美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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リーシャ(5)

「前回測った時よりも1センチ近く大きくなってますね」

「なんと」

 

 下着を買いに来たら衝撃の事実を告げられてしまった。

 愕然とする俺をよそに、フレアがうんうんと頷いて。

 

「成長期だもんね」

「14、5歳なら成長期は終わりに近いんじゃ?」

「個人差がありますし、ステラさんの場合、エルフの血を薄く引いている可能性もありますね」

 

 当然のように三人ともついてきているのは、みんな俺が「服と下着を買いに行きたい」と言ったのに嬉々として賛同したからだ。

 きっかけは、さすがに服が足りないなと感じ始めたこと。

 冒険用の丈夫で動きやすく露出の少ない服や、剣の稽古などで使う訓練着などは買い足したものの、これまで服と下着は最初に買った三着だけだった。

 当面は問題なかったが、そろそろ買い足さないと限界がある。

 

「置き場所には困らなくなるし、いいと思う」

 

 家を買って荷物をそちらに移せるということもあり、ここで新しいものを購入することになった。

 

「むう。この分だとステラにあっさり抜かされそうね」

「そもそもフレアは安心できるほど大きくない」

「あ? なんですって?」

「いたいいたい」

「もしかして、ステラさんの『秘蹟』は体型にも影響するんでしょうか?」

 

 仲良く喧嘩するフレアたちをよそに呟くリーシャ。

 性格さえも影響している可能性を懸念している俺は「そうかもしれません」と頷いた。

 

「だとすると、リーシャさんの遺伝……なのかもしれませんね」

 

 冗談めかした言葉にリーシャは真面目な表情を浮かべて、

 

「身長はあまり伸びないでいただけると嬉しいのですが……」

 

 俺は新たに三着の服と五着の下着を購入した。

 前に買ったものと合わせると、下着は一週間ローテーションが可能になる。

 服は例によってフレアたち三人が一着ずつ選んでくれた。誰かを優遇すると他のメンバーが拗ねるからだ。

 

「ちょっと、ステラ。買ったからにはちゃんと着なさいよ?」

 

 脇腹をつんつんされた俺は「なるべく屋内で着るようにします」とフレアに返答した。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「あ、リーシャ姉ちゃんだ!」

「ステラお姉ちゃんも!」

 

 孤児院を訪れるのもこれで二度目になる。

 歓声を上げて迎え入れられるというのは悪くないものだ。

 俺たちの運んできたお土産を強奪? 運搬? していく子供たちを見送りつつ、俺はほっと一息。

 

「ちょっと今回は買いすぎましたね」

「ふふっ。ステラさんもいるので少し張り切りすぎてしまいました」

「本当になんとお礼を言ったらいいか……。みんな、お姉さんたちに『ありがとう』と言ってあげて」

「ありがとうリーシャお姉ちゃん、ステラお姉ちゃん!」

 

 前回決意した通り、今月の訪問は俺も金を出して前回以上に買い込んだ。

 果物に日持ちする食材、あとは服を作るための布など。

 子供には衣・食・住くらいは不自由しないでいて欲しい。特に食。お腹いっぱい食べられるというのはとても幸せで大事なことだ。

 俺だって生家では「もう食べられないくらい腹を満たす」とはいかなかった。

 

「たくさん食べて大きくなってくださいね」

「うん!」

 

 荷物の運び込みが終わると、子供たちからさっそく腕を引かれる。

 

「ステラ姉ちゃん、剣術ごっこしようぜ!」

「ちょっと! ステラお姉ちゃんは女の子なんだからそんなことしないの!」

「だってリーシャ姉ちゃんは付き合ってくれないし」

「いいですよ。わたし、こう見えてけっこう強いんですから」

「お、やる気じゃん。さすがステラ姉ちゃん! でも俺には勝てないと思うぜ!」

 

 男子たち数名と手に持った棒きれをかん、かん、と打ち合わせる。

 彼らも思ったよりは様になっているが、戦闘のための技術とまではいかず、言ったとおりのごっこ遊び。俺は加減して彼らをギリギリのところで負かした。

 

