 聡志です。 こんな顔ですが怖がらないで貰えると助かります」

 

「目つきは悪いけど俺たちの中心でバッカみたいに優しいやつなんで!! 俺は緒方 朝陽です! 未来のことよろしくお願いします!!」

 

 

 勢いよく聡志と肩を組みながら自己紹介をする朝陽。

 

 

「こいつらが話したことあるケンカがきっかけで友達になった2人」

 

「未来のケンカ仲間です!!」

 

「それはなんかニュアンス違わないか……?」

 

 

 なんていう2人を一旦置いて、俺は夕美に目を向ける。 それに気づいた夕美がこちらに来て話し始める。

 

 

「藍崎 夕美です。 元々朝陽くんと家が隣で、朝陽くんと未来くんが仲良くなってから一緒に過ごすようになりました」

 

「これでも外面取り繕ってるんでまあそれは追々……」

 

「未来くん、余計な事言わないで?」

 

「っは、はい」

 

 

 静かな圧を感じる。 怖え。

 

 

「ハイ! 阿久根 舞伽でっす! 梨ノ木市に住んでます!」

 

「梨ノ木? ってここから車でも1時間以上かかるんじゃない?」

 

 

 早紀さんがそんな風に疑問を呈す。

 

 

「今日はパパに車で送ってもらいました。 んでパパ達はせっかくだしと久しぶりの男子会だそうで」

 

 

 そう、親父も再婚してからなかなか時間がとれず、報告はしてたもの友人たちとちゃんと話が出来ていなかったらしい。

 

 

 今日は舞伽がこっちにくるのに合わせて父親達で久しぶりの集まり、及び親父の事情聴取だとか。

 

 

「そんな遠くなのに、どうやってみんなと知り合ったの?」

 

「聡志が連れてきたんだ。 ある日こいつも一緒に遊ぶって言って」

 

「そうです! 連れてこられました!!」

 

「へぇ〜。 聡志君と舞伽ちゃんはどうやって?」

 

「私が地元の公園にいる時に声をかけられてそこから、だよね?」

 

「………そうだよ」

 

 

 舞伽がニヤリとしながら聡志を見る。 聡志は少し目線を外しながらそれに答えていた。

 

 

「え、でも小学生とかの話なんだよね? どうして聡志くんが梨ノ木に?」

 

「………言ってもいい?」

 

「……………………まあ、いい」

 

 

 そんなやり取りをする2人。 すると早紀さんは途端申し訳無さそうになる。

 

 

「なにか言いづらいことがあるんだったら無理に言わなくていいよ、ごめんね」

 

「いえ、大丈夫です!」

 

 

 舞伽がキッパリと言い切る。

 

 

「ただサトシが恥ずかしいだけなので。 迷子だったんです!!」

 

「迷子?」

 

「……あんま覚えてないんですけど、親が元々住んでたのが梨ノ木で、それを聞いた俺はどんな場所か気になって、お小遣いと地図持って電車バス乗り継いで行った、らしいです」

 

「でも小さい頃だし、印はあっても地図は読めないしスマホもないし。 お小遣いも行き分しかなかったみたいでさまよった結果、たまたま公園にいたアタシにあったんです。 色々話したと思うけどその時の会話で覚えてるの電話貸して、だけだよ」

 

「………ガキの頃だからしょうがないけど思い付きで行動しすぎだろ俺………………」

 

「それでサトシのパパママが迎えに来て、そこでお互い家族の連絡先交換して、そこから仲良くなった感じですね! こっちには定期的に遊びに来てて、そのたびにみんなでいました!!」

 

 

 迷子の迷子の聡志くんの話が終わり一通りの紹介が終わったな、と思ったら舞伽が思ってもいない方向に舵を切る。

 

 

「じゃあ次は北上ちゃんお願いします!」

 

「え、ええっ!?」

 

 

 少し離れた位置でこちらを見ていた真尋が急にターゲットになり体が跳ねる。

 

 

「おい舞伽」

 

「えーだってアタシは初対面だしみんなもちゃんとは知らないんじゃない?」

 

「…………わかった」

 

「真尋、嫌なら」

 

「ううん、嫌じゃないから。 大丈夫」

 

 

 そう言って立ち上がり一歩前に出る。

 

「北上 真尋です。 地元はこっちで、未来たちとは一応中学も同じだったけどちゃんと話すようになったのはリリちゃん達を拾った6月からで、それをきっかけに仲良くなりました」

 

 

 俺の隣で静かに話はじめる真尋。

 

 

「それから未来とは一緒に帰ったりとかたまに学校で話したりとかしてですね、それで距離が縮まっていったといいますか」

 

 

 …………うん?

 

 

「一緒にお出かけとかそれこそデートしたりして、それでですね、えと、1ヶ月前くらいにリリちゃん達を拾った河川敷で告は」

 

「ストップ、真尋ストップ!!」

 

 

 俺は真尋の口を手で慌てて塞いで顔を見ると、赤く染まった中の瞳は混乱が見受けられた。

 

 

「今何を語ろうとしてたか自分で解ってる…?」

 

 

 すると、真尋は自分たちの馴れ初めを1から語ろうとしていたことに気づいたらしくまた顔を埋めて小さくなってしまった。 そんな真尋の横にリリが擦り寄っている。

 

 

 視線を感じそちらを見ると俺の幼馴染と家族がニヤニヤだの恍惚の表情だのを浮かべながらこちらを見ていた。

 

 

「あぁ〜〜若さを感じる………すごい、羨ましいなぁ〜〜〜〜」

 

「早紀さんもまだまだ若いじゃないですか! いやしかし想像以上だなこれ。 教室でもいつもこんなん?」

 

「流石に直接態度に出すことはあんまないけどこれは時間の問題かな……。 この2人と同じ空間にいる俺の心の内を解ってくれ」

 

「来たときもだけどマジで良いモノ見せてもらってるわ。 いやぁ〜初々しくてたまらんね」

 

「…………ナマモノは守備範囲外だけど、この2人はそのまま推せる…………推しカプ………!」

 

 

 漏れてる漏れてる。 どうせすぐ我慢できなくなるんだから俺に口止めする意味無かっただろ。

 

 

 

 

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