美少女になったら、追放元のPTに甘やかされたんだが   作:緑茶わいん

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フレア(1)

「さあ、ステラ。これに着替えなさい!」

 

 『秘蹟』が目覚めた日の午後。

 フレアが俺に差し出してきたのは汗を吸い取りやすい素材でできた新しい服だった。

 訓練着だろう。

 短いズボンとトップスの組み合わせでいかにも活動的だ。スカートではないのでどこかに引っ掛けたり翻って邪魔になる心配もない。

 

 ただし、丈が短すぎる。

 太ももさえかなりの割合で露出するうえ、上なんて腕出し、へそ出し。

 絶対にこいつの趣味だ。

 今日も今日とてハイレグレオタード+ミニスカートなフレアを俺はじっと見つめて、

 

「露出度が高すぎませんか……?」

「え? だいぶ抑えたつもりなんだけど?」

 

 はて? とばかりに首を傾げやがった。お前の感覚おかしいよ。

 いやまあ、別に構わないが。

 こいつに身体を見られても、前と違って「少しは気を使いなさいよ馬鹿なの!?」とか怒鳴られないだろうし。

 

「じゃあ、着替えてきますね」

「うん」

 

 訓練着を持って部屋に移動する。フレア、ついてくる。

 部屋に入る。フレア、入ってくる。

 

「どうしてついてくるんですか……!?」

「どうしてついてきちゃいけないのよ!?」

「……どうしてでしょうね?」

 

 同性だから別にいいのか。俺が見せてるんじゃなくて向こうが見たがっているわけだし。今はこっちが年下だし。訴えられて負ける要素が見えない。

 じゃあいいか、と、着ていた服に手をかけると。

 

「……じーっ」

 

 めっちゃ見られていた。

 

「……フレアさん?」

「あたしを気にせず続けていいわよ?」

 

 いや、さすがに気になる。

 

「同性とはいえ凝視されるとさすがに……」

「でもリーシャには見せたんでしょ?」

「リーシャさんとは見せ合ったわけですし」

 

 交換条件だと訴えればさすがに諦め──。

 

「あたしも脱げばいいのね? いいわよ」

「ええー……?」

 

 露出狂かなにかか?

 困惑しながらも服を脱ぐ俺。フレアは淡々と服に手をかけ──。

 ああ、同性だから恥ずかしくないのか、と思いきや、ちらちらこっちを気にしながらスカートを脱ぎ落とす。

 ぱさ、と、床に落ちる音が妙に大きい。

 少女はなおも俺の目を盗み見ながら上をぐいっと脱ぎ捨てて、

 

「ね、人に見られてるとちょっとどきどきするわよね?」

 

 あ、露出狂だこいつ。

 

「ひょっとして、恥ずかしい想いをするために露出を増やしていたんですか……?」

 

 あの『三乙女』のフレアが。

 強く、美しく、意思の力に満ち溢れ、炎を操るパーティのリーダーが。年上の男ですら憧れるあの少女が。

 見られるのが大好きな変態、だと……?

 イエスと答えられるのを恐れながら尋ねると、フレアはレオタード一枚の格好で身体に腕を回しながら、

 

「誰にも言わないでくれる……?」

 

 俺は、自らの情緒がおかしくなるのを感じた。

 自分の絶対に敵わなかった相手。圧倒的な高嶺の花に欠点があったという落胆。そんな奴に追放させられたという憤り。

 同時に、本心をさらけ出し不安そうにする姿に庇護欲を掻き立てられる。

 可愛い。

 思ってしまった時点で、おそらく俺は負けている。

 

「言いませんよ。こんなこと、誰にも」

 

 言えるわけがない、というのが大きな理由だったが。

 

「ありがとう。ステラを信じたのは間違いじゃなかったわね」

「……わたしなんてまだ何日かの付き合いじゃないですか。どうしてそこまで」

「だって可愛いじゃない。妹みたいで放っておけないし」

 

 それでやたら張り切っていたのか。

 

「それに女の子なら服の貸し借りとかお揃いとかできるかもしれないし」

「わたしにそういうの着せるつもりだったんですか!?」

 

 なんて恐ろしいことを。

 

「あの、フレアさんって男性の視線が欲しいわけじゃないんですか?」

 

 美少女をエロい目で見てくるのは普通男だ。

 異性の熱視線を快感としている、と考えるのが自然だが。

 

「もちろんそうよ?」

 

 胸を張って答えるんじゃない。

 

「でも安心して。あたしは男との恋愛とか考えてないから。男に触れられるとか、そういうのはもう卒業したの」

「卒業って……経験済みってことですか?」

 

