ようこそ悪魔がいる教室へ 作:バチこりやりやしょうやぁ
龍園からの提案を断る事が出来るはずもなく、受け入れた猫田は翌朝、約束通りHR後に龍園の席へ向かう。
渡海は側から見れば寝ているので猫田の行動には微塵も興味なさげだ。
密かに猫田へ好意を抱いている男子生徒の一人が、いつものように渡海の席へ向かうと思われた猫田の意外な行動を見て周りの生徒へとその事を共有する。いつの間にか猫田はクラス内の全生徒から注目を集めていた。
「調子はどうだ?麻里」
「…………」
「何とか言いなさいよ。話しかけてやってるんだからさ」
「……早く端末を出してください」
「チッ、面白くないやつ」
舌打ちをしつつもさっさとポイントを受け取りたいからかすぐに端末を差し出す真鍋。素直にポイントを譲渡しようとする猫田に笑みが止まらない様子の龍園。猫田が真顔なせいで少し分かりづらいが、これら一連の行動を見た生徒は皆これがいじめである事を理解した。
ポイントを譲渡し終えた猫田は表情を一切変えずに自身の席に座る。これが毎朝続くとなると、真鍋も龍園も他の生徒に比べれば十分懐は潤うが、真鍋は何だか納得のいかない顔をしていた。
「ねぇ、なんか思ってたのと違うんだけど」
「お前は一体何を想像してたんだ?」
「そりゃぁ、いじめって言ったらもっとこう、嫌いな奴が悲しんでる顔とか、悔しそうにしてる顔とか、泣き顔とか、そういうのを拝める行為じゃないの?私てっきりポイント譲渡の時にそういう顔が見れると思ってたんだけど」
「ポイントが入って嬉しくねぇならそのポイントは俺が貰うぜ?」
「はぁ?あげないし!私が言いたいのはそういう事じゃなくて」
「まぁ落ち着け。お前の言い分はよく理解してる。お前ほどの低脳じゃ現状しか見えてないからそう思ってしまうのも仕方ないよな」
「バカにしてる!?」
「バカにしてる。バカなお前にも教えてやるよ。これは単なるポイント譲渡じゃねぇ」
龍園の言葉に目を丸くする真鍋。真鍋の脳で考えればポイント譲渡なんて単なるシステム動作でしかなく、それで得られる快楽がなければいじめでも何でもないとしか思えない。しかし龍園がポイント譲渡を猫田へ提案したのには、そのポイント譲渡という行為から導かれる背景を見据えていた事が影響している。
「直に分かる。お前はただ、性悪クソ女みてぇな表情でポイントを受け取っているだけでいい」
「…………何だか納得いかないんだけど、まぁいいわ」
「ククッ、お前がどう出るか楽しみだぜ渡海……」
伏せた視線の奥で、瞳がわずかに細まる。光は冷たく、計算された余裕を帯びている。相手の反応も、次に起こる混乱も、すでに頭の中で一度は再生し終えた──そんな目で龍園は寝ている渡海を見て、不適な笑みを浮かべた。
◇◾︎●◇
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入学式から3週間が経過した。1週間が過ぎた頃から生徒達にも余裕が生じてきたのか、平然とした顔で遅刻を繰り返す生徒が増えていた。私語も日に日に増えていき、もはや先生の話に一切耳を傾けていない生徒もチラホラ見受けられる。
しかし一部の生徒はしっかり授業を受けており、態度が悪い生徒はいるが授業中にスマホをいじったりゲームをしたりする生徒はほとんどいなかった。
「はい!くるくるチンチクパーリナイ!」
「何だそれ!ギャハハハッ!」
「ねぇねぇメイク変えた?」
「え!そう分かる〜?」
「モロ分かりんご。超似合ってるじゃん!」
相変わらず意味不明な事を言って笑いまくっている男子生徒と割と女子力高めな会話を大声でする女子生徒で溢れている空間で、さすがの渡海も寝れずにいた。
珍しく休み時間中でも起きている渡海にいち早く気づいた猫田は好機と言わんばかりに渡海の席へ向かい話しかける。
「渡海くんおはようございます」