「くそ、強いなステラ姉ちゃん」

 

 軽く地面に転がった少年が元気に跳ね起きてくる。

 

「もう一回だ、もう一回!」

「だめ、私たちだってお姉ちゃんと遊びたい」

「そうですね、他の子とも遊んであげたいです。……でもその前に、怪我をしていませんか?」

 

 俺は少年の前にしゃがみこむと膝の状態を確認した。うん、やっぱり軽く擦りむいている。

 

「別にこのくらい唾つけときゃ治るよ」

「男の子ですね」

 

 良くも悪くも雑というか、男子は頑丈にできている。彼の言い分に共感しつつも、俺は同時に放っておけないとも思った。

 弟分的な印象を抱いているのか。

 男だって痛いものは痛い。しかし、我慢しろと教えられるし、実際そうでないと生きていけない。

 

「ああ、俺は男だから、年下や女を守ってやらないといけないんだ!」

 

 フレアたちみたいな女もいるが、全員じゃない。

 『三乙女』だって女冒険者としての不便をいろいろ抱えている。

 男のほうが荒事に向いているのは事実で、頑張ってくれる奴には報いるべきだ。

 リーシャに頼めばこんな傷、簡単に治せるが、この程度で頼るのも悪い。なんのために神の教えを学んでいるのだ。

 

「──心優しき我らが母よ」

 

 俺は、リーシャの口にする祈りを真似ながら少年の膝に手をかざした。

 もう一方の手で聖印を握る。思うのはただ、治れ、ということだけ。

 すると、手のひらから小さな輝きが生まれた。

 みるみるうちに擦り傷が消え、膝の状態が戻る。治療を受けた少年は「すげえ」と呟いて、

 

「ステラ姉ちゃんも魔法が使えるんだな」

「できれば地母神さまのもたらす奇跡、と、呼んでくださいね」

「リーシャ姉ちゃん」

 

 気づくとリーシャが傍に寄ってきていた。

 見られていたか。気恥ずかしい思いに囚われつつ立ち上がると、ぎゅっと抱きしめられて。

 

「り、リーシャさん!?」

「おめでとうございます、ステラさん。あなたの想いを地母神さまが認めてくださったのですね」

「あ、ありがとうございます……」

 

 俺が神の奇跡を導くのはこれが始めてだ。

 見様見真似。勝手に使うなと怒られるかと思ったが、先達の反応は真逆だった。

 良いことをする分には問題ないということか。

 地母神が認めなければ奇跡は発動しない──と言うならこの世から悪徳神官がいなくなるはずではあるが、それはそれとして善行は褒めるべき、と、リーシャは考えているのだろう。

 

 急に密着した俺たちを見て、子どもたちは歓声と悲鳴。

 

「ステラお姉ちゃんずるい! リーシャお姉ちゃんに抱っこしてもらって!」

「俺だってステラ姉ちゃんと──」

「ん?」

「あ?」

 

 なにやら見つめ合う彼ら。

 俺はふっと笑って、

 

「さあ、遊びの続きをしましょう? 今度はなにをしますか?」

「えっとね、お絵描き! それとね、ステラお姉ちゃん」

「? なんですか?」

「お姉ちゃんとはもっと普通にお話したいな、って」

 

 もじもじと囁かれた内容に、ああ、となった。

 リーシャは落ち着いたお姉さんだが、人格者すぎて我が儘を言いづらいところがある。フレアとエマ以外には敬語を貫いているのもあって距離を感じることもあるだろう。

 でも俺ならタメ口でいいだろ、ってことか。

 タメ口。だからって前の俺みたいに話すわけにはいかないだろう。女としてフランクに話すってのも正直難しいんだが。

 ……ま、なんとかなるか。

 

「いいよ。じゃあ、今度から普通に話すね?」

「あ……うんっ!」

 

 ぱっと表情を輝かせる彼女。喜んでくれたなら良かったと思う俺。そんな俺たちをリーシャが優しい目で見守っていた。

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