美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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リーシャ(4)

 顔が柔らかいものに包まれている。

 眠りから覚めた俺は今日も今日とて、リーシャに抱きしめられていた。

 しかも直である。

 お互いの服が全て剥ぎ取られており、逃さないとばかりに足まで絡められている。下着一つでも密着感は変わるもので、

 

「り、リーシャさん。これはいったい……!?」

「ふあ……。おはようございます、ステラさん。すみません。人肌の温もりで温め合おうかと思い、服を脱がせていただきました」

 

 綺麗な青い瞳に間近で吸い込まれる。

 寝起きでとろんとした表情がまるで行為の最中のようで、俺は不可抗力のときめきを覚え、

 

「それ、雪山とかでやるやつですよね……?」

「あら、ベッドの上でもとても温かいですよ。おかげでぐっすりと眠れました」

「言いながら太ももをこすりつけないでくださいっ!」

 

 心音というのも安眠に効果があるとは聞くが。

 目覚めたうえで身体を押し付けてくるのはまったく関係がない。特にリーシャはいい身体をしているのでいろいろやばい。

 真っ赤になった俺をリーシャは愛おしげに見つめて、

 

「そんなに嫌がらなくても。いいんですよ、お姉ちゃんに好きなだけ甘えて」

「好きなだけって言われても……」

「そうですか? 例えば、わたくしの胸、触ってみたくありませんか?」

 

 それ本当に俺以外に言うなよ? 俺ならいいってわけでもないが。

 

「さ、触ってみたくなんて」

「ありませんか?」

「……ち、ちょっとくらいなら」

 

 顔で十分堪能したのだから感触はわかるだろうって? それはそれ、これはこれだ。本能的な欲求には抗えない。

 俺は「どうぞ」とさらけ出された胸に恐る恐る手を伸ばす。

 指先で軽く触れると、柔らかさと弾力を同時に感じた。押し込むようにすればそれがさらにはっきりとわかる。

 こんなに柔らかいもの、男には絶対ついていない。

 ……本当、男と女っていうのは別の生き物だ。

 

「これ、本当にどうなっているんですか?」

 

 俺自身のものと比較してもリーシャのものは特別だ。これだけ大きいのにしっかりと張りを保っており、垂れてくる様子が微塵もない。

 あれか、銃を扱っているおかげで上半身の筋肉が鍛えられているのか? 胸を揺らすと逆効果な気もするが、そのへんどうなんだろうか。

 

 思いつつ、俺はいつの間にか無心で触り続けていて。

 

「ステラさんったら、小さい子供みたいです」

 

 気づけばリーシャの術中に嵌っていた。

 我に返って離れようとすれば、「いいんですよ、続けて」と抱き寄せられる。おずおずと指を再び動かし始めた俺の頭を、慈しむようにリーシャが撫でる。

 本当に、寝かしつけられているようで。

 起きたばかりだというのにまた眠くなってきそうだ。俺はふるふると首を振って訴える。

 

「このままだと起きられなくなります」

「あら。……確かにそうですね。では、身支度を整えましょうか」

 

 相手が彼女でよかった。フレアかエマだったら確実に「別にいいじゃない、二度寝すれば」「一日くらいだらけても問題ない」となっていた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 洗顔や着替えを済ませたらお祈りの時間だ。

 

 聖印を購入してから、俺はリーシャと一緒に朝のお祈りをするようになった。

 地母神の聖印はりんごの木を抽象化したような形状。

 大地に敬意と感謝をこめて跪き、豊穣と平和のために祈るのが習わしとされる。

 

「お祈りって難しいですよね。無心でそれだけを考えるってなかなかできなくて」

「ふふっ。慣れといいますか、心持ちの問題かもしれませんね。続けていくことで自然と『そう』なっていくと思いますよ」

 

 お祈りを終えた後で話題を振ると、穏やかにコツを教えてくれる。

 

「そういうものですか?」

「はい、そういうものです。もしくは、そうですね。神殿で祈るのも気持ちが引き締まっていいと思いますよ」

 

 確かに、清められたあの場所には独特の雰囲気がある。集中するのにはもってこいだ。

 