「……うるさいな」
「あ、すみません」
「いやお前じゃない。周りがだ。こっちは寝不足だっていうのに勘弁してくれないかな」
「寝不足……もしかして、この学校に来てからも続けているんですか?」
「当たり前だろ」
渡海の父、渡海一郎は心臓外科医で周りからの信頼も厚く評判の良い医者だった。ある日突然発覚した医療過誤の濡れ衣を着せられ、勤務していた病院を追われてしまい、その後亡くなった。渡海はそんな父親の無念を晴らすため、心臓外科医を目指している。
高度育成高等学校に入学したのは就職率100%という数字を目にした事がきっかけだ。もちろん高育が医療専門の教育プログラムを用意している事はない。そのため渡海は毎晩遅くまで心臓外科について勉強に励んでおり、さらに心臓を修理するために必要不可欠な技術である縫合の練習をしているのだ。
「毎晩遅くまで……流石ですね」
「お前も看護師やるなら勉強しといた方がいいぞ」
「もちろん、計画的に進めていますよ」
「あっそ」
そんな話をしていると騒がしい教室の扉がガラガラと音を立てて開かれ、坂上先生がやってきた。いつもは少しラフ目な雰囲気を纏っている真面目な先生だが、今日はそのラフな印象が全く感じられない。真剣な表情をしている。
「どしたんすか坂上センセー」
「失恋しましたー?」
「皆さんお静かに。今日は少し真面目に受けてもらいます」
生徒達もいつも通り接するがそれすらも坂上先生は一蹴し、手に持っていた用紙を配り始めた。渡海は渡ってきた用紙を見るとやや面倒そうな表情を浮かべる。
「月末なので今日は皆さんに小テストを行ってもらいます。今後の授業方針などの参考にするテストなので成績表には反映されません。ですが、カンニングはしないよう、真面目に受けてください」
一つの科目に絞られているわけではなく、各科目4問ずつ計20問で各5点配点の100点満点のテスト。
坂上先生の合図とともにテストが始まった。
序盤から中盤にかけて各々ペンを走らせるが、終盤に差し掛かるとほとんどの生徒のペンが止まってしまった。そんな中ペンを休憩させず完走させたのは渡海だ。彼はまるで事前に問題を知っているかのようなスピードで解き進め、終わった瞬間に睡眠モードに入った。
そして、小テストを含んだ今日という1日が終わり、しばらく日時が経過し、入学式から1ヶ月が経とうとしていた。
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5月1日。高度育成高等学校1年生は波乱の日を迎える。全クラスの生徒が朝起きて端末を開き、一斉に違和感を覚えた。それは渡海も猫田も同様である。
事態に気づいた猫田は朝の支度を済ませ、いつも通り渡海を起こすため電話をかける。いつもは5コール目くらいで出てくる渡海だが、今日は早く起きていたのか3コール目で通話に出た。
「おはようございます渡海くん」
『おはよう』
「今日は寝起きが良いですね」
『まぁ、ほぼほぼ想定通りだったな』
「まだ分かりませんよ。全ての答えは学校にあります。今日もエントランスで待ってますね」
『はいよ』
その後共に学校へ登校し、教室に入るといつもとはジャンルの違う騒がしさで包まれていた。
クラス内で混乱が生じてる中、猫田はいつも通り龍園の席へと向かう。
「よぉ麻里。懐事情、心中お察しするぜ?」
「どうも」
「あんた今ピンチなんじゃないのー?私たちに散々搾取されてただでさえポイント不足なのに〜」
「端末を出してください」
「はいはいよっと」
「フンッ!つまんな!にしても龍園これどういう状況?なんで月初めなのに41000ポイントしか入ってないの!?」
「直に分かるだろ。いい加減落ち着く事を学べよ」
