美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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迷宮三度(2)

「「《ライトニングバインド》」」

 

 なんだか顔なじみになり始めた、隠し部屋のキマイラ。

 三度目の今回は二重にかけられた雷の網によって出会い頭にこんがりと焼かれ、フレアの剣から放たれた炎弾が直撃、おまけに俺の伸ばした魔剣とリーシャの銃で駄目押し。

 なにもすることなく倒れたそいつが若干可哀想にさえなった。

 

 ともあれ。

 

「ふう。さて、ステラ? こいつの心臓を取り出してくれるかしら?」

「構いませんけど、そんなものが必要なんですか?」

「血や心臓は魔法にうってつけの素材よ? エマは回収していなかったのかしら?」

「エマはわりと面倒がってそのへん適当だったわね」

「エマ? あなたまた『汚れるのが嫌』とか思って横着してたでしょう?」

「私は師匠と違ってそういうのはあまり興味ない。生の素材を使う系は暗黒魔法に片足突っ込んでるから気持ち悪──専門外」

 

 おい、いま気持ち悪いって言ったぞ。

 まあ、気持ちはわかる。神の奇跡と対になる暗黒魔法こそ生贄の儀式とかで生き物を使うことが多い。

 爪や牙だって生き物の一部には違いないし、蛇の毒なんかも使いようによっては薬になるわけだから、どこまでがどう、とは言いづらいが。

 

 思いつつ、俺は魔剣を変化させてキマイラを解体しにかかった。

 

「ステラ様、お手伝いいたします」

「ありがとうございます。じゃあ、切る場所を指示してもらえますか? 生き物の構造はシェリーさんのほうが詳しいと思うので」

「はい。といっても、私もキマイラは捌いたことがありませんが……」

 

 けっこう強い魔物なので普通のナイフでは刃が通りづらい。

 俺はシェリーの指示で魔剣を使い、血抜きしつつ腹を開いて心臓を取り出した。それをでかめの瓶に放り込んで、ウィズがマントにしまう。

 

「さて。今日のところはこの辺で休みましょうか」

「床が血ですごいことになってるけど」

「わたくしが浄化するから問題ないわ」

 

 俺の服と身体も含めてリーシャの奇跡が清めてくれて、隠し部屋は綺麗に。

 ここ、三階の魔物も一掃したし、もともとは隠し部屋なのでそうそう入ってくる者もいないだろう。

 ようやく出た宿泊の指示にシェリーがほっと息を吐いて、

 

「三階程度でしたら一度戻れそうな気もしてしまいますね」

「それも悪くはないけれど、外はもう深夜よ? 今戻ったらたぶん、屋敷に一泊するコースね」

 

 往復の時間も考えればここで休んだほうが時短になる。

 

「ま、野外よりはだいぶマシよね」

「うん。魔物の移動経路も限られるし雨も降らない」

「幸い、食料はたくさんありますし、食べられる草を探す必要もありませんね」

「……皆様、思ったよりも苦労されてるんですね?」

 

 フレアたちはめちゃくちゃトントン拍子に強くなったタイプではあるが、野営や野外活動の経験はそれなりにあるからな。

 特にフレアは野生児──いや、うん。

 

「休憩でしたらようやく私の出番ですね。すぐ食事の支度をいたします」

「シェリーも十分役に立ってくれてるわよ。荷物持ってもらったりもできたし」

「マッピング担当がいるとだいぶ楽」

 

 マッピングと言えば、今回は遺跡の地図に大きな更新があった。

 一階はもちろん、ここに来るまでの間に俺たちは二階でも隠し部屋を見つけている。

 ここ三階も含め、三つの隠し部屋は全て同じ位置だ。昇降機を使う関係上なのだろうが──これがわかれば後は各階の隠し部屋を楽に特定できる。

 

「喜びなさい。今回の発見は歴史的快挙よ。研究書に名前が残るんじゃないかしら?」

「んー、あたしはそんなものより報酬が欲しいんだけど」

「心配しなくてもたんまりもらえるはず。この迷宮の攻略はギルドと学院の悲願」

「そうね。……しばらくしたら国を挙げて攻略作戦が動きかねないわ」

 

 そりゃ、王様としてもこんな遺跡さっさと停止してくれたほうが気楽だろう。

 なんかすごい宝が見つかるかもしれないし、そういう意味でも意義はある。

 

