美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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双子の遺跡(4)

「あのさ。これ、下手にこっから出るよりここで休んだほうが楽よね?」

 

 というわけで、俺たちはホールで一夜を明かすことにした。

 サイクロプスの目、二個目を回収。

 リーシャの残り僅かな魔力で保存の奇跡をかけてもらい、フレアの魔力が回復次第、巨人の死体は焼いた。

 遺骨はリーシャが弔い、食事をして交代で眠ると気力と体力は回復、魔力もある程度戻ったので罠と魔物を内から外へと突破。

 

「さて。これからどうする?」

「そうね。先に街へ戻ってもいいけれど……」

「向こうに応援に行くのもアリですね」

 

 様子を見に行ってみると『至高の剣』は入り口前で野営をしていた。

 

「ああ、君たちか。その様子だと向こうは終わったのかい?」

「終わったわよ。そっちは? まさかこれから始めるんじゃないでしょうね?」

「まさか。探索の消耗を癒やしていたんだ。向こう同様、なかなかやっかいなダンジョンのようでね」

 

 途中までの地図を見せてもらうと、基本構造はもう一つの遺跡とほぼ同じらしい。

 ただし、入り口のパズルがボタン五個ではなく六個。罠の位置や種類も微妙に異なっている。片方を知っていると逆に感覚が狂ういやらしい仕掛けだ。

 ふふん、と、フレアは笑って、

 

「なんなら手伝ってあげましょうか?」

「頼めるかい? 正直、君たちがいてくれるととても助かる」

「……フレア、帰ろう?」

「そうね。素直に頼まれるとなんかつまらないし」

「待て、どうしてそうなった!?」

「大丈夫です。フレアさんたちも本気で言ってるわけじゃありませんから」

 

 すると「ステラには敵わないわね」と舌を出すフレア。

 

「ふっ。……君はすっかり『三乙女』の一員のようだ」

「はい。なので勧誘は諦めてくださいね?」

「それとこれとは話が別だが、攻略が終わるまで余計な話は止めにしておくよ」

 

 まさかの遺跡攻略続行である。

 4人パーティ×2の計8人での探索。あまり密集すると動きづらいので、陣形は縦に伸ばす形に。

 入り口のパズルは、

 

「気をつけてくれ。間違うとここも電撃が──」

「ステラ、任せた」

「はい。……あ、開きました」

「何!?」

 

 扉に触れただけで開き始めるのを見て目を見開くアルフレッドは正直とても面白かった。

 

「あの、罠の対処はお任せしていいですか?」

「いいわよ。あなた、正規のシーフじゃないものね」

「わかりますか?」

「装備が戦士寄りだし、何よりギルドで会ったことないじゃない」

「言われてみると盗賊ギルドには所属していませんね……」

 

 こうなる前の俺は入っていたが、証明するためのアイテムも変身時に紛失してしまった。

 別に街中でスリとかする気はないから構わないが。

 下手に人目のあるところで盗賊の技を使うと「うちのシマなに荒らしてんだ? ああ?」と制裁を食らうので若干恐ろしくもある。

 

「良かったら、暇な時に教えてあげましょうか? で、せっかくだからギルドにも登録しておきなさいよ」

「いいんですか? そうできると助かります。うちには正規の盗賊がいませんし」

 

 盗賊自体が裏稼業だから「正規の盗賊」って表現もアレだが。

 向こうの盗賊と俺のやり取りにリーシャは「……うーん」と眉を寄せて、

 

「ステラさんにはあまり危ないところに行ってほしくないのですが」

「それを言ったら学院だって品行方正な人間ばかりじゃない」

「学院とは危険の方向性が違うじゃない」

 

 確かに、魔法使い連中だと実験に付き合わされるとか研究に協力させられるとかだが、裏の連中は「ぐへへ、上玉じゃねえか」という輩も多い。

 

「大丈夫ですよ。わたしじゃまだ子供扱いされるでしょうし」

「なに言ってんのステラ。世の中、子どものほうが好きって奴はけっこういるのよ?」

 

 ああ、幼少期のリーシャに並々ならぬ想いを抱くメイドとか?