朝からキンキンうるさい真鍋に流石に龍園も嫌気がさしているようだ。だがそれも仕方のない事だろう。大半の生徒達は毎月10万ポイント支給されると思い込んでいる。なのにその半分にも満たないポイントしか支給されていないため、散財した生徒にとっては特に悲劇だ。
「皆さんおはようございます」
「ちょっと坂上先生!これどういう事!?」
「ポイント足りてないんすけどー??不具合っすか?」
「皆さん落ち着いてください。とりあえず席に着いて、ホームルームを始めますよ」
教室に入るや否や質問責めされる坂上先生には思わず渡海も同情してしまう。坂上先生は流れるように一枚の大きい用紙を鞄から取り出して黒板に磁石で貼り付けた。
「ククッ、なるほど。他クラスは今こうなってるのか」
用紙にはAクラスから順番にDクラスまで記されており、クラス名の隣にはそれぞれ三桁の数字も記されていた。最底辺のDクラスのみ、桁という概念が存在するか怪しいポイントだったが。
「見ての通り、こちらは各クラスの成績です。Aクラスが940、Bクラスが650、Cクラスが410、そしてDクラスが0です」
「0って…………っていうかこれなんすか先生!クラス分けってまさか、レベル順で分かれてたんすか!?」
やや察しの良い生徒が1人声を上げた。坂上先生は答えるまでもない質問を無視して淡々と説明を続ける。
「皆さんは入学式初日に10万ポイントを支給されるだけの価値があると評価されていました。その評価が日頃の生活態度や授業態度を基にこの1ヶ月で変動し、現在に至ります。遅刻、欠席も含まれます」
坂上先生の話を静かに聞いていた生徒達だが、違和感に気づいた1人の男子生徒がまたまた声を上げる。
「ちょっと待てよ!授業態度でポイントが減るって、それほとんど渡海のせいだろ!」
男子生徒は立ち上がり、眠らず話を聞いていた渡海に指さしてそう言った。彼に関わると良い事はない、それを理解していた大半の生徒は男子生徒が言った事に気づいてても声には出さなかったが、1人の生徒が見せた勇気に翻弄され、徐々に周りの生徒たちも渡海を非難する声を上げ始める。
「そうだそうだ!いっつも授業中寝やがって、お前がいるから俺たちのポイントが減ってるんだぞ!迷惑かけるやつは必要ねぇんだよ!」
「そうよ!確かに私たちも授業中喋ってたかもしれないけど、それ以上に寝てた時間が長いのは渡海君よ!」
「そうだそうだー!!」
止まない非難の声に猫田は徐々にフラストレーションが溜まっていく。彼女の中にある渡海への愛情が今まさに良くない方向へと爆発しそうな状況だ。渡海も特に言い返す事はせず黙って批判を受け続けている。その姿を見て龍園はまた不適な笑みを浮かべるが、坂上先生の話の続きを聞きたいからか、龍園の表情にも徐々に怒りが見えてきていた。
「おいうるせぇよ。渡海に色々言いたい気持ちは分かるが、まずは坂上の話を聞くのが優先事項だろうが」
「なっ……お、お前は確か、龍園……」
「静かになったな。続けろ坂上」
「先生、ですよ龍園君」
龍園の一言で教室はまた静寂に包まれる。ロン毛で目つきが悪くて制服も着崩しているような生徒にハッキリと物事を言われると従ってしまうのは仕方のない事だ。
「オッホン。えー、仮にポイントを使い果たしてしまった場合でも無料品コーナーや学食の山菜定食など、最低限の生活は確保されてますのでご安心を。そしてこちらの資料もご確認ください」
坂上先生は黒板の余白部分にさらに大きめの用紙を磁石で貼り付けた。そこにはCクラス生徒たちの名前と順位らしき数字や点数が並んでいた。教室中の生徒達がその数字に釘付けになる。
「こちらは先日実施した小テストの結果です。本校では平均点の半分未満の点数を赤点と見做しています。そして赤点を一度でも取ってしまった生徒には"退学処置"を取らせていただいておりますのでご注意ください。今回で言いますと退学者はいませんが、赤点ギリギリの生徒はいらっしゃいますね。今回実施した小テストは先日お伝えした通り成績には反映されませんのでご安心を」
