美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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石竜討伐(2)

 前略、炎を操る美少女剣士から「前のあんたはヘタレだったわよ」と罵倒を受けている(本人無自覚)。

 

「……そんなに問題児だったんですか? 能力が不足していたとか、不真面目だったとか」

「違う違う。真面目だったし、雑用係としてはそれなりに役に立ったわよ」

 

 と、意外にちゃんと評価されてるな……?

 俺がいなくなった後の苦労が少しは効いたのか?

 

「それじゃあ、どうしてヘタレなんて」

「決まってるじゃない。男としてクソ雑魚だからよ」

「クソ雑魚」

「そ。クソ雑魚。女を相手にする甲斐性がまるでないだめ男。ヘタレ。負け犬」

 

 やっぱり一発くらいぶん殴ってやろうか。

 

「だって、こんな美少女と一緒に冒険してるのに一度も夜這いに来ないのよ?」

「は?」

「こんなに露出多くしてるんだから、いろんなところ見放題なのに。ひどいと思わない?」

 

 炎に照らされた太ももがもじもじと動く。

 その気になればスカートの奥まで見えてしまいそうな状況で、少女はむしろ「もっと見なさい」とばかりに視線を送ってくる。

 それはともかくとして──ひどいのはこいつの頭じゃないのか?

 なにもしてないのに頭痛がしてきた。俺は頭を抱えたいのを堪えつつ頬をひくつかせて、

 

「まさか、その人のことが好きだったんですか……?」

「は? そんなわけないでしょあんな奴」

 

 じゃあなんなんだよ!?

 ぷいっ、と、赤いのは炎のせいだけじゃなさそうな顔が背けられて、

 

「だから昔の話よ? あの頃のあたしはまだそれなりに男に興味あったから、その、無理矢理思いを遂げられるのもわりとありかなーとか思ってたわけ」

「じゃ、じゃあ誘ってたんですか!?」

「まあ、うん、そういうこと? に、なるのかしら? もちろん本当に押し倒されたら燃やしたけど」

 

 ふざけんなよお前!?

 魔物と戦ってるだけでちらちら見える身体にどれだけ悶々とさせられたか。しかも下手に自分で処理するのも憚られるし……っ!

 

「でも金属の鎖で縛るとか薬を盛るとか、方法はいろいろあるじゃない? そういう甲斐性があったら、その、今頃恋人同士、とか、そういう可能性もあったかなって」

「鎖で拘束して思いを遂げてくる相手と恋人同士になるんですか……?」

「エマだって自慢の玩具を逆に利用される妄想してるって言ってたわよ?」

 

 変態か?

 やっぱり頼みの綱はリーシャだ。彼女も変態だが、フレアたちに比べればかなりマシ。

 抱きしめられて「お姉ちゃん」って呼ばされるだけなら健全──めっちゃエロいうえに俺の尊厳めちゃくちゃ削られるな?

 

「でも実際は一年もなにもしてこなったわけ」

「へ、へー。そうなんですね」

「ひどいでしょ? ひどいわよね? だからクビにしたのよ。仲間って呼ぶにはちょっと弱かったのも確かだけど、どっちかっていうとメインはそっち」

「ひどいですね」

 

 俺がクビにされた理由がな!

 ……とはいえ、まあ、こいつらにこき使われたのが俺で良かったのかもしれない。変な奴だったら本気で強引に思いを遂げられかねない。

 俺で懲りた結果、男に幻想? 妄想? を抱かなくなったのなら、潜在的な危険を取り除いたと言っても過言ではないだろう。

 

「ありがと。ステラならわかってくれると思ってたわ!」

「わわっ!?」

 

 体温高めなフレアの身体にぎゅっと抱きしめられる。夜は冷えるのでありがたいが、今の話を聞いた後だといろいろ複雑すぎる。

 

「ステラは男に興味ないのよね?」

「はい。少なくとも恋愛とかそういうのはまったく」

「じゃあ、いつでもあたしのこと押し倒してくれていいからね……?」

 

 吐息に耳の奥をくすぐられた俺はぞくぞくっ! と身を震わせ、顔を真っ赤にした。

 興味、は、もちろんあるが。

 

「……できませんよ、そんなこと」

 

 ヘタレ、というフレアの評価は案外当たっているのかもしれない。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「歩きながらでいいからストーンドラゴンの攻略法を考えたい」

 

 翌朝、荷物をまとめて出発したところでエマが言った。

 

「そうね。出会ってから作戦立てる暇はないかもだし」

「『至高の剣』に倒されている可能性もありますけど」

「どうだろう。あの男のことだから村人相手に演説かまして時間を食ってそう」

 

