美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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ウィズ(3)

 今までさんざんいろんな経験をしてきたのだ。

 今さらなにか大きな心境の変化なんて起こるわけがない──そう思っていたのだが。

 目を覚ますと、リリアーナの寝室にある天蓋つきベッドの上で。

 俺は、あられもない姿のリリアーナとリーシャに左右から抱きしめられていた。

 

 窓からは陽光が射し込んでいる。

 普段ならもう起きている時刻だと思うのだが……プラムたちに気を使われてしまったか。

 妙な気恥ずかしさを覚えつつ軽く息を吐いて──。

 

 すうすうと寝息を立てている二人を交互に見つめる。

 不思議なほど気持ちが穏やかで、リリアーナたちへの愛しさで胸がいっぱいになる。

 昨夜の出来事はさすがに思い出すと恥ずかしい。

 結局、リーシャも純潔こそ喪わなかったものの、なしくずしに参加していたし。

 自分も、相手も、寝室いっぱいにはしたない声を上げて乱れていた。

 

 頑なに守り続けていた一線をとうとう越えて。

 

「わたしはステラ。これからも、ずっと」

 

 自分はステラという名の少女なのだと、すとん、と心の奥底に認識が嵌まりこんだ。

 もしこれから先「男になる方法がある」と言われたとしても、俺は心の底から拒否するだろう。

 今の自分から変わりたいなどとは欠片も思わない。

 

 この身体でいつか子を成すことも、今ならどこか当然の成り行きとして実感できた。

 一人、ふっと笑みを浮かべていると、リリアーナとリーシャが揃って身じろぎを始めて。

 瞼を開いた彼女たちに俺は「おはようございます」と微笑みかけた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「ステラ」

「リーシャお姉さま」

「ステラ」

「リーシャお姉さま」

「ステラ♪」

「って、なによこれ!?」

 

 朝食のために食堂へ移動し、侍女たちによる給仕を待つ僅かな間。

 俺の腕を抱きしめて上機嫌のリーシャにフレアが声を上げた。

 俺は「あはは……」と苦笑して。

 

「その、いつまでもお姉さまに『さん付け』で呼んでもらうのも他人行儀ですし、呼び捨てにしてもらうことにしたんですが……」

「せっかくだからステラにも『お姉さま』と呼んでもらうことにしたの。このほうが親しさが伝わりやすいでしょう?」

 

 で、この上機嫌というわけである。

 リリアーナはその場に居合わせたのでさすがに驚いてはいないものの、俺と同じく苦笑気味。

 フレアは「なるほどね」と肩をすくめて、

 

「でも、ステラ。今日は『恥ずかしいからやめてください!』とか言わないのね」

「はい。まあ、わたしとお姉さまが親しいのは事実ですし」

 

 これに紅髪の少女と黒髪の美女は顔を見合わせて、

 

「なんかステラが今までより可愛いんだけど」

「女子は初体験の後、一皮剥けるって本当だったらしい」

「お二人とも? さすがにその話題はわたし、恥ずかしいんですけど?」

 

 むっとしつつ軽く睨んでやると、

 

「今のステラだったら『一緒に露出しよう』って言っても許してくれるんじゃない?」

「今こそ新しい玩具に挑戦してみて欲しいところ」

「……もう、できるだけわたしも頑張りますけど、フレアさんたちはほどほどにしてくださいね?」

「あ、これ本気でやばいわ。ちょっとムラムラしてきた」

「羽目を外すのは街に戻ってからのほうがいい。それまでは辛抱」

 

 うん、こんな風に反応できてしまうあたり本当に心境に変化が出ているらしい。

 でも、今までフレアたちに付き合うと言いながらさんざん我が儘を言ってきたのだ。

 少しくらい素直にならなければむしろ申し訳ないというもので、

 

「こほん。フレア、エマ? わたくしや侍女たちも滞在するのですから、生活態度には最低限気をつけてもらいます。そのつもりでいるように」

「む。リリアーナ様という強敵がいた」

「さすがに王女様相手じゃあたしも強く出られないわね……」

 

 代わりに俺たちの自制に関してはリリアーナが担当してくれそうで、ちょっと安心した。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 いろいろあってさすがに疲れも溜まっているので、その夜は一人寝。

 出発までは身体を休めたほうがいいだろう、と、全員合意のうえでの判断だ。

 