坂上先生がこれまた流れるように淡々と説明していく中で、生徒達はやや理解が追いついていないようだ。そして状況を整理し終えた1人の生徒を皮切りに次々と驚嘆の声が上がっていく。
「えぇぇぇぇ!!??」
「た、たたた、退学っすか!?」
「何で!?いや何でなん!?」
「意味不明なんですけど!?」
「た、退学するなら渡海だけでいいだろうが!」
特に大声で叫んだのは赤点ギリギリの生徒らだ。その中には先程渡海批判をした男子生徒も含まれている。坂上先生はさらに続けて説明しようとしたが、退学というワードを耳にした生徒達が落ち着いていられるはずもなく教室中が騒ぎに包まれた。今回に限って龍園は黙って順位表を眺めているばかりで、この騒ぎを沈めるストッパーがいない。
数分間坂上先生が喋れずに困っている時間が流れると、ついに渡海が動き出す。
「ギャーギャーギャーギャーうるせぇんだよ!!」
「「「!!??」」」
自身の机を蹴り、聞いた事がない声量の大声を出して騒ぎを沈める渡海。怒らせてはいけない人を怒らせてしまい、立ち上がって騒いでいた生徒たちは居た堪れない気分になりながら静かに着席する。
しかし、また渡海批判した男子生徒が図にのって渡海を非難し始める。
「な、何がうるせぇだよ。お前この状況わかってんのか?」
「は?」
「は……って、なんだよ。退学だぞ?普段寝てばっかのお前が一番危ねぇし、そもそも迷惑かけてるお前がキレていいと思ってんのかよ!」
「誰が」
「…………だ、誰が?」
渡海は立ち上がり、先程から懲りずに自身を非難してくる生徒に近づいていく。珍しく行動を起こす渡海に教室中が息を呑む。その表情は怒りでも憎しみでもない。彼の表情は終始変わらない冷酷さを纏っていた。視線は相手から外れない。
逃げ道を探す思考や、言葉にできない動揺を、ひとつずつ確かめるように見つめている。その静けさが、相手の呼吸を少しずつ浅くしていき、相手にも焦りが見え始めているのがよく分かる。焦りは相手にだけ蓄積され、沈黙が続くほど、空気は重くなる。
相手を追い詰め、気づいた時には退路はなくなっていた。男子生徒は焦りの表情から徐々に恐怖の表情へと変わっていく。
それを見た渡海は視線を相手から小テストの順位表へと移した。それに合わせて教室中の生徒たちも順位表へと目線を移す。
「あれ、見えるか?」
「み…………みえ、ます」
「俺の名前、探してみろよ」
「え……っと、渡海……渡海……とか、えっ!?」
男子生徒は渡海の名前を見て思わず声が上擦った。それもそのはず、いつも寝てばっかでいる渡海征司郎がこのクラスのトップに君臨しているからだ。
「おめでとうございます渡海君。君は学年でもトップの100点満点です。近年稀に見る逸材ですね」
「嘘だろ……何で、頭良いんだよ」
「クラスの迷惑かけてるのお前だよな」
「えっ……!」
自身の順位を示すだけで終わらないのがこの男だ。彼に関わると良い未来が待っていない。
「俺の事を散々好き放題言った罰だ。次の中間テストで俺より順位高くなかったら、お前退学させるわ」
「なっ……!?何言ってんだ!」
「坂上先生、質問です」
混乱する男子生徒を横目に渡海は坂上先生へと質問する。
「なんでしょう」
「ポイントで買えないものはないと、入学式初日に仰ってましたよね?」
「はい。原則この敷地内においてですけどね」
「じゃあ、他人から点数を奪う事も可能ですか?」
渡海がそう言うと教室中がどよめく。そんな中龍園だけが声を高らかに上げて笑った。
「残念ですが、それに関しては双方の同意が必要ですね」
「じゃあ買えるってことか」
「何言ってんだ!認めるわけねぇだろ!」
「は?」
即座に否定した男子生徒を速攻睨みつける渡海。その反応の早さに思わず口を紡ぐ男子生徒。