 いつの間に。俺という者がありながら……なんて言える立場じゃないし、言う義理もないが。こいつが彼氏なんて作れば街中の噂になっていそうなものだ。

 と、少女は「違う違う」と手を振って。

 

「手を()()()()()()()()()懲りたのよ。男なんてチキンの雑魚ばっかり。いくら煽ってもあたしに乱暴する度胸も見せやしない」

「それはフレアさんが燃やすからじゃないですか……?」

「エマかリーシャから聞いたの? まあ、それはあるかもしれないけど」

 

 遠い目になったフレアはいつになく大人っぽく見えた。

 こいつにもいろいろあるんだな……っていうか、煽っても手も出さなかったって俺のことじゃないのか?

 押し倒されたかったみたいに言いやがって。

 そんなこと今さら言われてどうしろって言うんだ。あの時、怒りに任せていれば別の未来があったかもしれないなんて。

 

「それにしても、ステラって綺麗な身体してるわね」

「……ふえっ?」

 

 考え事をしていたのでつい変な声を出してしまった。

 フレアは、レオタードの上半分をはだけながら、

 

「肌綺麗だし、傷一つないし。柔らかくてすべすべって感じ。なのにあんた、ちょっと隙があるっていうか、ときどき男っぽい時あるのよね」

 

 そりゃ中身が男だから仕方ないだろ。

 

「記憶に関係しているのかしら。どこかの貴族とかお姫様で、事情があって男として育てられたとかさ。……こんなに可愛いのに」

 

 エマやリーシャに比べると貧乳とはいえ、フレアもこうして見るとしっかりと「ある」。

 包みこんで動かせる程度にはある膨らみの下、小さな臍が晒されて、その下には髪の色と同じ紅の毛を備えた下半身が。

 取り払われたレオタードの中に他のインナーはなく──ノーパン!?

 普段からギリギリのミニスカート。動き回れば丸見え、普通にしていても見えてしまいそうな格好だっていうのに、伸縮素材の下になにも穿いていないとか。

 

 正気か? という気持ちとありがとうございます、という気持ちを混合させながら、ついつい視線を送ってしまう。

 それに気づいた少女は身体を隠す手を下ろすとこっちに近づいてきて、

 

「見てもいいわよ? その代わり、ちょっと触らせなさい」

「ちょっ、フレアさ……っ!? んんっ……!?」

 

 お互いに靴と靴下だけをはいた格好で肌が触れ合った。柔らかい。フレアは体温が高いのか、温もりが心地よくもある。

 女同士だからか。肌は大きな反発もなく重なり合って、ぴったりと、まるで一つになるかのように境界をわかりづらくして。

 あれだけ剣を振っているくせに細い指があちこち際どいところに触れ、撫でる。

 

「栄養はたっぷり摂ってそうなのに、ここは小さいのよね。でも、ステラならまだ成長するかしら? いや、あたしもまだ大きくなると思ってるけど」

「なんの話ですか!?」

「身長の話に聞こえた?」

 

 高く凛とした声に悪戯っぽく、どこか甘い響きが混じった。耳元で囁かれるとぞくっとする。「敏感なんだ」。くすくすと笑う声。

 

「こんな綺麗な肌、魔物に触れられないようにしないとね。リーシャがいれば綺麗に治してくれるだろうけど、怪我しないのが一番だもの」

 

 これ、女同士なら普通なのか。

 そんなわけないよな? 男同士で「お前、いい身体してるな」なんて囁かれたら気の良いおっさんかヤバい奴かの二択。というか五分五分。

 でも、なんか、女同士だと悪い気はしないというか。

 

 ……そもそも俺、なんで脱がされたんだっけ?

 

 思い出したのはそれからしばらく後、満足したフレアに解放されてからのことで。

 訓練着に着替えた俺は、少女剣士からたっぷりとしごかれた。

 雑魚には興味ない、とばかりの女のくせに意外としっかり丁寧に教えてくれたのは嬉しかったが、さっきまでの態度との落差が激しすぎて対応に戸惑ってしまう。

 そんな俺の反応も楽しいのか、パーティリーダー様はその日一日上機嫌だった。

 

 その日の夜、『三乙女』所蔵の簡易ステータス測定機(高い)で調べたところ、俺の筋力と体力が14→15に上がっていた。

 普通、ステータスってこんなに簡単に上がらないんだが。『秘蹟』の効果か。だとしたらああいう「仲良くなり方」でいいってことか。

 戸惑う俺は黒髪の美女に抱き寄せられて、

 

「明日は私がステラを構う」

 

 これ、ひょっとしてオフの間ずっとこうなのか?

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