 シェリーたちも使用人部屋に引っ込んだので部屋には俺一人。

 夜の静寂が室内をも包みこんでいて、

 

「ここでの生活もあと数日……」

「あら、名残惜しい?」

「っ!?」

 

 聞こえるはずのない声に、意識するより先に身体が跳ね起きる。

 枕元に置いてあった魔剣を取りつつ古代語で明かりの魔法を発動させると、煌々とした明かりに銀髪の美女が照らし出されて、

 

「《ディスペル》」

 

 彼女に向けて紡いだ解呪の魔法はなんの効果も表さずに消滅した。

 

「……なんだ、ウィズさんですか」

「ふふっ。私の姿を見た時点ですぐに安心しなかったのは褒めてあげるわ」

「変身の魔法を使っている可能性もありますからね。においと雰囲気でほぼ断定できてはいましたけど」

「あら。鼻もきくの?」

 

 魔女姿ではなく、肌が透けそうな寝間着を纏った彼女は無造作にベッドへ腰掛けてきた。

 

「中途半端に竜化した影響かもしれません。あと、体内の精霊の活動具合もけっこう参考になるんですよ?」

「へえ。私の身体は常人とは違うの?」

「ウィズさんは下腹部……というか、子宮のあたりで生命の精霊が活発ですね」

 

 さすがはサキュバス。

 

「というか、どうやって入ったんですか?」

 

 窓が開いた様子はなかったんだが。

 

「《テレポート》よ。ステラを驚かせようと思って」

「普通、いたずらに使う魔法じゃないんですが……。というかこの状況、夜這いみたいですよ?」

「あら。夜這いだもの、それで合っているわ」

 

 よし、大きな声出すか。

 大きく息を吸い込んで「きゃーっ!」とやろうとした俺の口にウィズの柔らかな手のひらが押し当てられた。

 もう片方の手が魔剣から俺の指を離させ、そのまま俺をベッドへと押し倒す。

 

「なによ、いいじゃない。もう処女じゃなくなったんだから私にも味見させなさい」

「王女の結婚相手を寝取るって重罪じゃないでしょうか……?」

「リーシャとも寝てる浮気者がなに言ってるのよ」

 

 それにしてもいい匂いするなこの人。

 

「大丈夫よ。リリアーナからは許可を貰ってるわ。前に『せめてわたくしとお姉さまが結ばれてからにしてくださいっ!』って言ってたもの」

「それはウィズさんが無茶苦茶言うからつい言ってしまっただけでは?」

「うるさいわね。したいの、したくないの?」

「したいです」

 

 しまった、つい本音が。

 にぃ、と、ハーフサキュバスの魔女が笑みを浮かべる。

 他者を魅了するフェロモンが強くなり、俺の身体が勝手に興奮を始めた。

 

「やっぱり、あなたには素質があるわ」

「それ、なんの素質ですか……?」

「せっかくだから半淫魔の力も持っていきなさい。ドラゴンを相手にするなら力はいくらあってもいいでしょう?」

 

 俺はウィズの実力を尊敬しているし、()()()()()()

 夜を共にすれば半淫魔の力を取り込める可能性は高いだろうが。

 

「わたし、いよいよびっくり人間と化しちゃうんですけど」

「今さら大して変わらないから気にしなくていいわ」

「ん……っ!」

 

 強引に唇を奪われる。

 舌を絡められ、唾液を注ぎ込まれた。まずい、ますます思考がピンク色に染まっていく。

 

「まあ、まだ理由が足りないっていうなら無理やりってことにしておいてあげる。……《パラライズ》」

 

 知り合い相手だからと気が抜けていたところに麻痺の魔法をかけられ、身体が動かなくなった。これも夜這いに使う魔法じゃないと思うんだが。

 

「もし怒られたら謝ってあげる。だから、今晩だけは私に弄ばれなさい」

 

 百戦錬磨にして半淫魔の魔女の手管は、それはもうすごかった。

 多少なりとも経験しておいて本当に良かったと、俺は明朝、心の底から思ったのだった。

 

 なお、案の定ウィズの『半淫魔』の『秘蹟』が俺にコピーされ、そのせいで俺は前より性欲が強くなってしまった。

 やっぱりろくなことしないんじゃないだろうか、この魔女。

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