「お前言ったよな。迷惑かけてるのは渡海だって。言ったよな?迷惑かけてるやつはこのクラスにいらねぇって、言ったよな?」
「…………ぐ」
「俺もお前と同意見だよ。部屋に落ちてるゴミは拾って捨てなきゃいけない。教室にいる役に立たないゴミは消さなきゃいけない違うか?」
「…………」
「違うのか?」
「…………ち、違わない……けど、それは」
あの小テストは決して難しい内容ではなかった。数学最後の問題を除いてはの話だが。あの問題は確実に高校生のレベルを逸脱しており、いくらこの学校が超難関校とはいえ難易度の差がありすぎたといえる。そんな難問を渡海は正解した。その事実があるからこそ、今の男子生徒にとって渡海は絶対に勝てない相手として立ちはだかっている。
一向にイエスと言わない男子生徒に痺れを切らした渡海はため息をついて言う。
「はぁ、どうせ学力で俺に勝てねぇからこけしみたいに突っ立ってることしか出来ないんだろ?だったらこっちから一つ助け舟出してやるよ」
「た、助け舟……?」
「あぁ。俺に対しての暴言、尊厳への冒涜、その他諸々の誹謗中傷は…………
────1000万で見逃してやるよ」
渡海は男子生徒へ耳打ちするようにそう言った。それを耳にした生徒達は冗談で言ってるのかと一瞬思ったが、渡海の表情を見るからにそうでない事はすぐに分かった。
まさに悪魔からの提案。1000万か退学かの二択を突きつけられた男子生徒は何も喋る事ができず、その場に立ち尽くしていた。
「ほ〜ら1000万それか勝負、どっちがいい?」
「…………お、俺は……お前には……勝てない」
「じゃあ1000万ね。3年になるまでにか退学するまでに払い切れなかったらお前殺す。以上」
最後に渡海は淡々とそう言ってその場を離れ、自身の席に着き、坂上先生に話の続きをするよう促した。男子生徒も今後どうすれば良いのか分からないといった絶望感に苛まれながら自身の席に着く。周りの席の生徒は彼の心配をする事すらできない。それは渡海に関わるのと同意義であり、良い未来が待っていない事を示しているからだ。
「話は済みましたね。最後にもう一つ説明事項があります。本校は就職率100%の卒業を保証しますが、それが適用されるのはAクラスのみです」
「はっ?」
坂上先生の言った事に間違いなくまた教室中はざわつくと思われたが、皆の期待を裏切るように、開口一番困惑の声を上げたのは渡海だった。
「Aクラスだけが、希望の就職、進学先を選べる、ということですか?」
「そういう事です」
「じゃあ、それ以外のクラスは?」
「本校から就職、進学先の保証は一切行いません」
「…………なるほど」
渡海が一連の質問を終えると、また教室中がざわつく。坂上先生は全ての説明を終え、教室から出て行った。
渡海は坂上先生の言った事を思い出し、ため息を吐き、枕へと顔を埋める。その様子を見た猫田が渡海へ話しかける。
「渡海くん」
「……猫か」
「はい。坂上先生の仰る通りだと、このままでは私たちの将来計画が崩れてしまいますけど、どうしますか?」
ポイントの変動、クラスの優劣、それらは日頃の生活での観察力で何となく察していた猫田と渡海だが、この点については流石に予想外だったのか、少し考える時間を要する。しばらくして渡海は枕から顔を出して教室を一瞥する。
「猫、方針を変えるぞ」
「どのようにでしょうか」
「おそらく、というよりほぼ確実に今後クラス間での競争が激しくなる。今のクラスじゃ確実にAクラスに上がるのは不可能だ」
「と、言う事は……渡海くん」
猫田は薄々勘づいた。そして渡海から枕を預かり、それが確信に変わった。
「──────本気でABクラス潰すぞ。ついてこれるよな?」
「無論、どこまでもついていきますよ」
その日以降、渡海が教室で寝る事は無くなった。
もはや猫田はブラックペアン関係ないですね。ごめんなさい