美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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平原のゴブリン退治

 広い平原の一角にて、二、三十匹からなるゴブリンの群れが俺たちを取り囲んでいた。

 ゴブリン。

 昏い緑色の肌を持った人型の魔物だ。背丈は人間の子供くらい。言語を解するほどの知能はないが、武器や道具を操る狡猾さは持ち合わせている。

 放っておくと村などを襲って作物や家畜を食い荒らす。数が増えると群れを成して街を襲うこともある。

 一対一ならば駆け出しの冒険者でも勝てる相手。ぶっちゃけ雑魚だが、数が増えると厄介なのは人も魔物も変わらない。

 加えて、今回は上位種が混ざっている。

 大人の女程度の体格を持つホブゴブリン、古代語魔法を操るゴブリンソーサラー、精霊魔法を操るゴブリンシャーマン。

 こいつらの相手はある程度経験を積んだパーティでも手こずる。遮蔽のない平原で出くわしたのも良くないポイントだ。

 

 どうしてこう的確に俺たちが群れに出くわしたかと言えば、

 

「あたしたちが可愛いおかげね。出てくる出てくる」

 

 魔物の多くは女の匂いに敏感だ。

 女は肉が柔らかく味がいい。若ければ尚更。また、ゴブリンを含めた一部の魔物は女を犯し、種や卵を産み付ける。

 だから、女性冒険者は匂いを消すため香水等を使ったりする。

 『三乙女』は──逆になんの対策もせず、魔物をおびき寄せるタイプだ。

 

「今回はステラもいるから尚更楽」

「人に仇なし、神を冒涜する悪しき生物。ここで殲滅しましょう」

 

 フレアが愛用の剣を引き抜き、エマもまた魔法の杖を構える。

 そしてリーシャはベルトの左右に取り付けられた()()()()()から二丁の()を構える。

 

「いい? 頭から上は傷つけるんじゃないわよ?」

「当然」

「ステラ、わたくしたちの後ろに。……安心してください。この程度の相手、討ち漏らしもありません」

「は、はい」

 

 俺は、四人分のバックパックを抱えたまま短く答えた。

 正直、フレアたちの心配はしていない。怖いのは戦闘の巻き添えで()()怪我をしないかどうか。

 いっぱしのパーティが苦戦する相手だろうと、彼女たち『三乙女』の敵じゃない。

 

「まずは一匹!」

 

 陽光を受けた剣が閃き、ゴブリンの首をすっぱりと落とす。短いスカートが揺れ、レオタード状のインナーが目に飛び込む。

 

「二匹、三匹!」

 

 少女の左手に生み出された炎が立て続けに着弾、胴を焼き。

 

「《エナジーボルト》」

 

 一度の詠唱で三本の光が杖から飛び、それぞれ別のゴブリンを的確に始末。

 さらに、

 

「悪しき者よ、悔い改めなさい」

 

 機械式弓──クロスボウを参考に生み出された聖職者の武器、銃。

 矢ではなく聖なる光を放ち、詠唱なしに魔物の生命を奪い取る。

 遠近両用なうえに軽いが、扱いが難しく、限られた者にしか授けられない。それをリーシャは二丁同時に使いこなす。

 

 彼女の身体が動くたびに双丘が揺れる。

 聖光を受けた魔物は悲鳴と共にばったり倒れて二度と立ち上がらず。

 

 ──戦力の何割かをあっさり削られた敵はようやく「相手が悪い」と気付いた。

 

 しかし当然、少女たちは慈悲をかけない。

 そのまま、相手の魔法使いが詠唱する暇さえなく掃討は終わった。

 

 ……なんというか、ここまで来ると虐殺である。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 あっさりゴブリンを殲滅したフレアたちは、周りの気配を確認してから武器を下ろした。

 

「お疲れ様です、みなさん」

 

 声をかけると揃って微笑んで、

 

「雑魚相手だったから楽に片付いた」

「ステラさん、戦いの空気は感じられましたか?」

「は、はい。それはもう」

 

 こくこくと頷きながら全員分の荷物を下ろす。

 

「それじゃあ、耳を回収しますね」

 

 魔物を討伐するとその数や種類に応じてギルドから報奨金が出る。

 討伐の証明は倒した敵の身体の一部。ゴブリンの場合は耳だ。切り取ってギルドに持ち帰ることになっている。

 耳の切り取りも最初は失敗した。

 左なら左、右なら右で統一しないと「数を誤魔化していないか」と物言いがついたりするのだ。また、魔法や重量武器で頭を潰してしまい回収できないことも。

 

 今回は自主的な討伐だが、これが依頼だった場合、討伐を証明できなければ報酬までパアになる。

 地味なようで重要な作業だ。

 

 まあ、今となっては慣れたもの。

 買ってもらった真新しいナイフで手早く切り取り、袋に詰めていく。処理し終わった死体はまとめておくと「どいつに手をつけたっけ?」とならず、後で埋めたり焼くのにも便利だ。

 

「へえ、上手いものね」

 

 不思議そうに覗き込んできたフレアに俺は「ありがとうございます」と答えて、

 

「身体が覚えてるみたいです。似たようなことをやったことがあったのかもしれませんね」

「へえ。じゃあ、ステラは元から冒険者だったのかしら」

 

 正解だ。今の俺の構成要素から元の情報はどうやっても出てきようがないが。

 エマもふっと笑って、

 

「手際がいい。彼といい勝負かも」

 

 どきっとした。そうか、手際からバレる可能性はあったか。

 

「いやいや、あいつとステラじゃ大違いでしょ。ねえリーシャ?」

「そうですね。ステラさんのほうがずっと安心して背中を任せられそうです」

 

 同一人物なんだけどな!?

 ともあれ、最低限の仕事がこなせることを示せたのは幸いだ。

 ゴブリンもこれだけいればある程度の稼ぎになるし、武器や杖などの所持品を売ればさらに小遣いが稼げる。出してもらった宿代や服代、装備代もある程度は返せるだろう。

 

「フレア。せっかくですしもう一グループくらい索敵しておきませんか?」

「そうね。この調子ならぜんぜん時間余りそうだし」

 

 耳の回収と装備の剥ぎ取りを終えたゴブリンの死体はフレアの精霊魔法でこんがりと燃やされ、索敵を再開した俺たちは三匹の人食い狼(キラーウルフ)と遭遇、これを撃退した。

 偉そうなことを言っても俺は後ろで見ていただけだが。

 

「三匹もいると解体のしがいがありますね?」

「大丈夫? 魔法で手伝う?」

「エマさん、いいんですか?」

「だって、一人じゃ大変でしょう?」

 

 男だった頃は四匹いようが五匹いようが手伝ってなんかくれなかったし、なんなら「遅い」とか「なんで戦闘中から解体を始めなかったの」とか言われた気がするのに。

 エマが《エナジーボルト》の応用で生み出した魔力の刃が大まかに肉を切り出してくれたおかげで解体はかなり手早く済んだ。

 切り出された肉はリーシャが防腐処理を行い、街で換金することになる。肉食のため大味ではあるものの、スパイスを施したり燻製にしたりするとなかなかいける味になる。

 討伐の報奨と合わせていい金になるだろう。

 ぶっちゃけ、日帰りでこれは破格すぎる戦果だ。

 

「すっごい調子いいじゃない! よし、次は森で人食い植物(キラープラント)でも狩りましょうか」

「それ、油断したら丸呑みにされる危険なやつですよね……!?」

 

 しかしこいつら本当に大丈夫か? そのうち油断してあっさり全滅しないか?

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