美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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死者の溢れた村(4)

 エマの飛行魔法により、俺は空へと舞い上がった。

 それほど速度は出ない。

 なので、空中で何度も斬りつけるのは難しい。やはり言われた通り、渾身の一撃を叩き込むほうが確実だろう。

 狙うのは──。

 

「尾!」

 

 うねり、空中の俺を狙ってくる『それ』の隙を窺い、一気に急降下する。

 落ちる力だけでなく、飛行する力をも利用しての接近。

 再び攻撃してくる尾をかいくぐり、刃を下に、自身の身体を上に置いて。

 

「貫けぇ……っ!!」

 

 魔剣の重量を倍に。

 もはやフレアでも持てないだろう、巨人が扱うような重みが、尾の付け根に食い込み、深く穿っていく。

 全体重を乗せながら剣を片側に傾け、割り砕きながら刃を解放、重量を元通りに。

 再び飛翔する俺をなおも尾が狙おうとしてくるも──。

 

 ぎし、と、大きく軋むような音。

 

 次いで響いた、乾いた大きな音と共に、巨大な尾が軽く宙を舞った。

 落ちて、転がり、近くにあった家を倒壊させながら、止まる。

 これで、敵は両の爪と尾を失った。

 空虚な眼が恨みがましげに睨みつけてくるのをまっすぐに見返して。

 

「もう一撃!」

 

 首の骨を大きく砕かれたドラゴンスケルトンは、今度こそその動きを停止させた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「……終わった、のね?」

「……そのようね」

 

 俺が地面に降りてもなお、一同はしばらく敵の様子を窺っていた。

 それはそうだ。いきなり動き出されたら大惨事になる。しかし、待っても動き出さないのを確認すると、

 

「やったわ、でかしたわよステラ!」

「大戦果」

「はい! これで被害は未然に防げました!」

「わ、わわっ!?」

 

 俺は三人に飛びかかられた。

 慌てて剣をしまった直後にはフレア、エマ、リーシャ総出でもみくちゃにされ、身体を押し付けられ、ある意味今までよりもピンチに。

 他の冒険者たちはその様子をぽかんと見つめた後、少し遅れて大歓声を上げた。

 

「こんな大物初めて倒したぞ!」

「馬鹿ね、倒したのはあんたじゃなくてあの子でしょ!」

「なんだあの剣、竜の骨を物ともしなかったぞ!?」

 

 くすりと笑ったフレアが声を張り上げる。

 

「これは伯爵様から借りた秘宝よ! 伯爵家に代々伝わる魔剣なんですって!」

「マジか、魔剣かよ!」

「俺もああいうの使ってみたいぜ!」

 

 どうやら宣伝も大成功である。

 ひとしきり勝利を喜びあった俺たちはようやく身を離して、

 

「さて、それじゃあ──」

 

 ぼこ。

 

「……ぼこ?」

 

 スケルトンドラゴンの取り巻き、地面に埋もれていた残りのアンデッドたちが地面から顔を出すと「やあ!」とばかりに俺たちを見てきた。

 

 ──うん、忘れてた。

 

 止めろよ、この期に及んで戦いたくないよ……。そんな俺たちの想いが一つになり、雑魚をあっという間に一掃した。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 ぶっちゃけ戦いが終わった後も大変だったんだが。

 夜も遅い。戦いでくたくたの俺たちはアンデッドの死体(?)でいっぱいの村で一夜を明かすしかなかった。

 

 ついでにものすごい『戦利品』までできてしまった。

 

 冒険者の中に馬を連れてきていた(さすがに村の外に待機させていたらしい)奴がいたので、そいつに伝令を頼み、伯爵家に報告へ行かせ。

 村の入り口あたりでテントを張って夜明かし。

 

 休んでいる間にも少数の残党? が現れたものの、それはさすがに他の奴らでも処理できて。

 朝が来ると戦利品──竜の遺骨の解体である。

 リーシャには竜以外の死体を弔ってもらい、ついでに一帯もできる限り清めてもらった。

 

 解体は主に俺の魔剣の役目。

 頭、手足。胴体も二つに切り分け、ある程度運びやすい状態に。

 

「この骨、古いものなのに状態がいい。保存の魔法でもかかっていたんだと思う」

「加工もできそう?」

「ばっちりだと思う。これだけあったら学院も大喜び。きっと涎が止まらない」

 

 魔法で作り出す番兵の中で上位にあたる竜牙兵(ドラゴントゥースウォーリア)はその名の通り竜の牙を加工したものが触媒となる。

 首に残った牙は高く売れることだろうし、他の骨も古代語魔法式のスケルトン、一種のゴーレムにすればかなり強力だ。

 もちろん、武器や防具にするのもアリだし、あちこちに需要がある。

 

 

 

 

 

「良くやってくれた。……本当に、君たちがいてくれて助かった。そうでなければ件のドラゴンスケルトンが街に攻め込んでいたかもしれない」

 