「おすすめは早朝、あるいは夕方でしょうか。朝の静謐な空気も、夕方の橙に染まった景色も、それぞれ格別です」

「リーシャさんはこの街の神殿は長いんですか?」

「ええ。わたくしはここの神殿で修行いたしましたので」

 

 そうだったのか。フレアたち三人は旧知の仲って感じだし、別の地方に行く素振りもないからこの地域の人間なんだろうとは思っていたが。

 

「十歳の時に神殿に入り、修行を続ける中で偶然エマと出会ったんです。その後、フレアが街にやってきて、交流を重ねるうちにパーティを組むことになったんですよ」

「フレアさんが最後だったのは意外です」

「あの子は山奥で育ちましたからね」

 

 精霊に育てられた野生児、と考えると「あれ」でもかなり理性的なほうなのかもしれない。いやでもウォッカは山にはないだろ。あいつは酒好きすぎだ。

 

「神話を覚えるのにも神殿の空気はもってこいですよ。談話室や資料室を利用すれば、他にも聖典を覚えようとしている子がいるでしょうし」

「そうか。耳からも入ってくると覚えやすいですね」

「わたくしと過ごす日はしばらく神殿に通ってみますか?」

「それもいいですね」

 

 急に信仰に興味がわいたのもリーシャの影響なのだろうか。

 そもそも神の奇跡への適性というのがどう決まっているのか。心根がステータスに影響するなら前の俺も同じだけの素質があったはずだし、ステータスに引っ張られて信仰心が増すというのは逆のような。

 いやまあ、単に奇跡を使えるとわかったから信仰する気になっただけかもしれないが。

 

「ステラさんが興味を持ってくださって本当に嬉しいです」

「神官ともなると布教もやっぱり大事なんですか?」

「それももちろんですけれど、フレアとエマはあの通りですから。話の合う方が身近にいるというのはとても貴重なんです」

 

 言われてみるとフレアも精霊の話、エマも魔法の話になると目を輝かせている。冒険者にとって技能は商売道具だが、同時に「誰かに教えたい、自慢したい」という欲求もあるのだろう。

 

「わたしも、いつか後輩を指導したりするんでしょうか」

「それはもちろん。ステラさんでしたらきっと、面倒見のいい先輩になれるかと」

 

 そうだろうか。

 偉そうに技術を伝授する自分がいまいち想像できない。姿が変わる前は自分のことに精一杯、誇るほどの能力もなかったので、年下だろうと「同輩」という意識しかなかったのだが。

 

「なら、そのためにも勉強しないといけませんね」

「その意気です」

 

 にっこりと笑ってくれるリーシャ。

 本当に彼女は人間ができている。姉を名乗る変態なところはあるが、フレアやエマと違ってきちんと俺を導き、指導してくれる。

 母性溢れる性格──性癖がうまく普段の行動と結びついているからだろう。

 これなら今日は爛れた生活ではなく普通に自己鍛錬に励めそう、

 

「頑張ったら、お姉ちゃんがご褒美あげますからね……?」

「っ」

 

 耳が弱いのはもうとっくに全員にバレているらしい。

 悪戯っぽく囁かれた俺は、優しさと意地悪を兼ね備えたリーシャの声、表情にあっさりと蕩けさせられた。ぴくんと反応する身体。むずがゆいような感覚を覚える胸の奥。

 俺は、さっきの話題と絡めて、後輩にお姉ちゃんぶる自分の姿を想像して──すぐに「ないな」と思った。

 

 俺がリーシャの真似をしても様にならない。下手したら後輩に妹扱いされそうである。

 身長は伸びるかどうかわからないので、せめて胸がもっと大きければ。いや、大きいと邪魔だが。ブラを付ける必要もないサイズが子供あつかいされる一因ではないのか。

 

「たしか、牛乳を飲むと胸が大きくなるんでしたよね?」

 

 脈絡もなく呟ければ、リーシャは瞬きとともに「ええ」と頷いて、

 

「でも、ステラさんはそのままで十分魅力的ですよ?」

 

 自然体のままの彼女にどんどん絆されていく自分。それが心地いいのがまた困りものである。

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