「あの、でもそれ……ひょっとしなくてもわたし、強制参加ですよね?」

「ステラがいないと部屋に入れないし昇降機も使えないもの」

 

 うわぁ、と俺は呻いた。

 ただの木端冒険者だったはずの俺がいつのまにか国レベルでの重要人物。

 もし本当に協力要請が来たらたっぷり報酬を請求しようと心に決める。

 と、エマが漆黒の瞳で俺を見て、

 

「安心して、ステラ。そんなことになったら上位冒険者総動員。あと、間違いなく師匠も呼ばれる」

「ウィズ様はこの国どころか世界的に見ても指折りの魔法使いだものね」

「え、ウィズさんってそこまですごかったんですか!?」

 

 すごいとは思っていたが、なんでそんなのが痴女をやっているのか。

 俺の内心を知ってか知らずか、ウィズはふふんと笑って、

 

「自慢じゃないけれど、私はその気になれば隕石だって落とせるわ」

「それはどう考えても自慢」

 

 《メテオストライク》は伝説級の魔法だ。

 ひとたび唱えれば街一つを破壊することさえ可能だという。

 ……とんでもないにも程がある。

 

「吟遊詩人の物語とかでたまに思いますけど、国一番の剣士と国一番の魔法使いって、明らかに後者のほうが強いですよね?」

「あら。十分な用意もなくぶつかったら私より坊やのほうが強いわよ? 詠唱の間もなくあんな鉄塊食らったら間違いなく即死だもの」

「あの人はまた別格だと思いますけど……」

 

 国一番の魔法使いが別格であるように、国一番の剣士もまた別格ということか。

 物語だとドラゴンに剣で挑んで勝ってる奴とかいるし。

 

「そういう意味では迷宮って私とは相性が悪いのよね。ここじゃ隕石は降らせられないし」

「もしできても、さすがにここぶっ壊れるんじゃないの、それ?」

「それで破壊できるなら街一つ犠牲にする意味があるかもしれないわね?」

 

 怖い話をしないで欲しい。

 もちろん実行する場合は街の住民を全員避難させてからだろうが。

 ……うん、伯爵が悲鳴を上げる羽目になるな、絶対。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 二日目からは四階以降の探索に入った。

 下に降りるほど冒険者の出入りが減り、反対に罠や魔物は凶悪になっていく。

 動く鎧(リビングメイル)食人鬼(グール)を破壊、あるいは燃やし、まだ動いている罠は伸ばした魔剣などを使って破壊しながら進んでいく。

 

「……ステラの、っていうかリーシャの家の魔剣、めちゃくちゃ便利ね?」

「フレアさんとヴォルカさんの剣だって負けてないじゃないですか」

「本当。何度でも魔法が使えるとか理を無視しないで欲しい」

「まあまあ。魔法連発したいなら、エマはワンドでも振ってなさい」

 

 二階の隠し部屋にもワンドと魔晶があった。

 ウィズによると「基本、管理者しか来ない部屋でしょ? 物置き代わりか、そうでなければ掃除道具を置くような感覚だったんじゃない?」とのこと。

 魔力の籠もった石やタダで魔法を使えるワンドが掃除道具とは……。

 これらも売ればかなりの値になるので今回も俺たちは黒字確定である。

 ちなみに二階の隠し部屋にいた魔物は双頭の魔犬(ヘルハウンド)だった。

 

「この調子だと、隠し部屋の守護者って下に行くほど強そうよね?」

「最後にはドラゴンでも出てきかねないわね……」

 

 言いつつ、四階の隠し部屋で三頭犬(ケルベロス)を撃破。身体を燃え上がらせている上に首が三つあり、火まで吐いている厄介な相手だが、

 

「面倒ね。《ブリザード》」

 

 ウィズの用いた氷の嵐に本領を全て封じられ、敢え無くその命を散らした。

 隠し部屋に置かれていたアイテムを回収して、

 

「さあ、五階に行きましょうか」

 

 断っておくが、本来この迷宮はこんなに淡々と攻略する場所ではない。

 伝説級の魔女、伝説級の大精霊、伝説級の魔剣──これだけの助けを借りて実現している異例の快進撃だ。

 

『でも、それってもうステラちゃんたちも伝説に足を突っ込んでるってことじゃないかなー?』

 

 だとしたら嬉しいような、恐ろしいような……そんな気分である。

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