 伯爵も大いに感謝してくれ、報酬の額を上乗せしてくれた。

 

「お父様、そんなに大盤振る舞いをして大丈夫なのですか? 他の冒険者にも支払うのでしょう?」

「なに。竜の骨を譲ってもらうのだ。むしろそのくらいせねば釣り合いが取れん」

 

 骨の大部分は伯爵家に提供することにした。

 俺たちや他の冒険者にも少しずつ『おすそ分け』が配られる。武器か防具かアクセサリか、各自一つくらいは作れるだろう。

 

「で、あんなのが出た原因だけど、一応下を調べてみたほうがいいと思うわ」

「おそらくはアンデッド化したドラゴンが原因だとは思う。その負の力が骨のアンデッドを生み、今回這い出してきた」

 

 村人が下を掘ったせいで刺激したのか、それともどっちみち這い出る準備をしていたのか、そこはわからないが。

 

「古代魔法王国期に倒され、保管されたままになっていたドラゴンを『混沌の時代』の人間が御神体的に祀っていたんだと思う」

「祀ってたのにアンデッドになるもん?」

「祀ったと言っても崇めていただけで清めていたわけではないと思う。なにしろ当時の人間はきわめて愚か」

 

 古代魔法王国は発達しすぎた魔法のせいで滅びた。

 反動というか、魔法使いがいったん壊滅状態になったおかげでその後は一度、武器の支配する蛮族めいた世界が訪れた。

 ウホウホとかウーララーとか言いながら骨を崇め奉っていたわけか。

 

「そんな時代も過ぎ、保管庫だか神殿も埋もれて忘れ去られて、そのうち上に村ができたんじゃないかと思う」

「……うむ。真偽を確かめるためにも、危険なマジックアイテムがないか調べるためにも、発掘を行わなくてはな」

 

 しばらく村人たちは村に帰れないかもしれない。

 しかし、危険な状態で帰すわけにもいかないし、幸い人は無事だったのだからまた立て直せばいい。

 魔法を使えば穴を掘ること自体はそんなに難しくないわけだし、調査にはまた冒険者が雇われることになるだろう。

 

「魔剣の噂を広めるのももう十分だろう。なにしろ、骨だけとはいえ竜を討伐したのだから」

「わたしだけじゃなくてみなさんの力ですが……」

「噂というのは尾ひれをつけて広がっていくものですから。ステラさんの活躍をみなさんが広めて、他貴族の耳にも入ると思いますよ」

「うむ。礼というわけではないが、魔剣はこれからもステラ殿が使ってくれ。持ち逃げされないため、そして君たちの世話のためにシェリーをつけよう」

 

 家が手に入ったと思ったら魔剣にメイドさんまで手に入ってしまった。

 しかもまたまとまった金まで。

 

「……こんなに恵まれていていいんでしょうか?」

「そう思うのであれば、是非これからも魔剣で活躍してくれ。そして、もし気が向けば当家の一員になってくれるともっと嬉しい」

「それは」

「上の息子もまだ妻を娶っておらん。歳の差も許容範囲内だろうし、一度考えてみてはくれないだろうか。もちろん、下の息子でも構わない」

 

 ……本当にそんな話になるのか。

 しかしまあ、無理強いはしてこないみたいだし、きっぱり断ると角が立つ。やんわり返答してそのままずるずる逃げるのがいいか、と。

 

「お父様!」

 

 むっと表情を変えたリーシャに抱き寄せられて。

 

「ステラさんはステラさんの意思で結婚相手を選ぶべきです。……そうやってお兄様たちを差し向けるつもりであれば、ステラさんにはわたくしが求婚します!」

「えええ……!?」

 

 いやちょっと待て、いろいろおかしいぞ。

 

「り、リーシャさんは女性じゃないですか!?」

「あら、ステラさんは、結婚相手に男性をご希望ですか? ……子供でしたら、地母神さまの奇跡に同性でも子をなせるものがありますので問題ありませんよ?」

「どうしてそんな自然じゃない奇跡があるんですか!?」

「農耕の神としての側面です。雄株同士、雌株同士で交配可能なら便利でしょう? もちろん、安易に用いることは禁じられておりますが」

「うむ。子供ができるのであれば問題はない。むしろ大歓迎だ。……リーシャ、ステラ殿の心を見事射止めてみせなさい」

「心得ました、お父様」

 

 いや伯爵もなんで納得してるんだよ!?

 

「フレアさん、エマさん、なんとか言ってあげてください!?」

「結婚かあ。まあいいんじゃない、リーシャ相手なら」

「私もフレアも結婚相手には向いてないし、いざとなったらリーシャに家に戻ってもらって、第二夫人、第三夫人にしてもらえばいい」

「なんでお二人がそっちの味方なんですか!?」

 

 ああもう滅茶苦茶だよ!?

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