 ありそうだから困る。

 

「ストーンドラゴンって、石でできた竜じゃなくて、石を纏った竜なんですよね?」

「そう。ゴーレムの類ではなくれっきとした生物」

 

 分類としては地竜(アースドラゴン)の一種だ。

 大地の属性を持ち、土や岩を主食とする。岩を纏ったような姿で、体型は意外にも蛇のようなスリム型。

 体表は硬い岩そのもので、生半可な攻撃ではダメージにならない。炎や電撃も岩の鱗で弾き返し、冷気も効果が薄い。

 しかも、身体の内側にある肉の部分を維持するために一定量は生き物も必要としており、人間や家畜も普通に食う。

 岩を砕く牙は人間の身体なんてぷちっと引き裂く。

 

「蛇型の竜にしては動きがのろいのが救いだけど、油断してると身をくねらせて遠い距離まで攻撃してくる」

「近接戦のしづらい相手ですよね」

「向こうのリーダーと槍使いは動きが限られるわね。そういう意味でもこっちの勝機は十分あるわ」

「最悪、向こうが弱らせたところをこっちが叩いてもいい」

「少々、性格の悪いやり方だけれど……」

 

 俺たちが到着する前に決着できれば向こうの勝ちなのだから、それができなかった時点で自業自得とも言える。

 

「というか、わたしたちもそんなに相性よくないんじゃ……?」

「そうでもない。眠りの雲も麻痺もうまくいけば効くし、エナジーボルトは純粋な物理打撃」

「炎だって蒸し焼きレベルの火力なら問答無用で効くわよ」

「銃の威力は岩の鱗で半減ですが、直接相手の生命力を削り取ります」

「みなさんって本当にすごいですね」

 

 素直に感心していると、エマは「なにを言ってるの」と眉をひそめて。

 

「もちろんステラにも頑張ってもらう」

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 山の麓付近にある村に立ち寄り話を聞くと、アルフレッドたちは少し前に出発したばかりだという。

 彼らが乗ってきた馬車も村に残されていた。

 

「『至高の剣』の方々は十分に英気を養われ、我々を勇気づけて行かれました」

「本当に演説していったみたいね……?」

「好都合じゃない。みんな、悪いけどこのまま行くわよ」

「問題ない」

「はい。向こうも昨夜はギリギリまで馬車を走らせていたはずです」

 

 俺たちは休憩を取らず、そのまま出発。

 

「精霊視じゃ範囲が広すぎて索敵は難しいわね」

「生命感知も魔力を使いすぎる。ここはリーシャの出番」

「はい。大地の異常を探り、竜の位置を特定しましょう」

 

 地母神の神官ならではの奇跡。

 地面や岩が食われた形跡を探ったリーシャはほどなくひとつの方向を示した。

 

「おそらくこっちです」

「ありがと、リーシャ。これで先回りできるといいわね」

「ベストはある程度ダメージを与えてくれてること」

 

 果たして、結果的な状況はある意味でベスト、ある意味ではかなり悪かった。

 山にかなり近い位置。

 竜はまだ村を襲おうとはしていなかったらしい。代わりに辺りの地面が荒らされ、野生動物が食われた跡がある。

 『至高の剣』は交戦中。

 岩を纏った巨大な蛇のような魔物──ストーンドラゴンは身体のあちこちに欠けやひび割れを作っているものの、

 

「怪我人が出てるじゃない!」

 

 女三人のうち槍使いと精霊使いが負傷、戦線から大きく離れている。精霊魔法で治療が行われているものの、戦線復帰にはまだ少しかかりそうだ。

 女神官は、孤軍奮闘するアルフレッドに癒やしの奇跡をかけて支援中。

 一人前衛を張る聖剣士は自分へのダメージを最小限に抑えつつ敵を引き付け、なおかつ竜に傷を作るという難行をとにかく必死にこなしていた。

 

「さすが、私たちのライバルだけはある」

「放っておいても負けはしないかもね」

 

 見たところ、『至高の剣』はアルフレッドという突出した実力者が他を引っ張っているタイプ。彼さえ動ける状態ならまだまだチャンスはある。

 リーダー当人もまた至高神の奇跡を使うことができ、自分の傷を癒せるというのがなおさら小憎らしい。

 とはいえ、

 

「加勢しましょう!」

「はい。傍観した結果、命が失われては目もあてられません」

 

 俺たちは余計な荷物をまとめて捨て、身軽な状態になると『至高の剣』へ加勢を始めた。

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