 

「ふふっ。なんだかそっちのパーティも楽しそうね」

「楽しいわよ? 女ばっかりで気楽だし」

「……さすがにこれだけ女性ばかりだと僕は肩身が狭いな」

 

 俺を勧誘して女増やそうとしてた奴が何言ってやがる。

 

「あ、そろそろ注意して。竜牙兵が再生してるかもしれないから」

「一回倒したんじゃないの?」

「一晩もあれば一体くらい直っていてもおかしくないだろう?」

 

 その発言通り、一体の竜牙兵が武器を構えて襲ってきた。

 が、俺、フレア、アルフレッドの三人がいればぶっちゃけ雑魚である。

 イケメンが敵の武器を弾き、俺の魔剣が盾を砕き、フレアの剣が頭蓋を割って戦いが終わった。

 

「あー。前衛がいてくれるとめっちゃ楽だわ」

「……君達も前衛だろう?」

「わたしもフレアさんも軽戦士ですから。鎧は最小限なので、強引に突破するのは難しいんですよね」

 

 なら鎧を着ればいい、という話もあるが、重い鎧は邪魔だし疲れるから俺たちには向いていない。

 これにアルフレッドは首を傾げて、

 

「殴り勝ってから傷を癒やした方が楽じゃないか?」

「……あなたの戦い方はさすがに無茶が過ぎるのでは?」

 

 ジト目のリーシャに向こうの女性メンバーが「そうだそうだ」と頷いた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 遺跡の七割を攻略したところで入り口に戻って再び野営。

 

「この調子なら次で攻略を終えられそうだ。本当に助かるよ」

「そう思うなら報酬に色を付けなさいよ」

「ああ。向こうの遺跡から回収した宝はこちらで確保してしまったし、そこは考慮するつもりだ」

 

 前は『至高の剣』の女性陣から敵視されていた俺だが、落ち着いて話す時間を取ってみると意外に打ち解けられた。

 女にとって恋敵は「絶対に許さない」相手だが、それ以外の同性は基本的に仲間、ということだろう。

 特に冒険者なんてやっている女は特に。

 

「男と冒険してると着替えの時とか困らない?」

「そりゃ困るよ。外だといい感じに隠れられるところがあるとは限らないし。後ろ向いてもらってもちらちら見られる時とかあるし」

「あー、わかる。見られるんじゃないかと思うとドキドキするわよね」

 

 フレアのドキドキは他の奴とは方向が違うが。

 もしかしなくても、『三乙女』の言う「男との冒険経験」とはこうなる前の俺のことなわけで。

 あるある話に「そうだろうな」と頷く一方で「うわぁ」という気持ちにもなった。

 

「ま、うちの男ってアル君だけだから見られてもそんなに困らないんだけどね?」

「というと……あの、みなさんはやっぱり、そういう?」

「あー、うん。そうだよ。あたしたちは三人でアル君と付き合ってるの。別に内緒にしてはいないけど、言いふらすのはやめてね?」

「は、はい」

 

 なんだその爛れた関係。

 やっぱりアルフレッドは男の敵だな、と思う反面、

 

「でも、それでバランスが取れてるんですから、アルフレッドさんはみなさんを平等に愛しているんですね?」

「まあねー。あたしたちがアル君を捕まえてるとも言うけど」

「な、なるほど?」

 

 複数の女を囲うのは強い男の甲斐性かもしれないが、囲われる女も男を逃がすまいと同盟を結んでくるというわけか。

 ……女は怖いというか、それくらいは我慢しろよイケメン、というか。

 ちなみにアルフレッドはこの時、一人だけ離れて見張りをしていた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「さあ、最深部だ。こっちの守護者は──」

「ギガント、ね。向こうと違って目は二つだけど、サイズはちょっと小さそう」

「目を狙う作戦は使えないか。なら、僕が先行して」

「要らないわよ。どうせ再生するんだし、一気に倒しちゃいましょ」

 

 守護者であるギガントは、俺とフレア、そして『至高の剣』の精霊使い三人がかりの炎に焼かれ、エマとリーシャの渾身の魔法を食らって、あっけなくその生命を散らした。

 

「強敵との戦いとは、死線上での激しいやり取りが当たり前じゃないのか……?」

「なに言ってんのよ。強い敵と真正面から戦ったら死ぬかもしれないじゃない」

 

 こうして二つ目の遺跡の核も俺の魔剣とアルフレッドの聖剣によって取り外され、俺たちは重い荷物を持って『冒険者の街』へと帰還したのだった。

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