美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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リリアーナafter

 二度目の結婚式で周りからも正式に『夫婦』と認められて。

 わたしはリリアーナと対等として話をすることにした。

 といっても単に敬語をやめたというだけだけれど。

 

「ねえ、リリアーナ?」

「……なんでしょうか、ステラお姉さま?」

 

 どこか甘えるような声音。

 ベッドにはわたしたち二人だけ。

 視界に入らないだけで、音の聞こえる位置には複数の侍女が待機しているはずだけれど──考えると落ち着かなくなるので気にしないことにして。

 多少のじゃれ合いを済ませた後だけれど、わたしたちはすぐに先の行為に進まず、言葉を交わした。

 

「不安はないの? その、子どもを作ることに」

「そうですね。まったくない、と言えば嘘になりますけれど……」

 

 わたしと指を絡めあったまま、リリアーナは微笑んだ。

 

「王族の女は政略結婚を行い、お相手の子を成すのが当然です。幼い頃からそう教えられてきましたので、わたくしにとって、それは来るべき時が来たに過ぎません」

 

 二ヶ月ほど前、リーシャが第一子を出産、それより数日遅れでわたしもリーシャとの子を産んだ。

 周囲からは祝福の声が届き──同時に「次こそは王女殿下の子を」という期待も高まっている。

 子どもを作るというのは時間のかかる行為。

 お腹に宿してからおおよそ十月十日──すぐに産めるわけではないのだから、始めるなら早いほうがいいのだけれど。

 

「それに、わたくしの相手はあのヴォルケイノになるはずだったのです。愛した方と、ステラお姉さまとの子を産めるのならば、これほど嬉しいことはありません」

「……リリアーナ」

 

 わたしの手から離れた王女の指が、今度はわたしの頬を撫でて。

 

「くださいませ、お姉さま。わたくしとお姉さまの愛の証しを。わたくしたち二人の宝物を、この手に抱かせてくださいませ」

「ええ。……わたしも、あなたとの宝物が欲しい」

 

 こうして、わたしたちは儀式を経て。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 わたしたちが子どもを作ることにはある種の懸念もあった。

 お互いに人間であり、精霊であり、竜でもあるわたしたち。

 血の混ざり方によっては生まれて来る子が竜そのもの──という可能性もあるのではないか、ということだ。

 そうなった場合、前代未聞、王位継承権を持つドラゴンなどというものが生まれてしまいかねないのだけれど。

 

『そんなの、やってみなければわからないじゃない』

 

 という、とある魔女のありがたいお言葉によって懸念はいったん棚上げになった。

 いろんな種族・存在と子どもを作ってみれば傾向と対策は立てられるかもしれないけれど、さすがにちょっとほいほい試せるようなことではないし。

 

 そうして生まれたわたしたちの娘は──。

 

 両親ともに似たような髪と瞳の色だからか、二人ともわたしたちによく似ていて。

 

 リリアーナの産んだ長女は竜の力を強く継承していたものの、姿かたちは人そのもの。

 花嫁の刻印を備えているわけでもなく、言ってしまえば竜語魔法の素質を持っているだけの人間の女の子だった。

 いや、厳しい修行の末に習得する魔法に生まれながら適性があるのはめちゃくちゃすごいのだけれど。

 

 わたしの産んだ次女は半精霊。

 司る属性は──精神。

 肉体を持つ戦乙女として生まれてきた彼女は女の精霊使いとして《ヒーリング》を用いられる一方、己の能力を引き出す形で戦乙女の槍を発動させられる特殊な体質となった。

 精神なんてものを司っているせいで幼少期はいろんな人の感情をほいほい読み取ってしまって大いに苦しむことになったものの、大きくなるにつれて力をコントロールできるようになった。

 わたしたちもできるかぎり彼女に寄り添い──少しは力になれたと信じたい。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 二人の娘が生まれてから数年後、フレアやエマの出産も終わり、ちょっとアレな表現だけれどわたしのお腹に空きができて。

 二人目を希望したリーシャがその身に新しい命を宿すと、

 

「……お姉さま? わたくし、二人目が作りたいです」

 

 二人きりの寝室で寝間着の袖を引っ張りながら上目遣いで懇願された。

 ものすごくきゅんきゅんするものを感じながら、わたしはなんとか気持ちを落ち着けて。

 

「リリアーナったら。すごくはしたないことを言っているの、わかってる?」

「だって。欲しいものは欲しいのですから仕方ないではありませんか。……王家の血を多く残す意味でも、一人では心許ありませんし」

 

 わたしも産んだから二人だけれど、まあそれはともかく。

 離宮にはわたし含め治療のできる者が多いとはいえ、子どもというのはみんながみんなが大きくなるまで無事に成長するとは限らない。

 人口を減らさないという観点で見ると三人以上の子どもを作るのが望ましいというのは確かにそのとおりで。

 

「それに……その、子どもを作るという名目であれば、お姉さまを一晩じゅう独り占めできるでしょう?」

「ねえ、リリアーナ? そっちが本命だったりしないかしら?」

「そ、そのようなことはございません。それはまあ、お姉さまはお優しいですから、頻繁に様子を見に来てくださるでしょうし……そういった日もあわよくば、とは思っておりますけれど」

 

 この子は……。

 

「もう、どうしてそんなにいやらしい子に育ってしまったのかしら?」

「い、いやらしい子などと言わないでくださいませ!」

 

 言いながらも「したい」と顔に書いてある。

 さりげなく室内に甘い香が焚かれているし、衣装と化粧にもいつも以上に気合いが入っている。

 

「だいたい、そうなったとしたらお姉さまのせいではありませんか。ライバルのみなさまは百戦錬磨なのですから、わたくしも勉強しませんと……」

「だからって、何度も『もっと』とおねだりしたり、新しいやり方を率先して試そうとしなくてもいいと思うけれど?」

 

 白くすべすべの肌がかあっと紅潮して、

 

「お、お姉さまはお嫌なのですか!?」

 

 実際、リリアーナはかなり積極的だ。

 秘め事は秘めるべき、という観念はきちんと残っているし締めるところは締めてくれるのでその点、フレアたちとは違うのだけれど……。

 二人きりでそういうことができる場だと一転して積極的になる。

 特にこういうプレイが好き、ということもなく、まんべんなく興味を示すタイプで……ある意味、だからこそ歯止めがきかないというか、いくらでもできることがあるというか。

 けれど、

 

「もちろん、嫌なんかじゃないわ。わたしもあなたともっと、ひとつになりたい」

「……本当ですか?」

「ええ、本当よ。愛してるわ、リリアーナ」

 

 囁くように言えば、リリアーナは「お姉さまは意地悪です」と頬を膨らませながらもキスをねだってきた。

 唾液を絡める大人のキスを交わして。

 

「子どもを作るのなら、わたしももう一人、あなたとの子どもが欲しいわ。……いいかしら?」

「……もちろん、嬉しいです。家族は多いほうが楽しいですもの」

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 こうして、わたしとリリアーナの間には三女と四女が誕生した。

 彼女たちはフレアたちとの間に生まれた子たちともども、プラムやシェリーをはじめとする多くの侍女に見守られながらすくすくと成長。

 

 わたしたちの娘はそれぞれにそれぞれの道で成果を残し、次世代の歴史に名前を刻むことになる。

 

 ──たくさん子どもを作ったせいでわたしたちは名付けに困ることにもなったのだけれど、それはまあ、また別の話である。

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